アルバムレビュー(洋楽)2019年

2019年12月29日 (日)

圧巻のステージ

Title:Live At Home With His Bad Self
Musician:James Brown

「ファンクの父」「ファンクの帝王」などと呼ばれ、60年代にファンクミュージックを確立。後のミュージックシーンにあまりにも大きな影響を与えたミュージシャン、ミスター・ダイナマイトことジェームス・ブラウン。今年、彼の新しいライブアルバムがリリースされたということで話題となっています。本作は1969年10月1日に、彼の出身地、オーガスタで行われたライブの模様をおさめた作品。もともとは1969年にライブアルバムとしてリリースする予定だったものの、その後リリースされたシングル「Sex Machine」が大ヒットを記録。そのため、同曲も収録したライブアルバム「Sex Machine」がリリース。同作にこの日の音源は一部収録されているものの、このたび、ライブから50周年を記念して完全版のリリースとなりました。

さて、ジェイムス・ブラウンといえば、そのライブに定評のあるミュージシャン。特にアルバムはオリジナルアルバムよりもライブアルバムが彼を代表する「名盤」として紹介されることが少なくありません。特にこのライブ盤に代わってリリースされることとなったライブアルバム「Sex Machine」は彼を代表する名盤、どころかソウルミュージックを代表する名盤として、今なお多くの音楽ファンに愛聴されています。

そんな彼の、それも名盤「Sex Machine」と同時期というからもっとも脂ののった時期のステージの模様を収録したライブアルバムである訳ですから、その内容が悪い訳がありません。ライブはいきなり彼の代表曲である「Say It Loud I'm Black And I'm Proud」からスタート。ファンキーなサウンドと力強いボーカル。まだスタート直後で会場の暖まり方はいまひとつな部分はあるのですが、その迫力あるライブパフォーマンスにまずは魅了されること間違いありません。

ただ、彼のライブの魅力は、このアップテンポでファンキーな、会場を盛り上げる楽曲が続くから、ではありません。MCを挟んで事実上の2曲目となる「World」では哀愁たっぷりのボーカルで力強く歌い上げるソウルなミディアムテンポチューン。その後、ファンキーなインスト曲が続いたかと思えば、「If I Ruled The World」は感情たっぷりに歌い上げる歌声が胸をうつ、ムーディーなソウルバラード。むしろ前半では、ファンキーなリズムよりも、彼のその力強くも感傷的なボーカルに胸をうつ、バラードナンバーが大きな魅力となっています。

その後もファンキーな「I Don't Want Nobody To Give Me Nothing(Open Up The Door I'll Get It Myself)」「I Got The Feelin'/Licking Stick-Licking Stick」などで盛り上げつつ、「Try Me」のようなソウルバラードも間に挟み、その歌声を聴かせます。アップテンポなファンク一辺倒ではなく、緩急つけた楽曲とそしてそれら変化に富んだ曲調でも易々と歌い上げるジェイムス・ブラウンのボーカルが、彼のライブに定評がある大きな理由のように強く感じました。

しかし圧巻はやはりこのアルバムの終盤でしょう。「Give It Up Or Turnit A Loose」からまさにファンクの帝王らしい、ファンキーでアップテンポな曲が続いていきます。その後、基本的に楽曲の間はシームレスでライブは一気に終盤戦に。序盤とは異なり会場もすっかり暖まったため、ライブ会場の熱気も伝わってきます。特に事実上のラストとなる「Mother Popcorn」は、これでもかというほどシャウトしまくるジェイムス・ブラウンのボーカルとライブバンドの熱気に圧倒される演奏に。9分にも及ぶ長尺の曲で、最後になればなるほど熱量はどんどんと上がっていき、まさに最高のテンションの中、ライブは幕を閉じます。その迫力満点のパフォーマンスにジェイムス・ブラウンの実力を存分に感じられる内容となっていました。

ジェイムス・ブラウンの代表作に名前を連ねても全く違和感のないようなライブ盤の傑作だったと思います。間違いなく、なぜジェイムス・ブラウンのライブがあれだけ評価されているのか、このアルバムを聴いても十分納得が出来るのではないでしょうか。こういうアルバムがいまさらながらリリースされたということを非常にうれしく感じます。ブラックミュージックが好きな人はもちろん、そうでなくてもお勧めしたい傑作ライブ盤です。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

Kind/Stereophonics

2、3年に1度、コンスタントにアルバムをリリースし、なおかつどのアルバムもチャート上位に食い込んでくる、イギリスの国民的バンドとも言えるStereophonicsの約2年ぶりとなるニューアルバム。最近のアルバムは比較的バリエーションのある曲調のアルバムが続いていましたが、今回のアルバムはイギリスというよりもアメリカのロックからの影響を受けたような、渋いブルースロックが主軸となっているアルバム。もともと、ここ何作か、軽いポップなアルバムが続いたかと思えば、泥臭い作風のアルバムをリリースするというスパンが続いていたのですが、今回のアルバムは泥臭いアルバムのターンといった訳でしょうか。個人的には、今回のアルバム、ちょっと泥臭すぎて、あまり好みではなかったかも。悪いアルバムではないと思うのですが。

