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2020年1月11日 (土)

デビュー15周年のプレイリストアルバム

2019年にデビュー15周年、そして志村和彦没後10年を迎えたロックバンド、フジファブリック。その区切りの年に、2組のベストアルバムをリリースしました。

Title:FAB LIST 1
Musician:フジファブリック

Title:FAB LIST 2
Musician:フジファブリック

「FAB LIST 1」はプレデビュー盤から、かつて所属していたEMI Records、ユニバーサルミュージック時代の曲を集めたもの。選曲はファン投票に基づくものだそうで、公式サイトではベスト盤ではなく、あくまでも「プレイリストアルバム」と言っているところに今の時代を感じます。

よく知られているようにフジファブリックといえば、ギターボーカルでほぼ全ての楽曲の作詞作曲を手掛けていた志村和彦が2009年に、わずか29歳という若さでこの世を去るというショッキングな出来事がありました。そのためバンドとして存続の危機となったのですが、ギターの山内総一郎がボーカルを兼務。自らメインのライターとしてもバンドを引っ張り、バンドは存続。志村和彦逝去後10年を経た現在でも、直近のオリジナルアルバム「F」がオリコンチャートでベスト10入りを果たすなど、高い人気を誇っています。

今回のアルバム、所属レコード会社により「1」「2」を区切っているのですが、実質的には「1」が志村和彦在籍時の楽曲を集めたアルバム、「2」は主に山内総一郎がメインライターとなった後の楽曲が収録されています。そのため、「1」と「2」で志村和彦楽曲と山内総一郎楽曲の聴き比べが出来るようなベスト盤に。志村和彦といえば、非常に個性的かつインパクトのあるメロディーを書いてくる天才肌のソングライターとして高い評価を得ており、その後を引き継いだ山内総一郎は、かなり高いプレッシャーがあったようですが、それから10年、ライターとして自信をつけてきたのでしょう。

ただ、やはり今回、こういう形で志村和彦楽曲を聴くと、彼のソングライターとしての優れた才能をあらためて実感させられます。どこか憂いを帯びたメロディーライン、和の要素を感じられる独特のフレーズ、そして何より彼がライターとして優れているのは、決して派手でインパクトのあるフレーズを書いていなくても、聴き終わった後、しっかりと印象に残るメロディーを書いているという点でしょう。「1」の楽曲群を聴くと、あらためて彼の天性の才能を強く感じさせます。また、これは以前も感じていたことなのですが、彼の書く楽曲のクオリティーは後になるに従い明らかに上がっており、彼のあまりにも早い死をあらためて残念に感じてしまいました。

一方、「2」に収録されている山内総一郎楽曲については、志村曲と比べてかなりの健闘ぶりをあらためて感じました。楽曲的にはストレートに志村正彦からの影響を感じます。ただ一方で、志村楽曲に感じられる「憂い」のような要素は薄く、その一方で、非常に明るい雰囲気を感じます。その点が若干、楽曲の「薄さ」を感じる部分がないわけではないのですが、それなりに山内総一郎の個性として感じることが出来ます。ただ、個人的には、そろそろもっと、山内総一郎色を楽曲に出していっても面白いのでは?とも感じますが。

そんな訳で、「1」「2」を聴き比べることにより、志村和彦のその才能をあらためて感じると主に、今のフジファブリックのがんばりぶりも感じることが出来ました。デビューから15年、志村和彦逝去後、もう10年の月日が流れた彼ら。バンドとしていろいろと大変な時期を乗り越えてきた彼らですが、その歩みはまだまだ止まらなさそう。これからの活躍にも期待したいところです。

評価:
FAB LIST 1 ★★★★★
FAB LIST 2 ★★★★

フジファブリック 過去の作品
TEENAGER
CHRONICLE
MUSIC
SINGLES 2004-2009

STAR
VOYAGER
LIFE
BOYS
GIRLS
STAND!!
FAB LIVE
F


ほかに聴いたアルバム

Before The Past・Live From Electrical Audio/MONO

ポストロックバンドMONOによる活動開始20周年を記念してリリースされたミニアルバム。彼らの初期の作品を、かのスティーヴ・アルビニとTemporary Residenceのオーナージェレミー・ディヴァインと共に、シカゴのエレクトリカル・オーディオで、スタジオライブという形で収録したアルバム。へヴィーでノイジーなギターサウンドをダイナミックに聴かせる構成ながら、悲しさを感じさせるようなメロディーラインを含め、どこか狂おしいような優しさを同時に感じさせるサウンドは実に見事。特に3曲目「Halo」の中盤以降、埋め尽くすようなギターノイズの音は、ただただ優しく、リスナーを包み込むように感じました。

評価:★★★★★

MONO 過去の作品
Hymn To The Immortal Wind
For My Parents
The Last Dawn
Rays of Darkness

Requiem For Hell

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