アルバムレビュー(洋楽)2019年

2019年9月16日 (月)

タイと日本の音楽が地続きに

Title:New Luk Thung
Musician:Juu&G.Jee

今回紹介するアルバムはタイのアンダーグラウンドシーンで絶大な支持を誇るラッパー、Juuとその弟子、G.JeeによるHIP HOPアルバム。日本ではその名前はほとんど知られていないのですが、彼らについて知ったのは本作の中に1曲、当サイトでも紹介したことあるラップクルー、stillichimiyaが参加した曲「ソムタム侍」があり、その曲のMVをYou Tubeで見たことがきっかけでした。

Mr.麿の怪演が強いインパクトを残す非常にユニークなMVなのですが、楽曲もとてもインパクトが残ります。エキゾチックなトラックがアジアンなテイストをむんむんと放出している一方、タイ語と日本語を境目なく行ったり来たりするラップも印象的。Mr.麿のボーカルによる歌の部分はどこか日本のムード歌謡のテイストがあり、日本とタイの音楽が全く同じまな板の上で調理されているようなそんな独特の楽曲になっており、一気に気になる存在となってしまいました。

今回、このアルバムのプロデュースを手掛けたのはstillichimiyaのDJ/プロデューサーでもあるYoung-G。タイの音楽に興味を持った彼は2016年から17年にかけてタイに移住。現地のミュージシャンたちとも交流を深める中で出会ったのがタイのカリスマ的ラッパーであるJuu。そんなつながりにより今回のアルバムリリースにつながりました。そのため本作にはstillichimiyaだけでなく、「深夜0時、僕は2回火を付ける」では鎮座DOPENESSと、同じくstillichimiyaのMMMがフューチャリングで参加しています。

本作のアルバムタイトル「New Luk Thung」の「Luk Thung」=ルークトゥンとは、タイの田舎の大衆音楽のこと。音楽的な形式が決まっているようなジャンルではないそうで、「タイの演歌」という紹介のされ方をすることが多いようですが、イメージとしてはむしろ「歌謡曲」に近いのかもしれません。そのためでしょうか、ある意味、あらゆるジャンルを貪欲的に吸収する歌謡曲と同様、このアルバムにも様々な音楽からの影響を見て取れます。

「深夜0時、僕は2回火を付ける」ではエキゾチックな雰囲気が立ち込めるB級色強いトラック。続く「かわいいキミ」ではG.Jeeとのデゥオとなり、軽快なナンバーに仕上がっています。「シーレイ 田舎でのんびり」ではタイトル通りのタイの田舎を彷彿とさせるエキゾチックさを感じるサウンドをゆっくりと聴かせる楽曲になっていますし、「ハナと僕の道」ではダークなサウンドにはトラップからの影響も?「Give Me The Way」ではAORの要素も感じられ、垢抜けたサウンドを聴かせてくれます。

そんなバラバラな作風でもアルバム全体として統一感もきちんと感じることが出来ます。もともとJuuの音楽はレゲエからの影響が強く、今回のアルバムでもその要素が要所要所に感じることが出来るのも統一感が出ている大きなポイントなのですが、またルークトゥンという音楽がこのアルバムの背景として一本筋を通してるからなのでしょう。

ただ一方で単純に「タイのエキゾチックな音楽」ということで終わらず、「ソムタム侍」にしてもそうですが歌詞の中でいきなり日本語が登場してくる曲があったりして、日本のポップスと地続きに感じられるのも本作の大きな特徴でしょう。もともとYoung-Gがタイの音楽に興味を持ったきっかけとして、彼が訪れたタイ東北部のイサーンの風景が彼の故郷、山梨と一緒だったことからだそうで、彼自身、今回の活動もstillichimiyaでやってきたことをアジアに広げただけ、と述べています。もともとタイの地方に日本の田舎と共通項があったのでしょうし、またタイの音楽を異質なものと捉えるのではなく、自らの音楽と共通するものがあると捉えているからこそ、日本とタイの音楽が地続きのようにつながっている今回のアルバムが誕生したのでしょう。その結果、エキゾチックでありつつも日本人にとってもどこか馴染みやすいという、独特なアルバムに仕上がっていました。

