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2020年2月25日 (火)

より生々しく

Title:燦々 ひとりでに
Musician:カネコアヤノ

 Sansann

今、最も注目を集めている女性シンガーソングライターのひとり、カネコアヤノ……と知ったかなことを言いつつ、私も彼女をはじめて知ったのは昨年9月にリリースした「燦々」から。その素晴らしい内容に一気にはまってしまいました。そして本作は、その「燦々」を全編アコースティックアレンジで再録音したアルバム。前作「祝祭」も同じような全編弾き語りアルバムをリリースしており、そのほかにも弾き語りアルバムを数作リリースしている彼女。バンドサウンドと弾き語りは、どちらも彼女の音楽に欠かせないスタイル、といった感じなのでしょうか。

もともと、オリジナルの「燦々」でも、その日常を描いた歌詞が強いインパクトを残したアルバムだったのですが、一方では最小限の音で最大限の世界観を構築している、そのサウンドも大きな魅力となっているアルバムでした。それだけにアコースティックアレンジのアルバムがどのような形になるのか、楽しみであると同時に不安もあったのですが…結果として彼女の書く、メロディーと歌詞だけでもこれだけ魅力的だったのか!とあらためて驚かされるアルバムに仕上がっていました。

まずメロディーライン自体に、予想していた以上に惹かれました。オリジナルアルバムのライブ評でも「明け方」「ごめんね」を取り上げてメロディーラインの良さについて記載したのですが、この2曲に限らず、どの曲も妙にメロディーラインに惹かれる曲が並んでいます。決してわかりやすい派手なサビがあるわけでもありません。しかし、聴いていて耳を離せなく、ついつい聴いてしまうようなメロディーラインの曲が並んでいます。派手さはないが人を惹きつけるメロディーを書ける、これは彼女が本当の意味でのメロディーメイカーとしての実力を持っているということでしょう。このアルバムではその実力がより明確になっていたように感じます。

そして歌詞。こちらもオリジナルでもリアリティーある歌詞、特に肉感のある歌詞が大きな魅力に感じました。これがアコースティックアレンジになることにより、より前面に押し出されたように感じます。

「かみつきたい 散らかしたい
安いお酒でキスでもしたい」
(「かみつきたい」より 作詞 カネコアヤノ)

「布と皮膚 布と皮膚 布と皮膚
交互になぞった
眠れない夜にそっと
布と皮膚 交互になぞった」
(「布と皮膚」より 作詞 カネコアヤノ)

「プレゼントボックスのりぼんを
体のかたちが変わっても
焦ってほどいていたい」
(「りぼんのてほどき」より 作詞 カネコアヤノ)

など、微妙なエロティシズムも感じる肉感に、リアリティーある男女の描写が強い印象に残る作品が並びます。オリジナルアルバムでも感じた彼女の魅力でしたが、この弾き語りアルバムではその魅力がより強調されていました。

また、さらに力強さを感じる彼女のボーカルも弾き語りのアルバムではより前面に押し出されており、アルバムの魅力のひとつを構成しています。オリジナルとはまた異なる、ある意味、カネコアヤノのコアな部分に触れる、そんなアルバムだったように感じます。

確かに、サウンドを強調したオリジナルだと、なかなかこういうメロディーや歌詞、カネコアヤノの歌という魅力の部分は、もちろん感じることが出来るのですが、後ろに隠れがちだよなぁ。そんな中で、あえてもう1枚、弾き語りでアルバムを作ってしまうあたり、彼女がメロディーや歌詞、歌といった部分にもしっかりとプライオリティーを置いているということを感じさせるのと同時に、ミュージシャンとしての強いこだわりも感じさせます。カネコアヤノの魅力がより伝わるアルバム。個人的にますます彼女に注目したくなった1枚でした。

評価:★★★★★

カネコアヤノ 過去の作品
燦々

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