評価:★★★★

STEREOPHONICS 過去の作品
Decade In The Sun-Best Of Stereophonics
KEEP CALM AND CARRY ON
Graffiti On The Train
Keep The Village Alive
Scream Above The Sounds

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2019年12月24日 (火)

前作と同じレコーディングで生まれた作品

Title:PYROCLASTS
Musician:Sunn O)))

アメリカのドゥーム・メタルバンド、Sunn O)))のニューアルバム。今年4月にアルバム「Life Metal」をリリースしたばかりの彼らですが、それからわずか半年。早くもニューアルバムがリリースされました。とはいっても今回のアルバム、前作とは全く異なる文脈の中でリリースされた作品、という訳ではなく、前作「Life Metal」でのセッションの音源が元となったアルバム。そのため、前作同様、プロデュースはかのスティーブ・アルビニが手掛け、彼のスタジオ、Electrical Audioでレコーディングを行った作品となっています。

そういうこともあり、楽曲的な方向性としては前作「Life Metal」から大きな変化はありません。圧倒的な音の壁がこちらにのしかかってくるような、そんな感覚が襲ってくるようなアルバムになっています。43分という長さの作品にもかかわらず、わずか4曲入り。1曲あたり10分以上の長さの楽曲が4曲並ぶ内容。長尺の中にただただ音の世界に圧倒される、そんな作品に仕上がっています。

基本的には4曲とも、同じピッチのギターノイズが延々と続いていく内容。ただ、そんな中でも1曲目「Frost」は重いメタリックなノイズが展開していく楽曲。続く「Kingdoms」は同じメタリックな作風ながらも、どこかメロディアスな感覚を覚えるから不思議です。3曲目「Ampliphaedies」は同じギターノイズながらも、もうちょっと高音域が展開していく楽曲になっており、最後の「Ascension」も3曲目同様の比較的高めのピッチのギターノイズが延々と続く作品になっています。

そんなヘヴィーなギターノイズが展開していく作品ながら、そのノイズ音には不快さは全くなく、ある種のポピュラリティーすら感じさせる内容になっています。そういう意味では楽曲に難解さはほとんど感じず、意外と広いリスナー層が楽しめそうな楽曲に。確かにわかりやすいメロディーラインはないのですが、そのギターノイズに圧巻されているうちに、いつの間にかはまってしまう、そんなアルバムではないでしょうか。

ちなみに今回のアルバムは、「Life Metal」のレコーディングうち、1日の最初と最後に行われたある種、音慣らし的なセッションの中で生まれた音源を収録した作品だそうで、そういう意味では「Life Metal」の習作とも言える作品ですし、また、同作のアウトライン的な作品と言っていいかもしれません。また、そのためでもあるのでしょうが、ギターノイズの中にボーカルが入ったり、シンフォニックな音が入ったりと、それなりにバリエーションのあった「Life Metal」に比べると、こちらは最初から最後まで一貫してギターノイズの嵐。そういう意味では楽曲としての構成が整っているのは前作の方と言えるかもしれません。

ただ本作も、ただただギターノイズのみで構成された作品は、ある意味Sunn O)))というバンドだけで作り上げられた音であり、彼らのコアの部分が出た作品と言っていいかもしれません。また、音慣らし的なセッションの中で生まれたからこそ、彼らの本質的な部分が顔を覗かせているとも言えるかもしれません。純粋にアルバムの出来としては前作の方が上かもしれませんが、本作も間違いなく傑作と言えるアルバム。その音の世界に圧倒されてください。

評価:★★★★★

Sunn O))) 過去の作品
Life Metal

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2019年12月23日 (月)

ゴスペル色が強い新作

Title:Jesus Is King
Musician:Kanye West

Kanye West単独名義では昨年6月にリリースされた「Ye」以来、約1年4ヶ月ぶりとなるニューアルバム。前作「Ye」は非常に内省的なアルバムで、自身の双極性障害を告白するという、ある種衝撃的ともいえる内容になっていました。その後、昨年9月にニューアルバム「Yandhi」をリリースすると発表していたものの延期になった上に立ち消え。一方で今年に入って「サンデー・サービス」という自らの楽曲やカバー曲をゴスペルとして披露するパフォーマンスを行っていたり、Twitter上で「世俗の音楽はもう作らない。これからはゴスペルしかやらない」とつぶやいたりしていましたが、そんな流れもありニューアルバムはアルバム全体にわたってゴスペル色の強い作品に仕上がっています。

もっとも私たち日本人にとっては、英語詞のためストレートに内容がわからない、ということもあり、時として海外のミュージシャンが宗教色の強い楽曲を作っても、その意味がなかなか伝わらないというケースは少なくありません。ただ、今回のカニエのアルバムに関しては、1曲目のイントロ的なナンバー「Every Hour」からして、クワイヤの力強い合唱曲といういかにもゴスペル的な楽曲となっており、続く「Selah」もカニエによる物悲しくも力強いラップが聴けるのですが、バックのシンセのサウンドはいかにも教会音楽的な荘厳な雰囲気を醸し出していますし、こちらもクワイヤによる「ハレルヤ」というコーラスが重なっており、日本人にとっても嫌でも宗教色の強いアルバムである事実が感じとれます。