今回のYoung-GとJuuとのつながりは決して一時的なものではなく、今後もコンスタントに活動は続いていきそう。非常に独特でおもしろく、今後の活動にもかなり期待ができそうです。タイのHIP HOPといっても取っつきにくさはほとんどありません。stillichimiya好きはもちろん、そうでなくても幅広い方にお勧めできる傑作アルバムでした。

評価:★★★★★

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2019年9月14日 (土)

アコースティックなサウンドで派手さはないものの

Title:Emily Alone
Musician:Florist

Emily Spragueという女性ボーカリスト率いる男女4人組、ニューヨークはブルックリンを中心に活動を行っているポップバンドFlorist。本作はそんな彼女たちの3枚目となるアルバム。日本では残念ながらほとんどその名前を知られていないグループなのですが、アメリカでは徐々に注目を集めているグループのようで、本作もアメリカのWebメディアPitchforkの「Best New Music」に選ばれるなど高い評価を受けています。

「お花屋さん」というバンド名からイメージされる通り、楽曲はインディーバンドによくあるような先駆的、刺激的という雰囲気ではなくアコースティックなサウンドの暖かい雰囲気のポップが魅力的。サウンドとしてはほとんどアコギのアルペジオのみで構成されており、時折ピアノの音色が入ってくる程度。静かでフォーキーな雰囲気が大きな特徴となっています。

またボーカル、Emily Spragueの歌声も大きな魅力。「Time Is A Dark Feeling」のようなウィスパー気味の歌声で優しく歌い上げているのですが、アルバムのプロダクションとしてボーカルを前に押し出しているような構成になっており、ヘッドフォンで聴いていると彼女が優しく耳元で歌っているようなそんな感覚に陥ってきて、思わずうっとりと聴き惚れてしまいます。

メロディーラインも透き通るように美しいフレーズを聴かせてくれており、特に「I Also Have Eyes」などは切ない雰囲気のくるおしいようなフレーズを聴かせてくれます。ただ、全体的にはしんみりとして聴かせる曲が多いのですが、「Now」のようにメロディアスで明るさを持ったポップなどもあり、決して悲しいポップという印象は受けません。むしろ全体的にはフォーキーで爽やかという印象を受け、聴き終わった後もいい後味を残してくれるようなポップスとなっています。

また、単純にアコースティックなポップというだけではなく、例えば「Celebration」ではバックに鳥の鳴き声やストリングスを入れつつ、ポエトリーリーディングを聴かせるというほかとは異なるスタイルで、どこか幻想感を覚えるナンバーに。「M」などもバックに砂利道を歩く人の足音が入っており、リスナーのイメージを膨らませます。単なるアコースティックでフォーキーなポップを奏でるグループ、とは異なる楽曲の奥行を感じることができます。

もっともアルバム全体としてはとにかくメロディーラインの良さ、シンプルなサウンド、そしてボーカルEmilyの魅力的な歌声が合わさり、正直、全体的に地味さは否めないものの最後まで飽きることなく、最初から最後まで耳を離せない魅力を感じさせる傑作に仕上がっていました。派手さはないグループなだけに確かに日本ではなかなか注目が集まりにくいだろうなぁ・・・とは思うのですが、比較的多くのポップスリスナーが楽しめるアルバムだと思います。日本でももっと売れてもいいと思うんですけどね~。

評価:★★★★★

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2019年9月13日 (金)

待望のデビューアルバム

Title:The Big Day
Musician:Chance The Rapper

おそらく今年、最も注目を集めた「デビューアルバム」のひとつが本作でしょう。アメリカで高い人気を誇るラッパー、Chance The Rapperのデビューアルバム。もともと2012年にリリースしたミックステープ「10 Day」で注目を集めた彼。ただしどのレーベルにも所属せず、あくまでも無料配信でのミックステープという形態でリリースを続けます。さらに2016年にリリースしたミックステープ「Coloring Book」はApple Musicでのストリーミング配信のみという形態で関わらずビルボードチャートで8位にランクインするという快挙を達成。さらに音源を発売していないミュージシャンとしてははじめてグラミー賞を受賞するという快挙も達成。アメリカ、いや世界における音楽流通の形態を大きく変えるという快挙を達成しています。

