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2020年1月12日 (日)

日本ポップスシーンの最重要人物のオールタイムベスト

日本のポップスシーンにおける最重要人物といえば間違いなく、細野晴臣でしょう。もともと1969年にロックバンド、エイプリルフールのベーシストとしてメジャーデビュー。その後、日本語ロックの祖とも言われる伝説のバンド、はっぴいえんどに参加。さらにソロ活動を経たのちに、かのイエロー・マジック・オーケストラに参加したのち、様々なバンド、ユニットなどにも参加しつつ、72歳となった現在でも積極的な音楽活動を続けています。

2019年はそんな彼の音楽活動50周年の記念すべき年となった訳ですが、多種多様に呼ぶ彼の音楽活動を網羅的に収録したベスト盤が2組、リリースされました。

Title:HOSONO HARUOMI Compiled by HOSHINO GEN
Musician:細野晴臣

今回のベスト盤の最大の特徴としては、細野晴臣にゆかりのある2人のミュージシャンが選曲に参加している点でしょう。まずは今をときめく、星野源が選曲に参加したベスト盤がこちらになります。

Title:HOSONO HARUOMI Compiled by OYAMADA KEIGO
Musician:細野晴臣

そしてもう1組を選曲したのが、コーネリアスこと小山田圭吾。ちょっとタイプの異なる2人のミュージシャンが選曲に参加しているのですが、その2組のベスト盤の意図はかなり明らか。星野源選曲の方は、「星野源」というお茶の間レベルでの有名人を起用していることからもわかるように、細野晴臣という名前を全く知らないようなリスナーまで幅広い層を取り込もうとした、いわば細野晴臣の入り口的なベストアルバム。実際、選曲にしてもはっぴいえんどの「風をあつめて」やソロ曲の「恋は桃色」、YMOの「Firecracker」「以心電信」など、代表曲が選曲されており、まさに細野晴臣入門としてうってつけのアルバムとなっています。

一方、小山田圭吾選曲の方は、そういった細野晴臣の代表曲を選曲した場合にこぼれ落ちるような、知る人ぞ知る的な重要曲を収録した、いわばアナザーベスト。ここらへん、2人のミュージシャンもしっかりと自分たちの役割を理解しているかのような、それぞれ方向性が明確になった選曲になっているように感じます。

そして細野晴臣の特徴といえば、時代によって、様々なジャンルの音楽に挑戦していくその幅広い音楽性。はっぴいえんど時代のフォークロックからスタートし、いわゆる「トロピカル三部作」と言われる時代のエキゾチックな音楽性から、その後のYMOで一転するテクノポップ路線、さらにSketch Showなどではポストロック的な様相すら感じさせる楽曲も披露しています。

このあたりの音楽的遍歴をバランスよく収録されているのも星野源選曲の方で、フォークロックから、その後のエキゾチカ路線、テクノポップ路線からエレクトロまでほぼよく収録されており、細野晴臣の音楽の歩みを知るには最適なベスト盤となっています。一方、小山田圭吾の方は、その点ではより彼の趣味性が強く反映されているように感じ、特に比較的最近の曲を収録したDisc2ではエレクトロやポストロック色の強い作品がならんでいます。ただ、その結果として、細野晴臣というミュージシャンが、ここにおいても、なお最先端の音楽にアップデートを続けているというミュージシャンとしての意欲をより強く感じる選曲になっているように感じました。

実際、小山田圭吾選曲のベストの、特にDisc2に収録されている曲は、いい意味で全く時代性を感じさせない「今」の音を奏でています。音楽活動50年、齢70歳を過ぎたミュージシャンが、若手ミュージシャンたちと比べてそん色ない音を奏でている点、驚くべき事実なのですが、小山田圭吾選曲のベストの方では、そんな細野晴臣というミュージシャンのすごさをより強く感じる選曲になっていたように感じます。

そういう意味では今回の選曲の2人の人選は、非常にバランスの取れた人選でしたし、2人とも、しっかりと自ら求められる方向性で選曲を行った結果、細野晴臣というミュージシャンのすごさを2つの異なる視点からしっかりと浮き彫りに出来たベスト盤に仕上がっていたように感じます。入門盤としては、まず星野源選曲の方から。そこから小山田圭吾選曲の方も是非聴いてほしい、そんな2組のベスト盤でした。

評価:どちらも★★★★★

細野晴臣 過去の作品
細野晴臣アーカイヴスvol.1
HoSoNoVa
Heavenly Music
Vu Ja De
HOCHONO HOUSE


PUNCH/ザ・クロマニヨンズ

例のごとく、またちょうど1年ぶりのリリースとなった13枚目のクロマニヨンズのオリジナルアルバム。本作は、彼ららしいシンプルなギターロックをメインとしつつ、裏打ちの曲があったり、哀愁感たっぷりの曲が入ったりと、バリエーションの多さという意味では前々作「ラッキー&ヘブン」に寄ったような作品。もっとも、基本的にムダをそぎ落としたサウンドで、いい意味でベテランらしい安定感ある、彼らしか出来ないシンプルなロックンロールを奏でているという点、以前から変わりありません。ある意味、大いなるマンネリなのですが、それを感じさせない、いまだに新鮮味を感じさせるバンドサウンドも魅力的。

評価:★★★★★

ザ・クロマニヨンズ 過去の作品
CAVE PARTY
ファイヤーエイジ
MONDO ROCCIA
Oi! Um bobo
ACE ROCKER
YETI vs CROMAGNON
ザ・クロマニヨンズ ツアー2013 イエティ対クロマニヨン
13 PEBBLES~Single Collection~
20 FLAKES~Coupling Collection~
GUMBO INFERNO
JUNGLE9
BIMBOROLL
ラッキー&ヘブン
レインボーサンダー

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