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2020年1月27日 (月)

LISA is BACK!!!!!

Title:KYO
Musician:m-flo

LISA is BACK!!!...そう叫びたくなるようなm-floのオリジナルとしては約5年8か月ぶりとなるニューアルバム。m-floといえば、1999年にメジャーデビュー。最先端のサウンドを取り入れながら、ヒットチャートで通用するポップソングを作り上げるユニットとして大きな話題となり、2001年にはシングル「come again」が大ヒット。続くアルバム「EXPO EXPO」も大ヒットを記録し、一躍、その名前を世間に知らしめました。

しかし2002年にボーカルのLISAが脱退。2人組となったm-floは、その後も新しいボーカルを加えることなく、楽曲毎に様々なボーカルをゲストとして呼び、活動を続けてきました。その後も活動休止期間を挟みつつ、断続的に活動を続けてきたのですが、2014年にアルバム「FUTURE IS NOW」をリリース後、目立った活動がなくなり、その後の展開が心配されました……が、2017年になんとLISAがボーカルとしてメンバーに復帰することが発表!その後も配信を中心としてシングルをリリースしつつ、ついにニューアルバムがリリースされました。LISAが参加したアルバムとしては2001年の「EXPO EXPO」以来ですから、実に18年ぶりとなるアルバムとなります(…って、あのアルバムからもうそんなに経つんだ…)。

そんな久々の共演となった本作ですが、今回のLISA復帰、一言で言えばまさに水を得た魚。まさに長年、どこか欠けていたm-floのパズルの残った1ピースがピッタリとはまったかのように、久々のLISAボーカルが全く違和感なく、m-floサウンドにマッチしています。よくよく考えれば、m-floのサウンドが確立していく過程にはLISAのボーカルがあった訳で、m-floのサウンドはLISAのボーカルありきで成り立っていた、ということなのでしょう。18年という長い月日を全く感じさせない、息の合ったコンビネーションを聴かせてくれます。

LISAというm-floにとって最高のボーカリストを確保したことにより、ここ最近のm-floの曲の中では、断トツで自由度が高く、かつ肩の力の抜けた楽曲が本作では楽しめます。m-floではおなじみの矢島正明のナレーションが入った「Enter the Mortal Portal」に、ロッキンなエレクトロサウンドがカッコいい「Sheeza」。不協和音的なメタリックサウンドが耳に残る「STRSTRK」など、インパクトがある魅力的な楽曲が並びます。特にラストを締める「No Question」が実に秀逸。トランシーなサウンドをバックに歌とラップが交錯する、まさにm-floらしい楽曲。かつ、LISAとverbalのピッタリ息のあったやり取りは、まさにこの2人だからこそ実現できたと言えるでしょう。LISA復帰によりm-floの本領が発揮された作品と言えます。

また、☆Taku Takahashiのサウンドも、いい意味でLISAに対して無遠慮。ボーカル関係なく、グイグイと攻めてくるようなサウンドになっており、これもボーカルがLISAだからこそ、のような印象を受けました。もちろんLISAも負けていません。特に「EKTO」では彼女の本領発揮とも言うべき感情たっぷりに聴かせるボーカルを披露し、その魅力をしっかりと聴かせてくれています。いい意味でm-floの3人が無遠慮に、それぞれの個性を最大限発揮しているアルバムになっており、それもこの3人のメンバーだからこそ、といった感じでしょう。

また今回のアルバムで強く感じるのは、自由度が高くなった反面、かつてのm-floらしい、最先端のサウンドを取り入れてポップにまとめあげる、という方向性はちょっと薄くなったかな、という感もあります。今回のアルバムもビートを強調したサウンドは今時といえば今時なのですが、例えば昔の彼らだったら、今、流行しているトラップなんかも取り入れそうですが、今回のアルバムにそんな要素はゼロ。最近のエレクトロジャズも入ってきてもよさそうですが、その要素もゼロ。さすがの彼らも、いつまでも「最新流行を」とはいかなくなったのかな、とちょっと寂しく感じた反面、ただその分、自分たちの得意なフィールドで音作りをしているという感が強まった作品になっており、その点でもm-floの良さがしっかりと出ていた作品になっていたように感じました。

正直ここ最近、m-floのアルバムは残念な内容の作品が続いていただけにLISA復帰により、完全に失速しかけていたm-floが完全によみがえった、そんな印象を強く受ける傑作アルバムに仕上がっていました。今後のm-floの活躍が断然楽しみになるアルバム。これからは、是非この3人で長く活動を続けてほしいなぁ。やはりm-floのボーカルはLISAが一番!そう強く感じたアルバムでした。

評価:★★★★★

m-flo 過去の作品
electriCOLOR -COMPLETE REMIX-
Award SuperNova-Loves Best-
m-flo inside-WORKS BEST III-
MF10 -10th ANNIVERSARY BEST-
m-flo inside-WORKS BEST IV-
SQUARE ONE
m-flo DJ MIX"BON ENKAI"
NEVEN
FUTURE IS NOW


ほかに聴いたアルバム

バーチャル・ポップスター/Mitchie M feat.初音ミク

2011年に発表した「FREELY TOMORROW」がニコニコ動画のボーカロイド楽曲カテゴリーで再生回数最速記録を達成して一躍、注目のボカロPとなったMitchie M。2013年にリリースしたアルバム「グレイテスト・アイドル」も大ヒットを記録しました。同作はリアルタイムで聴いたのですが、ブラック・ミュージックの影響も受けたスタイリッシュで垢抜けた作風が魅力的で、その時のボカロ系アルバムの中でも特にクオリティーの高い傑作でした。

しかしその後、Mitchie Mの名前はあまり聴かれなくなり、期待していた次のアルバムもリリースされず、年月だけが過ぎて行きました。しかし、前作から6年。待望のニューアルバムがリリースされました。全17曲1時間6分というボリューミーな本作は、エレクトロサウンドを主軸としてポップな作品が並んでおり、「神調教」と言われた前作同様、初音ミクのボーカルの機械的で耳障りな部分がほとんどなく、良質なポップミュージックを楽しむことが出来ました。

前作に比べるとブラック・ミュージックからの影響はかなり薄れ、代わりにミュージカル風な曲、レゲエ風の曲、80年代のディスコチューンなど様々な作風の曲が登場し、リスナーを楽しませてくれます。ただ、全17曲というフルボリュームの中、様々なバリエーションの曲が入っている本作は、正直言うと少々詰め込み過ぎではないか、という印象を受けてしまったのも事実。最後まで聴くとお腹いっぱいで満腹感以上に若干胸やけすらしてきそうなボリューミーな内容になっていました。そういう意味では残念ながら前作で期待していたほどの内容ではなかったかも…。いいアルバムだとは思うのですが、ちょっと残念にも感じた新作でした。

評価:★★★★

Mitchie M feat.初音ミク 過去の作品
グレイテスト・アイドル

MOOD ADJUSTER/マリアンヌ東雲

キノコホテルの「支配人」、マリアンヌ東雲による初のソロアルバム。基本的にはキノコホテルの延長線上にあるようなタイプの楽曲で、彼女の持ち味がしっかりと生かされたようなアルバム。あえて言えば、キノコホテルよりも打ち込みが多かったような印象も。妖艶な雰囲気は相変わらずだったのですが、ガレージバンド色が薄くなっている点はソロアルバムならではといった感じでしょうか。その結果、若干薄味になってしまった感じもします。キノコホテルも相当癖のあるグループだけに、ソロならば、良くも悪くももうちょっとはっちゃけてもよかったのでは?と感じた作品でした。

評価:★★★★

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