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2020年3月

2020年3月31日 (火)

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Title:BRIGHT NEW WORLD
Musician:Little Glee Monster

昨年末まで3年連続紅白に出演。さらに本作はBillboard Hot Albums及びオリコンの週間ランキングで1位を獲得するなど、高い人気を確固たるものとしているLittle Glee Monster。本作は「FLAVE」から約1年ぶりとなるニューアルバムなのですが、昨年12月には5曲入りのEP「I Feel The Light」をリリース。その表題曲ではなんと、EARTH,WIND&FIREをフューチャーし、大きな話題となりました。

今回、その「I Feel The Light」も収録したフルアルバムとなったのですが、ひとつ大きな特徴としてはこの曲もそうなのですが、いままでのJ-POP路線を主軸にしながらも、徐々にファンク、ソウル、R&Bなどを取り入れた洋楽路線にシフトしつつある、ということがあげられます。EW&Fバリのファンキーな「I Feel The Light」を筆頭に、続く「Baby Baby」も軽快なファンクポップに仕上げていますし、「In Your Calling」ではゴスペルの要素も感じさせます。

その洋楽シフトが顕著なのが作家陣。軽快なポップチューン「Symphony」では「バッド・デイ〜ついてない日の応援歌」の大ヒットでおなじみのDaniel Powterが参加。「move on」「SPIN」ではアメリカのEDMミュージシャンMelanie Fontanaが参加するなど、海外の作家陣が参加しています。

ただ、ここで注目したいのが、彼女たちが今回、いきなり本格的なソウルやR&Bに挑戦している…訳ではない、という点です。基本的に同作に収録されている先行シングル「ECHO」「君に届くまで」はどちらも王道的なJ-POPソング。また、Daniel Powterの書くメロディーラインは日本人にとって親和性が強く、「Symphony」も至ってオーソドックスなポップチューンになっています。Melanie Fontanaにしても、BTSやTwiceなどのK-POP勢への楽曲提供でおなじみのミュージシャンで、かつては倖田來未に楽曲を提供した経歴もあるなど、本格的にR&Bを書くミュージシャンというよりも、ティーンズ向けのポップソングが主戦場といった作家。彼らが参加した曲にしても、おそらく洋楽を全く聴かないような日本の中高生世代にとって難なく受け入れられそうなポップソングとなっています。

おそらく本格的に洋楽へシフト、というよりも彼女たちの主なファン層である、ソウルやR&Bになじみのない中高生層に、徐々にソウルやR&Bへ親しみを持ってもらうために、少しずつ洋楽方面にシフトしている、といった印象を受けます。そういう意味ではLittle Glee Monsterの制作者側で、徐々に彼女たちのファン層の「耳」を育てていこう、という長期的な戦略すら感じます。

そして肝心のLittle Glee Monster自体も、少しずつですが成長を感じます。以前から指摘している通り、彼女たちはボーカリストとして技巧的な側面では優れているものの、表現力という点ではかなり厳しいものがありました。しかし、何作かアルバムをリリースし、また彼女たちも少しずつ年齢を重ねるにつれ、徐々にボーカリストとしての表現力がついてきたように感じます。今回のアルバムも、技巧に頼った平坦な歌い方から、徐々に感情のこもった歌い方にシフトそているようにも感じました。そういう意味でも彼女たちの成長を感じます。

思えばLittle Glee Monsterというミュージシャンは、同じ世代のファンにとっては、共に成長していくことを感じられるミュージシャンと言えるかもしれません。そして同時に、彼女たちの歌う楽曲を通じて、ファンも徐々に育っていく、そんなファンにとっては共に歩んでいくことができるミュージシャンなのではないでしょうか。おそらく意図的に、徐々に本格派路線にシフトしていく戦略と、そして徐々に成長していく彼女たちのボーカリストとしての力量を今回のアルバムで目の当たりにすることにより、そんなことを考えてしまいました。

いい意味で彼女たちはレコード会社や事務所の側からも上手い具合に大事に育てられている、そんな感も受けます。まだまだボーカリストとしては未熟な部分の多い彼女たちですが、これからの成長が実に楽しみにもなってきます。10年後の彼女たちがとても楽しみ…そう感じるオリジナルアルバムでした。

評価:★★★★

Little Glee Monster 過去の作品
Joyful Monster
juice
FLAVA
I Feel The Light


ほかに聴いたアルバム

POOL e.p./the band apart

2018年に結成20年を迎えたthe band apart。ベスト盤のリリースなどもあり、その活動に一つ、区切りをつけました。そして2019年にはじめてリリースしたのが4曲入りのEP盤。「POOL」というイメージからかどうかはわからないのですが、ちょっと「夏」を感じさせるような(リリースは10月ですが・・・)爽やかなシティポップチューン4曲が並んでいます。20周年記念のベスト盤を聴いた時、変わらないthe band apartの楽曲のクオリティの高さを再認識したのですが、今回のEP盤も、あらためて彼らの楽曲の変わらないクオリティの高さを認識させられる4曲となっていました。

評価:★★★★★

the band apart 過去の作品
Adze of penguin
shit
the Surface ep
SCENT OF AUGUST
街の14景
謎のオープンワールド
1(the band apart(naked))
Memories to Go
前へ(□□□ feat.the band apart)
2(the band apart(naked))
20years

White White/XIIX

UNISON SQUARE GARDENの斎藤宏介と、米津玄師やゆずなどのサポートベーシストとしても活躍している須藤優が結成したユニットによるデビューアルバム。基本的にはUNISON SQUARE GARDENの延長線上にあるようなポップなメロディーを主軸としたユニットですが、UNISONに比べると、メロウでポップなシティポップ寄りの楽曲が並びます。斎藤宏介の特徴的な甲高いボーカルが耳に残るため、どうしてもUNISONに似ていると感じてしまう部分はあるのですが、UNISONとは異なる方向性の挑戦も確実に感じられるユニットです。

評価:★★★★

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2020年3月30日 (月)

ストレートに心地よいギターロック

Title:Teenage Wildlife - 25 Years Of Ash
Musician:Ash

イギリスのギターロックバンド、Ashが、タイトル通り、デビュー25周年を記念してリリースしたニューアルバム。Ashといえば1994年にシングル「Jack Names the Planets」でデビュー。その時、メンバーはまだ16歳。当時、既に大人気だったパンクバンド、GREEN DAYからの前座以来を「試験があるから」という理由で断ったことも話題になりました。デビュー直後から高い人気を確保した彼らは「恐るべき子供たち」ということで話題となったのですが、デビューから25年も経ち、もうアラフォー。どちらかというと、25年も経ったのに、まだ40代前半、といった方がいいのかもしれませんが…。もっとも、25年を経てもコンスタントに活動を続けており、若くしてデビューして脚光を浴びつつ、早い段階で崩壊していくようなグループも少なくない中、途中、シャーロット・ハザレイの脱退劇がありつつもオリジナルメンバーで活動を続けているのに驚きも感じてしまいます。

Ashといえば、ひねくれた所のない、ほどよくノイジーでダイナミックなギターサウンドとポップなメロディーラインが魅力的なギターロックバンド。特にポップでわかりやすいメロディーラインが魅力的で、そのインパクトあるメロディーは「キャッチー」とすら表現できそうなくらい。今回のベスト盤ではそんな魅力的なポップチューンが満載。3枚組のアルバムで全54曲、3時間半にも及ぶ長さのアルバムながらも、最初から最後まで聴いていてワクワクしながら、一気に聴き切れてしまう、非常に心地よいアルバムになっていました。

個人的に魅力的だったのが、例えば「Arcadia」。イントロのギターから気分が高揚してくるのですが、楽曲としてどんどん盛り上がりつつ、サビに入った時に一旦、メロディーのピッチがちょっと下がるあたり、ゾクゾクするカッコよさがあります。「Girl from Mars」もポップなメロが魅力的ながらも、メロディーに重なる分厚くノイジーなギターも魅力的な楽曲。シューゲイザーからの影響も感じさせます。「Uncle Pat」もミディアムチューンでどこか切なさを感じさせるメロが魅力的なナンバー。勢いで押すようなアップテンポなナンバーだけではなく、ミディアムチューンの曲もしっかり聴かせるあたり、彼らのメロディーメイカーとしての才を感じさせます。

2001年にヒットした彼らの代表曲のひとつである「Burn Baby Burn」も疾走感あるバンドサウンドとポップでインパクトあるメロディーが魅力的。「Walking Barefoot」もポップなメロと勢いあるサウンドが魅力的。この2曲はいずれも大ヒットした2001年のアルバム「Free All Angels」からのナンバー。彼らの代表作のひとつで、私も大好きなアルバム。この頃の彼らの勢いを感じさせる名曲になっています。

その後もハイテンポでパンキッシュな「Skullfull of Sulphur」、ストリングスも入ってスケール感も覚える「Saskia」など、最後の最後まで魅力的な楽曲の連続。3時間半以上というボリュームを感じさせないのは、なによりも心地よいポップなメロディーラインが連続しているからでしょう。正直言って、彼らの楽曲はほとんどがシンプルなギターロックばかりであまりバリエーションがありません。にも関わらず最後まで飽きることなく一気に聴けるというのは、それだけ魅力的なメロディーラインを持った曲ばかりだからでしょう。

また今回のベスト盤、曲順が発売順とかではなく、おそらくアルバム全体の流れを考慮したような構成になっているのですが、最初期のナンバーと最近のナンバーを並べても、違和感がほとんどない点も驚かされます。それだけ彼らのスタイルにいい意味で変化がないということもありますし、また、この25年間、彼らの勢いがほとんど衰えていないというのも特筆すべき点でしょう。確かに「Free All Angels」期あたりの曲が一番魅力的とは思うのですが、最近の楽曲を「Buzzkill」のような現時点での最新アルバム「Island」からの曲も非常に魅力的なポップチューンに仕上がっています。また、最近の曲ですらある種の若々しさを感じさせ、例えば「Spellbound」などは2010年の作品と彼らにしてみれば、中堅になってからの比較的最近(といっても10年も前の作品ですが…)なのですが、まるで20代前半のバンドが奏でるような、若々しさを感じさせる楽曲になっています。

あらためてAshというバンドの魅力を再確認できたベスト盤。3時間半という長さにも関わらず、最初から最後まで飽きることなく、聴いていてワクワクする珠玉の時間を過ごせるようなアルバムに仕上がっていました。人気の面では確かに一時期ほどの勢いはなくなってしまったのですが、音楽の面ではまだまだその勢いは衰えていません。また、そろそろあらたな傑作をリリースしそうな予感すらします。これからの彼らの活躍も非常に楽しみです。

評価:★★★★★

ASH 過去の作品
A-Z Vol.1
A-Z Vol.2
THE BEST OF ASH
KABLAMMO!


ほかに聴いたアルバム

Sister/Puss N Boots

ノラ・ジョーンズ率いる3人組のガールズユニットによる約6年ぶりとなるニューアルバム。カントリーやブルース、フォークなどの影響を強く感じさせる、ルーツ志向の落ち着いた大人のポップミュージックが大きな魅力。基本的にはノラ・ジョーンズの音楽の延長線上にあるようなタイプの曲調ですが、3人のコーラスを上手く聴かせているあたりが、3人組のユニットならではに感じます。とりあえずノラ・ジョーンズが好きなら要チェックの1枚です。

評価:★★★★

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2020年3月29日 (日)

約28年ぶり(!)のミュージシャン本

今回は最近読んだ音楽関連の本の紹介。今回紹介するのは個人的に大ファンで、アルバムがリリースする毎に当サイトでも取り上げられている男性シンガーソングライターKANちゃんのミュージシャン本「KAN in the BOOK 他力本願独立独歩33年の軌跡」です。

1987年のデビューから33年。完全にベテランミュージシャンの域に達している彼ですが、自身のミュージシャン本はこれが2冊目。前にリリースしたのは1992年に発売したエッセイ集「ぼけつバリほり」以来で、実に約28年ぶりとなります。ちなみにこの前作「ばけつバリほり」は「愛は勝つ」が大ヒットした翌年。まだ世間では「愛は勝つ」の国民的ヒットの余韻が残っていた頃。一般的には「愛は勝つ」の一発屋的に捉えられることの少なくないKANちゃんですが、28年の月日を経て、2冊目のミュージシャン本を発売できるあたりに、非常に根強い人気を感じさせます。ちなみにオリジナルアルバムの直近作「6×9=53」はベスト10ヒットを記録しており、その根強い人気のほどを伺わせます。

本書では、そんな彼の33年間の歩みが音楽ライターの森田恭子のインタビューという形で語られています。「愛は勝つ」の誕生秘話やパリ留学時のエピソードなど、興味深い話がいろいろと登場し、KANちゃん初心者でも彼の歩みが概観的に知ることの出来るインタビューとなっています。

ただ、この本で最も読み応えがあったのが、KANに縁のある様々なミュージシャンへのインタビュー。様々なミュージシャンのファンが多い、ある種「ミュージシャンズミュージシャン」という側面もあるのですが、今回は、熱心なKANのファンとして知られるaiko、Mr.Childrenの桜井和寿という超豪華ミュージシャンへのインタビューを収録。さらに「ホスキモ」としてライブでユニットを組んでいる、スタレビの根本要、スキマスイッチの2人、そして秦基博へのインタビューも実施されています。

その中でも特に読み応えがあったのはaikoへのインタビュー。本書ではaikoとKANの対談という形式になっています。aikoが熱心なKANのファンという話はもちろん以前から知っていたのですが、この対談を読むと、aikoがここまで熱烈なKANのファンだったのか…とあらためてビックリしてしまうと同時に、KANもaikoもファンの私にとっては非常にうれしくなってしまいます。aikoはこの対談で、完全に単なる一ファンとなってしまっているのですが、KANに対する歌詞への質問は熱心なファンならではといった感じで、KANの曲の歌詞に関する貴重なインタビューも収録されており、かなり読み応えのある内容となっていました。

「ホスキモ」のメンバーに対するインタビューもKANの人となりに関する話題。いろいろな意味で癖のある人なんだなぁ、というのはなんとなくはわかっていましたが(笑)、あらためてインタビューで知ることの出来るKANちゃんの人となりは興味深く読みことが出来ました。また、ミスチル桜井のインタビューに関しても、桜井のKANへの高い評価をあらためて知ることが出来ます。ミスチルの曲「Over」がKANの曲の影響を強く受けていることは知っていましたが、あの大ヒット曲「終わりなき旅」も、KANの「MAN」と「まゆみ」を合体させたような曲だったんですね・・・。aikoといいミスチル桜井といい、KANの日本の音楽シーンに与える影響の大きさをあらためて感じてしまいました。

正直なところ、税込みで2,500円という内容からすると、若干ボリュームは薄かったような印象は否めません。KANの歩みに関するインタビューに関しても、比較的一般的なエピソードが並んでおり、もうちょっと突っ込んで欲しかったかも、と思う部分もありましたし、彼の手掛けた全曲、全アルバムの紹介くらいあってもよかったような感じもします。ただもちろんファンとしては興味深い話はたくさん載っており、彼のファンであれば読んでみて損のない1冊だと思います。インタビューによると今年はアルバムリリースも予定しているとか。かなり楽しみ!それまで、この本を読んで、彼の待望の新作を待ちわびていたいと思います。

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2020年3月28日 (土)

最高にカッコいいカバーアルバム

Title:LIVE FOR TODAY! -SHEENA LAST RECORDING & UNISSUED TRACKS-
Musician:シーナ&ザ・ロケッツ

ギタリスト鮎川誠と、彼女の妻、シーナを中心として1980年代から活躍を続けるロックバンド、シーナ&ザ・ロケッツ。2016年にシーナが61歳という若さで急逝。日本を代表する女性ロックボーカリストのあまりにも早い死は多くのロックファンに大きな衝撃を与えました。その後もシーナの遺志もあり、バンドの活動は継続していますが、オリジナルアルバムは2014年の「ROKKET RIDE」を最後にリリースが止まっていました。

しかし、そんな中リリースされたニューアルバムが本作。バンドが影響を受けたミュージシャンのカバー曲を、レコーディング時のアウトテイクやセッション、デモ音源や、既に廃盤となっているレア音源などからピックアップし1枚にまとめたのが作品になっており、ファンとしてはかなりうれしい、まさに「オリジナルアルバム」的な感覚で聴ける作品になっています。

その影響を受けたミュージシャンの選曲が、またバラエティー富んでいてユニーク。鮎川誠がかつて所属していたサンハウスの曲や、彼らと親交があったRAMONS、さらにはローリングストーンズ、KINKS、チャック・ベリーといった、シナロケのイメージから影響がわかりやすいミュージシャンから、ソロミュージシャンのBARBARA LEWIS、オノ・ヨーコ、さらにはグループサウンドのテンプターズのカバーも収録。彼らが様々なミュージシャンから影響を受けたことを伺わせます。

そんな彼らのカバーですが、これが曲によってはある意味、曲によっては原曲以上にカッコいいのでは?とすら思わせるような、シナロケ流に解釈したロックカバーが非常に素晴らしいカバーに仕上がっていました。基本的にはシーナのしゃがれ声のパンキッシュなボーカルに鮎川誠のエッジの効いたギターリフのブルージーなギターを中心としたバンドサウンドをベースとしたアレンジが中心。シーナの声は、完全につぶれた独特のボーカルで癖があるものながらも、鮎川誠のギターと、まさにパズルのピースがきっちりと重なるかのように、この2人ではないと作り出せないようなボーカルとギターの見事なマッチングを聴かせてくれています。今回のカバーでは、そんなシーナのボーカルと鮎川誠のギターが実に上手く生かされているカバーばかりが並んでいました。

今回のアルバムで個人的に特に印象的だったのがKINKSの代表曲「You Really Got Me」のカバー。へヴィーながらも軽快なギターリフに、シーナのシャウトがピッタリとマッチ。原曲の持つカッコよさをさらに増幅させたような最高にカッコいいカバーに仕上がっています。また、THE TROGGSの「WILD THING」のカバー音源も印象的。2000年のライジングサンのステージを収録したカセット音源だそうで、鮎川誠自ら「シナロケがライブでどんだけ大きな音を響かせているか皆に聴いて欲しかったのと、それを超えて突き抜けるシーナの声とシャウト、さらに会場のファンの怒涛の声援がビューティフルに一つに合わさって記録されているのを聴いて欲しくて選んだ」と言っています。実際、音源はカセット音源のためかなり状況は悪いのですが、それ故にシナロケのライブの迫力と魅力がリアルに伝わってくるようなライブ音源に。カバーという以上にシナロケのライブの記録として貴重かつ聴きごたえのある1曲となっています。

さらにラストを締めくくる「MY BONNIE」も印象的。特に出だしは静かなギターをバックにシーナが哀しく歌い上げており、いつものしゃがれ声でシャウトを振りかざす彼女とは異なる、非常に物悲しく表現力豊かなボーカルが印象に残ります。一方、途中からバンドサウンドが入ってくるといつも通りのシャウトに。この曲以外でも彼女のソロ曲のカバー「ボントンルーレ」でも軽快でポップな歌声を聴かせてくれており、シーナのボーカリストとしての豊かな表現力も感じることが出来ます。

そしてなにより今回のアルバムの目玉のひとつはシーナのラストレコーディングで収録された7曲がおさめられている点。特にサンハウスのカバーで、シナロケのライブの定番曲でもあった「レモンティー」は2014年4月10日に行われた、シーナの生前最後のレコーディング音源。鮎川誠は「これが最後になるとは思ってもいなかった」と語っていますが、本当にこれが最後とは到底思えない迫力あるボーカルが魅力的。パンキッシュでシャウトに聴かせつつ、一方では時折セクシーさも垣間見せる、ライブなどで歌い慣れた曲なだけに、シーナのボーカリストとしての魅力が存分に発揮された録音となっています。

あらためてシーナ&ザ・ロケットというバンドが実にカッコいいバンドだったんだなぁ、ということを実感できる素晴らしいカバーアルバム。カバーとはいえ、どの曲もシナロケ色にしっかりと塗られており、彼らのオリジナルアルバムといっても過言ではない傑作に仕上がっています。それだけにシーナのあまりにも早い最期が、あらためて惜しまれます。ただシナロケ自体はいまでも活動を続けているだけに、これからも鮎川誠はカッコいいギターを弾き続けるんでしょうね。一度、ライブも見てみたいなぁ。

