「令和」の時代のピチカート
Title:THE BAND OF 20TH CENTURY : NIPPON COLUMBIA YEARS 1991-2001
Musician:Pizzicato Five
1980年代から活動し、主に90年代に一世を風靡。特に90年代には渋谷系の代表格として日本はもとより海外でも高い評価を受けたユニット、Pizzicato Five。21世紀を迎えた直後の2001年に残念ながら解散してしまったものの、今なお多くのリスナーを魅了してやまないミュージシャンだったりします。そんな彼女たちのベストアルバムがリリースされました。この作品は、もともとメンバーでありピチカートのほとんどの曲を作詞作曲していた小西康陽が、自らDJとしてかけたい曲というコンセプトで曲をセレクト。それを7インチのアナログ16枚組としてリリースした作品が本体。同時にCD及びサブスクリプションでもリリースされましたが、曲順は大きく異なっており、選曲にも若干の違いがあります。
おそらく「メイン」は7インチのアナログ盤なのでしょうが、残念ながらレコードプレイヤーも持っておらず、これを機に・・・というほどの資力も(また部屋にプレイヤーを置いておく場所も)ないので、今回の感想は基本的にCD及び配信盤準拠となります。ユニークなのはその曲順ですが、CD及び配信盤はほぼリリース順に並んでいるのに対して、レコード盤はそうとはなっていない点。おそらく、CDや配信の場合、最初から最後まで一気に聴くスタイルであるということを考慮しての並びなのでしょうが、一方、レコード盤は1枚1枚のアナログに収録された曲同士の相性などを考えての曲順だったのでしょう。選曲についても、そんな曲順の中でマッチするかしないか、という点も重要だったのかもしれません。CD及び配信盤はレコード盤のおまけ的な位置づけであるのも関わらず、単純にレコード収録曲を並べただけ、という感じになっていない点に、まず小西康陽らしいこだわりを感じます。ちなみに一部サブクスで配信されていない曲もあるのですが、これは単なる権利の問題でしょう(・・・か、CDを買ってもらうための手段か・・・)。
また、アレンジ的にも微妙に原曲に対して手が加えられています。これもまた絶妙なところがあって、決して原曲の雰囲気を壊さないままに、音的に微妙に今の音にアップデートされている点がポイント。そのため、リアルタイムで聴いた時の懐かしさや雰囲気そのままに、同時に古臭さをほとんど感じないでピチカートの名曲たちを今の時代に楽しむことが出来ます。そういう意味でも、昔よく聴いたピチカートの曲たちを、今の時代に久しぶりに聴きなおすには、まさにうってつけといえるアルバムと言えるかもしれません。
そんなこともあり、サウンド的にもメロディーライン的にも全く色あせないピチカートワールドを楽しむことが出来るアルバムではあるのですが、一方、歌詞という側面からすると正直言って、少々時代性を感じてしまう点は否めません。冒頭を飾る「私のすべて」などは「生意気でわがままな女だけども可愛いから愛されている」という身も蓋もない歌詞が普通に歌われるのは、1991年というちょうどバブルが崩壊しはじめた時期の曲とはいえ、バブルの香りがまだまだ色濃く残っていた時代性を感じさせます。
時代は下がって、すっかりバブルが崩壊した後、1998年のナンバー「不景気」になると、「世の中不景気だから、気の利いた男の子に出会わない」という歌詞が登場してきます。ただ、これもこれで決して景気は悪くはないはずなのに、日本という国自体が沈没しかけている今の時代から考えると、かなり余裕があって、浮かれているようにも感じます。もっとも、「不景気」と歌っても、音楽業界的に90年代といえば、ミリオンセラー続出で、不景気な世の中とは異なり、空前絶後の好景気に沸いていた時期。そんな空気感を反映された明るさを歌詞の世界全体から感じることが出来ますし、また、そんな明るい空気感が、不景気にうんざりしているような人たち、あるいはそんな不景気とは無関係な若者世代に受け入れられたのかもしれません。
そういう時代性は感じつつも、もちろん楽曲自体の魅力は今なお衰えてないのは間違いありません。サウンド的にも今風にアップデイトされて、間違いなく今の時代に聴きやすい作品にアップデイトされた今回のアルバム。リアルタイムでピチカートを知らない世代の方にも諸手を挙げて是非、とお勧めしたくなるアルバムです。小西康陽が言及しているようにピチカートの復活はおそらくないとは思うのですが・・・ただ、ライブ限定とかで、いつかはやってほしい感じもするんですが・・・。
評価:★★★★★
ほかに聴いたアルバム
カルペ・ディエム/THE BACK HORN
ベスト盤などのリリースもあり、オリジナルのフルアルバムとしては約4年ぶりとなったTHE BACK HORNのニューアルバム。ある種、非常にTHE BACK HORNらしいと感じられるアルバムで、ダイナミックでへヴィーなバンドサウンドに哀愁感たっぷりのメロディーライン。ベタという表現がピッタリくるような、いい意味でわかりやすさを感じさせる構成となっています。THE BACK HORNを聴いたな、という心地よい満腹感を味わえるアルバムでした。
評価:★★★★
THE BACK HORN 過去の作品
BEST
パルス
アサイラム
リヴスコール
暁のファンファーレ
運命開花
BEST OF BACK HORN II
情景泥棒
ALL INDIES THE BACK HORN
Wave My Flag/SEAMO
来年3月にデビュー15周年を迎えるSEAMO。今年2月にアルバムをリリースしたばかりの彼ですが、それからわずか8ヶ月、彼のシンボルである天狗の日こと10月9日にニューアルバムがリリースされました。相変わらず彼らしいリズミカルでテンポのよいトラックや、ユーモラスな歌詞などで楽しませてくれます。ラストはここ最近おなじみのシーモネーター名義の曲も。ただ、ここ最近、傑作続きだった彼ですが、正直本作は、いまひとつ目新しさやインパクトのある楽曲はなし。悪くはないけど無難に終わっていた印象が。15周年直前の天狗の日に、という意図があったのかもしれませんが、ちょっと急ぎ過ぎたのでは?ちょっと惜しさを感じた1枚でした。
評価:★★★★
SEAMO 過去の作品
Round About
Stock Delivery
SCRAP&BUILD
Best of SEAMO
5WOMEN
MESSENGER
ONE LIFE
コラボ伝説
REVOLUTION
TO THE FUTURE
LOVE SONG COLLECTION
THE SAME AS YOU(SEAMO&AZU)
ON&恩&音
続・ON&恩&音
Moshi Moseamo?
Glory
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