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2020年2月23日 (日)

エチオピアのベテランシンガーによる新作

Title:Chewa
Musician:Aster Aweke

毎年、1月から2月あたりに各種メディアで前年度のベストアルバムに選定された作品の中で、まだ聴いていなかった作品のチェックを行っているのですが、今回紹介する作品はそれで聴いてみたアルバム。MUSIC MAGAZINE誌の年間ベストワールドミュージック部門の第1位となったアルバム。エチオピアの女性シンガー、Aster Awekeのニューアルバムです。

1959年生まれで現在、60歳となるベテラン女性シンガーの彼女。80年代から90年代にかけてはアメリカを拠点にも活動していたそうですが、97年からは故郷エチオピアに拠点を戻し、変わらぬ活動を続けています。今回のアルバムは約6年ぶりとなるニューアルバムとなったようです。

エチオピアのポップソングといえば、こぶしを利かせた哀愁感たっぷりのメロディーラインが特徴的で、どこか日本の演歌にも通じるような、日本人にとってもどこか懐かしさを感じさせるフレーズが特徴的。今回のアルバムでも1曲目の「Nafkot」からいきなりこぶしの利いたボーカルで哀愁感たっぷりに歌い上げるスタイルがまず耳に残ります。女性に対して若干失礼な表現かもしれませんが、60年という月日を重ねた円熟味を感じる表現力たっぷりのボーカルが大きな魅力。どちらかというとハイトーン気味で、ドスを利かせたといった感じではないのですが、透き通ったような歌声で繰り広げる感情たっぷりのボーカルが耳に残るアルバムとなっています。

ただ、こぶしを利かせた哀愁感たっぷりのフレーズは日本人とって、どこか琴線に触れる部分はあるものの、全体的にはアラブの色合いの濃いサウンドやフレーズが印象に残ります。「Tiwsta」も演歌ばりの哀愁感たっぷりのメロやサックスのむせびなくような音色を聴かせてくれるのですが、アラビアンな空気が匂いたつ楽曲に、日本人にとっては強いエキゾチックな雰囲気も感じさせます。「Widdid」も、軽快なメロディーを聴かせるナンバーなのですが、こちらもアラブ色の強いポップスに。ただこの異国情緒にあふれるサウンドも大きな魅力、と言えるのかもしれません。

ブルージーなギターとピアノでしんみり聴かせるAster流のブルースナンバーとも言える「Yewedede」は、まさにその彼女の表現力をあますところなく聴かせる楽曲の真骨頂といった感じでしょうか。その反面、終盤は比較的ポップで明るいナンバーが続き、ラスト2曲の「Fasiledes」「Lib Weled」はむしろポップで明るい軽快なナンバーで締めくくられています。そのためアルバムを聴き終わった感じとしてはむしろ明るい印象を受けるような作品になっていました。

サウンド的には打ち込みのサウンドが中心になっているのですが、こちらは正直言ってちょっと安っぽい感じのサウンドに。あえて彼女のボーカルをメインにするために控えめなサウンドにしているのかもしれませんが、彼女のボーカルを支えるにしても、ちょっと物足りなさも感じる部分もありました。この点はちょっと残念だったかもしれません。

ただ全体的には感情たっぷりのボーカルをしっかりと聴かせるオーソドックスなポップチューンといった感じがしました。これが年間1位か…と思うと、目新しさもなく、2019年という時代性も感じられず、物足りなさも感じてしまいます。いや、良作であることは間違いないので、聴いて損のない作品だとは思うのですが…。

評価:★★★★


ほかに聴いたアルバム

Cotillions/William Patrick Corgan

William Patrick Corganって誰だよ?と一瞬思うかもしれませんが、こちら、かのスマッシング・パンプキンズのボーカル、ビリー・コーガンによるソロアルバム。アコースティックなサウンドをバックに、スマパンを彷彿とさせるメランコリックなメロディーラインのポップスを聴かせてくれるアルバム。バンドサウンドで分厚く装飾されたスマパンの楽曲から、コアなメロディーラインの部分のみを取り出したアルバム、とった印象。まさに美メロという表現がピッタリの、ビリー・コーガンのメロディーメイカーとしての魅力を存分に感じさせてくれるアルバムになっています……が、比較的似ているような曲が並んでおり、かつ全17曲61分というのはちょっと長すぎたかも。45分程度の長さに留めれば傑作アルバムだったと思うのですが…。

評価:★★★★

Hidden History Of The Human Race/Blood Incantation

アメリカのデスメタルバンドによる2枚目のアルバム。終始、デス声が流れる中、ヘヴィーでダイナミックなバンドサウンドが流れる作品。わずか4曲入りのアルバムで、正直なところ、特に複雑に展開するような構成もないのですが、変な様式美などに陥ることなく、迫力あるサウンドを終始楽しめる良作に仕上がっていました。

評価:★★★★

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