そしてそんなミックステープのみをリリースしてきた彼がついにアルバム形態でリリースということで大きな話題となったのが本作。ただし、アルバム形態としてもストリーミング&ダウンロードのみでのリリースとなっているため、ストリーミングで聴く限りにおいてはいままでのミックステープとは感覚的に大きな違いはありません。ダウンロードにすると、今回は購入する必要があるため、いままで無料配信だったミックステープとは大きな違いが出てくるのですが・・・。

多彩なゲストが参加していることでも話題の今回のアルバム。そしてそれと同時に今回のアルバムの特徴として非常にメロディアスな歌が流れるポップな作品になっているという点でしょう。まずアルバムの冒頭に配された「All Day Long」はJohn Legendが伸びやかな歌声を聴かせてくれるも軽快で爽快さを感じる楽曲になっていますし、続く「Do You Rember」もちょっと懐かしさを感じさせるエレピの音色に切なさを感じる歌心ある作品に。同作にはDeath Cab For Cutieが参加し、こちらもしんみりとした歌を聴かせてくれています。

その後もタイトルチューンの「The Big Day」は注目のミュージシャンFrancis And The Lightsの切ない歌が印象に残るナンバー。歌とドラムの音色にはどこかノスタルジーを感じさせます。「Ballin Flossin」もShawn Mendesの爽快な歌声が耳に残る軽快なポップチューンに。全体的にちょっと切なさを感じさせるメロディーが目立つような、ポップな歌モノのアルバムとして仕上がっています。

サウンド的にも「Handsome」「Big Fish」のような、今時さを感じさせるトラップのサウンドを取り入れた楽曲も少なくないものの、全体的には決して今時といった印象はありません。そのリリース形態の先駆性とは異なり楽曲的にはむしろちょっと一昔前の雰囲気を感じさせるようなサウンドもチラホラ見受けられ、目新しさというよりも懐かしさを感じさせるような楽曲も。それがアルバム全体の聴きやすさにつながっているようにも感じました。

終盤も彼が美しいファルセット気味の歌声を聴かせて父親への感謝を歌い上げる「Town On The Hill」が強く印象に残ります。こちらもリズムトラックにはトラップの要素を取り入れるもののシンセの音色からは90年代あたりの雰囲気を感じ、ちょっとノスタルジックな雰囲気も。ラストを締めくくる「Zanies And Fools」もトライバルなリズムで軽快に聴かせつつ、ゴスペル風のコーラスをバックに爽やかでポップに仕上げた楽曲に。最後の最後までポップで聴きやすいアルバムとして仕上げていました。

ただ全体的にはちょっとノスタルジックな要素を感じるポップという共通項がありつつ、様々なゲストが参加した結果、アルバム全体としては統一感が薄く感じる作風に仕上がっています。そういう意味では今回、あえてアルバムという形態でのリリースとなったのですが、むしろプレイリスト、あるいはミックステープ的な作品になったようにも感じられました。そういう意味ではなぜ今回アルバムという形態でのリリースとしたのかは不明なのですが・・・ノスタルジックな雰囲気といい、透明なCDを掲げたジャケットといい、昔ながらのCDでのアルバムという形態への懐古があるのかもしれません。今のところCDでのリリースは不明のようですが、近いうちにCDでのリリースもあるかも?

そんな訳でポップな歌モノのアルバムのためHIP HOPをあまり聴かないような方でもアピールできるような作品になっていたと思います。ランキング的には惜しくも2位だったのですが、今年、最も話題の1枚であることには間違いありません。Chance The Rapperの魅力を存分に感じることが出来る傑作アルバムでした。

評価:★★★★★

Chance The Rapper 過去の作品
Coloring Book

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2019年9月10日 (火)

一挙6枚のEPがリリース

白人3人組という編成ながらもHIP HOPシーンに偉大な業績を残し、今なお多くのミュージシャンのリスペクトを受ける3人組ユニットBeastie Boys。2012年、メンバーのひとりMCAがわずか47歳という若さで癌により急逝し、その後、事実上の活動休止状態となっています。そんな彼らが1989年にリリースした2枚目のアルバムが「Paul's Boutique」。大ヒットしたデビュー作「Licensed to Ill 」から売上面では落ち込んでしまった2枚目ですが、音楽的には高い評価を受けている本作。今回、その「Paul's Boutique」リリース30周年を記念して、6枚のEPが順次配信リリースされました。今回はその6作を一挙に紹介!