評価:★★★★★

シーナ&ザ・ロケッツ 過去の作品
ゴールデン☆ベスト シーナ&ロケッツ EARLY ROKKETS 40+1
ゴールデン☆ベスト  シーナ&ロケッツ VICTOR ROKKETS 40+1


ほかに聴いたアルバム

未熟もの/中村中

前作「るつぼ」は社会の中で疎外された人たちの心境をテーマとしたアルバムになっていました。本作はいわばその続編的な内容となっているアルバム。今回は前作でテーマとした社会の問題から日常にひそむ問題に視点をシフトしつつ、前作同様、弱者からの視点で曲を作り上げたということだそうです。そのため、今回のアルバムも社会の片隅で、どこか疎外感を覚えているような人たちをテーマにした歌詞が印象的。ただ、ちょっと抽象的な表現が多く、インパクトという面では前作より薄かったのがちょっと残念。もうちょっと具体的な物語性のある歌詞の方がテーマにもしっくり来たのでは?ただ、やはり悲しい歌詞を中性的な力強いボーカルで聴かせる彼女の歌は非常に魅力的。もっともっと売れてもいいシンガーだと思うのですが・・・。

評価:★★★★

中村中 過去の作品
私を抱いて下さい
あしたは晴れますように
少年少女
若気の至り
二番煎じ

聞こえる
世界のみかた
去年も、今年も、来年も、
ベター・ハーフ
るつぼ

児童カルテ/神聖かまってちゃん

なんと、メンバーのちばぎんが、このアルバムとその後のツアーを最後に脱退を発表。オリジナルメンバー4人では最後となってしまったかまってちゃんの新作。社会の片隅で疎外された人々を描く、という意味ではまさに彼らも中村中と同じテーマで歌い続けています。特に彼らに関しては、「るるちゃんの自殺配信」「ゲーム実況してる女の子」など、より現代的。かつ、明確な主人公が登場してくるのが特徴的になっています。以前のようにエキセントリックな楽曲は少なくなったのですが、一方ではいい意味で安定感も出てきて、彼らの主張もはっきりしてきた印象が。ただ、今回のアルバムではここ何作の中では少々インパクトが薄めで、印象が薄かった印象もあります。今後はメンバー3人で活動を続けて行く彼ら。もっとも、彼らの主な方向性を決めているの子は健在なだけに、方向性はこれからも大きくは変わらないとは思うのですが・・・これからの活動に注目したいところです。

評価:★★★★

神聖かまってちゃん 過去の作品
友だちを殺してまで。
つまんね
みんな死ね

8月32日へ
楽しいね
英雄syndrome
ベストかまってちゃん
夏.インストール
幼さを入院させて
ツン×デレ

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2020年3月27日 (金)

AOR風のメロディーラインが大きな魅力に

Title:The Slow Rush
Musician:Tame Impala

オーストラリアのミュージシャン、ケヴィン・パーカーによるソロプロジェクト、Tame Impala。アルバムをリリースする毎に高い評価を得て、大きな評判を呼ぶ彼の作品ですが、本作は前作「Currents」から約5年というインターバルを経てリリースされたアルバムで、待ちに待った、待望のアルバムと言っていい作品になっています。

Tame Impalaというと、幻想的なサイケサウンドに人なつっこいメロディーラインが大きな魅力。ただ、その中でも「LONERISM」は60年代70年代あたりを彷彿とさせるようなギターサウンドを取り入れた楽曲が大きな特徴となっていたのですが、前作「Currents」では歌により主軸を置き、80年代的な作風となったアルバムにシフトしていました。そして今回のアルバムに関して言うと、前作「Currents」からの流れを感じさせる、80年代的な要素を感じさせつつ、歌を聴かせるアルバムに仕上がっていました。

アルバムの冒頭を飾るのは「One More Year」。オープニング的な要素の強い作品なのですが、ドリーミーでサイケなサウンドの中で、メロディアスな歌が流れる作品になっており、アルバム全体の流れを示唆するような楽曲からスタートしています。そしてそれに続く「Instant Destiny」はいきなりケヴィンのファルセットボイスからスタート。メロディーもサウンドも、80年代のAORからの影響が顕著な作品になっており、懐かしさすら感じる作品になっています。そして続く「Borderline」も同じく80年代AOR風のナンバー。哀愁感たっぷりの泣きメロも印象的な美しい歌を聴かせてくれる楽曲に仕上がっています。

このドリーミーなエレクトロサウンドに哀愁感を帯びたAOR風のメロディーラインという傾向は今回のアルバム全体に続き、続く「Posthumous Forgiveness」は、さらにこの哀愁感を推し進めた悲しい雰囲気の楽曲。特にアルバムに流れるギターのサウンドは日本人にとっては歌謡曲的にすら聴こえるのではないでしょうか。また、楽曲タイトルからして哀愁味を覚える「Lost In Yesterday」も同じく悲しい雰囲気のメロディーラインが大きな印象を受ける楽曲に仕上がっています。

そんな日本人にとってもどこか琴線に触れるようなAOR風のエレクトロチューンが続いていくのですが、一方終盤では「Is It True」でリズミカルなダンスチューンを聴かせるような展開も。さらに「It Might Be Time」ではヘヴィーで強いリズムが印象的なエレクトロチューンと続き、「Glimmer」はテンポのよい四つ打ちのリズムが印象的なエレクトロダンスチューンに。前半から中盤にかけてはしっかりと歌を聴かせつつ、最後はライブで盛り上がりそうなダンスチューンで締めくくる、このアルバム構成も見事。そして最後は、オープニングと対になるサイケなエレクトロチューン「One More Hour」で締めくくり。全12曲57分。アルバムの長さもちょうど気持ちよく終われる長さとなっています。

アルバム全体の構成も含めて、実に見事と言える今回のアルバム。終始流れるドリーミーでサイケなサウンドも印象的で、軽くトリップ感を味わえますし、そんな中で流れてくるAORなメロディーラインも、どこか懐かしさを感じつつ、胸にキュンと来るような強い印象を与えるインパクトあるものとなっていました。既にいろいろなところで本作も絶賛を受けているのですが、確かにこれは年間ベストクラスの傑作と言って間違いないでしょう。2020年を代表する1枚となりそうです。

評価:★★★★★

Tame Impala 過去の作品
LONERISM
Currents

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2020年3月26日 (木)

ベスト5は新譜が並ぶ

今週のHot Albums

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

比較的、ロングヒット盤が目立っていたアルバムチャートですが、今週はベスト5に新譜が並びました。

そんな中で初登場1位を獲得したのはジャニーズ系。ジャニーズWEST「W trouble」が1位獲得です。CD販売数及びPCによるCD読取数共に1位を獲得し、総合順位も見事1位獲得となりました。オリコン週間アルバムランキングでは初動売上20万7千枚で1位獲得。前作「WESTV!」の9万6千枚(2位)からアップしています。

続く2位は三代目 J Soul Brothers from EXILE TRIBE「RAISE THE FLAG」がランクイン。CD販売数2位、ダウンロード数6位、PCによるCD読取数4位。初回盤はCDにDVD(Blu-ray)が2枚もつくという豪華盤。もうDVDがメインでは?ただ、もうここまでしないとCDが売れないんでしょうね…。オリコンでは初動売上13万6千枚で2位初登場。前作「FUTURE」の18万1千枚(1位)からダウン。

3位初登場は韓国の男性アイドルグループStray Kids「SKZ2020」。韓国で放送された同タイトルのテレビ番組からデビューしたアイドルグループで本作が日本でのデビュー作となります。CD販売数3位でそのほかは圏外。オリコンでは初動売上3万1千枚で1位初登場です。

続いて4位以下の初登場盤です。まず4位に東京スカパラダイスオーケストラ「TOKYO SKA TREASURES 〜ベスト・オブ・東京スカパラダイスオーケストラ〜」が入ってきました。CD販売数4位、ダウンロード数5位、PCによるCD読取数24位。2015年にベストアルバム「THE LAST」をリリースしたばかりなのですが、「THE LAST」は歌モノベストだったので、本格的なベスト盤は2007年の「BEST OF TOKYO SKA 1998-2007」以来。ただし、本作は1998年のavex移籍後の曲しか収録されていないようなのが非常に残念。あと5年くらいしたら、また初期音源を含むオールタイムベストを売る戦略なんだろうなぁ。オリコンでは初動売上2万枚で4位初登場。オリジナルアルバムの前作「ツギハギカラフル」の9千枚(5位)からアップしています。

5位には今週、Hot100に「あなたがいることで」がランクインしてきた女性シンガーソングライターUru「オリオンブルー」が初登場。CD販売数5位、ダウンロード数2位、PCによるCD読取数10位。オリコンでは初動売上1万7千枚で5位初登場。前作「モノクローム」の6千枚(18位)からアップしています。

8位初登場は大滝詠一「Happy Ending」。CD販売数6位、PCによるCD読取数30位。2013年に65歳で急逝した日本ポップス史を代表するシンガーソングライター。「全曲新作のオリジナルアルバム」という触れ込みなのですが、実際はセッションのアウトテイクを集めた、いわばデモ音源集。2016年にもセルフカバー音源などを集めた「オリジナルアルバム」「DEBUT AGAIN」がリリースされていますが、こちらもクオリティーにうるさかった彼の生前には絶対に発表されなかっただろうなぁ、と思われる完全な追悼商法。オリコンでは初動売上1万6千枚で6位初登場。その前作「DEBUT AGAIN」の2万枚(3位)よりダウン。直近作のライブ盤「NIAGARA CONCERT '83」(5位)からは横バイ。

9位にはにじさんじ「SMASH The PAINT!!」が初登場。CD販売数7位、PCによるCD読取数14位。人気のバーシャルYou Tuberで、2019年の「ネット流行語100」年間大賞にも選ばれたそうです。オリコンでは初動売上1万5千枚で7位初登場。前作「にじさんじ Music MIX UP!!」の9千枚(14位)からアップしています。

初登場組は以上。一方、ロングヒット組ではOfficial髭男dism「Traveler」は4位から6位に再びダウン。CD販売数は10位となったもののダウンロード数及びPCによるCD読取数は3位につけており、まだまだ強さを感じます。King Gnu「CEREMONY」は3位から7位にダウン。CD販売数は8位から16位までダウン。ダウンロード数も2位から4位、PCによるCD読取数も1位から2位にダウンしています。

今週のHot Albumsは以上。チャート評はまた来週の水曜日に!

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2020年3月25日 (水)

AKB1位の中、目立つロングヒット

今週のHot100

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

まず今週1位はAKB48の新曲が獲得。

今週1位はAKB48「失恋、ありがとう」が獲得。CD販売数1位、ダウンロード数75位、ラジオオンエア数18位、PCによるCD読取数6位、Twitterつぶやき数20位。オリコン週間シングルランキングでは初動売上116万6千枚を獲得するなど、初動ミリオンを続けているものの、最近のヒゲダンやKing Gnuのロングヒットを前に、すっかり音楽的に話題にのぼることがなくなってしまいましたね。前作「サステナブル」の初動138万枚(1位)からダウン。

そして相変わらず強いのがロングヒット勢。今週も、Official髭男dismは2位「I LOVE...」3位「Pretender」と、先週からそれぞれワンランクダウンしているものの、ベスト3に2曲同時ランクイン。特に「I LOVE...」はダウンロード数、ストリーミング数、PCによるCD読取数、You Tube再生回数で軒並み1位を獲得。「Pretender」をしのぐ勢いを見せています。「Pretender」もダウンロード数3位、ストリーミング数2位、You Tube再生回数2位と先週から同順位をキープ。こちらもまだまだロングヒットが続いています。

また「宿命」7位、「イエスタデイ」8位と、こちらも先週から同順位をキープ。今週も4曲同時ランクインという驚異的な人気ぶりを見せています。

続いて4位以下の初登場曲ですが、まず6位にジャニーズ系男性アイドルA.B.C.-Z「チーとタイム」がランクイン。CD販売数2位、PCによるCD読取数5位ながらも、その他はすべて圏外となり、総合順位はこの位置に。オリコンでは初動売上3万9千枚で2位初登場。前作「DAN DAN Dance!!」の4万4千枚(2位)よりダウンしています。

9位には女性シンガーソングライターUru「あなたがいることで」が先週の14位からランクアップ。TBS系ドラマ「テセウスの船」主題歌。配信オンリーのシングルで、配信開始から7週目にして初のベスト10ヒット。ドラマ最終回に向けてYou Tube再生回数が21位から15位、Twitterつぶやき数が圏外から58位にアップと徐々に話題になってきた影響もあり、配信オンリーながらも見事ベスト10入りを果たしました。

10位にもTHE YELLOW MONKEYの配信限定シングル「未来はみないで」が先週の13位からランクアップしベスト10入り。ダウンロード数で見事2位を獲得。ほかはラジオオンエア数が19位でその他は圏外となっているのですが、総合順位では10位に食い込みました。

新曲は以上ですが、今週はほかにもロングヒット曲が相変わらず目立っています。4位LiSA「紅蓮華」が先週からワンランクダウンながらも、ロングヒットを続けています。ダウンロード数は2位から4位にダウンしたものの、ストリーミング数は4位をキープ。まだまだロングヒットは続きそうです。

さらにKing Gnu「白日」は4位から5位にダウンながらもベスト5をキープ。ストリーミング数は先週から変わらず3位。You Tube再生回数も先週と同じく3位をキープ。こちらもまだまだロングヒットが続きそう。

今週のHot100は以上。明日はHot Albums!

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2020年3月24日 (火)

リズムを楽しむ

Title:Workaround
Musician:Beatrice Dillion

イギリスはロンドンを拠点に活動を続ける女性DJ/プロデューサーで自らもミュージシャンとして活躍を続けるBeatrice Dillion。そんな彼女のデビューアルバムがリリースされました。もともと2017年から2019年にかけてロンドン、ベルリン、ニューヨークで録音を続けてきた作品を収録さいているそうで、まさに満を持してリリースしたアルバムと言えるのかもしれません。

・・・といっても今回のアルバムで私自身、はじめて彼女の名前も知りましたし、音を聴くのも本作がもちろんはじめて。どんなアルバムなのか期待しつつ聴いてみたのですが・・・簡単に言ってしまうと、リズムがとても気持ちよく響くアルバムになっていました。

アルバムは全14曲なのですが、うち3曲を除く、ほかすべての曲のタイトルが「Workaround+数字」(1曲のみ「Workaround Bass」となっていますが)という構成。41分という比較的短めの構成なのですが、楽曲は4分から5分程度の曲がメインながらも、1分程度であっという間に終わる曲やわずか12秒で終わる曲も収録されています。

ただ、楽曲のタイトルが一緒なのは、似たような組曲的な作品が並んでいるから、ではなく、おそらく楽曲の匿名性を重視したのでしょう。楽曲的にはどの曲も彼女の異なるアイディアがつめこまれていたバラエティー富んだ楽曲が並んでいました。そんなバラエティー富んだ作風ながらもどの曲もリズムを聴かせるような作品になっているのが共通項。また、比較的音を絞ったシンプルで、かつ空間を聴かせるような作風になっていたのも、どの楽曲に共通する点でした。

また、どこかポップで優しい雰囲気を感じさせるのも大きな魅力で、例えば1曲目「Workaround One」ではタブラの丸みを帯びた音色がアフロな雰囲気と共に優しい雰囲気を醸し出しています。続く「Workaround Two」では哀愁味を帯びたメロディーラインが登場。ポップなメロディーが流れてくる楽曲になっています。

ラテンギターが流れる「Workaround Seven」が顕著なように、アフロカリビアンからの影響を強く受けているのも特徴的。ただ、楽曲的にはその一言に留まらず、「Workaround Five」では静寂の中、よりメタリックなサウンドを静かに聴かせるような作品になっていますし、「Workaround Eight」「Workaround Nine」ではむしろエレクトロニカの様相が強いサウンドを楽しむことが出来ます。

ひとつのアルバムの中で様々なビートを楽しめるバラエティー富んだ作品ながらも、全体的には一体感もあり、独特なリズム感が強い印象に残る作品に仕上がっていました。どこかポップで優しさを感じされるのも、女性ミュージシャンならでは・・・・・というと、ちょっと偏見でしょうか?ただ、いい意味でポピュラリティーのあるアルバムに仕上がっていたと思います。これからの活躍が楽しみになってくる傑作でした。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

We're New Again - A Reimagining by Makaya McCraven/Gil Scott-Heron,Makaya McCraven

今回紹介するGil Scott-Heronは黒人吟遊詩人としてその名を知られ、主に詩や小説の分野で活躍。その後、自らの詩をのせた音楽を発表し、ミュージシャンとしても活躍。特に、そのポエトリーリーディングのスタイルはラップの始祖の一人とみなされるほどでした。本作は、そんな彼の遺作「I'm Here Now」を新進気鋭のジャズ・ドラマー、Makaya McCravenが再構築したアルバム。Gil Scott-Heronの渋さもあり、どこかリズムにのっているかのようなポエトリーリーディングに、ファンキーでグルーヴィーなサウンドをジャジーにアレンジ。全体的に非常に「黒い」雰囲気が漂う非常に渋く、かつカッコいいアルバムに仕上がっています。Gil Scott-Heronの本職は詩人であり、歌詞が売り。その点は残念ながら直接聴き取れないのが残念なのですが・・・その分、純粋にサウンドを楽しめるという点はプラス、かも。

評価:★★★★★

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2020年3月23日 (月)

約30年のブランクを感じさせない傑作

Title:MasterBee
Musician:BARBEE BOYS

主に1980年代に活躍。男女ツインボーカルといまみちともたかの個性的なギタープレイを中心としたバンドサウンドが大きな評判を呼び人気バンドとなりました。その後、1992年に惜しまれつつ解散しました。しかしその後も2003年のエピックレコード25周年記念イベント「LIVE EPIC25」で再結成したのを機に、断続的に「再結成」を繰り返しました。そして昨年、ローソンHMV限定でのリリースながらもアルバム「PlanBee」をリリース。さらにこのたびリリースしたのが配信限定でのアルバムである本作でした。

まずBARBEE BOYSの大きな特徴のひとつがKONTAと杏子のツインボーカルでしょう。どちらも一度歌声を聴けば忘れられないような個性的なボーカリストなのですが、男女の微妙な駆け引きをこの2人のボーカルがそのまま「曲」として展開。時には大人のエロチシズムさも醸し出すスリリングな男女模様をそのまま歌にするというスタイルは非常に独特。男女ツインボーカルを擁するグループは他にも少なくありませんが、ここまで男女ツインボーカルであることを生かしたグループはBARBEE BOYSを除いて他にいないのではないでしょうか。

また、彼らのバンドサウンドも非常に独特で個性的。いまみちともたかのエッジの効いたファンキーさも感じるギターサウンドを中心として、KONTAの奏でるサックスの音色も印象的。ニューウェーヴからの影響を受けつつ、80年代に活躍した他のどのバンドとも異なる独特のバンドサウンドを構築。このサウンドについても完全に唯一無二。圧倒的な個性を放っています。

「PlanBee」の段階で実に29年8ヶ月ぶり(!)のアルバムとなりました。この配信限定となる本作は「PlanBee」収録曲がまるごと収録されているのですが、30年近いインターバルを経ながらも、彼らの魅力は全く変わっていません。まずアルバムの1曲目「ぼくらのバックナンバー」の最初に鳴り響く、いまみちともたかのエッジの効いたギター、さらにはその後に入ってくるKONTAのサックスの音色で、まずはうれしくなってくるのではないでしょうか。さらにその後繰り広げられるKONTAと杏子の絡みも30年前と全く変わりません。続く「無敵のヴァレリー」も同じくメンバー全員、息の合った演奏を聴かせてくれます。