その後もタイトルそのまま「God Is」ではゴスペル風のコーラスがのったり、アウトロ的な「Jesus Is Lord」もタイトルそのままの歌詞が流れてきたりと、宗教的な雰囲気がわかりやすい色合いの曲も少なくありません。ただもちろん、それらの曲も含めてアルバムの出来としては、Kanye Westらしい実に完成度の高い楽曲が収録されていました。なんでもリリース当日まで夜を徹してミキシング作業を続けていたとか…彼の音楽に対するつよいこだわりも感じます(…と同時に、ギリギリまでそういう作業が出来てしまうのは、配信リリースの良い点でもあり、見切りを付けられないという点では悪い点なのかもしれませんね…)。

例えば「Follow God」ではループするサンプリングを効果的に用いた、カニエウエストらしいHIP HOPチューンに仕上げていますし、「On God」も爽快さを感じるエレクトロトラックが魅力的なラップチューン。さらには「Hands On」も重厚なエレクトロトラックが強いインパクトを残す中、噛みしめるようなカニエのラップも印象に残る楽曲になっており、アルバム全体としては、ゴスペル色の強い作品とはいえ、一方ではしっかりとKanye Westらしさを強く感じさせる内容となっています。また、「Closed On Sunday」もアコギをバックに哀愁感たっぷりに聴かせる歌が心に響きますし、「Water」も美しいコーラスラインをバックに、美メロとも言えるメロディーを聴かせるソウルな楽曲に。歌モノとしても魅力的な楽曲も多く、そういう面でもいい意味での聴きやすさも感じられるアルバムに仕上がっていました。

またアルバムの長さとしても、ここ最近のカニエの共通していることなのですが、全11曲で27分という短さ。そういう点でも聴いていて一切ダレることなく、一気に聴ききれるアルバムになっており、このアルバムの長さもいい意味で同作を聴きやすい作品と感じられる大きな要素となっていました。宗教色が強いため文化的背景によって受ける印象が異なる可能性もあるものの、日本人としてはその宗教的色合いが決してマイナスには働かず、かつカニエらしさもしっかりと残した魅力的な傑作アルバムに仕上がっていました。ちなみに12月25日には続編として「Jesis Is Born」をリリース予定とアナウンスしているカニエ。前科があるのであまり期待はしていないのですが、リリースされたら今年最後の傑作アルバムとなりそう…期待しないであさってを待っていたいと思います。

評価:★★★★★

KANYE WEST 過去の作品
GRADUATION
808s&Heartbreak
MY BEAUTIFUL DARK TWISTED FANTASY
YEEZUS
The Life Of Pablo
Ye


ほかに聴いたアルバム

What's Going On Live/Marvin Gaye

今年、「幻のアルバム」と言われた「You're The Man」をリリースし、大きな話題となったソウルミュージック界のレジェンド、マーヴィン・ゲイ。今度はそれに続きライブアルバムをリリース。1971年にリリースされ、ソウルミュージックというジャンルを越えて、音楽史にその名を遺す名盤となった「What's Going On」。本作はその翌年、1972年5月1日にアメリカ・ワシントンDCのJ.F.ケネディ・センターで行われたライブの模様を収録したもの。「What's Going On」からの楽曲はもちろんのこと、60年代のヒット曲もメドレーで披露したこのライブ。原曲以上に感情を込めてメロウにその歌声を聴かせてくれており、歌手としてのマーヴィンの魅力も堪能できる作品に。新たなライブの名盤登場を予感させる1枚でした。

評価:★★★★★

Marvin Gaye 過去の作品
You're The Man

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2019年12月22日 (日)

バラエティー富んだエレクトロサウンド

Title:Crush
Musician:Floating Points

今回紹介するミュージシャンは、ロンドンを拠点に作曲家、プロデューサー、さらにはDJとして活躍を続けているミュージシャン、Floating Points。今年、サカナクションとサマソニのコラボレーションイベント「NF in MIDNIGHT SONIC」にDJとして参加。また来日公演も決定するなど、日本でも確実にその知名度を上げてきています。2019年にはColdcutのメンバーが立ち上げた、ロンドンのクラブ系のインディーレーベル「Ninja Tune」と契約。本作は同レーベルからリリースされる第1弾アルバムとなりました。

楽曲的には比較的、音数を絞ったシンプルでエッジの効いたエレクトロサウンドを力強いビートに載せて展開していくサウンド。ただ、今回13曲入りのアルバムなのですが、13曲それぞれが別の顔を持った非常に凝ったバラエティーに富んだ作風に展開していっているのが大きな魅力。前作「Elaenia」はジャズやクラシック、ブラジリアンポップの要素まで入れた作風…と紹介されていた記事を読んだ(アルバムは聴いていませんが…)のですが、今回のアルバムも、全体的にはさすがに前作ほどのバラバラな音楽性は感じなかったのですが、多様な作風が魅力に感じました。

