1曲目のタイトルはなんと・・・!
Title:RINGO DEATHSTARR
Musician:Ringo Deathstarr
アメリカはオースティン出身のオルタナ系ギターロックバンド、Ringo Deathstarr。一時期、2000年代後半あたりに、シューゲイザーの影響を受けたバンドが多数登場し、「ニューゲイザー」として話題を集めました。その流れの中で登場したバンドは、あるバンドは今なお活躍しているものの、シューゲイザーからの影響は薄れ、あるバンドは消息不明となり、いつの間にか「ニューゲイザー」という言葉次第、死後になってしまいました。ただ、そんなニューゲイザーバンドの中でも、特にシューゲイザー系からの影響をストレートに受けた彼ら、Ringo Deathstarrが今でも順調に活動を続け、ついにはここに来て、セルフタイトルのアルバムをリリースしてしまうあたり、興味深いものがあります。
本作はそんな彼らの、ちょっと久々となる5年ぶりのニューアルバムなのですが、まず最初に驚かされたのは1曲目のタイトル。冒頭の曲のタイトルはいきなり「Nagoya」!楽曲は2分弱のインストチューン。静かにドリーミーなサウンドを聴かせてくれるいわばインスト的な楽曲になっています。なぜこの曲に「名古屋」なんて名前を付けたのかはかなり謎。ただ、彼ら、ほぼ毎年のように来日ツアーを実施しており、その中で何度か名古屋も訪れています。そんな名古屋に滞在時に作った曲なのでしょうか・・・?また、頻繁に来日ツアーを実施するあたり、比較的世界の中でも特に日本で高い人気を得ている、ということなのでしょうか?
そんなちょっと謎、でも名古屋人としてはちょっとうれしい曲からスタートする今回のアルバムですが、本作もまた、彼らの王道スタイルと言えるシューゲイザー路線がさく裂しています。続く「God help the Ones you Love」はちょっとゴシック調、荘厳な雰囲気にアレックス・ゲーリングの透き通るような神々しさを感じるボーカルスタイルが、タイトルから想像させるようなゴスペル風な雰囲気を醸し出しています。
さらになんといってもうれしくなってくるのは「Once upon a freak」。ノイジーで歪みまくったギターリフがまんまマイブラを彷彿とさせるようなナンバー。女性ボーカルの入り方も、まんまマイブラといった感じになっており、彼らの敬愛ぶりが感じられます。ドラムのアタック音もマイブラっぽい感じなのですが、こちらは彼らの方がより強い音で彼らなりの個性も出しているような感じでしょうか。
そして今回のアルバムでも大きな魅力となっているのが、さきほど紹介した「God help the Ones you Love」でも魅力的な歌声を聴かせてくれるアレックス・ゲーリングの歌声。歪んだギターが響きまくる「Once upon a freak」に続く「Disease」では一転、彼女のドリーミーな歌声が魅力的に響く幻想的な楽曲に。「In your arms」「Heaven obscured」も、ノイジーに歪んだギターの中で幻想感あふれるアレックスの歌声が魅力的な楽曲となっています。
さらにギターのホワイトノイズが埋め尽くされる「Lazy Ln」みたいなシューゲイザーファンにうれしいナンバーを挟みつつ、後半で魅力的だったのが「The same again」。ガレージサウンドとシューゲイザーサウンドの中間を行くような、歪んだノイズを聴かせつつダイナミックに展開するヘヴィーなギターサウンドの中、メンバー2人のデゥオとなるのですが、その中でもアレックスの歌声が、まさに一服の清涼剤のような爽やかさを楽曲に与えています。
そして彼女の歌声が魅力的というと、なによりも終盤の「Cotton candy clouds」。思いっきりノイズギターを炸裂しているヘヴィーなギターサウンドの中を突如美しいアレックスの歌声が流れ出す、幻想感の強い楽曲に。最後までアレックスの歌声を魅力的に生かした楽曲が、マイブラをはじめとするシューゲイザー系からの影響が顕著な彼らながらも、しっかりと彼らの個性・魅力を感じさせる作品となっていました。
一方ではそんなドリーミーなサウンドを聴かせつつ、最後の「All I Want」のような破壊的でパンキッシュな作品があったりと、比較的ヘヴィーなバンドサウンドを聴かせる作品も多いのも彼らの特徴。ダイナミックなサウンドと幻想的でノイジーなギターサウンドのバランスの良さもまた大きな魅力となっていました。
セルフタイトルにふさわしい、彼ららしさが満載の傑作アルバムに仕上がっていた本作。シューゲイザー好きにはたまらない、壺につきまくりの作品だったのではないでしょうか。目新しさという点は薄いため、音楽系メディアの評価はさほど高くないのかもしれませんが、私個人としては、個人的な年間ベスト10に入りそうなくらいはまってしまいそうな傑作アルバム。終始、ノイジーサウンドと清涼感あふれるボーカルが魅力的なアルバムでした。
評価:★★★★★
Ringo Deathstarr 過去の作品
Shadow
Mauve
PURE MODE
ほかに聴いたアルバム
In Another Room/Paul Weller
ポール・ウェラーの新作は、なんとエクスペリメンタル・ミュージックによる4曲入りの新譜。いつもの彼のイメージとは全く異なる実験的な現代音楽に、もし何も情報がないまま聴いたとしたらビックリするのではないでしょうか。ただ、どこか流れるポップなメロディーラインに、Paul Wellerらしさを感じる部分がない訳でもないのですが・・・。現在61歳の彼でありながらも、いまなお続けるこの挑戦心には驚かされるのですが、ただ内容的にはやはり一般受けするような内容でもなく、決して非常に目新しいという感じでもなく、よほど熱心なファン以外は無理に聴く必要はないような印象を受けてしまいました。
評価:★★★
Paul Weller 過去の作品
22 DREAMS
Wake Up The Nation
Sonik Kicks
A Kind Revolution
True Meanings
If You're Going To The City: Sweet Relief Tribute To Mose Allison
2016年に89歳で亡くなった、アメリカはミシシッピ出身のジャズピアニスト。彼はジャズピアニストでありながら、ローリングストーンズやTHE WHOなどのロックミュージシャンやブルースミュージシャンへも大きな影響を与えたミュージシャンで、今回、Iggy PopやJackson Browneなどロック/R&Bミュージックから数多くの大物が参加したトリビュートアルバム。あのPixiesのFrank Blackも参加。Pixiesの「Allision」は彼に捧げたもの・・・・・・ってそうだったんですか!全体的にはムーディーでブルージーなカバーがメインとなっており、確かにブルース色の強い作品が並んでおり、ロックやブルースへの強い影響を感じさせます。全体的には落ち着いた渋い味わいに聴き入ってしまう、Mose Allisonへの愛情を感じさせるトリビュートアルバムに仕上がっていました。
評価:★★★★★
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