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2020年2月11日 (火)

伝説の「名作」に捧げるコンピ

Title:NEW GENE, inspired from Phoenix

その血を飲めば、永遠の命が与えられると言われる伝説の鳥、火の鳥。その「鳥」をめぐる人間の生と死を描いた手塚治虫の代表作「火の鳥」。手塚治虫の生誕90周年だった2019年に、この「火の鳥」をテーマとしたコンピレーションアルバムがリリースされました。参加ミュージシャンが浅井健一にGLIM SPANKY、Shing02や七尾旅人、ドレスコーズとかなり豪華な面子…なのですが、ある意味、音楽ファン的にかなり壺にはまるような人選。この手のコンピレーションにありそうな、いかにも「売るために選ばれた」ような、お茶の間レベルまで知られているような売れ線ミュージシャンの参加はありませんし、ここ最近、よくありがちなアイドル勢の参加もありません。

さらに今回のコンピレーションがまたすごいことが、全曲が書下ろしの新曲という点。既発表曲の中で、「火の鳥」というテーマに合いそうな曲をセレクトした、という感じではありません。また、さらにすごいことは、どのミュージシャンもお付き合い程度に手ごろな「未発表曲」を提供した、といった感じではなく、どの曲も明確に「火の鳥」を素材とした新曲を書いてきています。企画した側の力の入れようもよくわかりますし、また、「火の鳥」をテーマとして、これだけ多くのミュージシャンが新曲を提供してくるあたり、「火の鳥」という漫画が多くの人たちの支持を受けていたということが実によくわかります。

そんな今回のアルバムは、いきなりベンジーからスタート。「HONESTY GOBLIN」では彼らしい不気味に鳴り響くギターサウンドの中で、独特の美意識が展開される楽曲に、まずは耳を惹きつけられます。続くGLIM SPANKYの「Circle of Time」も彼女たちらしいヘヴィーなギターリフで、「火の鳥」で描かれるテーマをかなりストレートに歌詞におこした楽曲になっています。

その後も「火の鳥」をテーマとして個性的な曲が並ぶ本作。Sauce81&Shing02の「藝術編(The Artist)」は、ある芸術家を主人公として描かれるShing02流の「火の鳥」。ひとつの物語りとして展開しており、その内容に惹きつけられます。TeddyLoid&Kizuna AI「Fireburst」は、バーチャルアイドルのKizuna AIをフューチャーしたエレクトロチューン。この近未来的な雰囲気もまた、「火の鳥」…という以上に手塚治虫のイメージと重なる部分があります。

「Human is」もオーストリアのミュージシャン、クリスチャン・フェネスの奏でるインプロビゼーションのエレクトロサウンドにのせて、やくしまるえつこのポエトリーリーディングが流れる印象的な作品に。さらにエレクトロな作風から一転し、アコースティックな曲調となる七尾旅人の「火の鳥のうた」も、実に美しい作品。タイトル通り、ストレートに火の鳥について歌った火の鳥賛歌とも言うべき曲で、個人的に今回のコンピレーションの中で、もっとも印象に残った作品でした。

これらの曲はもちろんですが、その他の曲も参加ミュージシャンの個性がさく裂しているような曲が並んでおり、コンピレーション全体として様々なタイプの曲が並ぶ作品になっているのですが、そんなバラバラな曲が並んでいる事実もまた、このアルバムの大きな魅力になっています。まさに上でも書いた通り、このコンピレーションを企画した人の熱い思いと、ミュージシャンたちの「火の鳥」という作品に対する思いがわかる傑作アルバム。久しぶりに「火の鳥」をまた読みたくなってきました…。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

Piercing/小袋成彬

Kobukuro

デビューアルバムだった前作「分離派の夏」が宇多田ヒカルプロデュースということで大きな話題となった男性シンガーソングライターの2作目。ハイトーンボイスで美しく聴かせるボーカルも魅力的ですし、HIP HOPというフィルターを通したような、今風なR&Bも魅力的。前作同様、その実力を感じさせるのは間違いないのですが、これも前作同様、全体的にいろいろな要素を詰め込みすぎているという印象も…。才能があるがゆえに、いろいろとやりたいことが先走ってしまっている感があります。ちなみに2作目となる本作は、なんとCDリリースはなく配信オンリー。ここにもある意味、時代を感じます…。

評価:★★★★

小袋成彬 過去の作品
分離派の夏

CROSS/LUNA SEA

再結成後3枚目、通算10作目となるLUNA SEAのニューアルバム。再結成後の彼らの作品は、ポップな側面を全面に押し出したアルバムが多く、個人的にはちょっと物足りなさを感じているのですが、今回のアルバムも残念ながらその方向性でポップにまとまっているアルバム。もっといえば、河村隆一のボーカルによる耽美性がさらに強調されたアルバムになっており、そういう意味でも、良くも悪くも「ヴィジュアル系」っぽいアルバムに仕上がっていました。ファンとして求む方向性はこちらの方なのかなぁ。

評価:★★★

LUNA SEA 過去の作品
COMPLETE BEST
LUNA SEA
A WILL
25th Anniversary Ultimate Best-THE ONE-
NEVER SOLD OUT 2

LUV

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