例えば1曲目「Falaise」から、エレクトロサウンドの中にどこかエキゾチックな雰囲気を感じさせる楽曲からスタート。続く「Last Bloom」は強いリズムに様々なエレクトロサウンドが重なる、典型的なビートミュージックに仕上がっていますし、「Anasickmodular」もビート感あるエレクトロサウンドの中に流れる、ストリングスのような伸びやかな音が一種の優雅さとスケール感を醸し出しています。

中盤の「LesAlex」もテンポのよいリズミカルなナンバーで、こちらはテクノなダンスチューン。ライブで聴いたら非常に気持ちよさそうなナンバー。「Bias」は不気味な雰囲気のエレクトロサウンドが奏でるメロディーが妙な哀愁感を醸し出している点が印象的ですし、「Sea-Watch」も悲しい雰囲気が楽曲全体に流れるエレクトロチューン。ほかにもわかりやすいリズムのダンサナブルな四つ打ちナンバーから、複雑なサウンドで挑戦的な作風を感じるナンバーまで様々なバリエーションを感じさせます。

ただ、全体的には決してわかりやすいメロディーラインが流れている訳ではないのですが、テンポのよいリズムが流れている曲も多かったり、意外と哀愁味を帯びたサウンドが印象的だったりした結果、アルバム全体としては意外とポップで聴きやすいアルバムという印象を受ける作品になっていました。アルバム全体で50分というちょうどよい長さも聴きやすい大きな要素ですし、そんな中でもバリエーション富んだ作風のため、最初から最後まで全くダレることなく最後まで楽しめるという点もポップに感じさせる大きな要因でしょう。

エレクトロやビートミュージックが好きな方なら無条件でお勧めできそうな、良い意味でポップさを感じさせるアルバムだったと思います。「NF」での来日もありましたし、さらには来日公演も控えているみたいで今後、日本でもさらに注目を集めそうなミュージシャン。今、注目しておきたいエレクトロミュージシャンなのは間違いないでしょう。

評価:★★★★★

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2019年12月20日 (金)

待望の続編!

Title:Everything Not Saved Will Be Lost Pt.2
Musician:Foals

イングランド出身5人組のギターロックバンドによるニューアルバム。今年3月、4年ぶりとなるニューアルバムをリリース。「Everything Not Saved Will Be Lost Pt.1」と名付けられたタイトル通り、その時から近いうちの第2弾リリースがアナウンスされていましたが、そこから約7ヶ月、その最新作がリリースされました。前作「Pt.1」は非常に優れた出来栄えの傑作アルバムだっただけに今回のアルバムも楽しみにしていたのですが、結果としてその期待にそぐわない傑作アルバムがリリースされました。

前作「Pt.1」ではニューウェーブの影響を強く感じるエレクトロサウンドがメインとなっている作品に仕上がっていました。ただ、今回のアルバム、純粋にその続編、といった感じではなく、前作からその方向性を変えた作風が大きな特色になっていました。今回のアルバムで特徴的だったと言えるのは非常にロックテイストが強くなったという点。イントロ的な1曲目に続いてはじまる2曲目「The Runner」では非常にヘヴィーなギターリフからスタート。若干シャウト気味なボーカルを含めて、ハードロックな色合いの強い作風に仕上がっています。

この方向性はその後もアルバム全体を通じて続いていきます。「Black Bull」もヘヴィーなギターリフ主導の中、ボーカルのシャウトが耳に残るロッキンな楽曲に仕上がっていますし、「Like Lightning」もテンポ良いリズミカルな楽曲ながらもヘヴィーなギターリフが楽曲の軸となっています。

その傾向は後半も続き、「10,000Feet」もヘヴィーなギターでゆっくり展開されるダイナミックなナンバー。シンセの音を加えた分厚いサウンドが楽曲にスケール感を与えています。ラストを締めくくる「Neptune」もゆっくりとへヴィーなギターサウンドでスケール感を持って聴かせる楽曲。10分にも及ぶ長尺の楽曲で、全編ダークなサウンドで、どこか怪しげに展開されるサウンドに最後まで惹きつけられる楽曲に仕上がっています。

そんな感じでエレクトロサウンド主体だった前作とはうってかわってロックサウンドが主体となった今回のアルバム。ただ、アルバムとして前作と並べて聴くと、方向性的には意外と近いものも感じます。まず共通点としては前作同様、どこか漂う80年代的な空気感。前作もニューウェーブな作風がどこか80年代的な空気を感じさせるものだったのですが、今回のアルバムに関してもハードロックなサウンドにはどこか80年代的な空気も感じられます。

また、ポップでインパクトあるメロディーラインを聴かせるという点も共通項。ただ、この点に関しては前作の方がより美しいメロディーラインを前に押し出しており、インパクトの点では前作の方が上だったかも。もっとも今回のアルバムでも十分ポップなメロを聴かせてくれており、その魅力を楽しめる作風には仕上がっているのですが。

売上的にもこのアルバムでバンド初となるイギリスの公式チャートで1位を獲得したとか。どちらかというと前作の出来の良さが今回のアルバムの売上に反映されたような感じも強いのですが、それだけ多くのファンが注目したアルバムだったということなのでしょう。もちろん、1年間で2枚のアルバムを作り、そしてどちらも傑作だったという事実からもバンドとしての勢いを感じさせます。彼らの活躍はまだまだ続きそうです。

評価:★★★★★

FOALS 過去の作品
TOTAL LIFE FOREVER
Holy Fire
Everything Not Saved Will Be Lost Pt.1

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2019年12月16日 (月)

なんと今年2作目!

