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2020年2月14日 (金)

25年の歩み

Title:G25 -Beautiful Harmony-
Musician:ゴスペラーズ

今年、デビュー25周年を迎える5人組コーラスグループ、ゴスペラーズ。今回、彼らのその活動を総括するシングルコレクションがリリース。1994年にリリースしたデビューシングル「Promise」から、昨年リリースした現時点での最新シングル「VOXers」までの全57枚に及ぶシングルが5枚組のCDに収録されているというボリューミーな内容となっています。ちなみに彼らは5年前にも「G20」というタイトルでオールタイムベストをリリースしたばかりなのですが…まあ、「G20」がシングルにこだわらないベスト盤、こちらはあくまでもシングルコレクションという違いでしょう。ある意味、彼らの「顔」ともいえるシングルを、ただ発売順に並べている構成になっているため、ゴスペラーズがその時々に、どのように見られており、そしてそんな中でどのように活動していったかという遍歴が、よくわかる内容になっています。

ゴスペラーズと言えば、今では押しも押されぬ日本を代表するコーラスグループとしてその名を知られていますが、デビューしてからブレイクするまで、比較的長い時間がかかってしまったグループでした。1994年のデビューから、初のヒット作となった「永遠に」まで約6年。いまでこそ音楽シーン全体が停滞してしまったため、ブレイクまで5年や6年がかかるミュージシャンも少なくありませんし、また、デビューから20年30年とたったミュージシャンもゴロゴロいる中で、デビュー6年目はまだまだ「若手」扱いかもしれません。しかし当時、デビュー6年目といえば既に中堅の域。さらに彼らは「知る人ぞ知る」的な扱いではなく、むしろずっと「ブレイク最右翼」として扱われており、メンバーが「笑っていいとも」にレギュラーで出演していたり、楽曲が当時大人気だったニュース番組「ニュースステーション」のテーマ曲として起用されたりと、事務所やレコード会社側からもかなりプッシュされていたミュージシャンで、当時でも「何で彼らは売れないんだ??」とかなり疑問だったのを記憶しています。

そして今となってこのブレイク前の時期の作品のシングルを聴いてみると、非常にJ-POP的であり、いかにも「売れ線」を狙ったように感じます。3枚目のシングルとなった「Winter Cheers! ~ winter special」なんかも、いかにもJ-POP的なポップチューン。少々露骨とも言えるブレイク狙いを感じてしまいますが、一方でこの時期の作品にはコーラスグループとしてのゴスペラーズの良さが反映されているか、と言われると微妙な作品が並んでいます。彼らがデビューした直後の90年代半ばは、まだ彼らのようなコーラスグループやあるいはR&Bというジャンルがヒットシーンに受け入れられておらず、そのような中で彼らを売るために、あえてコーラス色やR&B色を薄くしたような楽曲をシングルとして持ってきたのでしょう。

ただ一方、ブレイク直後の「永遠に」「ひとり」といった、彼らを代表するヒット曲は、むしろ彼らの持ち味であるコーラスや、R&B的な側面を強く押し出した曲調となっています。そういう意味では、彼らは彼らの良さをより前に出したからこそブレイクできた、と言える訳で、「売れ線」を意識したような曲では売れず、素直に彼ららしさを出した曲でブレイクした、というのは皮肉的でもあり、かつデビュー直後のレコード会社や事務所側の見る目のなさも感じてしまいます…。もっとも、この間にMISIAや宇多田ヒカルのブレイクがあり、R&Bというジャンルが一種のブームとなってきた、という時代の変化もあるため、単純に「見る目のなさ」とだけは言えない部分もあるのですが…。

ちなみに特に転機となったのは1999年にリリースした「熱帯夜」。この曲はさほど売れてはいないのですが、ブラックさがグッと増し、彼らのソウル的な側面が前に出てきた作品になっており、このアルバムでもDisc2以降、グッと雰囲気が変わってきます。ただ、何気に個人的には、ブレイク前の作品でアニメソングであり、かつポップ色の強い「BOO〜おなかが空くほど笑ってみたい〜」とか結構好きだったりするのですが…(なにげに阿久悠と筒美京平という超豪華な作家陣の組み合わせなのも要注目です)。

しかし、その後、Disc3あたり(2003年~2008年の作品)で楽曲はマンネリ気味となってしまいます。決して悪い作品ではないのですが、いかにもゴスペラーズらしいといった感じの曲が並んでおり、良くも悪くも目新しさがなくなってきてしまうのがこの時期。人気的にはちょうど絶頂期だっただけに、いかにもゴスペラーズらしい作品をシングルとして求められたということでしょうか。Disc4の時期あたりまで、そんな悪くはないけど、マンネリ気味といった雰囲気の作品が続きます。

ところがそれがグッとおもしろくなってきているのが最近の作品。無難なポップにまとめあげられていたDisc2~3頃の作品と比べると、グッとソウルやR&Bの要素が増し、彼らなりのルーツ回帰とあらたな挑戦も感じられます。例えば「クリスマス・クワイア」などはタイトルから想像できるようなゴスペルの要素を取り入れた作品。その名前とは裏腹に、ゴスペル風の曲があまりなかった彼らにとって、シングルでこのような曲をリリースすること自体、大きな挑戦に感じます。

実際、直近作「What The World Needs Now」はそれほどではなかったものの、前々作「Soul Renaissance」はブラックミュージックの要素を強めた作風のアルバムをリリースしており、ベテランとなった今でも続く彼らの挑戦心を感じることが出来ます。実際、前述の通り、最近の曲になるにつれて、再び楽曲のおもしろさも増しており、今後の活躍が楽しみになってくる彼ら。一時期はコーラスグループがブームとなり、彼らのようなコーラスグループが次々とデビューしてきましたが、気が付けば、残ったのは再び彼らくらいになってしまった今、それだけ彼らが他とは異なる傑出した実力を持っているからこそ、これだけ長い活躍が続くのでしょう。これからも彼らの活躍が楽しみです。

評価:★★★★★

ゴスペラーズ 過去の作品
The Gospellers Works
Hurray!
Love Notes II
STEP FOR FIVE
ハモ騒動~The Gospellers Covers~
The Gospellers Now
G20
Soul Renaissance
What The World Needs Now

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