さらに「CRAZY BLUE」は怪しげでエロティシズムを感じる男女ボーカルのやり取りが、まさにBARBEE BOYSらしい感じに!「あいさつはいつでも」「翔んでみせろ」は昔のバービーのナンバーのカバーなのですが、いまでも全く衰えを感じさせないばかりか、サウンドはより迫力を増した感すらあります。さらに「まかせてTonight」はもともとファンの間では知られていたナンバーだったそうですが、ここでの音源化はやはりファンにとってはうれしい限りでしょう。こちらもKONTAと杏子のちょっとエロチックな駆け引きを感じさせる歌詞がBARBEE BOYSらしく、最高にドキドキして、カッコイイ楽曲に仕上がっています。

サウンドに関しても、もちろん彼ららしい個性は健在。ただ、ニューウェーヴからの影響が強かったオリジナルと比べると、バンドサウンドにより重厚さが増し、よりロックな雰囲気が強くなったように感じます。特にヘヴィーでグルーヴ感の増したギターとドラムスのサウンドが大きな魅力。いまみちともたかのギターのファンキーさがより強くなっていたようにも感じました。

久々のアルバムながらも、30年近いブランクを全く感じさせないアルバム。新曲を含めてBARBEE BOYS健在を感じさせる傑作アルバムになっていました。メンバー全員、アラ還世代にも関わらず、それを感じさせない現役感と色っぽさも感じさせます。今回は8曲のうち新曲5曲というアルバムだったのですが、この勢いならそのまま新曲オンリーのフルアルバムも行けるのでは?また、彼らの解散から30年近く経た今でも、BARBEE BOYSのフォロワーたりえるバンドが登場しておらず、それだけ彼らが唯一無二の存在であることをあらためて感じさせる強烈な個性を感じました。今後はこのまま活動を再開するのか?それとも??とりあえずリアルタイムに彼らを知らない世代でも(…というか、私もラストアルバムをギリギリ中学生時代に聴いただけなのですが)全8曲30分程度の長さですし、是非とも一度聴いてほしい傑作です。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

fractal/sleepy.ab

2014年から事実上の活動休止状態だった北海道出身のバンド、sleepy.abがこのほど再始動。実に7年ぶりとなるニューアルバムをリリースしてきました。前作までと同様、エレクトロサウンドとバンドサウンドを融合させたドリーミーでファンタジックな楽曲が魅力的。サイケロックやシューゲイザーからの影響も大きな魅力なのですが、正直、ちょっと似たような感じの曲が多くインパクトも薄め。久々のアルバムとはいえ、全71分という長さはちょっと長かったような…。魅力的なバンドなのは間違いないのですが。

評価:★★★★

sleepy.ab 過去の作品
paratroop
Mother Goose
neuron

ハリネズミズム/キュウソネコカミ

全7曲26分という短さのミニアルバム。疾走感あるパンクロックというキュウソネコカミのスタイルはいままでと全く変わらず。楽曲のバリエーションはあまりありませんし、良くも悪くもいつも通りといった感じ。一方ではシンセを用いた勢いあるバンドサウンドは相変わらずアゲアゲになるし、なによりも楽曲を聴いて一発でキュウソネコカミの曲だとわかる個性はやはり彼らの大きな魅力。26分という短さがさらに短く感じられる、実に彼ららしいミニアルバムでした。

評価:★★★★

キュウソネコカミ 過去の作品
チェンジ ザ ワールド
ハッピーポンコツランド
人生はまだまだ続く
キュウソネコカミ -THE LIVE-DMCC REAL ONEMAN TOUR 2016/2017 ボロボロ バキバキ クルットゥー
にゅ~うぇいぶ
ギリ平成

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2020年3月22日 (日)

良し悪しの差が激しい・・・

Title:PERFECT SEAMO
Musician:SEAMO

間違いなく名古屋を代表するHIP HOPミュージシャン、SEAMO。2006年には「マタアイマショウ」「ルパン・ザ・ファイヤー」のヒットで一躍人気ミュージシャンの仲間入りを果たし、さらにはその年の紅白歌合戦にも出場しています。そんな彼のSEAMOとしてのデビュー15周年を記念してリリースされたのが今回のベストアルバム。ベスト盤としては2009年の「Best of SEAMO」以来となるのですが、彼の15年の歩みを網羅した2枚組のベスト盤となっています。

今回のベスト盤で大きな特徴となっているのは楽曲の順番がリリース順などになっている訳ではなく、似たタイプの曲が並んでおり、アルバム全体の流れを重視しているという点。最初は大ヒットした「ルパン・ザ・ファイヤー」からスタート。「ON&恩」「Fly Away」とアップテンポなナンバーが続きます。その後はミディアムチューンにシフトした後に、「不景気なんてぶっとばせ!!」「天狗~祭りのテーマ~」と再び痛快でアップテンポなナンバーに。さらにDisc1の最後は「マタアイマショウ」としんみりナンバーで締めくくり、そのままDisc2の「関白」とつながります。さらにDisc2の最後は「ONE LIFE」「Continue」とクラシックナンバーをサンプリングした曲で締めくくります。

そんな感じでオリジナルアルバム感覚でも楽しめる今回のベストアルバムなのですが、SEAMOの過去の代表曲を聴いて強く思うのは、彼は楽曲によって出来不出来の差が激しいなぁ、という点でした。基本的にアップテンポなナンバーについてはアゲアゲで痛快でよく出来たナンバーが多く収録されています。「ルパン三世」のテーマ曲をうまくサンプリングした大ヒット曲「ルパン・ザ・ファイヤー」などは典型的ですし(だからこそヒットしたのでしょう)、「天狗~祭りのテーマ~」のようなアップテンポなナンバーについては聴いていて非常に楽しいし、ワクワクするような楽曲が並んでいます。

しかし一方で楽曲によっては、かなり平凡でつまらない、と感じてしまう曲も少なくありません。特にミディアムチューンのナンバー。「マタアイマショウ」は、今となってはよくありふれた感があるのですが、ただこういうスタイルはむしろこの曲のヒットで広まった感があるので、当時としては非常によく出来た楽曲(というか、今でもいい曲だとは思いますが)とは思います。ただ、「リアルありがとう」のような、悪い意味でいかにも流行りのJ-POP的な「前向きな感謝ソング」が目立ちます。

こういう曲に関して概して言ってしまうと、全体的に「ベタベタ」というのが大きな特徴のように感じます。例えば「ROCK THIS WAY」にしても、ヘヴィーでロッキンなトラックがカッコいいので個人的には嫌いではないのですが、ただ、曲のタイトルといい、それに対してよくありがちなギターリフのトラックを入れてくるあたりから言って、非常にベタ。また、アルバムの最後に収録されている「ONE LIFE」「Continue」にしても、耳なじみあるクラシックのフレーズをサンプリングしているため、インパクトはあるのですが、クラシックのフレーズの強度に楽曲が負けてしまっており、大味に感じてしまいます。この曲に限らず、SEAMOの「ベタ」な路線が、全体的に悪い意味での曲に大味感を与えているように感じました。

逆にアップテンポなアゲアゲのナンバーに関しては、この「ベタ」さがプラスに作用しているように感じます。特に「天狗~祭りのテーマ~」のような下ネタが入ったようなナンバーは、「ベタ」な故にいやらしさよりユーモラスな面が前に出ているようにも感じました。また、全体的にいかにも狙ったような売れ線路線についてはいまひとつ、つまらなさを感じる反面、彼が自由に楽しんでいるような曲に関しては、SEAMOの良さがより前面に出ているようにも感じました。

正直、一時期に比べて売上の面では最近では落ち込んでしまった彼ですが、変に売れることを狙うよりも彼がやりたいように、自由に曲作りをした方が面白い曲が生まれるような気がするんですけどね。あと、今回、「PERFECT SEAMO」と名乗るのならば、シーモネーター時代の曲も収録してほしかったな。やはり名古屋を代表するラッパーということでこれからも頑張ってほしいのですが・・・もっとSEAMOの良さが生きた曲をたくさん聴きたいです!

評価:★★★★

SEAMO 過去の作品
Round About
Stock Delivery
SCRAP&BUILD
Best of SEAMO
5WOMEN
MESSENGER
ONE LIFE
コラボ伝説

REVOLUTION
TO THE FUTURE
LOVE SONG COLLECTION

THE SAME AS YOU(SEAMO&AZU)
ON&恩&音
続・ON&恩&音

Moshi Moseamo?
Glory
Wave My Flag


ほかに聴いたアルバム

失恋スクラップ/コレサワ

女性シンガーソングライターコレサワによる失恋をテーマとした7曲入りのミニアルバム。シンプルなギターロックをメインとしつつ、女性の心境を素直に歌に読み込んだ作品が並びます。サウンドについても歌詞についても飛び道具のようなインパクトあるものはないのですが、比較的シンプルな内容であるがゆえに、誠実さも感じさせるポップソングが並んでいる印象も。

評価:★★★★

コレサワ 過去の作品
コレでしょ

SHISHAMO 6/SHISHAMO

ベスト盤挟んで約1年7ヶ月ぶりとなるニューアルバム。正統派のガールズロックバンドとして確かな歩みを進める彼女たち。女の子の本音をユニークな視点から少々強烈に描いた「忘れてやるもんか」や可愛らしいラブソングの「フェイバリットボーイ」など、以前よりも歌詞のインパクトも増した印象が。楽曲的には「君の隣にいたいから」のような、J-POPの本流を行くようなインパクトあるポップスも書いてくる一方、全体的にはバンドとしての力量も感じるオルタナ系のギターロックがメイン。派手さはないものの、しっかりとロックリスナーの壺をついてくる、ある種の「誠実さ」を感じさせるアルバム。いい意味で安定感が増してきた感のある1枚でした。

評価:★★★★★

SHISHAMO 過去の作品
SHISHAMO 3
SHISHAMO 4
SHISHAMO 5
SHISHAMO BEST

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2020年3月21日 (土)

真面目な電気グルーヴ

本日は最近読んだ音楽関連の書籍に関する紹介。今回は、電気グルーヴが機材専門誌「Sound&Recording Magazine」で受けたインタビューを中心にまとめたムック誌「電気グルーヴのSound & Recording 〜PRODUCTION INTERVIEWS 1992-2019」です。

電気グルーヴというと、一般誌などでのインタビューでは人を食ったような発言などでユーモラスなものが多い印象ですが、この「Sound&Recording Magazine」ではうってかわって、そのようなユーモラスな発言は皆無。機材専門誌ということもあり、あくまでも使用した機材や録音方法などの話がメイン。そのため、初期から今に至るまで、一般的な彼らのイメージとは異なる、音楽に対して非常に真摯な、真面目な電気グルーヴの姿を読むことが出来ます。

本誌では、基本的にアルバム毎に順を追ってインタビューを掲載。アルバムによっては当時、インタビューを受けていない作品もあったため、そのようなアルバムも今回あらためてインタビューを行っています。その上で最後には「30年の音楽活動を振り返って」という最新の総括的なインタビューが行われている構成となっています。

話としては比較的専門的な話がメイン。私はといえば、シーケンサーやリズムマシーンとかがどのようなものか・・・という程度しか知らないずぶの素人。それだけにインタビューを読んでもおもしろくないのではないか、と懸念していたのですが、しかしとんでもない、読んでいて非常に興味深い内容になっていって、一気に読み進むことが出来ました。確かに、登場する機材などはほとんど知らないのですが、アルバム毎にそれらの機材をどのように使っていったか、という話は機材に詳しくなくてもとても興味深く読むことが出来ます。

このような機材や録音方法の話は他の音専誌ではなかなか読むことが出来ませんし、また登場する機材も写真で紹介されており、詳しく知らないとはいえ、写真をながめるだけでワクワクしてしまいます。石野卓球のスタジオの話もいままで詳しく知りませんでしたし、「Takkyu Studio」の写真が載っているのもうれしい限り。また、初期の彼らは様々な機材をうれしそうに作品の中で使い、一種の「機材オタク」みたいな感もあったのですが、年齢を経るにつれ、機材の進歩もあるのですが、徐々に最低限の機材に絞っていっている感じも、彼らがミュージシャンとして熟練されていく感もあり、おもしろさを感じます。特に「TROPICAL LOVE」はなんと、私の手元のiphoneにもインストールされているAPPLE GarageBandでほとんど作成されたというエピソードには、まさに「弘法、筆を選ばず」という言葉が浮かんできました。

さて、そんな興味深いインタビュー集ですが、あえてこの時期に発売される、という点も今回注目すべき点でしょう。ご存じの通り、昨年、ピエール瀧が覚せい剤所持で逮捕。現在もまだ、電気グルーヴの音源は発売停止の状態となっており、音楽活動も止まったままとなっています。そのような中であえて電気グルーヴの本を発売するというあたりに、これは、以前「電気グルーヴのメロン牧場ー死神は花嫁<6>」の感想でも書いたのですが、レコード会社のような安易な販売停止処分という処置を取らない、表現・言論の自由に対する出版業界の矜持を感じます。

今回、なんと本の中で使用されているCDのジャケットが写真ではなくイラストが使用されています。これはおそらく、CDジャケットに対して権利を有するソニーレコードが、ジャケット写真の使用を認めなかったためでしょう。出版社とは真逆の、レコード会社のあまりのケツの穴の小ささを感じさせる、情けない事例になってしまいました。

ちなみにアルバム「30」のインタビューの時に、インタビュアーが30年、活動を続ける秘訣を聴いているのですが、それに対するピエール瀧の回答として「オマエの卓球を探せ!そして仲良くやれ!以上。」(p103)と回答しているのですが、この回答が例の事件以降も有効であり、いままで以上に重みを増している点に感慨深く思ってしまいます。また、「30年の音楽活動を振り返って」ではピエール瀧ももちろんインタビューに参加。彼の最新の写真も収録されており、なんだかんだいっても彼の血色のよい穏やかな表情がうつった写真にうれしくなってしまいます。

そのインタビューでは「30周年の活動期間が短かったので『31』というアルバムを出そうと思っています。」(p109)なんていうとてもうれしい発言も。さらに今後の活動を聴かれ、まずは石野卓球が「とりあえず、サンレコのこの本と『メロン牧場』(ロッキング・オン)っていう出版業界のサポートで再始動できたので感謝しています。」(p111)と礼を述べているあたりに、なにげに彼の誠実な人柄もうかがえます。この2人は本当に人の食った発言をしつつも、音楽に対しては至って真摯かつ真面目な発言ばかりなんですよね。そういう意味でも彼らの人柄も感じられるインタビュー集。ファンなら必読です!

そういえば、電気グルーヴで思い出したのですが、先日、覚せい剤保持容疑で逮捕されて先日起訴された槇原敬之ですが、今に至ってもCDは販売停止になっておらず、配信も継続しています。おそらく彼は自身のレーベルを持っている影響なんでしょう。もともと覚せい剤逮捕でCD回収という悪弊が恒例になったのは、最初の槇原敬之逮捕に伴うCD回収がきっかけという説があります。もし、この状態が続けば、皮肉なことですが槇原敬之の2度目の逮捕が彼が最初につくった悪弊がなくなることになりそう。槇原敬之の逮捕は非常に残念なのですが、もしCD回収、配信停止がなくなれば、そのことだけは、今回の逮捕の「よかったこと」かもしれないですね。

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2020年3月20日 (金)

澄んだ歌声が魅力

Title:小鳥観察 Kotoringo Best
Musician:コトリンゴ

2006年に坂本龍一のレーベルcommmonsよりデビュー。決して派手な活躍はなかったものの、シンガーソングライターとして着実にその歩みを進めていたコトリンゴ。2013年にはKIRINJIにも加入(その後2017年に脱退)し話題となったほか、最近ではドラマやアニメ、映画などへの楽曲提供でその名前を聴く機会が多くなってきました。特に大ヒットした映画「この世界の片隅に」へ楽曲を提供。彼女が作曲した「みぎてのうた」が話題になったほか、その歌声も大きな話題となりました。

本作はそんな彼女の初となるベストアルバム。2枚組の作品となっており、Disc1は彼女のオリジナル作が収録し、Disc2では彼女がいままで参加してきた数多くのプロジェクトでもコラボ作を収録しています。

さて、そんな彼女の最大の魅力は、なんといってもその歌声でしょう。透き通るような美しい歌声ながらも、どこか暖かさを感じます。軽快な歌声にはかわいらしさも感じられます。ウィスパー気味の歌声というと、比較的無機質で、ちょっと冷たさを感じさせるボーカルが多いのですが(ただ、もちろんそれもひとつの魅力なのですが)彼女の歌声は、ちょっと鼻にかかったような歌声も人間味を感じ、また表現力も豊か。ボーカリストとして強い魅力を感じます。

この彼女の歌声は初期の作品から魅力的。また基本的に同じようなスタイルなのでパッと聴いた感じ、あまり大きな変化を感じさせないのですが、今回のアルバムでユニークだったのは、デビュー作「こんにちは またあした」が、2006年リリースのオリジナル作と、2019年に録音したリメイクが収録されています。個人的にシンプルなアレンジの2006年バージョンの方が良かったと思うのですが、瑞々しさの感じられる2006年バージョンと比べると、2019年バージョンはあきらかに落ち着いたボーカルとなり、表現も深みが増しています。この聴き比べが出来るのもこのベスト盤の大きな魅力に感じます。

サウンド的にもピアノやストリングスがメインのアコースティックテイストの比較的シンプルなもの。シンプルがゆえにしっかりと彼女の歌声を引き立てます。ただ、そんな中でも散発的なエレクトロのリズムがユニークな「hoshikuzu」、英語詞の歌も含めて、分厚いサウンドがファンタジックに彩る「Today is yours」、哀愁感たっぷりのストリングスとピアノがダイナミックな「Preamble」、バンドサウンドを入れて軽快で爽快なポップに仕上げている「ツバメが飛ぶうた」など、単純にシンプルなだけのサウンドにはとどまりません。

ほかにもジャジーなピアノにあわせてちょっと歪んだメロディーが独特な「hedgehog」や切ない歌が魅力的な「chocolate」、軽快なメロにかわいらしさも感じる「ツバメ号」など、基本的に彼女の歌声を主軸とした構成の中にバラエティーの富んだ作品が並んでいます。

一方、バラエティーの豊富さという意味ではDisc2が圧倒的。C.O.S.A.×KID FRESINO feat.コトリンゴの「Swing at Somewhere」はHIP HOP、須藤寿GATALI ACOUSTIC SETの「ウィークエンド-Theme from The Great Escape-」はくるりの「ばらの花」やスーパーカーを彷彿とさせるようなエレクトロロック。toe feat.コトリンゴの「HE PASSED DEEPY」ではエレクトロニカ的なサウンドすら登場します。様々なタイプのミュージシャンの曲に参加しているのは、やはり彼女の透き通った歌声が多くのミュージシャンを魅了しているためでしょうか。また、変な癖のない歌声なだけに、いろいろなタイプの曲ともマッチしやすいから、とも言えるかもしれません。

そんなコトリンゴの魅力を存分に味わえるベスト盤・・・なのですが、ただひとつ残念なのは、なぜか「この世界の片隅に」関連の曲が全く収録されていない点。選曲は彼女自身によるそうなので、あえて選ばなかった可能性もあるものの、Disc2ではアニメのサントラなどで収録された曲も別途収録されており、やはり少々不自然。権利関係とか、やはりそういうことなのかなぁ。おそらくもっとも知られているコトリンゴの曲だと思うのですが・・・。もっとも、そんなマイナスポイントもありつつ、ベスト盤としてもやはり非常に魅力あふれる今回のアルバム。確かにフックの効いたメロがなく、派手さという意味ではちょっと劣り、それがいまひとつブレイクにつながっていない要因かもしれません。ただ、この歌声はやはりとても惹かれるものがあります。特に「この世界の片隅に」で彼女の歌声に惹かれた方は、是非。