Title:Two Hands
Musician:Big Thief

ニューヨーク、ブルックリンを拠点としている4人組インディーロックバンドBig Thief。今年5月にリリースした2枚目のオリジナルアルバム「U.F.O.F.」が高い評価を受け、大きな話題となりました。当サイトでも紹介させていただきましたが、美しいメロディーラインにボーカル、エイドリアン・レンカーの歌声が強い印象に残る傑作アルバムで、個人的にも一気に気になるバンドとなりましたが、それからわずか5ヶ月。早くも3枚目となるニューアルバムがリリースされました。

今回のアルバムは前作が完成してからわずか5日後にレコーディングを開始したそうで、それだけ彼らのバンドとしての勢いを感じさせます。もちろんわずか5ヶ月というインターバルということもあり、基本的な方向性としては前作から大きな違いはありません。静かでフォーキーな雰囲気を持ったサウンドと美しいメロディーライン、そしてエイドリアンの感情のこもった静かで美しいボーカルを軸とした曲作り。前作「U.F.O.F.」を気に入った方なら、文句なしに今回のアルバムも気に入るのではないでしょうか。

ただ、サウンド的には終始アコースティックでフォーキーなサウンドを聴かせてくれた前作と比べると、バンド色が強く感じるようになりました。「Forgotten Eyes」もギターサウンドを聴かせる楽曲で、エイドリアンのボーカルにも力強さを感じさせますし、「The Toy」もエイドリアンの歌を静かに聴かせる楽曲ながらも、ギターサウンドを前に押し出したサウンドメイキングに。「Sholders」も力強いギターサウンドが前に押し出された楽曲になっていますし、「Not」もバンドサウンドをバックに男性コーラスを加えた力強い歌声が印象に残る楽曲に仕上がっています。

もちろんアコースティックなサウンドが主体となっている曲もあり、「Wolf」などはまさにアコギのアルペジオのフォーキーな楽曲を、透き通るようなエイドリアンのボーカルで聴かせるアコースティックなサウンド構成に。この曲なんかは実に美しいメロディーラインが印象に残る楽曲になっており、アルバムの中でも特に魅力的な傑作になっていました。

全体的にアコースティックな作風の曲が多く、時折入るギターサウンドがインパクトとなっていた前作とは対照的に、ギターサウンドが押し出した作品がメインとなっており、時折入るアコースティックな作風の曲がインパクトとなっていた今回のアルバム。そういう意味で前作とは対になっているアルバムと言えるでしょう。ただ、もっともフォーキーなメロディーラインは前作から変わりませんし、エイドリアンの感情がこもったボーカルの魅力も前作と同様。そういう意味では上でも書いた通り、アルバムとしての本質的な部分は前作から変わらないと言ってもいいでしょう。

前作が傑作だっただけに、今回のアルバムは前作に比べると日本のメディアでも比較的取り上げられる機会がグッと増えたように感じます。シンプルで美しいメロディーラインは広い層に支持されそうですし、インディーバンドとはいえ、この手のバンドにありがちなわかりにくさ的なものは皆無。そういう意味でも日本でも今後、さらに支持が広がりそう。前作が気に入った方にはもちろん、今回はじめて彼女たちの名前を知ったという方にも文句なしにお勧めできる傑作です。

評価:★★★★★

Big Theif 過去の作品
U.F.O.F.

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2019年12月15日 (日)

多彩なゲストが参加

Title:Juice B Crypts
Musician:BATTLES

デビュー以来、唯一無二の音楽性で多くの音楽ファンから高い支持を集めているアメリカのエクスペリメンタルロックバンド、BATTLES。今回リリースされた約4年ぶりのニューアルバムですが、まず大きな特徴として非常に多くのゲストが参加したアルバムとなっていました。Yesの初代ボーカリスト、Jon Andersonに、ポストパンクバンドLiquid LiquidのSal Principato、台湾のエクスペリメンタルロックバンド落差草原WWWWやアメリカはシアトル出身のHIP HOPデゥオ、Shabazz Palacesなど、多彩なミュージシャンがズラリと並び、いままでにない賑やかなラインナップのアルバムに仕上がっています。

まず全体的に言えば、ダイナミックなバンドサウンドで力強い演奏を聴かせるスタイルは健在。さらにエレクトロサウンドを入れつつ、複雑な構成になっているスタイルも、BATTLESらしさを感じます。そんな彼ららしさを強く感じるのは表題曲の「Juice B Crypts」。ダイナミックなバンドサウンドにエレクトロの要素が入っている、いかにも彼ららしい楽曲なのですが、エレクトロサウンドにどこかユーモラスな要素も入る点が耳を惹く楽曲となっています。

