« 真面目な電気グルーヴ | トップページ | 約30年のブランクを感じさせない傑作 »

2020年3月22日 (日)

良し悪しの差が激しい・・・

Title:PERFECT SEAMO
Musician:SEAMO

間違いなく名古屋を代表するHIP HOPミュージシャン、SEAMO。2006年には「マタアイマショウ」「ルパン・ザ・ファイヤー」のヒットで一躍人気ミュージシャンの仲間入りを果たし、さらにはその年の紅白歌合戦にも出場しています。そんな彼のSEAMOとしてのデビュー15周年を記念してリリースされたのが今回のベストアルバム。ベスト盤としては2009年の「Best of SEAMO」以来となるのですが、彼の15年の歩みを網羅した2枚組のベスト盤となっています。

今回のベスト盤で大きな特徴となっているのは楽曲の順番がリリース順などになっている訳ではなく、似たタイプの曲が並んでおり、アルバム全体の流れを重視しているという点。最初は大ヒットした「ルパン・ザ・ファイヤー」からスタート。「ON&恩」「Fly Away」とアップテンポなナンバーが続きます。その後はミディアムチューンにシフトした後に、「不景気なんてぶっとばせ!!」「天狗~祭りのテーマ~」と再び痛快でアップテンポなナンバーに。さらにDisc1の最後は「マタアイマショウ」としんみりナンバーで締めくくり、そのままDisc2の「関白」とつながります。さらにDisc2の最後は「ONE LIFE」「Continue」とクラシックナンバーをサンプリングした曲で締めくくります。

そんな感じでオリジナルアルバム感覚でも楽しめる今回のベストアルバムなのですが、SEAMOの過去の代表曲を聴いて強く思うのは、彼は楽曲によって出来不出来の差が激しいなぁ、という点でした。基本的にアップテンポなナンバーについてはアゲアゲで痛快でよく出来たナンバーが多く収録されています。「ルパン三世」のテーマ曲をうまくサンプリングした大ヒット曲「ルパン・ザ・ファイヤー」などは典型的ですし(だからこそヒットしたのでしょう)、「天狗~祭りのテーマ~」のようなアップテンポなナンバーについては聴いていて非常に楽しいし、ワクワクするような楽曲が並んでいます。

しかし一方で楽曲によっては、かなり平凡でつまらない、と感じてしまう曲も少なくありません。特にミディアムチューンのナンバー。「マタアイマショウ」は、今となってはよくありふれた感があるのですが、ただこういうスタイルはむしろこの曲のヒットで広まった感があるので、当時としては非常によく出来た楽曲(というか、今でもいい曲だとは思いますが)とは思います。ただ、「リアルありがとう」のような、悪い意味でいかにも流行りのJ-POP的な「前向きな感謝ソング」が目立ちます。

こういう曲に関して概して言ってしまうと、全体的に「ベタベタ」というのが大きな特徴のように感じます。例えば「ROCK THIS WAY」にしても、ヘヴィーでロッキンなトラックがカッコいいので個人的には嫌いではないのですが、ただ、曲のタイトルといい、それに対してよくありがちなギターリフのトラックを入れてくるあたりから言って、非常にベタ。また、アルバムの最後に収録されている「ONE LIFE」「Continue」にしても、耳なじみあるクラシックのフレーズをサンプリングしているため、インパクトはあるのですが、クラシックのフレーズの強度に楽曲が負けてしまっており、大味に感じてしまいます。この曲に限らず、SEAMOの「ベタ」な路線が、全体的に悪い意味での曲に大味感を与えているように感じました。

逆にアップテンポなアゲアゲのナンバーに関しては、この「ベタ」さがプラスに作用しているように感じます。特に「天狗~祭りのテーマ~」のような下ネタが入ったようなナンバーは、「ベタ」な故にいやらしさよりユーモラスな面が前に出ているようにも感じました。また、全体的にいかにも狙ったような売れ線路線についてはいまひとつ、つまらなさを感じる反面、彼が自由に楽しんでいるような曲に関しては、SEAMOの良さがより前面に出ているようにも感じました。

正直、一時期に比べて売上の面では最近では落ち込んでしまった彼ですが、変に売れることを狙うよりも彼がやりたいように、自由に曲作りをした方が面白い曲が生まれるような気がするんですけどね。あと、今回、「PERFECT SEAMO」と名乗るのならば、シーモネーター時代の曲も収録してほしかったな。やはり名古屋を代表するラッパーということでこれからも頑張ってほしいのですが・・・もっとSEAMOの良さが生きた曲をたくさん聴きたいです!

評価:★★★★

SEAMO 過去の作品
Round About
Stock Delivery
SCRAP&BUILD
Best of SEAMO
5WOMEN
MESSENGER
ONE LIFE
コラボ伝説

REVOLUTION
TO THE FUTURE
LOVE SONG COLLECTION

THE SAME AS YOU(SEAMO&AZU)
ON&恩&音
続・ON&恩&音

Moshi Moseamo?
Glory
Wave My Flag


ほかに聴いたアルバム

失恋スクラップ/コレサワ

女性シンガーソングライターコレサワによる失恋をテーマとした7曲入りのミニアルバム。シンプルなギターロックをメインとしつつ、女性の心境を素直に歌に読み込んだ作品が並びます。サウンドについても歌詞についても飛び道具のようなインパクトあるものはないのですが、比較的シンプルな内容であるがゆえに、誠実さも感じさせるポップソングが並んでいる印象も。

評価:★★★★

コレサワ 過去の作品
コレでしょ

SHISHAMO 6/SHISHAMO

ベスト盤挟んで約1年7ヶ月ぶりとなるニューアルバム。正統派のガールズロックバンドとして確かな歩みを進める彼女たち。女の子の本音をユニークな視点から少々強烈に描いた「忘れてやるもんか」や可愛らしいラブソングの「フェイバリットボーイ」など、以前よりも歌詞のインパクトも増した印象が。楽曲的には「君の隣にいたいから」のような、J-POPの本流を行くようなインパクトあるポップスも書いてくる一方、全体的にはバンドとしての力量も感じるオルタナ系のギターロックがメイン。派手さはないものの、しっかりとロックリスナーの壺をついてくる、ある種の「誠実さ」を感じさせるアルバム。いい意味で安定感が増してきた感のある1枚でした。

評価:★★★★★

SHISHAMO 過去の作品
SHISHAMO 3
SHISHAMO 4
SHISHAMO 5
SHISHAMO BEST

|

« 真面目な電気グルーヴ | トップページ | 約30年のブランクを感じさせない傑作 »

アルバムレビュー(邦楽)2020年」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« 真面目な電気グルーヴ | トップページ | 約30年のブランクを感じさせない傑作 »