評価:★★★★★

コトリンゴ 過去の作品
劇場アニメ「この世界の片隅に」オリジナルサウンドトラック
雨の箱庭


ほかに聴いたアルバム

Inside Your Head/Survive Said The Prophet

人気上昇中の5人組ロックバンド。ハードコアテイストでデス声も入れたヘヴィーでダイナミックなサウンドながらも、聴いた感じは比較的ポップというスタイルは、ロックバンドの持つダイナミズムをストレートに楽しめるバンドといった印象。イメージとしてはONE OK ROCKあたりとファン層が重なりそうか。coldrainあたりに近い印象もあります。洋楽テイストも強く、個人的には自分が中高校生だったらはまっていたかも、という感も。ただ、アラフォーのおやじが聴く分には、悪くはないけど目新しさはなく、サウンド的には大味という印象も。最近、この手のバンドが多いので、その中でこれから、どう差別化していくのかがポイントとなりそう。

評価:★★★

HYPERTOUGHNESS/Fear, and Loathing in Las Vegas

ベーシストのKeiが急逝した後、新メンバーTetsuyaを迎え入れて初となるフルアルバム。トランシーなサウンドにハードコアなサウンドというバランスがユニークなバンド。デス声も入ったヘヴィーなサウンドを繰り広げたかと思えば、軽快でトランシーなサウンドが展開され、このサウンド的な振れ幅の大きさがユニークなところ。非常にインパクトあるサウンドが耳に残るバンドでした。

評価:★★★★

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2020年3月19日 (木)

ある意味、懐かしさも

今週のHot Albums

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

今週の1位は90年代を代表するJ-POPバンドのベスト盤が獲得。

今週1位を獲得したのはGLAYのベストアルバム「REVIEW II~BEST OF GLAY~」が獲得。CD販売数1位、ダウンロード数5位、PCによるCD読取数3位。デビュー25周年を迎えてリリースされた「REVIEW」に続く形のGLAYのベスト盤。「REVIEW」というと1997年にリリースされた彼ら初のベスト盤。彼らの人気絶頂期にリリースされた同作は、オリコンの初動売上で200万枚を突破。社会現象にすらなった、90年代後半から2000年代にかけて、ミリオン、ダブルミリオンセラーを連発したJ-POPバブルを象徴するような作品。それに続く形となっている今回のアルバムは、オリコン週間アルバムランキングでも1位を獲得していますが、初動売上6万4千枚と、前作の10分の1以下。オリジナルアルバムとしての前作「NO DEMOCRACY」の3万9千枚(2位)よりアップしていますが、「REVIEW」と比べて見る影もありません。もっとも、絶頂期に比べてかなり落ち込んでしまったGLAY人気も要因ですが(といっても25年もたって、1位を獲得できるので十分人気はあるのですが)、それ以上にCD市場のあまりにも大きな変化を感じてしまいます。「REVIEWIII」がリリースされたとしたら、その時はもうストリーミングオンリー、とかなんだろうなぁ。

2位は独特な歌詞が人気のロックバンドamazarashi「ボイコット」がランクイン。CD販売数2位、ダウンロード数4位、PCによるCD読取数13位。約2年4ヶ月ぶりとなるニューアルバム。オリコンでも初動売上1万8千枚で2位初登場。前作「地方都市のメメント・モリ」(6位)から横バイ。

3位にはまだまだ「白日」がロングヒット中のKing Gnu「CEREMONY」が先週の4位からワンランクアップで2週ぶりのベスト3返り咲き。これで9週目のベスト10ヒットとなるのですが、9週のうち8週までもベスト3圏内という驚異的なロングセラーを続けています。CD販売数は8位ですが、ダウンロード数は2位、PCによるCD読取数も1位を獲得。まだまだロングヒットは続きそうです。

続いて4位以下の初登場盤です。まず5位には遊助ことタレント上地雄輔の「遊言実行」がランクイン。CD販売数4位、ダウンロード数34位、PCによるCD読取数85位。いままでのアルバムはすべてタイトルが「あの・・・〇〇ケド。」とつけていた、ある意味、非常に痛いタイトルだったのですが、9枚目にしてようやく「あの・・・」シリーズは終わったようです。オリコンでは初動売上9千枚で4位初登場。直近作はベストアルバム「遊助BEST 2009-2019 〜あの・・あっとゆー間だったんですケド。〜」で、同作の1万1千枚(11位)よりダウン。直近のオリジナルアルバム「あの・・こっからが山場なんですケド。」の1万枚(6位)より若干のダウンです。

6位にはスターダストプロモーション所属の男性アイドルグループM!LK「Juvenilizm-青春主義-」が初登場。CD販売数は3位だったものの、それ以外のチャートは圏外となり総合順位はこの位置に。オリコンでは初動売上9千枚で5位初登場。前作「Time Capsule」の2万2千枚(4位)からダウンしています。

初登場最後は8位に韓国の男性アイドルグループ2PM「THE BEST OF 2PM in Japan 2011-2016」がランクイン。メンバーの兵役の影響から活動休止中の彼ら。日本デビューした2011年から活動休止した2016年までの間で日本でリリースした作品を集めたベスト盤になっています。CD販売数は5位でしたが、ほかのチャートは圏外となり総合順位はこの位置に。オリコンでは初動売上7千枚で7位初登場。前作は、韓国リリースの曲を集めたベスト盤「2PM BEST in Korea 2~2012-2017~」で、同作の8千枚(7位)より若干のダウンとなっています。

今週の初登場盤は以上。一方、ロングヒット盤は、相変わらず強いOfficial髭男dism「Traveler」で今週は先週の6位から2ランクアップで4位にランクイン。これで23週連続のベスト10入り。ストリーミングやYou Tubeなど、曲を聴くたびにカウントされる指標のあるHot100と異なり、CD販売やダウンロードなど、一度買ってしまえばそれで終わりのはずのアルバムチャートで、これだけロングヒットするのはまさに驚異的。まさに「国民的人気バンド」になりつつあります。

今週のHot Albumsは以上。チャート評は来週の水曜日に!

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2020年3月18日 (水)

ロングヒットが目立つチャート

今週のHot100

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

今週は、特に強力な新譜がなかった影響からか、ロングヒット曲の活躍が目立つチャートとなっています。

まず1位は、この曲も既に9週、ベスト10ヒットをキープし、ロングヒットとなっています。Official髭男dism「I LOVE...」が先週の2位からワンランクアップ。4週ぶりの1位獲得となりました。今週は、なんとダウンロード数、ストリーミング数、PCによるCD読取数、You Tube再生回数で軒並み1位を獲得。CD販売数も20位から11位に大幅にアップしており、まさに他を圧倒する1位。「Pretender」に並ぶロングヒットになりそうな予感もします。

とはいえ、その「Pretender」が今週は2位を獲得。先週の4位からアップしています。特にストリーミング数が3位から2位にアップ。ダウンロード数も5位から3位にアップしており、再び勢いを増している感すらあります。もちろん他のヒゲダンの曲も今週は再びランクアップ。「宿命」は9位から7位に、「イエスタデイ」も10位から8位にアップ。今週も4曲同時ランクインとなっています。

3位もロングヒット曲。LiSA「紅蓮華」が先週の5位から2ランクアップで3位にランクアップ。これが初のベスト3ヒットとなりました。もちろん3位は自己最高位。特にダウンロード数が4位から2位にアップ。他にもストリーミング数4位、PCによるCD読取数3位、カラオケ歌唱回数2位などが上位につけています。ただYou Tube再生回数は16位から25位にダウン。こちらはロングヒット曲にしては伸び悩み気味。

続いて4位以下の初登場曲なのですが、今週は初登場は1曲のみ。元東方神起のメンバーで、JYJとしても活躍しているジェジュンのソロシングル「Brava!!Brava!!Brava!!」が先週の85位からCDリリースに合わせて大きくランクアップし5位にランクイン。CD販売数及びTwitterつぶやき数は1位を獲得しましたが、ダウンロード数29位、ラジオオンエア数34位、PCによるCD読取数14位にとどまり、総合順位は5位に。オリコン週間シングルランキングでは初動売上4万5千枚で1位初登場。前作「Defiance」の10万枚(3位)よりダウンしています。

初登場曲は以上ですが、今週はベスト10返り咲き曲が2曲ありました。まず菅田将暉「まちがいさがし」が先週の12位から9位にアップ。5週ぶりのベスト10返り咲き。通算22週目のベスト10ヒットとなりました。特にストリーミング数9位、You Tube再生回数8位、カラオケ歌唱回数7位と上位にランクインしています。

さらにBillie Eilish「Bad Guy」が先週の15位からランクアップし10位にランクイン。こちらも4週ぶりのベスト10返り咲きとなります。特にYou Tube再生回数は4位と上位にランクイン。世界的に注目を集める彼女ですが、日本でも高い人気を誇っています。

そしてロングヒット曲としてはあと1曲、King Gnu「白日」。今週は6位から2ランクアップの4位にランクイン。ただしストリーミング数は2位から3位にダウン。長らく、ストリーミング数はヒゲダンの「Pretender」を上回っていましたが、ここに来て、順位が逆転してしまいました。一方、ダウンロード数は9位から7位にアップしています。

今週のHot100は以上。明日はHot Albums!

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2020年3月17日 (火)

アラフィフのおじさんが集結

Title:氷上のならず者
Musician:カーリングシトーンズ

かなりユニークな「新人バンド」が登場しました。名前はカーリングシトーンズ。全員、カーリング経験者という特徴を持つグループで、ミュージシャン名はローリングストーンズをもじったもの。アルバムタイトルも「メインストリートのならず者」ならぬ「氷上のならず者」というタイトル。メンバーは寺岡シトーン、奥田シトーン、斉藤シトーン、浜崎シトーン、キングシトーン、トータスシトーンの5人。今、もっとも注目を集める「新人バンド」のひとつです。

・・・・・・といってもジャケット写真ですぐにわかるかと思います。元JUN SKY WALKER(S)のメンバーで、ゆずをはじめとして数多くのミュージシャンへのプロデュース業で知られる寺岡呼人、ご存じ奥田民生、斉藤和義、FLYING KIDSの浜崎貴司、真心ブラザーズのYO-KING、そしてトータス松本という、そうそうたるメンバーが顔をそろえるこのバンド。もともとは寺岡呼人のソロ25周年の記念ライブを機に結成されたバンドだそうですが、その後、ライブも実施。さらに結成から1年以上を経過して、ついにデビューアルバムがリリースされました。ちなみに「カーリング経験者」というのはもちろん洒落・・・なのですが、その後、全員、カーリングを経験したとか。その後、カーリングの大会のテーマソングに彼らの曲が起用されたり、「涙はふかない」が日本カーリング協会の公式リコメンドソングに起用されたりと、しっかりカーリングと縁のあるグループとなってきました。

メンバー全員がちょうど52歳から54歳という同世代。それぞれが自らのバンドで一定以上のキャリアを確立したメンバーたちが一堂に会したバンド。メンバーそれぞれ別に本拠地のあるミュージシャンばかりなゆえに、カーリングシトーンズとしては、かなり自由度の高い、そして肩の力の抜けた楽曲が並んでいます。メンバーそれぞれが作曲に参加しているのですが、それぞれが好き勝手に自分たちの演したい曲を演奏し、かつ他のメンバーもそれをサポートする、アラフィフの彼らだからこその、ある種の余裕を感じられる作品になっています。

特にアルバムの前半は、メンバー各々が作詞作曲を担当した、それぞれの個性が強く発揮された楽曲が続きます。まず全農日本カーリング選手権のテーマソングに抜擢された「スベり知らずシラズ」は、いかにもな奥田民生の個性が強く出ているギターロックナンバー。「何しとん?」は斉藤シートンこと斉藤和義作詞作曲による楽曲なのですが、タイトルからしてせっちゃん節の、脱力感あるサーフソングに。さらに「俺たちのトラベリン」は浜崎貴司こと浜崎シートンによる郷愁感あふれるカントリーロックに。「わかってさえいれば」はまさに王道のブルースナンバー。作詞作曲を手掛けるトータスストーンことトータス松本の趣味性が思いっきり表に出たナンバーに。そしてキングストーンことYO-KINGが手掛ける「マホーのペン」は彼らしい泥臭いブルースロックのナンバーになっています。各々が思いっきり好きなことを演っている楽曲が続いており、下手すれば各々が所属しているバンド以上に、好きなことを演っているという印象すら受けました。

その後もアラフィフの彼ららしい余裕を感じられるユニークな楽曲が続きます。タイトル通りのエロ歌詞の「B地区」はなんちゃってHIP HOPになっていますし、「出会いたい」はヘヴィーな昔ながらもハードロックナンバー。おなじくおやじらしさが満載のエロ歌詞「Oh!Shirry」はオールディーズと、メンバーそれぞれの深い音楽的素養を感じつつ、そんな音楽性を下敷きに、自由に楽しく遊びまくっている楽しい曲が並びます。また「B地区」「Oh!Shirry」などのエロ歌詞は、まさにおやじらしさ満載。ただ、こういう曲をさらっとやれてしまうあたり、彼らのある種のカッコよさを感じます。

最後を「涙はふかない」はまるで昭和40年代あたりのテレビ番組のエンディングを彷彿させるような楽曲。おそらく、彼らの子供時代である昭和40年代をあえて意識したのではないでしょうか。昭和50年代生まれの私にとっては若干世代が違うのですが、ただ、どこか子供の頃に、お茶の間で見ていたテレビ番組を思い出させるような、懐かしさを感じる楽曲に。最後の最後まで遊び心を感じさせるアルバムになっていました。

しかしよく考えれば寺岡呼人、奥田民生、斉藤和義、浜崎貴司、YO-KING、トータス松本が集まったバンドってかな~~~り豪華だよなぁ。それだけ豪華なメンバーが、それぞれの持ち味を生かしつつ音楽を楽しみながら作ったアルバム、が傑作でない訳ありません。さすがにこれだけ豪華なメンバーで今後もコンスタントに活動を続けるのは難しいのでしょうが・・・次のアルバムは5年後、10年後とかでもいいので、断続的にでも活動は続けてほしいなぁ。なにげにアラカンになった彼らの音楽もすごく味があって素晴らしそうですし。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

C3/Base Ball Bear

Base Ball Bearの1年9か月ぶりとなるニューアルバム。「聴いたことある曲が多いな…」と思ったのですが、全12曲中8曲は、先行のEP「ポラリス」「Grape」収録作のため。いずれもアルバムバージョンでの収録とはなっているのですが、そういう意味ではちょっと目新しさに欠けるアルバムだったような印象も。軽快なギターロックはいかにもBase Ball Bearらしい感じ。楽曲的にはいつものBase Ball Bearで目新しさはないのですが、バンドサウンドを聴いて、すぐに「Base Ball Bearだ!」とわかるのは、彼らの大きな強みでしょう。

評価:★★★★

Base Ball Bear 過去の作品
十七歳
完全版「バンドBについて」
(WHAT IS THE)LOVE&POP?
1235
CYPRESS GIRLS
DETECTIVE BOYS

新呼吸
初恋
バンドBのベスト
THE CUT
二十九歳
C2
増補改訂完全版「バンドBのベスト」
光源
ポラリス
Grape

MISIA SOUL JAZZ BEST 2020/MISIA

今回のアルバムは約7年ぶりとなるMISIAのベストアルバム…なのですが、本作は「SOUL JAZZ」をコンセプトに、トランぺッターの黒田卓也とコラボレート。ビックバンドによるアレンジも取り入れた、ジャズに寄ったアルバムになっている……はずなのですが、率直に言えば、原曲と比べて大きくジャズに寄った、という印象はあまり強くありません。確かにホーンセッションなどを取り入れているのですが、原曲からあまりイメージの変化がありません。それというのも、やはり原曲の中でMISIAのボーカルの要素が大きすぎて、少々アレンジを変えたところで原曲のイメージがあまり変わらないから、といったところが大きな理由でしょう。また今回のアルバムも正直、MISIAのボーカルを中心に据えすぎた結果、「SOUL JAZZ」というコンセプトからするとかなり中途半端に終わってしまっていた印象があります。結果、単なるMISIAのベストアルバムで、ちょっとだけバージョンが違うね、というくらいの出来に終わってしまっていました。単純にMISIAのアルバムとして考えると5つなのですが、「SOUL JAZZ」という点で考えると、正直、3つ程度の出来。間を取って・・・

評価:★★★★

MISIA 過去の作品
EIGHTH WORLD
JUST BALLADE
SOUL QUEST
MISIAの森-Forest Covers-
Super Best Records-15th Celebration-
NEW MORNING
MISIA 星空のライヴ SONG BOOK HISTORY OF HOSHIZORA LIVE
MISIA SOUL JAZZ SESSION
Life is going on and on

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2020年3月16日 (月)

ダンスチューンをメインにPSBの魅力満載

Title:Hotspot
Musician:PET SHOP BOYS

フルアルバムとしては約3年9ヶ月ぶりとなるPET SHOP BOYSのニューアルバム。今回のアルバムは前々作「ELECTRIC」、前作「SUPER」から続く3部作の最終章と位置付けられているそうです。前々作「ELECTRIC」、前作「SUPER」共に、EDMを取り込んだダンスチューンが主体となっているアルバムになっていたので、それに続く本作も、同じくダンサナブルなアルバムになっているのかな、そう予想しました。

事実、アルバムはちょっと哀愁感を帯びつつ、スペーシーなサウンドを聴かせるダンスチューンの「Will-o-the-wisp」からスタート。彼ららしい多幸感あふれるタイトル通り、ハッピーなダンスナンバー「Happy people」、軽快なエレクトロサウンドも楽しい80年代風のディスコチューン「Monkey business」、さらには結婚行進曲をサンプリングするなど、ちょっとベタで大味な感じもあるものの、分厚いエレクトロサウンドを含めて、そのベタさも楽しいテクノチューン「Wedding in Berlin」など、ダンサナブルなエレクトロチューンが並びます。

ただ一方、ダンスチューンをメインとした結果、彼らの大きな魅力であるメロディーラインの良さが後ろに下がってしまった前2作と比べると、今回のアルバムは明確にメロディーラインの良さが前に押し出された、珠玉のポップチューンが並ぶ作品となっていました。例えば「Dreamland」も、ダンサナブルなエレクトロナンバーながらも80年代的な雰囲気を感じる、マイナーコードの哀しげなメロディーラインが大きなインパクトとなっています。

そしてなによりも今回のアルバムでPET SHOP BOYSのメロディーメイカーとしての魅力を発揮されたのが「Only the dark」と「Burning the heather」でしょう。「Only the dark」は分厚いエレクトロサウンドをバックに奏でられる美しくも哀しげなメロディーラインが絶品。サビに入るところで転調する、ある意味J-POP的な展開は日本人受けしそうですし、どこか90年代初頭あたりのポップソングの雰囲気を感じて、個人的には非常に懐かしさを感じました。続く「Burning the heather」もエレクトロサウンドを主軸としつつ、アコースティックなサウンドも取り入れ、こちらも懐かしくも、タイトル通りの暖かさを感じさせるようなポップチューンに。美メロという表現がピッタリくる、メロディーラインが胸に突き刺さるようなポップスが並んでいました。

前々作、前作に続くようなダンスチューンを奏でつつ、前2作では物足りなさを感じた彼らのメロディーラインの良さを前面に押し出してきた、まさにPET SHOP BOYSらしいダンスアルバムになっていた本作。前々作、前作と含めて3部作というのならば、間違いなく断トツの傑作アルバムでしたし、また、3部作を締めくくる集大成にふさわしいアルバムとなっていました。軽快なエレクトロサウンドに美しいメロディーラインというPET SHOP BOYSの魅力を詰め込んだいた今回のアルバムはともすれば年間ベストクラスの傑作アルバムと言えるかも。まだまだ彼らの活躍は続きそうです。

評価:★★★★★

で、そんな彼らの傑作アルバムから1曲をピックアップ。同曲のリミックスや新曲を追加したEPもリリースされています。

Title:Monkey business
Musician:PET SHOP BOYS

「Hotspot」の中でも主軸となっていたエレクトロダンスチューン「Monkey business」のRadio editをメインに、Prins Thomas及びFriend Withinによるリミックス、そして新曲1曲を収録した4曲入りのEPとなっています。やはりもっとも聴きどころは新曲「At rock bottom」でしょう。強いビートのエレクトロアレンジながらも、PET SHOP BOYSらしい哀愁感あるメロディーがしっかりと流れる楽曲。アルバム「Hotspot」の延長線上にあるような印象を受ける新曲となっています。

またPrins ThomasによるリミックスもFriend Withinによるリミックスも、いずれもよりビート感を強調してダンサナブルにまとめあげた楽曲に仕上がっています。結果として4曲ともダンサナブルなナンバーが並んだ今回のアルバム。「Hotspot」のダンサナブルな側面をより強調したEPといった感じでしょうか。Prins Thomasのリミックスは日本盤には収録されているので、日本のリスナーにとってはこれではじめて聴けるのは事実上2曲のみ、といった感じなのですが・・・。ただ新曲は聴いて損のない楽曲。興味のある方は、是非。

評価:★★★★

PET SHOP BOYS 過去の作品
Yes
ULTIMATE PET SHOP BOYS(邦題:究極のペットショップボーイズ)
The Most Incredible Thing
Elysium(邦題 エリシオン~理想郷~)
ELECTRIC
SUPER
Agenda


ほかに聴いたアルバム

Beneath the Eyrie Demos, Pt. 2/PIXIES

昨年リリースしたアルバム「Beneath the Eyrie」からのデモ音源集の6曲入りのミニアルバム。基本的には完成形に近い形の音源のため、これはこれで1つの作品として楽しめるような内容になっています。さらに完成形よりもより荒々しさを感じるため、見方によっては完成形より魅力的に感じる部分も?ただ、基本的にはファンズアイテム的な要素は強いのですが。

評価:★★★★

PIXIES 過去の作品
EP1
EP2

Indy Cindy
Doolittle25
Head Carrier
Beneath The Eyrie

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2020年3月15日 (日)

GREEN DAYっぽい?っぽくない?

