圧巻のステージ
Title:Live At Home With His Bad Self
Musician:James Brown
「ファンクの父」「ファンクの帝王」などと呼ばれ、60年代にファンクミュージックを確立。後のミュージックシーンにあまりにも大きな影響を与えたミュージシャン、ミスター・ダイナマイトことジェームス・ブラウン。今年、彼の新しいライブアルバムがリリースされたということで話題となっています。本作は1969年10月1日に、彼の出身地、オーガスタで行われたライブの模様をおさめた作品。もともとは1969年にライブアルバムとしてリリースする予定だったものの、その後リリースされたシングル「Sex Machine」が大ヒットを記録。そのため、同曲も収録したライブアルバム「Sex Machine」がリリース。同作にこの日の音源は一部収録されているものの、このたび、ライブから50周年を記念して完全版のリリースとなりました。
さて、ジェイムス・ブラウンといえば、そのライブに定評のあるミュージシャン。特にアルバムはオリジナルアルバムよりもライブアルバムが彼を代表する「名盤」として紹介されることが少なくありません。特にこのライブ盤に代わってリリースされることとなったライブアルバム「Sex Machine」は彼を代表する名盤、どころかソウルミュージックを代表する名盤として、今なお多くの音楽ファンに愛聴されています。
そんな彼の、それも名盤「Sex Machine」と同時期というからもっとも脂ののった時期のステージの模様を収録したライブアルバムである訳ですから、その内容が悪い訳がありません。ライブはいきなり彼の代表曲である「Say It Loud I'm Black And I'm Proud」からスタート。ファンキーなサウンドと力強いボーカル。まだスタート直後で会場の暖まり方はいまひとつな部分はあるのですが、その迫力あるライブパフォーマンスにまずは魅了されること間違いありません。
ただ、彼のライブの魅力は、このアップテンポでファンキーな、会場を盛り上げる楽曲が続くから、ではありません。MCを挟んで事実上の2曲目となる「World」では哀愁たっぷりのボーカルで力強く歌い上げるソウルなミディアムテンポチューン。その後、ファンキーなインスト曲が続いたかと思えば、「If I Ruled The World」は感情たっぷりに歌い上げる歌声が胸をうつ、ムーディーなソウルバラード。むしろ前半では、ファンキーなリズムよりも、彼のその力強くも感傷的なボーカルに胸をうつ、バラードナンバーが大きな魅力となっています。
その後もファンキーな「I Don't Want Nobody To Give Me Nothing(Open Up The Door I'll Get It Myself)」「I Got The Feelin'/Licking Stick-Licking Stick」などで盛り上げつつ、「Try Me」のようなソウルバラードも間に挟み、その歌声を聴かせます。アップテンポなファンク一辺倒ではなく、緩急つけた楽曲とそしてそれら変化に富んだ曲調でも易々と歌い上げるジェイムス・ブラウンのボーカルが、彼のライブに定評がある大きな理由のように強く感じました。
しかし圧巻はやはりこのアルバムの終盤でしょう。「Give It Up Or Turnit A Loose」からまさにファンクの帝王らしい、ファンキーでアップテンポな曲が続いていきます。その後、基本的に楽曲の間はシームレスでライブは一気に終盤戦に。序盤とは異なり会場もすっかり暖まったため、ライブ会場の熱気も伝わってきます。特に事実上のラストとなる「Mother Popcorn」は、これでもかというほどシャウトしまくるジェイムス・ブラウンのボーカルとライブバンドの熱気に圧倒される演奏に。9分にも及ぶ長尺の曲で、最後になればなるほど熱量はどんどんと上がっていき、まさに最高のテンションの中、ライブは幕を閉じます。その迫力満点のパフォーマンスにジェイムス・ブラウンの実力を存分に感じられる内容となっていました。
ジェイムス・ブラウンの代表作に名前を連ねても全く違和感のないようなライブ盤の傑作だったと思います。間違いなく、なぜジェイムス・ブラウンのライブがあれだけ評価されているのか、このアルバムを聴いても十分納得が出来るのではないでしょうか。こういうアルバムがいまさらながらリリースされたということを非常にうれしく感じます。ブラックミュージックが好きな人はもちろん、そうでなくてもお勧めしたい傑作ライブ盤です。
評価:★★★★★
ほかに聴いたアルバム
Kind/Stereophonics
2、3年に1度、コンスタントにアルバムをリリースし、なおかつどのアルバムもチャート上位に食い込んでくる、イギリスの国民的バンドとも言えるStereophonicsの約2年ぶりとなるニューアルバム。最近のアルバムは比較的バリエーションのある曲調のアルバムが続いていましたが、今回のアルバムはイギリスというよりもアメリカのロックからの影響を受けたような、渋いブルースロックが主軸となっているアルバム。もともと、ここ何作か、軽いポップなアルバムが続いたかと思えば、泥臭い作風のアルバムをリリースするというスパンが続いていたのですが、今回のアルバムは泥臭いアルバムのターンといった訳でしょうか。個人的には、今回のアルバム、ちょっと泥臭すぎて、あまり好みではなかったかも。悪いアルバムではないと思うのですが。
評価:★★★★
STEREOPHONICS 過去の作品
Decade In The Sun-Best Of Stereophonics
KEEP CALM AND CARRY ON
Graffiti On The Train
Keep The Village Alive
Scream Above The Sounds
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