« 2週連続1位 | トップページ | 2019年ベストアルバム(洋楽編)その1 »

2020年1月31日 (金)

久々の快心作

Title:Section#11
Musician:THE BAWDIES

ベスト盤を挟んで約2年9ヶ月ぶりとなるTHE BAWDIESのニューアルバム。ここ最近のTHE BAWDIESの作品は、いつも通りの陽気でご機嫌なロックンロールナンバーを聴かせてくれる良作を続けながらも、ルーツ志向が強かった初期のナンバーと比べると、どこかひっかかる部分もあった作品が続いていたように思います。しかしそんな中リリースされた、ちょっと久々となるニューアルバムは、まさに快心の一撃!(笑)ある意味、完全に吹っ切れたような作品に仕上がっていました。

特に気持ちよかったのはアルバム冒頭の3曲。アップテンポで疾走感あるロックンロールナンバー「DON'T SAY NO」からスタートし、70年代ギターロックを彷彿とさせるようなギターリフのイントロが最高にカッコいい「SKIPPIN' STONES」、さらにモータウンビートも取り入れて軽快なロックンロールを聴かせる「LET'S GO BACK」と、この3曲の流れは、まさにTHE BAWDIESの魅力を最大限に発揮されており、彼らしか生み出せない、最高にカッコいいロックンロールを聴かせてくれます。

その後も基本的に彼ららしいルーツ志向のロックンロールを主軸に据えつつ、比較的バリエーションの富んだ作風を聴かせてくれます。「LET'S GO BACK」と同じく、モータウンビートで軽快な「EASY GIRL」「HIGHER」はヘヴィーなギターサウンドとしゃがれ声でガレージロックの色合いが強いナンバー。「GET UP AND RIDE」はギターサウンドやカウベルの使い方、また後半に聴かせるピアノやソウルフルなコーラスを含めて、あきらかにストーンズを意識したような楽曲に仕上がっていますし、「THE BEAT」は彼ら流のファンクを聴かせてくれる楽曲となっています。

ルーツ志向のロックンロールをベースとしつつ、幅広いタイプの楽曲を取り入れている本作。ただ、こういった様々なタイプの楽曲を取り入れているのはいままでのアルバムでもよく見受けられました。ただ、今回のアルバムに関してはバンドとしての勢いもあり、また、様々なサウンドを取り入れつつ、あくまでもラフなロックンロールというスタイルを前に押し出した結果、いままでのアルバム以上にTHE BAWDIESの魅力がより発揮されたロックンロールナンバーに仕上がっていたように感じます。

さらに「BLUES GOD」などは軽快なギターリフを聴かせる、タイトル通りのブルースロックの楽曲なのですが、途中、いきなり明るくなったり、ブルースロックからいきなりリズミカルなテンポに変化したり、さらに転調も取り入れたりと、複雑な構成はある種J-POP的。「HAPPY RAY」もストリングスを入れたポップなメロディーラインで、かなり売れ筋を意識したようなポップチューンとなっています(ストリングスの出だしなどはミスチルっぽさも感じるほど(!))。ただ今回のアルバムは全体的にロックンロールなナンバーが並んでいる影響か、こういうある種の「J-POP的」なナンバーも浮くことなく自然に聴くことが出来ます。また、こういうナンバーをさらりと披露できるあたりもTHE BAWDIESの実力のほどを感じさせます。

今回の作品はTHE BAWDIESの魅力が存分に発揮された、年間ベスト候補と言っても間違いない傑作アルバムだったと思います。いや、やはり彼らのロックンロールサウンドはカッコいいなぁ…とう素直に感じられた快心作。一時期に比べると、人気の面ではちょっと下火になってしまった彼らですが、これだけの作品を作れるのならば、まだまだ大丈夫でしょう。これからの活躍にも期待できる傑作アルバムでした。

評価:★★★★★

THE BAWDIES 過去の作品
THIS IS MY STORY
THERE'S NO TURNING BACK
LIVE THE LIFE I LOVE
1-2-3
GOING BACK HOME
Boys!
「Boys!」TOUR 2014-2015 –FINAL- at 日本武道館
NEW
THIS IS THE BEST
Thank you for our Rock and Roll Tour 2004-2019 FINAL at 日本武道館


ほかに聴いたアルバム

井上陽水トリビュート

井上陽水デビュー50周年を記念してリリースされた、様々なミュージシャンたちが井上陽水の曲をカバーするトリビュートアルバム。基本的には原曲のイメージに沿ったアレンジで、かつ実力のあるボーカリストが参加したアルバムだったため、良くも悪くも意外性はなく、かつ安定感あるボーカルで安心して聴ける内容になっています。ただその中でも特に椎名林檎と宇多田ヒカルは秀逸。一方、オルケスタ・デ・ラ・ルスによる「ダンスはうまく踊れない」のラテンカバーはなかなかユニーク。ACIDMANによる「傘がない」も、これでもかというほどベタな叙情感を強調したアレンジとなっており、胃もたれしそうなアレンジは好き嫌いありそうですが、これはこれで彼ららしさが出たカバーになっていました。基本的には井上陽水のファンや参加ミュージシャンのファンは安心して聴けるアルバムになっていたと思います。もっとも、もうちょっと波紋を呼ぶようなカバーがあった方がおもしろいとは思うのですが。

評価:★★★★

Mobius Strip/KEN ISHII

約13年ぶりとなる"東洋のテクノゴッド"KEN ISHIIのニューアルバム。正直言って、サウンド的には決して目新しい訳ではなく、中盤にチルアウトしている作品の中には、エレクトロニカ的に実験的なサウンドを聴かせるナンバーはあるものの、全体的には心地よくメロディアスなトランシーな楽曲が並びます。ただ、11曲目あたりからのチルアウトを挟み、最後には再びアゲアゲに盛り上がる構成といい、アルバム1枚でひとつのライブを味わうように、非常に心地よく、素直にエレクトロなビートを楽しめるアルバムになっています。なにげに彼のテクノサウンドが奏でる「ポップなメロ」がとても気持ちよかったりするのですが、そんな気持ちよさをアルバム全体で感じられる傑作に仕上がっていました。

評価:★★★★★

KEN ISHII 過去の作品
KI15-The Best of Ken Ishii-
The Works + The Unreleased & Unexpected

|

« 2週連続1位 | トップページ | 2019年ベストアルバム(洋楽編)その1 »

アルバムレビュー(邦楽)2020年」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« 2週連続1位 | トップページ | 2019年ベストアルバム(洋楽編)その1 »