Title:Father of All...
Musician:GREEN DAY

途中、ベスト盤のリリースを挟みつつ、約3年4ヶ月ぶりとなるGREEN DAYのニューアルバム。各種メディアには「Father of All...」という形で「All」以降を省略するような表記がされていますが、正式名称は「Father of All Motherfuckers」だそうで、実際、ジャケット写真にもその表記があります。文章で書くのはNGなのに、ジャケット写真は構わないのか…と思ってしまいますが、ひょっとしたら、あえて「Motherfuckers」のようなメディアが使えない言葉をタイトルに使いつつ、ジャケットにそのタイトルを記載しているのは、こういうメディアの形式的な対応を皮肉るため???

そんな今回のアルバムはまずは、あまりGREEN DAYっぽくない曲が多く収録されているアルバムになっています。例えばタイトルチューンの「Father of All...」はへヴィーなギターリフ主導のガレージロック風のナンバーになっていますし、続く「Fire,Ready,Aim」も、ちょっとオフスプあたりを思い起こさせるような、メロコアっぽい楽曲になっています。「Meet Me on the Roof」も軽快なリズムのポップチューンになっていますし、「Stab You in the Heart」もロックンロール風の楽曲に。この曲は完全にThe Bealtesの曲をそのままヘヴィーにした、といった感じの曲ですね。途中のギターリフや歌い方なんかも、まんまビートルズですし。

「Take the Money and Crawl」もヘヴィーなギターを聴かせるヘヴィーな楽曲になっていますし、ラストの「Graffitia」も明るいポップチューンなのですが、どちらかというとパワーポップというカテゴライズがしっくり来そうな感じも・・・。「Sugar Youth」あたりは彼ららしいメロパンクのナンバー、といった感じもするのですが、全体的には少数派。正直、あまりGREEN DAYらしさを感じさせないような楽曲が並んでいました。

ただ、個人的に、これは矛盾した言い方になるかもしれませんが、とてもGREEN DAYらしいアルバムだな、とも感じる作品になっていました。10曲入り26分というコンパクトな内容に、疾走感あるバンドサウンド、さらにはそんな中でもポップなメロディーラインが流れており、頭を空っぽにして楽しめるような心地よいサウンドが流れてくる楽曲の数々。それらはみんな、GREEN DAYの大きな魅力であり、そして今回のアルバムには間違いなくそんな魅力あふれる楽曲が並んでいました。今回のこのアルバム、確かに街中で流れるとGREEN DAYの楽曲だ、と気が付かないような楽曲が多いかもしれません。しかし、基本的な楽曲の方向性はやはり実にGREEN DAYらしいとも言える本作。間違いなくGREEN DAYのアルバム、と言えるでしょう。

GREEN DAYらしからぬアルバムということもあり、全体的には賛否わかれるアルバムになっていました。確かに、本作ではキラーチューンと言えるような楽曲もなく、そういう意味では文句なしの絶賛をあびた前作「Revolution Radio」と比べると、物足りない部分を感じる点も否めないかもしれません。ただ、それを差し引いても、やはりポップでへヴィーなロックチューンにワクワクできたという意味では間違いなく魅力的な作品と言える本作。個人的にはGREEN DAYのアルバムとして間違いなく傑作だと言える1枚だったと思います。

デビュー時からいままで、陽気なパンクチューンを主軸にしつつ、様々な音楽性を取り込み成長を続ける彼ら。本作もそんな彼らの新たな一歩と言えるアルバムとも言えるでしょう。なにげに今年はレコードデビューから30年目(!)という、すっかりベテランになった彼ら。しかし、本作からはそんなベテランらしいマンネリ感は皆無。これからも彼らの活躍は続きそうです。

評価:★★★★★

GREEN DAY 過去の作品
STOP DROP AND FALL!!!(FOXBORO HOTTUBS)
21st Century Breakdown
AWESOME AS F**K(邦題:最強ライヴ!)
UNO!
DOS!

TRE!
爆発ライブ~渋谷編
DEMOLICIOUS
Revolution Radio
Greatest Hits:God's Favorite Band


ほかに聴いたアルバム

Jesus Is Born/Sunday Service Choir

昨年10月、ゴスペル色の強いアルバム「Jesus Is King」をリリースしたカニエ・ウェスト。その時、クリスマスにはクリスマスアルバムをリリースすることを予告していましたが、彼としては珍しく、しっかりとクリスマスにリリースされた、カニエ率いるゴスペルグループ、Sunday Service Choir名義でリリースされた新作。全編、正統派のゴスペルアルバムとなっており、コーラス隊が入った力強いゴスペルを聴かせてくれています。全編、似たようなゴスペルの楽曲が並んでおり、日本人にとってはちょっと馴染みの薄さも感じるのですが、ただ、それでも最後までしっかりと聴かせてくれるのは、カニエの卓越したポップスセンスゆえでしょうか。今後はしばらくゴスペル方面に興味が続くのでしょうか・・・。

評価:★★★★

Treat Myself/Meghan Trainor

大ヒットしたデビュー作「Title」ではちょっとレトロで軽快なポップを聴かせてくれた彼女。しかし2ndアルバム「Thank you」で方向性が一変。いかにも今時のR&Bを加えた平凡なポップになってしまい多くのリスナーをガッカリさせました。そして3枚目となる「Treat Myself」ですが…方向性は前作と変わらず。いかにも今時の女性シンガーが歌いそうな、平凡なポップチューンに。結果、前作では3位を獲得していたビルボードチャートが本作では25位と急落。多くのリスナーが彼女のこの方向性を望んでいないことが如実にあらわれる結果となりました。あえていえば最後の2曲「No Excuse」「Have You Now」はデビュー当初の面影を感じるポップスになっていたのですが。正直次回作もこの方向性なら、スルーかなぁ。

評価:★★★

Meghan Trainor 過去の作品
Title
Thank you
THE LOVE TRAIN

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2020年3月14日 (土)

1曲目のタイトルはなんと・・・!

Title:RINGO DEATHSTARR
Musician:Ringo Deathstarr

アメリカはオースティン出身のオルタナ系ギターロックバンド、Ringo Deathstarr。一時期、2000年代後半あたりに、シューゲイザーの影響を受けたバンドが多数登場し、「ニューゲイザー」として話題を集めました。その流れの中で登場したバンドは、あるバンドは今なお活躍しているものの、シューゲイザーからの影響は薄れ、あるバンドは消息不明となり、いつの間にか「ニューゲイザー」という言葉次第、死後になってしまいました。ただ、そんなニューゲイザーバンドの中でも、特にシューゲイザー系からの影響をストレートに受けた彼ら、Ringo Deathstarrが今でも順調に活動を続け、ついにはここに来て、セルフタイトルのアルバムをリリースしてしまうあたり、興味深いものがあります。

本作はそんな彼らの、ちょっと久々となる5年ぶりのニューアルバムなのですが、まず最初に驚かされたのは1曲目のタイトル。冒頭の曲のタイトルはいきなり「Nagoya」!楽曲は2分弱のインストチューン。静かにドリーミーなサウンドを聴かせてくれるいわばインスト的な楽曲になっています。なぜこの曲に「名古屋」なんて名前を付けたのかはかなり謎。ただ、彼ら、ほぼ毎年のように来日ツアーを実施しており、その中で何度か名古屋も訪れています。そんな名古屋に滞在時に作った曲なのでしょうか・・・?また、頻繁に来日ツアーを実施するあたり、比較的世界の中でも特に日本で高い人気を得ている、ということなのでしょうか?

そんなちょっと謎、でも名古屋人としてはちょっとうれしい曲からスタートする今回のアルバムですが、本作もまた、彼らの王道スタイルと言えるシューゲイザー路線がさく裂しています。続く「God help the Ones you Love」はちょっとゴシック調、荘厳な雰囲気にアレックス・ゲーリングの透き通るような神々しさを感じるボーカルスタイルが、タイトルから想像させるようなゴスペル風な雰囲気を醸し出しています。

さらになんといってもうれしくなってくるのは「Once upon a freak」。ノイジーで歪みまくったギターリフがまんまマイブラを彷彿とさせるようなナンバー。女性ボーカルの入り方も、まんまマイブラといった感じになっており、彼らの敬愛ぶりが感じられます。ドラムのアタック音もマイブラっぽい感じなのですが、こちらは彼らの方がより強い音で彼らなりの個性も出しているような感じでしょうか。

そして今回のアルバムでも大きな魅力となっているのが、さきほど紹介した「God help the Ones you Love」でも魅力的な歌声を聴かせてくれるアレックス・ゲーリングの歌声。歪んだギターが響きまくる「Once upon a freak」に続く「Disease」では一転、彼女のドリーミーな歌声が魅力的に響く幻想的な楽曲に。「In your arms」「Heaven obscured」も、ノイジーに歪んだギターの中で幻想感あふれるアレックスの歌声が魅力的な楽曲となっています。

さらにギターのホワイトノイズが埋め尽くされる「Lazy Ln」みたいなシューゲイザーファンにうれしいナンバーを挟みつつ、後半で魅力的だったのが「The same again」。ガレージサウンドとシューゲイザーサウンドの中間を行くような、歪んだノイズを聴かせつつダイナミックに展開するヘヴィーなギターサウンドの中、メンバー2人のデゥオとなるのですが、その中でもアレックスの歌声が、まさに一服の清涼剤のような爽やかさを楽曲に与えています。

そして彼女の歌声が魅力的というと、なによりも終盤の「Cotton candy clouds」。思いっきりノイズギターを炸裂しているヘヴィーなギターサウンドの中を突如美しいアレックスの歌声が流れ出す、幻想感の強い楽曲に。最後までアレックスの歌声を魅力的に生かした楽曲が、マイブラをはじめとするシューゲイザー系からの影響が顕著な彼らながらも、しっかりと彼らの個性・魅力を感じさせる作品となっていました。

一方ではそんなドリーミーなサウンドを聴かせつつ、最後の「All I Want」のような破壊的でパンキッシュな作品があったりと、比較的ヘヴィーなバンドサウンドを聴かせる作品も多いのも彼らの特徴。ダイナミックなサウンドと幻想的でノイジーなギターサウンドのバランスの良さもまた大きな魅力となっていました。

セルフタイトルにふさわしい、彼ららしさが満載の傑作アルバムに仕上がっていた本作。シューゲイザー好きにはたまらない、壺につきまくりの作品だったのではないでしょうか。目新しさという点は薄いため、音楽系メディアの評価はさほど高くないのかもしれませんが、私個人としては、個人的な年間ベスト10に入りそうなくらいはまってしまいそうな傑作アルバム。終始、ノイジーサウンドと清涼感あふれるボーカルが魅力的なアルバムでした。

評価:★★★★★

Ringo Deathstarr 過去の作品
Shadow
Mauve
PURE MODE


ほかに聴いたアルバム

In Another Room/Paul Weller

ポール・ウェラーの新作は、なんとエクスペリメンタル・ミュージックによる4曲入りの新譜。いつもの彼のイメージとは全く異なる実験的な現代音楽に、もし何も情報がないまま聴いたとしたらビックリするのではないでしょうか。ただ、どこか流れるポップなメロディーラインに、Paul Wellerらしさを感じる部分がない訳でもないのですが・・・。現在61歳の彼でありながらも、いまなお続けるこの挑戦心には驚かされるのですが、ただ内容的にはやはり一般受けするような内容でもなく、決して非常に目新しいという感じでもなく、よほど熱心なファン以外は無理に聴く必要はないような印象を受けてしまいました。

評価:★★★

Paul Weller 過去の作品
22 DREAMS
Wake Up The Nation
Sonik Kicks
A Kind Revolution
True Meanings

If You're Going To The City: Sweet Relief Tribute To Mose Allison

2016年に89歳で亡くなった、アメリカはミシシッピ出身のジャズピアニスト。彼はジャズピアニストでありながら、ローリングストーンズやTHE WHOなどのロックミュージシャンやブルースミュージシャンへも大きな影響を与えたミュージシャンで、今回、Iggy PopやJackson Browneなどロック/R&Bミュージックから数多くの大物が参加したトリビュートアルバム。あのPixiesのFrank Blackも参加。Pixiesの「Allision」は彼に捧げたもの・・・・・・ってそうだったんですか!全体的にはムーディーでブルージーなカバーがメインとなっており、確かにブルース色の強い作品が並んでおり、ロックやブルースへの強い影響を感じさせます。全体的には落ち着いた渋い味わいに聴き入ってしまう、Mose Allisonへの愛情を感じさせるトリビュートアルバムに仕上がっていました。

評価:★★★★★

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2020年3月13日 (金)

聴き終わった後に「苦み」が

Title:Be Up A Hello
Musician:Squarepusher

Squarepusherの5年ぶりとなるニューアルバム・・・・・・というと、かなり「意外」と感じる方も多いのではないでしょうか。基本的にSquarepusherはワーカホリックという印象もあり、しょっちゅうアルバムをリリースしている、という印象もある彼。実際、昨年には彼が作曲を手掛け、オルガン奏者James McVinnieが演奏を手掛けた「All Night Chroma」というアルバムがリリースされていますし、2017年には彼が率いるバンドShobaleader One名義でもアルバムをリリースしています。そんなこともあって、5年ぶりのアルバム・・・といっても「久しぶり」という感覚はほとんどありません。

とはいえ、実際にSquarepusher名義でリリースされたのは2015年の「Damogen Furies」以来となりますので、Squarepusherとしては久しぶりとなるアルバム。そして今回のアルバムはドラムンベースがさく裂している、ある意味、実にSquarepusherらしいアルバムに仕上がっています。ここ最近は、例えばShobaleader Oneのようなバンドとしてのアルバムでしたり、前作「Damogen Furies」もワンテイクでの録音にこだわった作品だったりと、趣向をこらした作品、あえていえばちょっと「脇道」にそれた作品が続いていました。

しかし本作は彼の王道路線とも言っていい作品。例えば「Nervelevers」などは細かなビートがヘヴィーに繰り広げられる、まさにSquarepusherらしいハードコアな作品。「Vortrack」も細かい波形を描くリズムが楽曲をつんざく、彼らしい、強烈なリズムの楽曲に仕上がっています。まさに今回のアルバムは、5年待ったかいのあった、Squarepusherらしいサウンドが楽しめる作品と言えるでしょう。

そしてそんなサウンドが強烈に耳をつんざく中、今回のアルバムの大きな特徴はポップなメロディーラインが流れた曲が目立つ、ということでしょう。Squarepusherとポップ・・・ある意味、「真逆」というべき関係、とも言えるかもしれません。しかし1曲目「Oberlove」は、彼らしいドリルンベースのサウンドが流れる中、確実にシンセでのポップなメロディーラインが流れており、「エレクトロポップ」とすら表現できそうな作品になっています。続く「Hitsonu」も、わかりやすいポップなメロディーラインこそないものの、軽快なエレクトロサウンドが流れる曲となっており、いい意味で聴きやすいナンバーに仕上がっています。

特に印象的だったのが中盤の「Detroit People Mover」。エレクトロノイズが流れつつ、ミディアムテンポで聴かせるサウンドは哀愁感すら感じられ、ともすれば「歌謡曲的」とすら感じるメロディーが聴こえてくるような楽曲に仕上がっていました。もっとも、このようなポップなメロディーライン、実はいままでの彼の曲の根底には、このようなポップスセンスが裏付けされており、それがSquarepusherのサウンドを魅力的にさせていたのではないか・・・今回のアルバムを聴いて、あらためて彼の楽曲の魅力を再認識したように感じます。

さらに全体的にポップに仕上がった、といっても決して陳腐という印象は受けません。それはそれらの楽曲も含めて、彼の個性がいかんなく発揮された強烈なサウンドとリズムが常に流れていたからでしょう。いろいろな趣向を凝らしたアルバムをリリースした後にたどり着いた今回のアルバム。サウンドからも今まで以上の勢いを感じられ、「王道路線」とはいえ、そこにマンネリ感はありませんでした。

そしてそんなポップなアルバムであるにも関わらず、ラストを締めくくる「80 Ondula」は非常に暗く、不気味でメタリックなエレクトロサウンドで締めくくられており、「いやらしい」聴後感を覚える作品になっています。ある意味、とても甘いドリンクを飲みだしたと思ったら、最後にどこか苦みが残ったような・・・。ただ、この最後に残る苦みがまた大きなインパクトになりとても魅力的。そう感じるアルバムになっていました。

まさに快心の傑作という印象の強い今回のアルバム。いい意味で最初の聴きやすさとサウンドの王道さから、Squarepusherをこれから聴き始めようとする人にもピッタリな作品だったのはないでしょうか。しかし、聴き終わった後に感じる「苦み」から、やはり彼がただものではないと感じさせますし、次のアルバムも期待できそう。彼らしさがつまった傑作アルバムでした。

評価:★★★★★

SQUAREPUSHER 過去の作品
Just a Souvenir
SHOBALEADER ONE-d'DEMONSTRATOR
UFABULUM
Music for Robots(Squarepusher x Z-Machines)
Damogen Furies


ほかに聴いたアルバム

Suite for Max Brown/Jeff Parker

ポストロックバンド、トータスのメンバーであり、自身もジャズギタリストとして活動しているJeff Parkerの新作。エレクトロサウンドの要素が強く、ファンキーな作品でよりブラック色の強い作品やメタリックな作品などバラエティー豊富な作品が魅力的。ダイナミックなバンドサウンドを聴かせるような曲もあるが、王道路線とも言うべきモダンジャズの要素が強く、基本、エレピで軽快なサウンドを聴かせる作品となっています。トータスのメンバーによる…という名前のイメージから来るような、実験的な要素よりも、いい意味で聴きやすさのある作品でした。

評価:★★★★★

Have We Met/Destroyer

カナダのインディーロックバンドによる12枚目となるアルバム。語るような渋みのあるボーカルでゆっくりと聴かせつつ、エレクトロサウンドを取り入れたニューウェーヴ風の楽曲が魅力的。その渋みのあるボーカルもあり、哀愁感を漂わせつつゆっくりとスケール感を持って聴かせる楽曲がメイン。最初は地味な印象もありいまひとつピンと来ないままアルバムを聴き進めていったのですが、いつのまにかその歌声とサウンドにはまっていってしまう、そんな作品でした。

評価:★★★★★

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2020年3月12日 (木)

