芸人へのプロデュース作が特に秀逸
Title:ARBEIT
Musician:TOWA TEI
昨年2019年にデビュー25周年を迎えたTOWA TEI。自身のソロ活動以外にも、METAFIVEとしての活動やSWEET ROBOTS AGAINST THE MACHINEとしての活動など積極的な活動が目立つ彼ですが、本作はそんな彼のいわゆるアウトサイドワーク集。もともと様々なミュージシャンに対して積極的にプロデュースやリミックスを行っている彼ですが、そんな彼がプロデュースやリミックスを手掛けた曲が収録されている企画盤になっています。
特に今回の作品集の中でも目立ったのは、彼がプロデュースした吉本興業の芸人の曲たち。もともと以前、彼自身のマネジメントを吉本興業が手掛けていた時期があったそうで、その流れなのでしょうか、吉本興業の芸人の曲のプロデュースを数多く手掛けています。ただ、その曲がどれも実に秀逸。今田耕司がKOJI 1200名義でリリースした「NOW ROMANTIC」もある意味、少々ベタさを感じるニューロマ風の曲のちょっといかがわしい雰囲気が今田耕司の芸人イメージにもマッチ。板尾創路の「SHONEN B」も彼らしいシュールな歌詞と、おしゃれなラウンジ風のアレンジが絶妙に合っているのが不思議。さらにダウンタウンがGEISHA GIRLS名義でリリースした「KICK&LOUD」も、オールドスクールなサンプリングにのせてラップする破天荒なダウンタウンのラップが非常にユニーク。最近ではすっかり大物となってしまい、大御所の御意見番芸人みたいになってしまったダウンタウン(というよりも松本人志)ですが、そういえばこの破天荒さが彼らの大きな魅力だったよなぁ…と思いだしてしまいました。
これら芸人とのコラボは、テイと吉本興業とのつながりによるものなのでしょうが、一方ではSWEET ROBOTS AGAINST THE MACHINEの最新作ではバカリズムをメンバーとして迎えていたりしますし、また、TOWA TEIがセルフポートレートとして用いている、サングラスに、親指と人差し指をあごの下において決めるポーズも見方によってはコミカル。なにげに彼自身、お笑いに対して深い造詣を持っているのでしょうか。まただからこそ、あれだけ上手くお笑い芸人とのコラボが可能になったのかもしれません。
もちろん、そんな芸人とのコラボ以外についても秀逸なコラボ作がならんでいます。基本的にはハウスやラウンジ、エレクトロポップの曲がメイン。ディスコ風でリズミカルなハウスナンバー「2AM」や、Pizzicato Fiveのリミックス「CATHY」などが印象に残ります。ただ一方ではリミックスとして参加したミュージシャンは実に多種多様。スチャダラパーやキリンジ、小泉今日子にCharaなど、様々な豪華なミュージシャンとコラボしています。
そんな中、今回はじめて知ったのがラストに収録されているNOKKOの「人魚」。1994年に大ヒットしたナンバーなのですが、これってオリジナルがTOWA TEIプロデュースだったんですね…今回はじめて知りました。非常に幻想的な雰囲気が印象的な楽曲なのですが、正直言って、TOWA TEIのイメージは皆無。彼の意外な仕事ぶりを今回のアルバムで知ることが出来ました。
純粋にTOWA TEIの新作的な感覚でも楽しめた今回のアルバム。彼の仕事を通じて、その才能をあらためて感じることが出来たアルバムになっていました。これから、どんな彼のあらたな作品が生まれてくるのか…ますます楽しみになるアウトワーク集でした。
評価:★★★★★
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