このエレクトロサウンドにユーモラスなセンスを感じるのも今回のアルバムの特徴に感じられます。前述の表題曲に続く「Last Supper On Shasta Pt.1」もまさにそんなエレクトロサウンドにダイナミックなバンドサウンドを加えつつ、どこかユーモラスな雰囲気を感じさせる作品。その他の楽曲にしても、複雑な構成のサウンドを用いながらも、どこかユーモラスと、そしてそれに伴うポピュラリティーを感じさせる点が今回のアルバムの大きな魅力となっていました。

また、様々なゲストが参加したことにより、楽曲のバリエーションがグッと増えたのも今回のアルバムの大きな特徴でしょう。アメリカの女性シンガーであり、またマルチ楽器奏者であるXenia Rubinosが参加した「They Played It Twice」も彼女の伸びやかな歌声と、アバンギャルドさを感じるサウンドが魅力的。Jon Andersonに落差草原WWWWが参加した「Sugar Foot」もいきなり中国語のセリフからスタートし、エキゾチックさを醸し出しつつ、後半には、日本的な祭囃子のようなビートが飛び出したりしてきて、非常にユニークな作風になっています。

Sal Principatoが参加した「Titanium 2 Step」もファンキーなリズムが耳を惹く楽曲になっていますし、Shabazz Palacesが参加した「IZM」もBATTLESらしいダイナミックなバンドサウンドにラップが重なる楽曲になっています。さらに日本限定のボーナストラック「Yurt」には太鼓芸能集団「鼓童」のメンバー・住吉佑太が参加。音数を絞り空間を聴かせるようなサウンドに、和風の太鼓のリズムと横笛の音色が響く日本的な楽曲に。まあ、日本でのリリースを意識した作品なのですが、ボーナストラックにしておくには少々もったいない、非常に魅力的な楽曲に仕上がっています。

BATTLESらしさはそのままに、多彩なゲストが参加することにより音楽性がグッと広がったアルバムになっていた本作。ユーモラスな作品も含めて、意外とメロディアスでポピュラティーも感じさせるメロディーラインが入っているのも大きな魅力。今回、広がった彼らの音楽性が今後どのように展開していくのか、これからも楽しみになってくる作品でした。

評価:★★★★★

BATTLES 過去の作品
MIRRORED
GLOSS DROP
La Di Da Di


ほかに聴いたアルバム

Ghosteen/Nick Cave&The Bad Seeds Cave

オーストラリア出身のシンガーソングライターによるNick Caveによる「Nick Cave&The Bad Seeds Cave」名義のニューアルバム。ピアノやストリングスを使った荘厳な雰囲気のサウンドに、語り掛けるように美しく歌い上げるボーカルが魅力的。御年62歳のベテランシンガーらしく、声には張りがない部分もありますが、その分、渋さを感じさせるボーカルになっており、そんなボーカルと荘厳なサウンドがマッチ。決して派手さはないのですが、じっくりと聴き入りたいアルバムに仕上がっていました。

評価:★★★★

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2019年12月 7日 (土)

インパクトあるポップなメロが魅力的

Title:Ode To Joy
Musician:Wilco

アメリカのオルタナティブロックバンド、Wilcoの約3年ぶりとなるニューアルバム。ここ最近、メンバーJeff Tweedyのソロアルバムのリリースが続いていたため、バンドのオリジナルアルバムとしてはちょっと久しぶりとなる新作。ユーモラスな不条理漫画がジャケットとなっていた前作から一転、本作はかな~りシンプルなジャケットのアルバムとなっています。

前作「Schmilco」はアルバムの内容としてはフォーキーで非常にシンプルな作風に仕上がっていました。それに続く新作で、かつこれだけシンプルなジャケットの作品。そのためか、今回のアルバムもまずパッと聴いた感じではシンプルな作風に感じられる作品になっています。

まず1曲目「Bright Leaves」は非常に重いドラムのリズムが鳴り響きながらも、サウンド的にはそれに静かなギターが加わるシンプルなサウンド。フォーキーでメロディアスな歌も印象的。ただ微妙にギターの音色が歪んでいるのが彼ららしくユニークに感じます。さらにそれに続く「Before Us」「One and a Half Stars」もアコギを中心としたシンプルでフォーキーな楽曲。ただ、力強いドラムの音やピアノの音なども加わり、楽曲全体としてはアコースティックな感覚ながらも分厚い音作りとなっているのが印象に残ります。

このアコースティックな手触りながらも力強いドラムの音やピアノの音などが加わり分厚い音になっているという点がこのアルバムを通じての最大の特徴。その後も「Quiet Amplifier」「Everyone Hides」「White Wooden Cross」など、同じようにアコギが入ってアコースティックな作風ながらも、様々な音が加わり分厚い音が印象的な作品が続いていきます。なおかつメロディーラインはフォーキーで爽やか、かつポップでメロディアスな点も大きな特徴え、「Everyone Hides」など、軽快なポップで楽しくなってきますし、「We Were Lucky」もしんみりとしたメロディーラインがどこかビートルズ風。さらに「Hold Me Anyway」は軽快で楽しいポップチューンに仕上がっており、飛び跳ねるようなドラムのリズムにはどこかお祭りのような楽しさを感じさせます。

