50歳×4人組×30周年
Title:50×4
Musician:フラワーカンパニーズ
2019年にデビュー30周年を迎えたロックバンド、フラワーカンパニーズ。昨年から今年にかけ、デビュー30周年として様々な企画を実施しており、その中でも昨年行われたセンチュリーホールでのデビュー30周年記念ライブイベントは私も足を運び、デビューから30年が経っても、いまなお非常にアグレッシブな活動を続ける彼らのステージをその目で確かめてきました。本作はそんな彼らがデビュー30周年の年にリリースした約2年ぶりのオリジナルアルバム。タイトルの「50×4」はもちろん彼らの年齢である50歳×4人組から取られたもの。前作「ROLL ON 48」も彼らのその時の年齢から取られており、アラフォーとなった彼らが、あえて今の自分たちの年齢に向き合っていることを感じさせるアルバムタイトルとなっています。
ただ、そんな彼らのニューアルバムは、良くも悪くも、実にフラワーカンパニーらしい、といった感じの作品となっていました。トライバルなリズムで力強く聴かせるイントロ的な「Eeyo」からアルバムがスタートすると、続く「DIE OR JUMP」はギターリフ主導のガレージ色の強いナンバーに、歌詞は自らを強く鼓舞するようなナンバー。まさにフラカン節というべき楽曲からアルバムの幕は空きます。
自らについて歌った「ロックンロールバンド」も彼ららしくメロディアスで暖かみを感じさせるナンバー。続く「まずごはんだろ?」では裏打ちのリズムがアルバムの中でひとつのインパクトに。メッセージ性の強いナンバーながらも、最後に言いたいことが楽曲タイトルであるあたり、こちらもフラワーカンパニーズらしさを感じさせます。
後半もフラカン節は続きます。「いましか」も、ダメな自分を鼓舞する、こちらも実にフラカンらしい歌詞。「変えてゆける 今しか」というメッセージは50歳になってもロックバンドとしての挑戦を続ける彼らの姿が重なります。「25時間」も彼ららしいロックンロールナンバー。自らを鼓舞しながらも最後のオチがなかなかユニークである点も、こちらも彼ららしいといった感じでしょうか。そしてアルバムの締めくくりでは郷愁感たっぷりの「見晴らしのいい場所」で締めくくり。
「もうちょっとだけ 見晴らしのいい場所へ
もうちょっとだけ 陽当たりのいい場所へ
もうちょっとだけ 風の抜ける場所へ
サヨナラも後悔も虚しさも乗せて
また走り出す」
(「見晴らしのいい場所」より 作詞 鈴木圭介)
という最後を締めくくる歌詞は、まさにバンドとしての現状、そして31年目への決意を感じさせる歌詞で締めくくられています。
そんな訳で、30周年のアルバムらしく、終始フラカンらしさを感じさせる本作。ただ、一方では良くも悪くもバンドとして大ブレイクできない理由もなんとなく垣間見れる部分も感じてしまいます。まず全体的に歌詞にしろメロにしろ、インパクトが若干弱い点。歌詞はちゃんと聴けば印象に残るフレーズも登場してくるのですが、リスナーの耳をつかむようなワンフレーズは残念ながら登場してきません。メロも決して悪くはないのですが、それを売りにするにはちょっと弱い印象も。また、ロックバンドとしてゴリゴリのバンドサウンドを聴かせてくれる曲もあるのですが、全体的にはバンドサウンドを前に押し出したというには弱い感じもあり、その点にも正直、ちょっと中途半端さを感じてしまいました。
個人的には、もっとバンドサウンドを前に出してきて、ロックンロールバンドとしてのフラカンをもっと主張してきた方がおもしろいように感じるのですが・・・。良くも悪くも器用貧乏な部分が逆に彼らの魅力なのかもしれません。ただ、デビュー30周年、メンバー全員が50歳となった今でもロックンロールバンドとしての足腰の強さには変わりはありません。31年目からの彼らも非常に楽しみです。
評価:★★★★
フラワーカンパニーズ 過去の作品
フラカン入門
ハッピーエンド
新・フラカン入門
Stayin' Alive
夢のおかわり
ROLL ON 48
ほかに聴いたアルバム
2ND GALAXY/Nulbarich
Nulbarichの新作は8曲入りのミニアルバム…なのですが、うち2曲がイントロとアウトロなので、実質的には6曲入りとなるミニアルバム。アシッドジャズやソウルなどの音楽性に軸足を置きつつも、比較的、ロックやポップス寄りに徐々にシフトを移しているような印象も受けるアルバム。結果として聴きやすさはグッと増してきたような感はするものの、前作「Blank Envelope」同様、メロディーのフックの弱さが気にかかりますし、サウンド的にもそのフックの弱さを補うほどの目新しさ、独自性は薄くなってしまったような印象も。いいアルバムであることには間違いないと思うのですが・・・。
評価:★★★★
Nulbarich 過去の作品
Who We Are
Long Long Time Ago
H.O.T
The Remixies
Blank Envelope
Don't Stop Me Now~Cornerstones EP~/佐藤竹善
SING LIKE TALKINGのボーカリスト、佐藤竹善がライフワーク的に行っているカバー企画「Cornerstones」シリーズの最新作は5曲入りのミニアルバム。ただ、わずか5曲という内容ながらも、フュージョン風のアレンジにまとめた前半から一転、後半はサルサバンドSALSA SWINGOZAをアレンジャーとして加えたサルサ風のアレンジによるカバーになっているという展開がなかなかユニーク。原曲の良さを生かしつつ、一癖のある、佐藤竹善としての足跡をしっかりと残したカバーに仕上がっていました。
評価:★★★★
佐藤竹善 過去の作品
ウタジカラ~CORNER STONE 4~
静夜~オムニバス・ラブソングス~
3 STEPS&MORE~THE SELECTION OF SOLO ORIGINAL&COLLABORATION~
Your Christmas Day III
The Best of Cornerstones 1 to 5 ~The 20th Anniversary~
My Symphonic Visions~CORNERSTONES 6~feat.新日本フィルハーモニー交響楽団
Little Christmas
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