1位はジャニーズ系

今週のHot Albums

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

K-POP勢が目立った先週のチャートから変わり、今週の1位はジャニーズ系。

今週1位を獲得したのはジャニーズ系男性アイドルグループNEWS「STORY」。2017年リリースの「NEVERLAND」から続く、アルバムタイトルの頭文字に「NEWS」の4文字を用いた「NEWS4部作」の最終作だそうです。CD販売数1位、PCによるCD読取数2位。オリコン週間アルバムランキングでは初動売上11万5千枚で1位初登場。前作「WORLDISTA」の10万8千枚(1位)からアップしています。

2位初登場はゆず「YUZUTOWN」。CD販売数2位、ダウンロード数3位、PCによるCD読取数4位。オリコンでは初動売上5万9千枚で2位初登場。前作「BIG YELL」の8万枚(2位)からダウン。さて、今週はさらに5位に、ゆずによく似た「19歳」の2人組デゥオMIZUなる「新人ミュージシャン」の「MIZU」が5位にランクイン。CD販売数4位、ダウンロード数8位、PCによるCD読取数15位。まあ、言うまでもなくゆずが「お遊び」で結成した覆面ユニットのニューアルバムで、今週、実質的にゆずのアルバムが2作同時ランクインとなりました。MIZUはオリコンでも初動売上1万9千枚で5位初登場となっています。

3位には宮本浩次「宮本、独歩」がランクイン。CD販売数3位、ダウンロード数1位、PCによるCD読取数12位。ご存じ、エレファントカシマシのボーカリスト、宮本浩次の初となるソロアルバム。椎名林檎とのデゥオ「獣ゆく細道」やスカパラの曲にボーカリストとして参加した「明日以外すべて燃やせ」も収録。いわばソロ活動の集大成的な作品になっています。正直なところ、エレカシといえば完全に宮本浩次のワンマンバンド、だと思っていただけに、あえてソロアルバムをリリースしたのはかなり意外でした。オリコンでは初動売上3万5千枚で3位初登場。直近のエレカシのオリジナルアルバムが初動売上2万3千枚(4位)でしたので、なんとバンド作を上回る初動売上を記録するという結果に。それだけ「ソロ」としての宮本浩次に注目していた方が多かった、ということでしょうか。

続いて4位以下の初登場盤です。まず7位にめいちゃん「大迷惑」がランクイン。動画投稿サイトへの歌唱動画の投稿で人気を集め、You Tuberとしても活躍する男性シンガー。CD販売数5位、ダウンロード数34位、PCによるCD読取数39位。オリコンでは初動売上9千枚で7位初登場。

8位にはMYTH&ROID「MUSEUM-THE BEST OF MYTH&ROID-」が初登場。プロデューサーのTom-H@ckを中心とした「コンテンポラリー・クリエイティブ・ユニット」だそうで、主にアニソンを中心に歌うユニット。本作が初のベストアルバム・・・といっても、いままでオリジナルアルバムは1枚しかリリースしていないのですが・・・。CD販売数8位、ダウンロード数6位、PCによるCD読取数36位。オリコンでは初動売上4千枚で10位初登場。前作「eYe's」の8千枚(6位)よりダウンしています。

今週の初登場盤は以上ですが、一方ロングヒット盤は、まずKing Gnu「CEREMONY」。先週の3位からワンランクダウンの4位ながらも、これで今週8週目となるベスト10ヒットになっています。ダウンロード数はまだ2位をキープしているほか、PCによるCD読取数は7週連続の1位に。強さを見せつけています。

さらにOfficial髭男dism「Traveler」は先週からワンランクダウンながらも6位をキープ。これで22週連続ベスト10入りという驚異的な強さを誇っています。なにげにCD販売数もいまだに7位にランクイン。オリコンでも今週8位にランクインし、とんでもない大ヒットとなってきています。

今週のHot Albumsは以上。チャート評はまた来週の水曜日に!

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2020年3月11日 (水)

ヒゲダンが今週も4曲同時にランクイン!

今週のHot100

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

先週、4曲同時ベスト10入りという快挙を果たしたOfficial髭男dismですが、今週も先週に続いて4曲同時ランクイン!まず2位に「I Love...」が先週と変わらずランクイン。ダウンロード、ストリーミング及びYou Tube再生回数は先週から変わらず1位をキープしています。「Pretender」は3位から4位にランクダウン。ただし、ストリーミング数3位、You Tube再生回数2位は先週から変わらず。ダウンロード数も7位から5位に再びアップしています。さらに「宿命」9位、「イエスタデイ」10位は先週から変わらず。結果、4作同時のベスト10入りとなりました。

そんな中で1位を獲得したのはJO1「無限大」。韓国で話題となったオーディション番組「PRODUCE 101」の日本版、「PRODUCE 101 JAPAN」から登場した男性アイドルグループのデビュー作。CD販売数1位、ダウンロード数17位、ストリーミング数54位、PCによるCD読取数2位、Twitterつぶやき数1位を獲得。最初の曲の入りは今風のリズムで、K-POPからの影響も感じる反面、曲がはじまると完全にJ-POPに早変わりしてしまう点が、「世界の頂点を狙う」とプロモーションでは言っている割りには、完全に国内向け仕様になっているのは、日本の市場だけで十分に利益が出ちゃうからなんでしょうね。オリコン週間シングルランキングでは同作を収録した「PROTOSTAR」が初動売上32万7千枚で1位獲得。

3位にはMr.Children「Birthday」がランクイン。CDリリースとしては「himawari」以来、約2年半ぶりとなるシングル。映画ドラえもん「のび太の新恐竜」主題歌。なんとドラえもん映画主題歌をミスチルが歌うということで話題となっている作品。ただ、CD販売数は3位、ラジオオンエア数4位、PCによるCD読取数1位、Twitterつぶやき数38位と、ミスチルの新譜、という割には伸び悩みました。オリコンでも初動売上6万7千枚で2位。前作「himawari」の初動12万1千枚を大きく下回っています。ただ、映画主題歌のため、そちらの権利関係もあるのかもしれませんが、CDリリースのみ、配信は一切なし、You Tube配信もなし、というのはCDを「アイテム」として売るアイドル系ではない彼らにとってあまりに時代遅れのように感じてしまいます。特にドラえもん映画主題歌のメインターゲットの年代は、もう誰もCDなんて買わないと思うのですが・・・そういう層にあえてCDを買わせようとしているのかもしれませんが、正直、CDをなぜそこまでして守らなくてはいけないのか、最近、理解できなくなってきています・・・。

続いて4位以下の初登場曲ですが、まず7位に祭nine.「てっぺんニューデイズ」がランクイン。東海地方を中心に活動する男性アイドルグループBOYS AND MENの弟分的なアイドルグループ。CD販売数2位ながらもラジオオンエア数31位、PCによるCD読取数76位、Twitterつぶやき数61位で総合順位はこの位置に。オリコンでは初動売上6万1千枚で3位初登場。前作「ゴールデンジパングソウル」の7万7千枚(2位)からダウンしています。

さらに8位にはUVERworld「AS ONE」がランクイン。映画「仮面病棟」主題歌。CD販売数及びPCによるCD読取数4位ながらもダウンロード数8位、ストリーミング数23位、ラジオオンエア数30位、Twitterつぶやき数23位で総合順位も8位に。オリコンでは初動売上2万3千枚で4位初登場。前作「ROB THE FRONTIER」(4位)から横バイ。

今週の初登場曲は以上。一方、ロングヒット曲ではまずLiSA「紅蓮華」。今週も先週から変わらず5位をキープ。ただしストリーミング数は4位をキープした一方、ダウンロード数は2位から4位にダウン。You Tube再生回数は16位と少々足踏み気味。そしてKing Gnu「白日」は4位から6位にダウン。ストリーミング数は相変わらず2位、You Tube再生回数も4位から3位にアップと強さを見せつけるものの、ダウンロード数は6位から9位にダウンしています。

今週のHot100は以上。明日はHot Albums!

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2020年3月10日 (火)

oasis曲もカバー!

Title:Acoustic Sessions
Musician:Liam Gallagher

昨年リリースしたソロ名義でのアルバム第2弾「Why Me? Why Not.」も大ヒットを記録。また、内容面でも高い評価を受け、ソロミュージシャンとしてのキャリアも確固たるものとしつつあります。今回のアルバムはそんな中、1月30日にサプライズでリリースされたアコースティックアレンジによる企画盤。いきなり登場したリアム・ギャラガーの新譜に、ビックリしてしまいました。

そしてさらに驚きなのはその選曲。1曲目はいきなりoasisの「Cast No Shadow」からスタート。その後は彼のソロ最新作「Why Me? Why ot.」からNow That I've Found You」「Alright Now」とソロ曲が続くのですが、その後に再び登場してくるのがoasis曲。「Sad Song」にさらにoasisの代表曲の1つと言っていい「Stand By Me」が登場。その後は「Once」「Meadow」とソロ曲が続いてアルバムの幕は下りるのですが、全7曲中3曲までがoasis曲…要するにノエル・ギャラガー作の曲を歌うという点にもかなり驚かされます。

このように同じアルバムにoasis曲と自身のソロ曲を並べて収録するあたり、ソロ活動におけるかなり強い自信を感じることが出来ます。否応なしに聴き比べが出来てしまう状況になるわけですから、ソロ曲の出来が悪ければ、当然、その差が一目瞭然となってしまう訳です。そんな中であえてoasis曲とソロ曲を並べて収録するあたり、「どうだ、ノエルの曲と比べて、決して悪くないだろう」というリアムの自信と主張を感じることが出来ます。

正直言って、まず最初、「Cast No Shadow」を聴くと、「ああ、やはりoasisの曲はいいなぁ…」という感傷的な気持ちになってしまいます。アコースティックセッションですが、ストリングスとピアノも入った爽やかなアレンジに仕上がっており、メロディーラインの美しさも際立つような出来栄えになっているだけに、メロディーの良さがより前面に出ている楽曲になっていました。しかし、その後の「Now That I've Found You」「Alright Now」を聴くと、確かにリアムの自信の理由がわかります。そのメロディーラインの良さは決して「Cast No Shadow」と比べて劣っているわけではありません。特にアコースティックなアレンジになっているがために、メロディーの良さはより前面に出ていますし、なによりもリアムのボーカルの味がよりはっきりと感じられるアレンジになっていました。

しかし、その後「Sad Song」がはじまると、やはりリアムの方が、まだ一枚上手だな…ということを率直に感じてしまいます。続く「Stand By Me」といい、聴き慣れている、という部分は否定できないものの、その感傷的なメロディーといい、インパクトのあるフレーズといい、ノエルの天性の才を再認識させられます。もっとも、一方でやはりリアムのボーカルもまた天性のもの。ノエルソロ曲と比べると、やはり抜群の素晴らしさを感じてしまいます。ノエルの曲が…という以前にoasisはやはり素晴らしい!ということを再認識させられました。

もっともリアムソロ曲も決して大きく劣っているわけではなく、このアルバムの中でいい勝負を繰り広げているのも間違いありません。特にリアムのボーカリストとしての素晴らしさがアコースティックアレンジにより、より際立つ結果となっており、oasis曲、リアムソロ曲も含めて、非常に素晴らしい傑作アルバムとなっていました。個人的には下手すれば「Why Me? Why Not.」よりも良く感じてしまったくらいで。リアムギャラガーのボーカリストとしての天性の才を再認識すると共に、oasis不在があらためて残念に感じる作品。いつかは再結成するように思うのですが……。とりあえず配信限定のアルバムですが、oasis好きなら絶対チェックすべき作品です。

評価:★★★★★

Liam Gallagher 過去の作品
AS YOU WERE
Why Me?Why not.


ほかに聴いたアルバム

Je Suis Africain/Rachid Taha

また今回も2019年各種メディアの年間ベストの後追いで聴いた1枚。Music Magazine誌ワールドミュージック部門第9位。難病のため2018年に59歳という若さでこの世を去った、フランスで活躍していたアルジェリア出身の男性シンガーによる遺作。基本的にはアラブ音楽をベースとして哀愁感ただようメロディーラインを聴かせつつも、楽曲によってはトライバルなリズムで、アフリカからの影響も強く感じさせるような楽曲も。聴かせる哀愁メロとダイナミックなサウンドのバランスも実にユニークな作品でした。

評価:★★★★★

Heavy Is the Head/Stormzy

イギリスのグライムシーンの代表的なミュージシャンで、イギリスの最高峰の音楽賞「BRIT Award」で「英国ソロ男性アーティスト賞」「年間最優秀英国アルバム賞」するなど高い評価を受けているラッパーによる最新作。今時なトラップのリズムを取り入れつつ、メロウな歌とラップで物悲しく聴かせる楽曲の数々が魅力的。強いビートを主軸にしつつ、ピアノなどを取り入れた悲しげで重厚感のあるタイトなサウンドが彼の力強いラップを支えています。透明感あるメロウなメロディーラインはアメリカのトラップシーンとはまた異なる魅力を感じさせる1枚でした。

評価:★★★★★

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2020年3月 9日 (月)

アラフィフの飄々とした雰囲気で

Title:202020
Musician:斉藤和義

2020年にリリースされた自身20年目のアルバム…とまさにひねりなし、直球のアルバムタイトルが印象的な斉藤和義のニューアルバム。前作「Toys Blood Music」ではキャリア初となるアルバムチャート1位を獲得するなど、ここ最近、その人気が定着しつつあります。ただ一方で、どこか飄々としたスタイルが、彼が年を取るにつれ鮮明になってきたように感じます。昨年は寺岡呼人の呼びかけにより結成されたカーリングシートンズとしてアルバムをリリースし、ライブツアーも実施。その活動はより自由度を増しているような感じがします。

今回のアルバムにしても、アラフィフのおやじの飄々とした雰囲気が内容に反映されている印象を強く受けました。その中でももっとも印象的だったのが1曲目と最後に収録されているカバー。まず1曲目は1974年から75年に放送されて大きな話題となったドラマ「傷だらけの天使」の主題歌をカバー。さらにラストには1971年に放送されたテレビアニメ「アンデルセン物語」のエンディングテーマ「キャンティのうた」をそれぞれカバーしています。どちらも彼が子供時代に放送されたテレビ番組で流れた曲。アラフィフという彼の年齢をあえて前に押し出したような選曲となっており、そういう選曲からして、どこか飄々とした雰囲気を感じさせます。

そのほかの曲にしろ、彼らしい率直な思いを表現した自由度の高い歌詞が「飄々とした」というイメージを強めています。例えばファンキーなリズムがカッコいい2曲目の「万事休す」は、タイトル通り、日常の「万事休す」な出来事をファンクなリズムにのせて歌うユニークなナンバー。さらに「シャーク」は日々のぼやきをそのまま歌にのせた楽曲となっており、これまた彼らしい飄々とした雰囲気のナンバーになっています。

アルバム全体としては打ち込みを多く取り入れた前作「Toys Blood Music」から一転、ギターサウンドを主軸に据えたギターロックの作品がメインとなった本作。楽曲としても「小さな夜」は恋人の日常を描写した彼らしい優しさを感じるラブソングですし、アニメ「ちびまる子ちゃん」のエンディングテーマともなっている「いつもの風景」もタイトル通りの日常を描写した軽快なポップチューン。斉藤和義の世界観と「ちびまる子ちゃん」の世界観のちょうど交点にあたるような部分を歌で切り取った、彼らしいナンバーになっています。

そういう意味でも今回のアルバムは、実に斉藤和義らしいアルバムになったように感じます。また一方で、マンネリになることをおそれず、あえて自分らしさをそのまま表現しているスタイルにも、どこかアラフィフの彼らしい肩の力の抜けた自由さ、飄々とした雰囲気も感じてしまいました。一方で「アレ」のようなエレクトロチューンをさりげなく入れてくるあたりにも、決して過去をなぞるだけのスタイルではないことも強くアピールしているようにも感じました。

そしてその結果、その斉藤和義らしさが非常に良いようにアルバムに作用しているアルバムになっていたようにも感じます。やはり彼が慣れたスタイルでの楽曲であるだけに、歌詞にしろサウンドにしろとてもしっくりしたものを感じますし、また何より彼が自由に、楽しんで曲づくりをしていることを感じる作品になっていました。個人的にここ数作、悪くはないけどいまひとつピンと来ないアルバムが続いていた斉藤和義ですが、本作は「ARE YOU READY?」以来の傑作アルバムに仕上がっていたように感じます。アラフィフの彼の飄々としたスタイルがいい意味で味になっていた、そんな傑作でした。

評価:★★★★★

斉藤和義 過去の作品
I (LOVE) ME
歌うたい15 SINGLES BEST 1993~2007
Collection "B" 1993~2007
月が昇れば
斉藤“弾き語り”和義 ライブツアー2009≫2010 十二月 in 大阪城ホール ~月が昇れば 弾き語る~
ARE YOU READY?
45 STONES
ONE NIGHT ACOUSTIC RECORDING SESSION at NHK CR-509 Studio
斉藤
和義

Kazuyoshi Saito 20th Anniversary Live 1993-2013 “20<21" ~これからもヨロチクビ~ at 神戸ワールド記念ホール2013.8.25
KAZUYOSHI SAITO LIVE TOUR 2014"RUMBLE HORSES"Live at ZEPP TOKYO 2014.12.12
風の果てまで
KAZUYOSHI SAITO LIVE TOUR 2015-2016“風の果てまで” Live at 日本武道館 2016.5.22
斉藤和義 弾き語りツアー2017 雨に歌えば Live at 中野サンプラザ 2017.06.21
Toys Blood Music
歌うたい25 SINGLES BEST 2008~2017
Kazuyoshi Saito LIVE TOUR 2018 Toys Blood Music Live at 山梨コラニー文化ホール2018.06.02
KAZUYOSHI SAITO 25th Anniversary Live 1993-2018 25<26 〜これからもヨロチクビーチク〜 Live at 日本武道館 2018.09.07
小さな夜~映画「アイネクライネナハトムジーク」オリジナルサウンドトラック~
弾き語りツアー2019 "Time in the Garage" Live at 中野サンプラザ 2019.06.13


ほかに聴いたアルバム

Suchmos THE LIVE YOKOHAMA STADIUM 2019.09.08/Suchmos

タイトル通り、昨年の9月に横浜スタジアムで行われたSuchmosのライブを収録した、彼ら初となるライブアルバム。基本的には原曲から大きく変わった感じはなく、彼らの独特のグルーヴ感はもちろんライブでも健在なのですが、原曲よりもバンド色は強くなった印象も。スタジアムよりも、もうちょっと狭い箱の方が似合う印象もあるのですが、今の彼らの人気だと、なかなかそういうライブハウスでは演れないだろうなぁ。

評価:★★★★

Suchmos 過去の作品
THE KIDS
THE ASHTRAY
THE ANYMAL

BORDERLESS/雨のパレード

昨年1月にベースの是永亮祐脱退後、初となるフルアルバム。以前から様々な音楽性を取り入れた「意識高い系」という印象のあった彼らですが、今回のアルバムもAORやラップ、エレクトロ、ソウルなどの要素をふんだんに取り入れて、今まで以上に幅広いジャンルを取り入れています。まさにタイトル通りの「BORDERLESS」な1枚。ただ以前から気になっている楽曲自体のインパクトの薄さは相変わらずで、1曲1曲は悪くないのですが、アルバム全体としては印象が薄くなってしまっているアルバムになってしまっています。

評価:★★★★

雨のパレード 過去の作品
Change your pops
Reason of Black Color

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2020年3月 8日 (日)

「原点」に立ち返った作品

Title:Amadjar
Musician:TINARIWEN

おそらく、今、「ワールドミュージック」というカテゴリーにおいて最も知名度の高いミュージシャンの1組、TINARIWEN。「砂漠のブルース」と呼ばれ、世界中の音楽ファンに愛されている彼らですが、2012年と2018年にはグラミー賞を受賞しているほか、前々作「Emmaar」と前作「Elwan」はアメリカでレコーディングを実施。いずれも彼らの出身である北アフリカの音楽を主軸にしつつ、西洋のポップスの影響を強く受けたアルバムに仕上がっていました。特に前作「Elwan」では数多くのオルタナ系ミュージシャンがレコーディングに参加し、大きな話題となりました。