そんな訳でアルバム全体としてはポップなメロディーがインパクトになっている、とても楽しい雰囲気のメロディアスなアルバムに仕上がっていました。前作「Schmilco」に関しては、フォーキーな作風ながらかなり地味といった印象を受けた方も多いかもしれませんが、今回のアルバムに関してはメロディーラインのインパクトも増し、分厚い音作りもあって、いい意味で楽曲に派手さも加わったように感じます。また、「Bright Leaves」や「We Were Lucky」などでは歪んだギターサウンドを絶妙に加えておりサイケな作風も感じられるなど、単純なポップではない、Wilcoらしいスパイスもアルバムからは感じることが出来ます。

今回も彼ららしい非常に良質で、かつメロディーラインにも魅力がつまった傑作アルバムだったと思います。インパクトあるポップなメロディーラインを持った曲も多いだけに広い層が楽しめそうなアルバムでした。いままでも彼らの音楽を聴いてきた方はもちろん、いままでWilcoを聴いたことない、という方にも勧められる1枚です。

評価:★★★★★

WILCO 過去の作品
Wilco(This Album)
THE WHOLE LOVE
Star Wars
Schmilco


ほかに聴いたアルバム

All Mirrors/Angel Olsen

アメリカのシンガーソングライター、エンジェル・エルセン。基本的にはフォーキーな作風ながらもエレクトロサウンドを大胆に取り入れ、ドリーミーな作風が大きな特徴となっている作品に。ジャジーな曲調の作品を聴かせつつ、優しさあふれる彼女の歌声も大きな魅力に。エレクトロな作風で分厚いサウンドに魅力を感じつつ、どこか同時にアコースティックの作品のような暖かさを感じさせる、そんな作品に仕上がっていました。

評価:★★★★★

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2019年11月25日 (月)

比較的コンスタントにリリースされた復帰後3枚目

Title:Beneath The Eyrie
Musician:Pixies

1980年代後半のインディーロックシーンで活躍し、その後の多くのバンドに影響を与えたPixies。2004年にまさかの再結成を果たしたものの、その後はライブを中心に活動を続け、2014年にようやく約23年ぶりとなるニューアルバムをリリースし大きな話題となりました。その後はオリジナルメンバーであるキム・ディールが脱退という残念なニュースがあったものの、新メンバー、パズ・レンチャンティンが加入。その後は比較的コンスタントにアルバムをリリースし、本作も前作「Head Carrier」から約3年のスパンでの新作リリースとなりました。

80年代の頃はいずれも傑作アルバムのオリジナル作を4枚リリースしシーンに衝撃を与えた彼ら。それだけに活動再開後のアルバムにも、良きにしろ悪しきにしろ注目が集まりました。ただそんな中でリリースされた2枚のアルバムは、いずれも往年の彼らを彷彿とさせるような出来で評判は悪くありません。そして今回のアルバムも往年の彼らを彷彿とさせるような楽曲が少なくありません。例えば「On Graveyard Hill」などは微妙に歪んだギターサウンドが実にPixiesらしさを感じますし、ラストを締めくくる「Death Horizon」などもちょっと切ないメロディーに彼ららしさを強く感じます。

ただ今回のアルバムは、Pixiesらしい歪んだノイズギターと、意外とポップでキャッチーなメロという主軸はそのままに、微妙にいままでのスタイルと変えてきた作風の曲も目立ちました。例えば1曲目を飾る「In the Arms of Mrs.Mark of Cain」などはちょっとダークな雰囲気とグルーヴィーなギターはいままでの彼らとはちょっと異なる雰囲気を感じさせます。「Silver Bullet」もムーディーな雰囲気に、いままでの作風よりも「大人」な匂いを覚えますし、「St.Nazaire」もいつもよりしゃがれ声を前に持ってきて、いつも以上にヘヴィーな作風に仕上げています。

いままでのPixesらしさをきちんと残しつつ、一方では少しずつ軸足をずらした新たなスタイルに挑戦した復帰後3枚目。こう書くと、かなり理想的なスタンスでの作風のように感じますし、実際、この方向性自体は大正解に感じます。感じる…んですが…。正直、いままでの復帰後のPixiesのアルバムもいまひとつピンと来ていなかったのですが、残念ながら今回のアルバムも「悪くはないんだけど…」という印象にとどまってしまいました。

出来としては決して悪くないし、往年の彼らを彷彿とさせる部分も少なくなく、素直に楽しめた、と言えないわけではありません。ただ、やはり全体的には無難にまとまっていた感は否めませんし、どこか小さくまとまってしまった感も否めません。80年代のアルバムと比べると、どうしても物足りなさが残ってしまうのも事実で。個人的にPixiesが好きだからこそ、高いハードルを設けすぎといわれると否定は出来ないのですが…。

