ロットンへの愛情を強く感じる
Title:ROTTENGRAFFTY Tribute Album ~MOUSE TRAP~
2019年にデビュー20周年を迎えたロックバンド、ROTTENGRAFFTY。2015年にリリースしたミニアルバム「Life is Beautiful」がバンドで初となるベスト10ヒットを記録するなど、ここ数年、人気が上昇してきています。そんな彼らのデビュー20周年を記念してリリースされたのがこのトリビュートアルバム。Dragon Ashや10-FEET、ヤバイTシャツ屋さんといった豪華なメンバーがロットンの曲をカバーしています。
そんな今回のトリビュートアルバムなのですが、率直に言ってしまうとROTTENGRAFFTYのオリジナルより良いんではないか?と思ってしまうほどの出来栄えでした。ROTTENGRAFFTYのアルバムは、何作か聴いているのですが、正直言ってしまうといずれのアルバムも「これ」といった作品ではなく、個人的にはさほどいいな、と思っているバンドではありませんでした。そのため今回のトリビュートアルバムも聴くきっかけとしてはロットンのトリビュートだから、というよりも参加しているメンバーに惹かれた部分があり、曲そのものに関してはさほど期待はしていませんでした。
しかし今回参加しているミュージシャンはそれぞれ、ロットンの曲をしっかりと解釈し、それぞれバンドとしての個性をしっかり色つけしていた非常によく出来たカバーに仕上がっていたと思います。分厚いサウンドで彼ららしいパンクロックに仕上げている10-FEETの「金色グラフィティー」からスタートし、男女ツインボーカルがちょうどよいインパクトとなっているヤバTの「D.A.N.C.E.」に、洋楽テイストの強いミクスチャーに仕上げているcoldrainの「エレベイター」、そして軽快なパンクロックに仕上げているキュウソネコカミの「e for 20」など、それぞれ各個人のオリジナルナンバーだと言われても違和感ないくらい、しっかりとバンドとしての個性を曲に反映させつつ、原曲の魅力もしっかり保った良カバーに仕上げています。
また、Dragon Ashの「マンダーラ」ではポエトリーリーディングに近いスタイルのラップでロットンへの思いを語ったり、コミックバンドの四星球の「響く都」ではコントが入り、ロットンをコミカルに紹介しつつそんな中にロットンへの愛情を感じさせたりと、バンドのROTTENGRAFFTYへの愛情も強く感じさせるナンバーになっています。彼らに限らず、それぞれのバンドの良さをいかしつつ、原曲の良さをしっかり保ったカバーにしっかり仕上げている点も、バンドそれぞれのロットンへの愛情を強く感じさせるトリビュートアルバムになっていました。
ラストを締めくくる上田剛士の「THIS WORLD」のへヴィーなエレクトロサウンドによるリミックスも上田剛士らしいアレンジになっており見事。最後の最後まで参加メンバーそれぞれの個性がしっかり生かされた良質なトリビュートアルバムになっていました。しかし、正直、上にも書いた通り、ロットンの曲はいままでさほど良いと思ったことが少なかったのですが、これだけカバーが良いというのは、それだけ原曲にもしっかりと魅力があるという点。あらためてロットンの曲を聴き直そうかな、そうとまで思わせてくれるトリビュートアルバムになっていました。ちなみにロットン自身、2月にベスト盤をリリースしています。そちらもチェックしてみたくなる、そんなアルバムでした。
評価:★★★★★
ほかに聴いたアルバム
SOLEIL in STEREO/SOLEIL
噂の美少女ボーカリスト、それいゆ率いるバンドSOLEIL。残念ながら彼女が学業に専念するということで活動休止となってしまったのですが、そんなSOLEILのラストアイテムとして、バンドの1stアルバムと2ndアルバムの全曲をステレオミックスとして収録したリミックスアルバムがリリース。それも単なるステレオ化した音源ではなく、初期から中期のビートルズのステレオ録音を意識した、極端に音を左右に振られたステレオミックスを再現。最後の最後までこだわりたっぷりの仕事ぶりを楽しませてくれます。もちろん、全編60年代のキュートなガールズポップ、ロックンロールを体現化した楽曲は実に魅力的。あまりにも早い活動休止は非常に残念に感じます…が、一方では昨年5月、メンバーだった中森泰弘が、「やれることはやり切った」と脱退してしまったのですが、確かにやはり楽曲のバリエーションとしては限界がありますし、マンネリ化する前のこのタイミングでの活動休止は、タイミングとしてはちょうどよかったのかなぁ、なんて思うことも。ただ、一度、ライブに行きたかったな…。
評価:★★★★★
SOLEIL 過去の作品
My Name is SOLEIL
SOLEIL is Alright
LOLIPOP SIXTEEN
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