2019年の集大成
Title:DRIFT SERIES 1 - SAMPLER EDITION
Musician:Underworld
このサイトでも何度か紹介してきたUnderworldの新プロジェクト「DRAFT」。2018年11月からスタートしたこのプロジェクトは、自らも所属するデザイン集団TOMATOのほか、脚本家からジャズDJ、テクノDJ、画家、詩人など様々なジャンルの友人たちと立ち上げた、音楽のみならず映像や物語などで新たな創作を継続していくプロジェクトで、いままでもEPとして順次、音源がリリースされてきました。本作はその集大成ともいえるアルバム。基本的にはいままでのEPにも収録されてきた曲をまとめたアルバムなのですが、「DRAFT」として活動してきた2019年のUnderworldの全貌が伺えるアルバムとなっています。
そんな彼らの新作ですが、基本、以前リリースしたEPの集大成的なアルバムであるため、感想としては以前のEP盤の時の感想と大きくは変わりません。基本的にシンプルでダンサナブルな、良い意味でいかにもUnderworldらしい外連味のないテクノチューンが並んだ作品となっている本作。アルバムはダウナーでちょっと物悲し気な雰囲気の「Appleshine」、リズミカルながらも落ち着いた雰囲気の「This Must Be Drum Street」と比較的、抑え気味のナンバーからスタート。ただ、「This Must Be Drum Street」など典型的なのですが、落ち着いたリズムの向こうに感じる抑えきれない高揚感に、リスナーの気持ちも否応なく高まっていく展開になっています。
そしてここからは一気にトランシーなテクノチューンが続く展開に。祝祭色の強い「Listen To Their No」にちょっとダウナー気味ながらもトランシーなリズムが心地よい「Border Country」、インターリュード的な「Mile Bush Pride」を挟み「Schiphol Test」と続き、ここらへんはライブでも一気に盛り上がりそうな構成となっています。
その後は哀愁感ただようギターサウンドでしんみりと聴かせる「Brilliant Yes That Would Be」、軽快なテクノポップ的な楽曲「S T A R(Rebel Tech Version)」にリズミカルで軽快ながらもどこか悲しげなメロディーラインが流れている「Imagine a Box」とバラエティー富んだ展開が続き、最後はピアノなども入り爽やかなサウンドを聴かせる「Custard Speedtalk」で締めくくり。非常に後味のよいエンディングとなっています。
ちなみに今回、ボーナスディスク付きの国内盤を購入し聴いたのですが、このDisc2の方はよりバラエティー富んだ作品が並んでおり、美しいエレクトロトラックを聴かせる「Toluca Stars」や、感情こもった歌を聴かせる歌モノの「Dune」、ストリングスのアルペジオとゴスペル的に重厚なコーラスラインが美しい「Molehill」など、おそらく本編に入れてしまうと流れがわるくなってしまうために選曲できなかったであろう、よりバラエティー富んだ作風を聴かせる楽曲が並んでおり、Underworldのさらなる魅力を感じることが出来ます。
そういう訳で1枚のアルバムのように流れをしっかり考慮されており王道的なUnderworldの世界が楽しめるDisc1と、その世界をさらに拡張するかのようなDisc2、どちらも非常に魅力的なアルバムになっています。サブスクリプションなどではDisc1しか配信されていなようなので、機会があれば国内盤で是非。Underworldの魅力を再確認できる傑作アルバムでした。
評価:★★★★★
UNDERWORLD 過去の作品
Oblivion with Bells
The Bells!The Bells!
Barking
LIVE FROM THE ROUNDHOUSE
1992-2012 The Anthology
A Collection
Barbara Barbara, we face a shining future
Teatime Dub Encounters(Underworld&Iggy Pop)
DRIFT Episode1 "DUST"
DRIFT Episode2 "ATOM"
DRIFT Episode3 "HEART"
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