ただ、今回のアルバムはそんなここ最近の2作とはちょっと雰囲気の異なる作品となっています。1曲目「Tenere Maloulat」では荘厳な雰囲気の中、メインボーカルの主旋律にあわせて、みんなで合唱するようなスタイルの楽曲。「Amalouna」もギターとパーカッションで奏でるグルーヴィーなサウンドの中で、コールアンドレスポンスにより、みんなで歌い上げるような楽曲に仕上がっています。「Anina」もギターの音色とパーカッションがポリリズムで複雑なグルーヴを奏でる中で、全員でのコーラスをメインとした楽曲に仕上がっています。

どの曲も、ギターやパーカッションでグルーヴ感あるリズムを奏でつつも、全員でのコーラスワークをメインとした構成になっています。まるでフィールドレコーディングのような感触すら覚えるようなアルバムになっており、砂漠の真ん中でみんなで輪になって歌って作り上げたそんな楽曲…まずはそんな印象を受けました。これがほとんどこのアルバムに関して情報を入手しないまま、まずはアルバムを聴いて感じた感想だったのですが、実際、今回のアルバムはモロッコからモーリタニアの首都ヌアクショットへ長距離移動を行い、その中で道中、キャンプを繰り返しながら、星空の下や大きなテントの中で録音を行った作品だそうで…そういう意味では、まさに楽曲を聴いて感じた印象はそのままズバリだった訳で、今回の彼らのレコーディングスタイルがそのまま曲に反映された、彼らの狙いどおりのアルバムだと言えるでしょう。

思えば前々作及び前作はアメリカでレコーディングを行い、基本的に「砂漠のブルース」という彼らのスタンスは変わらなかったものの、やはりどこかあか抜けた部分があったようにも感じます。今回は彼らの生まれ故郷に近い、モロッコやモーリタニアでのレコーディングにより、あえて彼らの原点に立ち返った作品と言えるのかもしれません。実際に、いままでのアルバムの中で断トツで泥臭さを感じさせる作品となっており、TINARIWENのよりコアな部分が表に出てきたアルバムのようにも感じました。

もっとも、だからといって西洋ポップスの要素と手を切ったわけではなく、今回も西洋のポップスミュージシャンがゲストで参加。「Wartilla」ではストリングスの音色が入っており、砂漠の中の一服の清涼感を醸し出しているのですが、ニック・ケイブとのコラボで知られるウォーレン・エリスがバイオリンで参加。ほかにもウィリー・ネルソンの息子で、ニール・ヤング・バンドにも参加しているミカ・ネルソンやSunn O)))のステファン・オマリーらがゲストとして参加しているそうです。

ちなみに今回のアルバムタイトル「Amadjar」とは、彼らの母語であるタマシェク語で“foreign traveler”、“unknown visitor”の意味だそうで、まさに「旅」をテーマとした今回のアルバム。そのテーマ性ゆえに、彼らの「原点」がより表にあらわれたそんなアルバムに仕上がっていました。もちろん、原点に返った泥臭さが魅力的とはいえ、メロディアスでしっかりと聴かせる歌を聴かせてくれており、決して聴きにくいアルバムではありません。毎回、素晴らしい作品を聴かせてくれる彼らですが、今回もまた、非常に魅力的な傑作アルバムを聴かせてくれました。

評価:★★★★★

TINARIWEN 過去の作品
IMIDIWAN:COMPANIONS
TASSILI
EMMAAR
Live in Paris(不屈の魂~ライヴ・イン・パリ)
ELWAN


ほかに聴いたアルバム

Moral Instrucition/Falz

まだ続いています。2019年の各種メディアのベストアルバムで、まだ聴いていなかったアルバムを後追いした1枚。本作はMusic Magazine誌ワールドミュージック部門第4位。ナイジェリアの男性ラッパーによる作品。全編、フェラ・クティのサウンドを大胆にサンプリングし、ナイジェリアの社会の不公正に切り込んだ社会派な作品に。フェラ・クティのサウンドによるトライバルなリズムも気持ちよいのですが、どこか哀愁感も覚えるメロディアスな雰囲気が楽曲全体に漂い、カッコよくもいい意味で聴きやすさも感じたアルバムでした。

評価:★★★★

World War Joy/The Chainsmokers

アメリカの人気DJ2人組ユニットによるニューアルバム。全編エレクトロの軽快なサウンドが魅力的な一方、男女デゥオにより聴かせる、悲しげでメロディアスな歌も魅力的なアルバム。郷愁感あるメロディーラインは日本人受けもしそうな感じ。目新しさはないのですが、リスナーが期待した通りの楽曲をしっかりと届けてくれるといった感じのポップソングが魅力的なアルバムです。

評価:★★★★

The Chainsmokers 過去の作品
Memories...Do Not Open

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2020年3月 7日 (土)

美しい歌を聴かせる

Title:oar
Musician:角銅真実

東京芸大音楽学部器楽科を卒業。その後は舞台や映画への楽曲提供やパーカッショニストとしてceroや原田知世のライブサポートなどにも参加してきた女性シンガーソングライター。今、大きな注目を集めている女性シンガーの一人。本作は、そんな新進気鋭のシンガーソングライターである彼女のメジャーデビュー作となります。

そんな注目のアルバムである本作なのですが、まず今回のアルバムでの最大の特徴となるのが、あくまでも彼女の歌声に焦点を絞ったアルバムである、という点でしょう。彼女の歌声はとても静かなウィスパーボイス気味のボーカル。いわゆる「美声」とはちょっと違った感じなのですが、妙に惹きつけられる魅力を持った歌声になっています。どこかはかなげで幻想的な雰囲気すら感じさせるボーカルを主軸に組み立てている曲がメインのため、全体的にファンタジックな雰囲気の漂う楽曲が魅力的。かつ、アコースティックギターやピアノ、ストリングスをメインとしたアコースティックなサウンドで彼女の歌声を引き立てます。

そんな彼女の歌声が特に際立っていたのが、今回のアルバムに収録されている「いかれたBaby」ではないでしょうか。かのFishmansの名曲のカバーなのですが、ピアノをメインとしたアレンジに静かに聴かせる彼女のボーカルが実に涙腺を刺激するカバーになっています。ダビーなアレンジが印象に残る原曲の中から、素晴らしいメロディーラインという本質のみを取り出したようなカバーとなっており、原曲の素晴らしさを再認識できると共に、彼女のボーカリストとしての表現力の素晴らしさも感じることが出来るカバーになっています。

もちろんオリジナルアルバムも優れたポップチューンが多く収録されています。彼女の歌を聴かせることに主眼を置いたような楽曲であるため、ともすればメロディーラインについてはちょっと地味な印象も否定できないのですが、例えば「寄り道」などは、かなりしっかりとしたフックの効いたメロディーラインが流れており、派手なアレンジを施せば、ヒットチャートでも勝負できそうという印象を受けます。そういう意味では「ソングライター」としての彼女の才もしっかりと感じることが出来ます。

さらに歌詞の世界もまた、彼女の歌声を引き立てるような、シンプルで、かつあえて隙間を残したような世界観を構築しており、強い印象が残ります。具体的な言葉を綴り、その歌詞の中の風景をしっかりと描写しながらも、そこに描かれず、リスナーの想像にゆだねるような部分が多く、この歌詞の世界がまた、彼女の歌の大きな魅力のように感じました。

また、サウンドの方もシンプルなアコースティックサウンド、といっても決して平平凡凡な内容ではありません。彼女と同じ東京芸大出身のジャズドラマー、石若駿(King Gnuの元メンバーだそうです)やギタリストの中村大史、西田修大など、こちらも新進気鋭の実力派が参加しており、例えば「わたしの金曜日」は、明るさを感じる軽快でちょっとジャジーなピアノやストリングスの音色が見事ですし、「6月の窓」などもアコースティックな作風ながらもさりげないジャジーなピアノが楽曲に奥深さを与えています。サウンドの側面からもしっかりと彼女の実力を下支えしています。

決して派手なアルバムではありませんが、間違いなく彼女の才能を感じさせる傑作アルバム。今年のベスト盤候補が早くも登場か?とも思えるような作品でした。これからの活躍が本当に楽しみになってくる1枚。ちなみに苗字の読み方はそのまま「かくどう」だそうで、珍しい名前。ただ、これからその名前を聞く機会は増えそうです。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

Beautiful People/久保田利伸

約4年ぶりとなるニューアルバム。御年57歳となるベテランシンガーだけに目新しさは感じなく、良くも悪くも安定感のあるアルバムになっているのですが、ファンキーなサウンドにはアラ還とは思えない若々しさと現役感があり、一方、メロウに聴かせる楽曲については、キャリアなりの表現力、深みを感じさせる点、そんじょそこらの若手では出せない味わいを感じさせるアルバムになっていました。

評価:★★★★

久保田利伸 過去の作品
Timeless Fly
Gold Skool
THE BADDEST~Hit Parade~
L.O.K.
THE BADDEST~Collaboration~
3周まわって素でLive!~THE HOUSE PARTY! ~

0/Superfly

約4年半ぶりとなるSuperflyのニューアルバムは、正直言って、「どうしちゃったんだろう?」と思うようなポップな作風に。Superflyといえばルーツ志向のゴリゴリのロックなサウンドを出しつつ、ちょっとベタなメロという組み合わせがユニークだったのですが、そのルーツ志向路線はGLIM SPANKYに売り渡しちゃったの??と思うほどの爽やかなポップ路線にシフトしてしまっています。今回、ほぼ全曲、作曲は越智志帆が手掛けているのですが、彼女の音楽的志向は実はこういうポップ路線だったのでしょうか。結果としてSuperflyらしさがほとんどなくなってしまい、平凡なJ-POPアルバムになってしまっているのが実に残念。ただ、ほぼ全曲越智志帆が作詞作曲を手掛けているということは、今後はこういう路線にシフトしてしまうのでしょうか…。

評価:★★★

Superfly 過去の作品
Superfly
Box Emotions
Wildflower&Cover Songs:Complete Best 'TRACK3'
Mind Travel
Force
Superfly BEST
WHITE
黒い雫 & Coupling Songs:`Side B`
Superfly 10th Anniversary Greatest Hits “LOVE, PEACE&FIRE”


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2020年3月 6日 (金)

ダークサイドがさく裂

Title:まだいけます
Musician:阿部真央

途中、ベスト盤のリリースもはさみつつ、約1年10か月ぶりとなる阿部真央の新譜。阿部真央といえば、デビュー当初は揺れ動く10代の女性の素直な心境を歌にしつつ、最近は、その「女性の心境」という部分そのままに、赤裸々で攻撃的な本音をギターサウンドにのせて歌い上げるというスタイルを確立してきました。ベスト盤を挟んでリリースされた今回のアルバムも、そんな彼女の攻撃的な歌詞が目立つ作品になっています。特にベスト盤リリース後リリースされたシングルは明るい曲が多かったことから、アルバム収録曲ではあえて攻撃性の高い曲を作成してきたとか。まさにそんな彼女のダークサイドがさく裂したのが本作と言えるでしょう。

そんなアルバムの1曲目は、まさにタイトルそのまま「dark side」。

「あなたの中の私を勝手に愛さないでよ
あなたの中の私はもう息をしてないわ
あなたの中の私はあなたが仕立てたまがい物
あなた何を見てたの? それは私じゃない」
(「dark side」より 作詞 阿部真央)

という、攻撃的ながらも、女性のコアな本音の部分を赤裸々に歌い上げた歌詞が非常に強いインパクトを生んでいます。ある意味、この歌詞のテーマ性はそのまま次の「お前が求める私なんか全部壊してやる」にも続いており、こちらはタイトルそのまま。「dark side」で歌われたテーマがさらに攻撃的に形を変えており、阿部真央のダークサイドがさく裂した曲に仕上がっています。

ダークサイドな側面はラブソングにも表れており、「どうにもなっちゃいけない貴方とどうにかなりたい夜」は非常に明るい曲調ながらも、それと反するようなエロチシズムも感じる刺激的なラブソングになっています。貴方と私の関係性については歌詞の中で詳しく描かれていませんが、だからこそ聴き手の想像力がひきたてられる楽曲になっています。

ほかにも「私の売りは孤独」と歌う「テンション」や、おそらくあえてデモ音源的、シークレットトラック的に収録されているラストナンバー「おもしろい彼氏」など、彼女らしさを感じるヘヴィーなラブソングもアルバムの中に多く収録されており、女性心理の奥の奥の部分をそのままさらけ出したような歌詞は、私のような男性リスナーでもドキリと来ます。若干愛が重いなぁ…と感じる部分もあるのですが、それは歌の世界だからこそ(?)、彼女の大きな魅力にもなっています。

ただ、そんなダークサイドがさく裂した曲が並びつつ、全体的な曲調は決して暗くありません。それはアルバム収録曲をあえてダークにしようとするきっかけとなった明るいシングル曲がアルバムの中で大きなインパクトとなっているからでしょう。「どうしますか、あなたなら」も明るいギターロックの楽曲ですし、「君の唄(キミノウタ)」も前向きな歌詞ともども、いかにもJ-POPといった感じの楽曲。ほかにも「pharmacy」なども前向きな歌詞も含めて90年代のJ-POPそのままのような楽曲。ここらへん、ベタといった印象を強く受けます。またアルバム全体としてもシンプルなギターロックナンバーが多いため、目新しさはなく、ともすれば「平凡」とすら感じてしまう点は否めません。

しかし、ギターロックという形でアルバム全体の統一感もあり、かつ「ダークサイド」の歌詞が大きなインパクトとなっている点、そしてなにより、楽曲としてメロディーラインにインパクトもあり、勢いもあることから、アルバム全体としては非常に強く印象に残る作品に仕上がっていたように感じます。なによりも阿部真央らしさがしっかりと表れた作品だった本作。ベスト盤で活動にひとつの区切りをつけた直後の作品ですが、これからのアベマに期待できそうな、そんなアルバムでした。

評価:★★★★★

阿部真央 過去の作品
ポっぷ
シングルコレクション19-24
おっぱじめ
Babe.
YOU
阿部真央ベスト


ほかに聴いたアルバム

はなたば/シャムキャッツ

シャムキャッツの新譜は5曲入りのミニアルバム。フォークソング、というよりはサニーデイ・サービス直系のフォーキーなポップソングにちょっとサイケデリックさを加えたギターロックがのるスタイルは相変わらず。暖かみのあるサウンドと歌詞も印象に残ります。ここ最近、注目を集めるインディーバンドであって、その評判も間違いないのですが、ただ今回のアルバムを聴くと、もうちょっと彼らだけの個性やインパクトが欲しくなってしまいます…。彼らのツアーを追ったDVDもついているのですが、ただライブ風景を撮っただけの悪い意味でインディーらしい内容で、こちらはあまりおもしろくなかったな。

評価:★★★★

シャムキャッツ 過去の作品
Friends Again
Virgin Graffiti

天気の子 complete version/RADWIMPS

2019年に公開された新海誠監督による映画「天気の子」。大ヒットした映画「君の名は。」に続き、主題歌をRADWIMPSが担当。前作同様、1つの映画に複数の主題歌を提供する形だったのですが、本作はその主題歌のみピックアップ。先日発売されたサントラでは省略バージョンだった主題歌をフルバージョンで収録したアルバムとなります。

ちょっとファンタジックな雰囲気といいそのまま歌われるとちょっと「重い」感じもする歌詞の世界といい、実にRADWIMPSらしいと感じる曲が収録。個人的には「君の名は。」も「天気の子」もまだ見ていないのですが、このRADWIMPSの歌詞の世界観が新海誠監督の世界観ともマッチするのでしょう。ただ、正直、方向性として前作「君の名は。」と似ている感じもありますし、RADWIMPSの楽曲も女性ボーカルを入れたり英語詞にしたりと、ちょっといじりすぎて狙いすぎな感じもあります。映画自体も大ヒットしたものの前作を超えられず、RADWIMPSの曲も前作ほどのヒットにはならなかったにも、全体的に2匹目のどじょうを狙いすぎた感があったのかも??

評価:★★★★

RADWIMPS 過去の作品
アルトコロニーの定理
絶対絶命
×と○と罰と
ME SO SHE LOOSE(味噌汁's)
君の名は。
人間開花
Human Bloom Tour 2017
ANTI ANTI GENERATION
天気の子

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2020年3月 5日 (木)

K-POP勢が目立つチャートに

今週のHot Albums

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

今週はK-POP勢が目立つアルバムチャートとなりました。

まず1位初登場となったのは韓国の大人気男性アイドルグループBTS「MAP OF THE SOUL:7」。先週は配信のみの売上で3位にランクインしましたが、今週はCD販売数も1位獲得。ダウンロード数4位、PCによるCD読取数も3位を獲得し、総合順位で見事1位獲得となりました。アメリカのビルボードチャートでも1位を獲得するなど勢いが止まらない彼ら。ただちょっと気になるのですが、本作は国内盤のリリースはなく、基本的に輸入盤オンリー。BillboardのCD販売数は輸入盤などの特殊販路での売上は含まれないはずなのですが、なぜ今回はCD販売数の対象となったのでしょうか?オリコン週間アルバムランキングでも37万6千枚を売り上げて1位獲得となっています。

このBTSを筆頭に、今週はK-POP勢が目立ちました。というか、BTS人気にあやかるために、あえてリリース日を重ねてきたのか?まず4位に韓国の男性アイドルグループCNBLUEのメンバーであるチョン・ヨンファ(from CNBLUE)のソロミニアルバム「FEEL THE Y'S CITY」がランクイン。CD販売数3位だったものの、ダウンロード数13位、PCによるCD読取数41位に留まり、総合順位は4位に。オリコンでは初動売上1万6千枚で4位初登場。前作「Summer Calling」の2万1千枚(3位)からダウンしています。

さらに9位にはこれまた韓国の男性アイドルグループSUPERNOVAのメンバーソンジェ from SUPERNOVA「男の花道~SUNGJE'S JAPANESE SONGBOOK~」がランクイン。こちらは彼が「ハナミズキ」「やっぱ好きやねん」など昭和から平成のJ-POPや日本の歌謡曲のカバーを収録したアルバム。CD販売数は7位だったもののダウンロード数31位、PCによるCD読取数は圏外となり、総合順位は9位に。オリコンでは初動売上7千枚で8位初登場。前作「ユメノカイカ~夢が夢で終わらないように~」の1万6千枚(4位)からダウンしています。

さて、続いて2位に行きましょう。2位初登場はFling Posse「Fling Posse -Before The 2nd D.R.B-」。男性声優によるラッププロジェクト、「ヒプノシスマイク -Division Rap Battle-」から、渋谷に拠点を置いているという設定のグループによるアルバム。CD販売数2位、ダウンロード数1位、PCによるCD読取数4位。オリコンでは初動売上5万枚で2位初登場。Fling Posse・麻天狼名義だった前作「Fling Posse VS 麻天狼」の5万5千枚(3位)からダウンしています。

そしてKing Gnu「CEREMONY」が先週よりワンランクダウンで3位に。ダウンロード数は1位から3位、CD販売数は3位から5位にダウンしたものの、PCによるCD読取数は1位をキープし、ヒットを続けています。さらに今週、なんと昨年1月にリリースされた彼らの前作「Sympa」が先週の13位から10位にランクアップしベスト10に返り咲き!King Gnuはこれで今週、2枚同時ベスト10入り。その人気を見せつけました。

続いて4位以下の初登場です。まず6位には嵐「Reborn Vol.1」がランクイン。これは先日リリースされた彼らのデビュー作「A-RA-SHI」のリメイク「A-RA-SHI:Reborn」をはじめ、彼らの過去の曲をリメイクした3曲を収録した配信限定リリースのEP。ダウンロード数で2位にランクインし、配信オンリーながらもベスト10入りしてきました。

7位にはスターダストプロモーション所属の男性アイドルグループDISH//「CIRCLE」がランクイン。彼ら初となるミニアルバム。CD販売数は4位だったもののその他は圏外となり総合順位はこの位置に。オリコンでは初動売上1万2千枚で5位初登場。前作「Junkfood Junction」の3万3千枚(2位)からダウン。

8位は煌めき☆アンフォレント「新宇宙±ワープドライブ」が初登場。東海地方を中心に活動する女性アイドルグループの初となるEP盤。CD販売数6位ながらも、その他のチャートは圏外となり総合順位は8位に。オリコンでは初動売上9千枚で7位初登場。

今週の初登場は以上。一方、ロングヒット組は、Official髭男dism「Traveler」が先週と変わらず5位をキープ。CD販売数は5位から8位にダウンしましたが、ダウンロード数5位、PCによるCD読取数2位は先週から変わらず。まだまだロングヒットは続きそうです。

今週のHot Albumsは以上。チャート評はまた来週の水曜日に!

