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2020年2月22日 (土)

むしろ完成版より良いのでは?

今日紹介するのは、イギリスのロックバンドKeaneが配信オンリーでリリースしているデモ音源を集めたEPシリーズ。既に第1弾は紹介していますので、今日は第2弾と第3弾の紹介です。

Title:Retroactive-EP2
Musician:Keane

Keane2

まずは第2弾。「Perfect Symmetry」に収録されている「Again&Again」「Better Than This」、「Strangeland」収録の「In Your Own Time」、さらには初収録の音源となる「Glass Bottles」 の全4曲が収録されています。

Title:Retroactive-EP3
Musician:Keane

Retroactive3

そしてこちらは第3弾。「Strangeland」の表題曲ながらもなぜかボーナストラックの収録となっている「Strangeland」、「Perfect Symmetry」収録の「The Lovers Are Losing」、「Hope and Fears」収録の「This Is The Last Thing」「Sunshine」の4曲が収録されています。

今回のデモ音源は、いわばKeaneの楽曲の原型が収録されているアルバム。彼らのコアな部分があらわれた作品と言えるのですが、はっきり言ってしまって、完成版の音源よりも良いのでは?とすら感じてしまうような曲がチラホラ見受けられました。

特にその傾向が顕著だったのが、今回、2枚のEPで3曲が収録されている「Perfect Symmetry」収録の作品。このアルバム、ニューウェーブのテイストを取り込んだアルバムで、はっきりいって個人的には凡作だと思っているのですが、シンプルなアレンジとなっているデモ音源では、Keaneのメロディーセンスがしっかりと感じられる楽曲に仕上がっています。特に「Again&Again」は、爽やかながらも切ないメロでKeaneのメロディーの素晴らしさが再認識されられる作品に仕上がっていました。

そのほかも「Strangeland」もアコギのみで聴かせるアレンジで、ボーカル含めてちょっと泥臭さを感じるのですが、シンプルなアレンジでメロディーをしっかりと聴かせる曲となっているため、非常に彼らの良さがよく出ています。「Hope and Fears」収録の2曲については、比較的、デモ音源と完成版が近い印象もあり、これはどちらもしっかりとKeaneらしさが出ている作品になっていました。

さらに素晴らしかったのが今回初収録となった「Glass Bottles」。感情たっぷりのピアノの美しさが絶品の傑作となっており、なぜいままでリリースされなかったのが不思議にすら感じました。

Keaneは、そのメロディーラインのすばらしさに定評があるものの、どうも彼らがバンドとして挑戦したがるのか、せっかくの素材の持ち味が台無しになってしまうようなアレンジのアルバムを時々リリースしてくる悪い癖があります。「Perfect Symmetry」などはその代表的な作品ですが、最新アルバム「Cause and Effect」も正直、Keaneの良さがいまひとつ感じにくいアルバムでした。しかしそんな中、デモ音源を集めたむしろこちらのEP盤の方こそ、Keaneの良さが実感できるようにすら感じました。少々アレンジに粗さもあるのですが、それを差し引いてもKeaneの素晴らしさを実感できる内容。率直なところ、彼らの良さはその素晴らしいメロディーラインにあるのだから、アレンジをあまりいじくることなく、シンプルなアレンジの方がいいと思うんだけどなぁ。デモ音源集というとファンズアイテムの様相が強いのですが、本作に関しては広いリスナー層にお勧めできる傑作でした。

評価:どちらも★★★★★

KEANE 過去の作品
Perfect Symmetry
NIGHT TRAIN
Strangeland
The Best Of Keane
Retroactive-EP1
Cause and Effect


ほかに聴いたアルバム

Surrender(20th Anniversary Edition)/The Chemical Brothers

1999年にリリースされ、The Chemical Brothersの代表作の一つとして名高い「Surrender」。そのリリース20周年を記念して"20th Anniversary Edition"がリリースされました。当時のオリジナルアルバムの他、当時リリースされたリミックスなどを収録したCDがついた2枚組。さらに"The Secret Psychedelic Mixes"と称された、未発表のリミックス盤や、2000年のグラストンベリーフェスティバルでのライブの模様やプロモビデオを収録したDVDがついたCD3枚組+DVDの組み合わせなどがリリースがリリースされています。

「Surrender」といえば、収録曲の「Hey Boy,Hey Girl」が日本でも大ヒットを記録し、The Chemica Brothersの名前が一躍知られるようになった作品。個人的にもはじめてThe Chemical Brothersのアルバムを買って聴いたのが本作なのですが、あれからもう20年も経つのか…と感慨に浸ってしまいます。しかし、今聴いてもエレクトロサウンドにロッキンな要素がほどよく加わった作品は、気分がどんどんと高揚していきます。本作から流れるサウンドは、今流行の音ではないものの、今聴いても決して古臭さは感じません。おそらく今のリスナーが聴いても十分楽しめるサウンドではないでしょうか。特にロック的な要素が強く含まれている点も、当時、幅広い層に支持された大きな理由でしょう。ボリューミーな本作はさすがにファンズアイテム的な要素が強いのですが、それを差し引いても、アルバム本編だけでも今なお多くのリスナーに聴いてほしいと感じる傑作アルバムです。

評価:★★★★★

The Chemical Brothers 過去の作品
Brotherhood
Further(邦題:時空の彼方へ)
HANNA
Born In The Echoes
No Geography

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