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2020年1月 3日 (金)

アルバムタイトル・・・が?・・・

Title:感謝!!!!! Thank you for 20 years NEW&BEST
Musician:AI

そのパワフルなボーカルが大きな魅力の女性R&BシンガーAI。そんな彼女のデビュー20周年を記念してリリースされたアルバムが本作。通常盤の方には新曲3曲に既発表曲のゴスペルアレンジによるニューバージョンが収録された全9曲入り40分というミニアルバム程度の内容に。一方、初回盤にはそこにDisc2として過去の代表曲を収録したベスト盤が付いてくる内容になっています。

タイトルに「NEW」とつけながら新曲が事実上3曲のみというのが若干賛否が起こりそうな感じなのですが、その3曲はいずれも魅力的。「Baby You Can Cry」は伸びやかに歌い上げるソウルバラード。「LIFE 'EM UP」はラップがかなむダイナミックでロッキンなナンバーになっており、こういうタイプの曲こそ、彼女の力強いボーカルが実によくマッチするように感じます。そして「ラフィン・メディスン」はネオソウル風なアレンジで爽やかなメロディーを聴かせる楽曲になっており、3曲中3曲がそれぞれ、違う形でAIの魅力を引き出す楽曲となっていました。

そこから先は彼女の代表曲をゴスペルにアレンジしたナンバー。もともと彼女の音楽的ルーツはゴスペルだそうで、今回のアルバムではあらためて彼女のルーツに立ち返ったゴスペルナンバーに挑戦したといったところでしょうか。正直、彼女のパワフルなボーカルもあり、かな~りのこってり風味の展開であるのですが、一方では彼女の力強いボーカルはやはり強い魅力。こってり風味から来る「くどさ」とパワフルな彼女のボーカルの「魅力」が天秤の両方でバランスを取った結果、なんとか魅力が勝っている印象。若干お腹いっぱいになりつつ、最後まで楽しむことが出来ました。

ただ、このアルバム、ちょっと気になる点があり、まずはそのタイトル。ってか、タイトルそのまま「感謝!!!!!」てなんだよ(苦笑)。いやまあ、感謝することは確かに大切だけども、それをそのままアルバムタイトルにするあたりにはっきり言ってうさん臭さを感じてしまいます・・・。

2枚目のベストアルバムに関しても、正直言って、そういう前向き応援歌的な歌詞の曲が、ちょっと鼻についてしまいました。特に気になったのが冒頭の「みんながみんな英雄」で、こちら「藁の中の七面鳥」の替え歌。これは個人的な好みの問題ではあるのですが、前にも書いたかと思うのですが、この手の「替え歌」というやつが個人的に苦手で、そんな「替え歌」にのってくるのがいかにもな前向き応援歌に、Disc2の冒頭からまずうんざりしてしまいました・・・。

その後も、確かに彼女のパワフルなボーカルを聴かせる力強い名曲が並んではいるのですが、どうしても所々に入ってくる「前向き応援歌」的な曲が気になってしまいました。彼女のボーカルはだみ声気味なので、どうしてもそういう「前向き応援歌」が良くも悪くもより押し付けがましく聴こえてしまいます。どうも最後まで気になってしまいました。

彼女のアルバムは以前から基本的にすべてチェックしており、以前はこういうことを気にならなかったんですが・・・今回はアルバムタイトルが悪かったのか、Disc2の1曲目が悪かったのか・・・個人的にどうも彼女の歌う「前向き応援歌」は押しが強すぎるような気がするんですよね。もちろん悪いアルバムではないのですが、どうもタイトルといい、気にかかってしまうアルバムでした。

評価:★★★★

AI 過去の作品
DON'T STOP A.I.
VIVA A.I.
BEST A.I.
The Last A.I.
INDEPENDENT
MORIAGARO
THE BEST
THE FEAT.BEST
和と洋


ほかに聴いたアルバム

新しい友達/川本真琴

ここ最近、再び積極的な活動が目立つようになってきた川本真琴のニューアルバム。ミニアルバムやカバーアルバム、ベスト盤のリリースはあったものの、川本真琴単独名義のオリジナルフルアルバムとしては2001年の「gobbledygook」以来、約18年半ぶり(!)となる作品となります。内容は峯田和伸や七尾旅人とのデゥオ曲などを含みつつ、パンキッシュな曲やトランシーなエレクトロチューン、ジャズの要素を入れた曲やボッサ風のナンバーにムーディーな曲までバラエティー豊富。ただどの曲も基本的に明るく爽やかなポップチューンとなっており、川本真琴らしさがアルバム全体を貫かれています。明るい作風の割には、メロディーラインのインパクトがいまひとつなのは最近の彼女の曲に共通しているのですが…ひょっとしてデビュー当初の彼女のように、変に売れすぎないようにわざとなのか?ただ、そのため楽曲の印象としてちょっと薄くなってしまうのが残念なのですが…。

評価:★★★★

川本真琴 過去の作品
音楽の世界へようこそ(川本真琴feat.TIGAR FAKE FUR)
The Complete Single Collection 1996~2001
願いがかわるまでに
川本真琴withゴロニャンず(川本真琴withゴロニャンず)
ふとしたことです

消えない-EP/赤い公園

2017年にボーカルの佐藤千明が脱退。その後、新メンバーとしてアイドルグループ、アイドルルネッサンスの元メンバー石野理子を迎え、新メンバーとなったバンド、赤い公園。そのボーカリスト変更後、初となるアイテムがリリースされました。そんな新作は5曲入りのミニアルバム。

ただ、もともとバンドの司令塔はギターの津野米咲としての方向性にほとんど変化はなく、ノイジーなギターでテンポよいバンドサウンドのギターロックながらも、サウンド的に凝った試みがされているという点はいままでと変わらず。本作でもファンクやサイケなどの要素を要所に感じられつつ、全体的には彼女たちにしてはシンプルなギターロックに仕上がっているのは、あくまでも新メンバーとしての挨拶代わりの1枚だから、ということも大きいのでしょうか。新ボーカル石野理子の声質も佐藤千明と似たような感じで、ここらへんはおそらく同じようなボーカルスタイルの人を誘ったということも大きいのでしょう。新メンバーとしての本領発揮はこれから、という印象を受けるのですが、まずはボーカルが変わっても赤い公園は安泰だ、ということを感じることの出来た作品でした。

評価:★★★★

赤い公園 過去の作品
透明なのか黒なのか
ランドリーで漂白を
公園デビュー
猛烈リトミック
純情ランドセル
熱唱サマー
赤飯

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