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2020年3月 4日 (水)

ヒゲダンが再び4曲同時ランクイン

今週のHot100

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

新型コロナウイルスによる自粛ムードなんのその、変わらぬ勢いを続けているOfficial髭男dism。今週はなんと再びベスト10のうち4曲同時ランクインとなっています。

まず「I Love...」は先週と変わらず2位をキープしていますが、ダウンロード数及びストリーミング数の1位に加えて、今週はYou Tube再生回数でもついに1位獲得。ラジオオンエア数3位、PCによるCD読取数2位と上位にランクインしており、こちらもロングヒットが期待できそう。さらに「Pretender」も3位をキープ。You Tube再生回数はついに1位から陥落したものの2位をキープ。ストリーミング数も先週から変わらず3位。ただしダウンロード数は7位から9位にダウンしています。

さらに先週10位だった「宿命」が9位に再度ランクアップしてきたほか、「イエスタデイ」が11位から10位にアップし再びベスト10入り。これで今週、ベスト10のうち4曲までがヒゲダンという結果となっています。まだまだヒゲダンの快進撃は続いていきそうです。

さて、そんな中でも1位を獲得したのは、こちらはジャニーズ系。Hey! Say! Jump「I am」が1位獲得です。テレビ東京系ドラマ「僕はどこから」主題歌。CD販売数及びPCによるCD読取数1位。ラジオオンエア数は59位、Twitterつぶやき数35位、そのほかはランキング対象外という結果でしたが、総合順位では1位を獲得。オリコン週間シングルランキングでは初動売上20万6千枚で1位初登場。前作「ファンファーレ!」の22万3千枚(1位)からはダウンしています。

続いて4位以下の初登場曲です。まず6位にaiko「青空」がランクイン。彼女らしい切ない歌詞のラブソング。CD販売数5位、PCによるCD読取数6位、さらにラジオオンエア数では見事1位を獲得しています。一方でダウンロード数は21位に留まったほか、今回、ついにストリーミング解禁ということで話題となりましたが、ストリーミング数も32位に留まっています。オリコンでは初動売上2万1千枚で6位初登場。前作「ストロー」の2万1千枚(6位)より微減。

さらに8位には韓国の男性アイドルグループBTSの最新アルバム「Map of the Soul:7」収録曲の「On」が先週の26位からランクアップし、ベスト10入り。ダウンロード数51位、ストリーミング数14位にとどまっていますが、You Tube再生回数3位が大きく影響し、2週目にして8位にランクインしてきました。

一方、ロングヒット曲ですが、King Gnu「白日」は今週、5位から4位に再びランクアップ。ダウンロード数は2位から4位にダウンしましたが、ストリーミング数は2位を維持。ダウンロード数も8位から6位に再びアップしており、総合順位もランクアップ。根強い人気を見せつけています。LiSA「紅蓮華」は逆に4位から5位にダウン。ただしダウンロード数2位、ストリーミング数4位は先週と同順位をキープ。ただ徐々にランクアップしてきたYou Tube再生回数は18位から19位へワンランクダウンと少々足踏みです。

今週のHot100は以上。明日はHot Albums!

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2020年3月 3日 (火)

キンシャサから世界へ!

Title:BANTOU MENTALE(邦題 キンシャサから世界へ!)
Musician:BANTOU MENTALE

今回紹介するのも、各種メディアで年間ベストに選ばれた作品を後追いで聴いた1枚。スタッフ・ベンダ・ビリリやカサイ・オールスターズなどにも参加したコンゴはキンサシャ出身のドラマー、Cubain Kabeyaを中心としてベルギーで結成したバンド。数多くの注目のミュージシャンを世界に送り出しているコンゴですが、またもや注目のバンドが登場してきました。「キンシャサから世界へ!」というかなり仰々しいアルバムタイトルがつけられた本作ですが、今回のアルバムまさにそのタイトルに見合った、非常にカッコいいアルバムとなっていました。

アルバムは、まず抑制的な静かなサウンドの中で、トライバルな雰囲気のボーカルとコーラスで重々しくスタートします。そんな1曲目「Zanzibar」は中盤から徐々にテンポがまし、うねるようなサウンドが展開。そのままなだれ込む「Hallelujah」がしびれるほどカッコいい楽曲に!へヴィーでノイジーな打ち込みのサウンドが展開されるビッグビート風のリズムにコール&レスポンス的なボーカルがのる、Prodigyを彷彿とさせる重厚なサウンドが強いインパクトを与えています。

その後も「Suabala」のようなビッグビートからの影響も感じるような打ち込みを用いた強いビートの楽曲や、「Papa Jo」「Syria」のようなサイケでグルーヴィーなサウンドを聴かせるような楽曲など、分厚いサウンドでロックテイストの強いサウンドの中に、トライバルなリズムやボーカルを加えたような楽曲が目立ちます。また「Yoka chagrin」はダブのテイストの強い作品に。こちらもコールアンドレスポンスなボーカルとコーラスラインにトライバルな雰囲気を感じつつ、哀愁感のあるメロディーが印象に残る楽曲になっています。

全体的には武骨といったイメージの強い楽曲に。荒々しさを感じさせるサウンドは、まさにスタッフ・ベンダ・ビリリやカサイ・オールスターズなどといったコンゴのミュージシャンからの流れを強く意識させるような楽曲になっていると同時に、「Chateau Rouge」のようにエレクトロサウンドを取り込んだ楽曲なども目立ち、どこかあか抜けたバタ臭さも感じる、そんなアルバムになっています。メンバーはアフリカ勢がメインながらも、ベルギーで結成した彼らは、まさにコンゴのサウンドと西洋のサウンドを上手く融合した独特の音楽を作り上げている、といってもいいでしょう。

終盤も、カウベルで軽快なリズムを奏でつつ、サイケなサウンドでグルーヴィーに聴かせる「Bakoko」、そして最後は力強いサウンドに壮大な雰囲気を感じさせる伸びやかなボーカルが印象に残る「Sango」で締めくくり。これでもかというほどに音を重ねたサウンドには、どこか「ベタ」さも感じさせるのですが、最後の最後までダイナミックなサウンドを繰り広げる本作は、素直にそのカッコよさに身をゆだねることのできる傑作アルバムに仕上がっていたように感じました。

まさに邦題の通り、キンシャサから世界を目指すことのできるそんなアルバム。年間ベスト選出の納得のアルバムでした。これがデビューアルバムなのですが、今後もコンスタントに活動を続けるのでしょうか?これからの活躍も非常に楽しみになってくる1枚でした。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

50 - Just Warming Up!/Lucky Peterson

アメリカのブルースミュージシャン、Lucky Petersonのニューアルバム。コンテンポラリー色の強いブルースをメインに、ソウルやゴスペル、R&Bなどの要素を取り入れたブラックミュージック全般を幅広く演奏しているような印象。楽曲によってはなんとラップを取り入れた曲まであり、齢55歳となる彼ですが50代でも「単なるウォーミングアップだ!」といっている彼の音楽に対する柔軟で若々しい姿勢を感じます。ここ数年、コンスタントに作品をリリースし続けているようですが、その積極的な活動はまだまだ続きそうです。

評価:★★★★

Lucky Peterson 過去の作品
EVERY SECOND A FOOL IS BORN

Falaw/Luka Productions

こちらも各種メディアの2019年ベストアルバムを後追いで聴いた1枚。本作は、先日紹介したAster Awekeに続くMUSIC MAGAZINE誌ワールドミュージック部門の2位に選ばれた作品。マリの首都バマコでトラックメイカーやラッパーとしても活躍しているルカ・グィンドによるプロジェクト。ンゴニやジェンベといったマリの伝統的な楽器を用い、同じくマリの吟遊詩人、グリオをゲストに迎えた作品で、トランシーで軽快なリズムにラップを取り入れたスタイルは現代風ながらも、その音色を含め、要所要所にマリの伝統音楽を取り入れたアルバム。全体的には軽快でリズミカルなトライバルのリズムが心地よく、全46分という短さもあり最後の最後まで一気に聴けてしまう作品になっています。サウンド的には若干軽すぎるかな、と感じる部分があったりするのですが、その軽快なリズムに心躍らされるアルバムでした。

評価:★★★★★

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2020年3月 2日 (月)

今回も攻撃性の強い作品に

Title:Music To Be Murdered By
Musician:EMINEM

今年1月17日に、突如サプライズリリースとなったEMINEMのニューアルバム。最近では大物ミュージシャンのアルバムが突然リリースされるケースは珍しい話ではありませんが、それでもSpotifyのニューリリースの項目に、見たことのないEMINEMのアルバムタイトルとジャケットがいきなり登場すると、やはり驚かされます。さらにこのアルバム、Billboardのアルバムチャートで初登場1位を記録。10作連続初登場1位というのはアメリカでは前人未到の記録だそうで、あらためてEMINEMの人気の健在ぶりをうかがわせます。

EMINEMといえば、前々作「Revival」が、内容的に彼らしい攻撃性がなりを潜め、かなり不評な出来に終わりました。しかし、前作「Kamikaze」ではそんなネガティブな世間の批評を思いっきりディスる彼らしい攻撃性が復活。彼のラップ上の人格であるスリム・シェイディも再登場し話題も集め、アルバムの評価も上々でした。そして今回のアルバムもEMINEMらしい攻撃性をさらに強めた楽曲に。前作「Kamikaze」リリース直後から激しいビーフ(ディスりあい)のあったマシン・ガン・ケリーとは「Unaccommodating」でまた容赦ない攻撃を行っているほか、ここ最近の仇敵となっていまっているTyler,the Creatorに対しても、彼の盟友、Earl Sweatshirtと共に「No Regrets」で強烈なディスをあびせかけています。

一方では「Those Kinda Nights」では、かのEd Sheeran、「Lock It Up」ではAnderson .Paakとコラボを行うなど、様々なラッパー、シンガーとのコラボを積極的に実施。特に「Godzilla」では昨年、わずか21歳という若さでこの世を去ったラッパー、Juice Wrldとのコラボが大きな話題に。テクニカルなマシンガンラップを繰り広げるナンバーとなっており、ラッパーEMINEMの実力をこれでもかというほど発揮した作品になっています。

ちなみに今回のアルバムタイトル「Music To Be Murdered By」は、かの映画監督、アルフレッド・ヒッチコックが1958年にリリースした音楽のアルバムタイトルから拝借したものだそうで、実際に、1曲目「Premonition」からいきなりヒッチコック監督の映画を彷彿とさせるような不気味な雰囲気からスタート。女性の悲鳴も聞こえてくる楽曲になっており、その不気味な雰囲気はアルバム全体を通じて流れています。今回の攻撃性の高いアルバムらしい、非常にダークさのあふれる展開となっています。

サウンド的には特に目新しい部分はなく、良くも悪くもいつものEMINEMといった感じ。それがまたいい意味で耳なじみやすい要因にもなっているのですが、一方では「Unaccommodating」ではなんとトラップを取り入れたりもしており、そういう意味では最近のサウンドへのアップデートも感じられる内容になっています。また、全20曲1時間4分というボリュームある内容なのですが、途中、2度、イントロ的な曲が挿入されており、全2部構成に。比較的長めのアルバムながらも2部構成にすることにより、メリハリがつき、聴きやすい内容になっていたように感じました。

そんな中でも特に今回のアルバムで注目度が高いのは「Darkness」でしょう。2017年にラスベガスで起きた銃乱射事件を素材とした物語性の強い歌詞になっており、銃乱射事件の犯人の視線から描きつつ、そこに自らの姿を重ね合わせた私小説的要素を重ね合わせた内容に。物語の不気味さや展開の妙などから、かの名曲「Stan」とも比較される作品になっています。特に本作ではMVを通じて、銃規制の強化を訴える楽曲にもなっており、楽曲としての完成度にうならされつつ、社会性の強いメッセージが強い印象に残る傑作となっていました。

そんな訳で、前作「Kamikaze」同様に、EMINEMらしさが非常に強くあらわれた傑作アルバムに。特に「Darkness」などは彼の作詞面での実力が存分に発揮された名曲に仕上がっていました。移り変わりの激しいHIP HOPシーンにおいて、いまだにトップを走り続ける彼は、ある意味驚異的とも言えるのですが、その加速度がさらに増したといえる本作。まだまだEMINEMはシーンのトップを走り続けそうです。

評価:★★★★★

EMINEM 過去の作品
RELAPSE
RECOVERY

THE MARSHALL MATHERS LP 2
REVIVAL
Kamikaze


ほかに聴いたアルバム

LOVE MORE/Maxim

THE PRODIGYのMCにより約14年ぶり3枚目となるソロアルバム。THE PRODIGYの流れをくんだようなビックビートのリズムを基本に、レゲエや、さらには今、流行のトラップの要素も取り入れるなど意欲的な作品が目立ちます。全体的にはミディアムテンポの曲が多く、ダイナミックかつリズミカルで高揚感のあるTHE PRODIGYと比べると、地味といった印象も受けてしまいますが、THE PRODIGYのイメージを崩さずに、THE PRODIGYとは異なるベクトルを示したという、ある意味、ソロらしい作品になっていました。

評価:★★★★

00959525/FOO FIGHTERS

00959525

FOO FIGHTERSがFoo Fliesと名付けてリリースしているアーカイブス企画の最新作。本作は1995年、彼らのデビューアルバムリリース時のB面曲やレア音源などを集めた作品。サウンド的に非常に若々しさを感じ、勢いを感じさせる作品が並んでいます。一方ではもともと様々なバンドで経験を積んできたメンバーが結成したバンドなだけに、ダイナミックなサウンドにはいい意味で老成を感じさせる部分も。非常に魅力的なEP盤でした。

評価:★★★★★

FOO FIGHTERS 過去の作品
ECHOES,SILENCE,PATIENCE&GRACE
GREATEST HITS
WASTING LIGHT
Saint Cecilia EP
SONIC HIGHWAYS

Concrete and Glod
02050525

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2020年3月 1日 (日)

エチオ・ジャズ、マリの音楽、HIP HOPの融合

Title:Visions Of Selam
Musician:Arat Kilo,Mamani Keita,Mike Ladd

今回紹介するアルバムも、2019年の各種メディアが選出したベストアルバムのうち、まだ聴いていなかった1枚を後追いで聴いた作品。本作は、パリを拠点に活躍するエチオ・ジャズ(エチオピアの伝統的な音楽とジャズを融合させた音楽)を奏でるグループArat Kiloを中心とした異色のコラボにより生みだされたアルバムで、コラボレーションを組んだのは、アフリカはマリの女性シンガーMamani Keitaと、Arat Kiloと同じくパリを拠点として活動するHIP HOPミュージシャン、Mike Laddの3人。エチオピア、マリの音楽にHIP HOPが加わったコラボレーション。タイトルの「Selam」とはエチオピアの公用語、アムハラ語で「平和」を意味するそうで、まさに様々な異なるタイプのミュージシャンと手を組んだコラボは音楽を通じての「平和」を表現している、と言えるかもしれません。

そんな3人のコラボは、それぞれの音楽のジャンルがガッチリと重なりあい、見事な化学反応を果たした素晴らしいコラボに仕上がっています。力強いホーンセッションとリズムをグルーヴィーに奏でるArat Kiloのエチオ・ジャズにのる、Mike Laddのトライバルな雰囲気を漂わせるラップとMamani Keitaの伸びやかなボーカルの組み合わせがしっかりとマッチ。おそらくそんな3人の持ち味が最もいかされた1曲が「Soul Flood」。Arat Kiloのフリーキーさも感じさせるジャズセッションに、ラップと歌がしっかりとマッチしています。

終盤の「Vizeplio」もその3人の持ち味が生かされたナンバーでしょう。バンドのグルーヴィーなサウンドに、Mike LaddとMamani Keitaのコールアンドレスポンスのような掛け合いがのる、疾走感あふれる楽曲。聴いていてなによりも身体が動き出しそうな、リズミカルな楽曲に仕上がっています。

ほかにも「Dou Coula」では、郷愁を感じさせるMamani Keitaの伸びやかな歌声と、Mike Laddの語るような渋いラップが印象に残るナンバーに。こちらは楽曲の「歌」の部分に主軸を置いたような楽曲になっています。「Dia Barani」ではMike Laddが歌にも挑戦。彼の渋いボーカルから絞り出すように歌われる哀愁感あふれる歌声が非常に魅力的に感じます。

一方で「Nafqot」はダビーなサウンドを聴かせるインストのナンバーで、Arat Kiloがまさに主役を務めるような楽曲。ちょっと妖艶さを感じさせるダブのアレンジが魅力的なナンバーになっており、ほかの曲とはまた異なるArat Kiloの魅力を伝えてくる楽曲に仕上がっています。

そんな3組のミュージシャンがそれぞれの持ち味をしっかりと出した楽曲が並ぶアルバムになった本作ですが、ひとつ大きな特徴だったのが、個性豊かな3組が奏でるアルバムであるにも関わらず、それぞれの個性が決してぶつかり合いにならずに、ちゃんとお互いの持ち味を尊重しあいながらコラボしているという点でした。例えばMike LaddとMamani Keitaの掛け合いにしても、この手のコラボでありがちな、緊迫感あるスリリングな掛け合いというよりも(それはそれで魅力的ではありますが)、お互いがしっかり相手を立てているようなデゥオになっており、そこにある種の緊迫感みたいなものは感じません。まさにタイトルの「Selam」=「平和」の通り、メンバー全員が音楽を楽しんでいるような、そんなアルバムに仕上がっていました。

まさに理想的なコラボとなっていた今回のアルバム。年間ベストに選出されるのも納得の傑作アルバムだったと思います。また、このメンバーでのライブがあったらとても気持ちいいんだろうなぁ、とも感じてしまう心地よさ。このコラボ、本作限りなのでしょうか。それだとしたらちょっともったいない・・・。是非、このメンバーで2枚目、3枚目が聴いてみたい、そう強く感じたアルバムでした。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

Bad Vibes Forever/XXXTentacion

2018年に銃撃により、わずか20歳という若さでこの世を去ったアメリカのラッパーXXXTentacion。例の如く、死後も未発表曲でアルバムがリリースされ続けているのですが、これがその死後にリリースされた2枚目となるアルバム。HIP HOPというよりも、哀愁感たっぷりのメロを聴かせる歌モノがメインで、楽曲的にもトラップからロックまで幅広い作風が魅力的。HIP HOPという枠組みを超えて楽しめるアルバムになっているのですが、全25曲というのはちょっと多すぎかも…。1曲あたり1、2分程度の短い曲がメインなので、25曲とはいえ1時間弱という短さなのですが、それでもバラエティーの多さもあって、この曲数だとちょっとゴチャゴチャしてしまったような感じがします。以前のアルバムは、それこそ30分程度か、前作「SKINS」に至っては20分弱という内容だっただけに、簡潔に楽しめたのですが、今回は未発表曲を詰め込み過ぎたような感があります。もうちょっとすっきりと整理してほしかったなぁ。

評価:★★★★

XXXTENTACION 過去の作品

SKINS

WHO/THE WHO

世界のロック史を代表するバンドによる約13年ぶりとなるニューアルバム。ダイナミックなサウンドに力強いボーカルは現役感たっぷりで、間違いなくオールドファンにとっては、まだ現役バリバリで活動するメンバーの姿がうれしいアルバムになっている…のですが、やはり楽曲的には昔ながらのロックを体現化しました、といった感じで、良くも悪くも「骨董品」といった印象も。サイケやロックンロール、ブルースロックなども内包した幅広い音楽性を聴かせる点はさすがですが、なんか、昔ながらのロックシーンの「同窓会」的なアルバムといった印象も…。

評価:★★★★

THE WHO 過去の作品
Endless Wire

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