世界が注目するシンガーソングライター
Title:Pony
Musician:Rex Orange County
先日、日本で最も注目されているシンガーソングライターの一人として長谷川白紙をあげました。そして今回紹介するのは、おそらく、世界で今、最も注目されている新進気鋭の男性シンガーソングライターの一人と言えるでしょう。イギリスはハンプシャー出身の男性シンガーソングライター、Rex Orange County。イギリスの新人ミュージシャンの登竜門といえる「BBC Sound of 2018」で見事2位を獲得。本作ではイギリスのナショナルチャートで5位を獲得したほか、アメリカのビルボードチャートでも3位にランクイン。ほか、世界各国のチャートでも上位にランクインしており、日本でも2018年にサマソニに来日し、大きな話題となりました。
そんな注目のシンガーソングライターの彼の一番の魅力は、まず1にも2にもメロディーラインの良さ、これに尽きるでしょう。彼の書くメロディーラインは非常にシンプルなポップチューンながらも、切なさと暖かさ、そしてどこか懐かしさが同居するような、まさに「美メロ」という名称がふさわしい、素晴らしいポップチューンが並びます。
今回のアルバムでも冒頭を飾る「10/10」は軽快なポップチューンながらも、明るさの中にどこか切なさを感じさせるメロが耳を惹きますし、続く「Always」は、まさに胸をかきむしるような切なさがさく裂したポップチューン。後半に聴かせるピアノバラードの「Every Way」も切ないメロディーラインがたまらない名曲になっています。「Never Had The Balls」や「It Gets Better」のような軽快なポップチューンも聴かせつつも、全体的には日本人にとっても琴線に触れそうな、暖かく懐かしさを感じるメロディーラインを聴かせる楽曲が並んでいます。
そんな美しいメロディーラインを彩るのは、ピアノやアコースティックギターのようなぬくもりのある楽器の数々…なのですが、一方ではリズムはリズムマシーンの音を用いていたりして、単純にアコースティックなサウンドとは異なり、どこか今時の印象すらサウンドからは感じます。また「Laser Ligths」ではラップを取り入れたりもしており、そういう点でも、単純に美しい歌を聴かせるシンガーソングライター…とはいかない音楽的なベクトルも垣間見れます。
実際、かのTyler,the Creatorの楽曲に参加したり、Frank Oceanのライブバンドのメンバーに抜擢されたりと、HIP HOP/R&B系のミュージシャンとの交流も盛んなあたり、「ポップな歌モノ」という枠組みにおさまらない彼の音楽的な方向性をその作品から感じることが出来るでしょう。また、どこか哀愁感あるメロディーラインはいかにもイギリス的であるにも関わらず、アメリカをはじめ世界的なヒットを獲得している点も、もちろんメロディーラインの良さが第一だとは思うのですが、それに留まらない音楽的な可能性を感じることが出来るからではないでしょうか。
なんかここ最近、2020年に入ってから、2019年のベスト盤候補になりそうな名盤が続いていますが、本作も間違いなくそんな傑作アルバムの1枚だと思います。このメロディーの良さから、日本でももっともっと注目が集まりそうな予感も…。間違いなく今後に要注目のシンガーソングライターです。
評価:★★★★★
ほかに聴いたアルバム
Searching The Continuum/Kurt Rosenwinkel Bandit65
現代ジャズのシーンで大きな注目を集めているアメリカのジャズギタリスト、カート・ローゼンウインケルによる新プロジェクトのニューアルバム。ギターサウンド的にはロック寄りな部分も感じられるため、比較的聴きやすい感も。またフュージョンの色合いも強いサウンドという印象を受けました。哀愁感漂うメロディーラインが耳に残る楽曲が多く、ロックリスナー層も含めて比較的聴きやすさを感じさせるアルバムに。
評価:★★★★
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