とはいえ、凡百のギターロックバンドと比べると、間違いなくすぐれたアルバムであるのは事実。そういう意味ではギターロック好きには素直におすすめできる作品だと思います。個人的にはやはり今後のPixiesにも期待してしまうのですが…あと一歩、さらなる傑作を次は期待したいのですが…。

評価:★★★★

PIXIES 過去の作品
EP1
EP2

Indy Cindy
Doolittle25
Head Carrier

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2019年11月23日 (土)

脂ののった時期の未発表音源

Title:Blue World
Musician:John Coltrane

ご存じ、モダンジャズを代表するサックスプレイヤー、ジョン・コルトレーン。昨年、未発表のスタジオ録音作「ザ・ロスト・アルバム」が発表され大きな話題となり、日本でも大ヒットを記録しました。今回はその大ヒットした「ザ・ロスト・アルバム」に続く未発表音源集。もともと1964年に映画「Le chat dans le sac (“The Cat in the Bag")」用に録音された音源だそうで、録音された音源はジョン・コルトレーンのオリジナル作の再録だそうですが、その存在についていままで知られておらず、彼の代表する名盤である「至上の愛」の約半年前のパフォーマンスということもあって大きな注目を集めたアルバムになっています。

そんな今回の演奏は、黄金のカルテットと呼ばれるジョン・コルトレーン(ts) マッコイ・タイナー(p) ジミー・ギャリソン(b) エルヴィン・ジョーンズ(ds)の4人による演奏。実際に、息のあったメンバーによる脂ののった演奏が実に素晴らしく、まずアルバムの冒頭を飾る「Naima」では実に優しく語り掛けるような、ムーディーなサックスの演奏にまずは心を奪われます。ムーディーなサックスの演奏から、ソロでのアグレッシブな演奏への切り替えも素晴らしいタイトルチューンの「Blue World」に、息のあった演奏でテンポよく聴かせる「Like Sonny」などなど、どの曲も聴かせどころたっぷりの曲が並びます。

個人的にはもちろんコルトレーンのサックスも素晴らしかったのですが、それと同じくらい耳を惹いたのがマッコイ・タイナーのピアノの音色。「Naima」でもちょっと癖のあるフレーズがコルトレーンに負けず劣らず主張を繰り広げていますし、「Blue World」ではアグレッシブなサックスの音色のバックに展開する、実にユニークな和音が耳を惹きます。ある意味、かなりピアノはピアノでかなり強い個性と主張を感じたのですが、ただそれでも決してコルトレーンのサックスの邪魔をすることなく、しっかりと引き立てている点はバンドメンバーの絶妙なバランスを感じさせます。

また特に今回のアルバムで核ともなっているのが「Village Blues」。今回のアルバムではTake1からTake3までの3度の演奏が収録されています。どれもムーディーなサックスの音色が強い印象を受ける楽曲なのですが、特に4曲目、5曲目にTake1とTake3の演奏を並べて収録されていることでその両者の聴き比べが出来るのがユニークな構成。Take3はTake1に比べると、より感情のこもったムーディーなサックスの演奏を繰り広げている一方、ピアノの音色は逆に軽やかになっており、その対比によりサックスの印象がより際立つ演奏になっており、Take1からTake3への大きな進化を感じる構成になっていました。

前述の通り、「至上の愛」の半年前のパフォーマンスということもあり、バンドとしても実に脂がのった状況であり、未発表であることが信じられないくらいの素晴らしいパフォーマンスを楽しめる傑作アルバムでした。ある意味、モダンジャズとしては王道的な演奏でもあり、そういう意味では幅広い層にも楽しめる演奏ではないでしょうか。コルトレーンの新たな代表作の誕生と言ってもいい名盤です。

評価:★★★★★

John Coltrane 過去の作品
The Final Tour: The Bootleg Series, Vol. 6(Miles Davis&John Coltrane)
Both Directions At Once:The Lost Album(ザ・ロスト・アルバム)


ほかに聴いたアルバム

This Is The Place/Noel Gallagher's High Flying Birds

先日は弟、リアムのアルバムを紹介しましたが、こちらはお兄ちゃん、ノエル・ギャラガーの新譜。表題曲を含む新曲3曲に表題曲のリミックス2曲を加えた5曲入りのEP。oasis時代からの王道路線を貫くリアムに対して、エレクトロサウンドをふんだんに取り入れて、oasisとは異なる道を歩もうとするのが顕著なのがノエル。リミックス2曲もエレクトロアレンジに仕上げています。かと思えば「A Dream Is All I Need To Get By」ではアコースティックなサウンドで郷愁感あるメロを聴かせたりと、しっかりとメロディーメイカーとしての才も垣間見せています。個人的には、新たな路線に挑戦するお兄ちゃんを応援したいところ。次のフルアルバムも楽しみです。

評価:★★★★★

NOEL GALLAGHER'S HIGH FLYING BIRDS 過去の作品
NOEL GALLAGHER'S HIGH FLYING BIRDS
CHASING YESTERDAY
Who Built the Moon?
Wait And Return EP
Black Star Dancing

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