Title:An Exciting Evening At Home With Shadrach, Meshach & Abednego
Musician:Beastie Boys

Title:Love American Style
Musician:Beastie Boys

まず第1弾としてリリースされたのがこの2枚。どちらももともとは1989年にリリースされたEP盤で、いずれもレコードのみのリリースのため、配信で聴くことができるというのはやはりファンにとってはうれしいニュースだったのではないでしょうか。楽曲はいずれもスカスカながら大きな音をたてるドラムのリズムとシャウト気味のボーカルが特徴的な、今となっては「いかにも」といった印象のオールドスクールの作品になっています。

ただ、今の耳で聴いても間違いなく楽しくワクワクさせられるようなナンバーが並んでおり、掛値なしに明るいスタイルの楽曲が耳を惹きます。特に「Paul's Boutique」にも収録されている「Shadrach」はロッキンなダイナミックも兼ね備えつつ、時々入るホーンの音色とドラムのリズムが非常にファンキーで楽しませてくれる作品に。ほかにもビースティーファンなら絶対に楽しめるポップなナンバーが並んでおり、文句なしに楽しめるEP盤でした。

評価:どちらも★★★★★

Title:Hey Ladies(Remixes)
Musician:Beastie Boys

で、第2弾としてリリースされた1作目のEPが「Hey Ladies」のリミックス盤。5曲入りなのですが、それぞれが個性的なリミックスが楽しい感じ。よりファンキーにまとめたPaul Nice RemixやメロウながらもどこかコミカルなCount Base D Remixなどが特に耳に残った印象。またループするサウンドが心地よいFred C Remixも印象に残ります。全体的には80年代的なにおいを残しつつ、「Hey Ladies」をリミキサーそれぞれの切り口で再構築した、5曲5様の楽しいリミックスでした。

評価:★★★★★

Title:Shadrach(Remixes)
Musician:Beastie Boys

こちらも5曲入りのリミックスアルバム。リミキサーそれぞれの個性が強く出ていた「Hey Ladies」のリミックスに比べると、全体的にサウンドが抑え気味の構成になっており、シャウト気味でパワフルなビースティーズのラップがただ目立つようなリミックスになっていたように感じます。それはそれで、もちろんビースティーズのラップをよく生かしたリミックスと言えるのかもしれませんが・・・。

評価:★★★★

そして第3弾として配信されたのがまず・・・

Title:Shake Your Rump(Remixes)
Musician:Beastie Boys

収録曲は3曲のみで、「EP」というよりも「シングル」という感じかもしれません。ただ、2曲目のLatch Brothers Remixがとてもユニークで楽しいリミックス。タブラのリズムでエキゾチックにスタートしたかと思えば、様々な音をサンプリングした賑やかで、でもどこか異国情緒を感じさせるトラックがとても楽しい感じ。今回のリミックスの中では一番聴いてみて楽しかったかも。ちょっと3曲のみというのは物足りなさもありましたが・・・。

評価:★★★★

Title:Looking Down The Barrel Of A Gun (Remixes)
Musician:Beastie Boys

で、ラストを飾るのが4曲入りとなった本作。ビートを前が押し出したリミックスになっています。ただ、そんな中でもメロウさを押し出したDub Hackers Remixや逆にダイナミズムを前に押し出したOD Remix、もの悲し気にまとめたDJ Moe Love Remixなどバリエーションあるリミックスに仕上がっていました。

評価:★★★★

そんな訳で一挙6作配信リリースされた今回のEP盤。残念ながらおそらくBeastie Boysとしての新譜はもうリリースされることはないでしょうから、こういう形でのリリースはうれしい話です。彼らがあらためて魅力的なグループだったんだな、とも感じられる作品でした。

Beastie Boys 過去の作品
HOT SAUCE COMMITTEE PART 2

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2019年9月 7日 (土)

アフリカ音楽の歴史を探るコンピ第2弾

Title:Early Congo Music 1946-1962:First Rumba,To The Real Rumba

以前、当サイトでアメリカ初のポピュラーミュージックと言われるパームワインの1930年代から60年代の貴重なSPを収録したコンピレーションアルバム「PALMWINE MUSIC OF GHANA」を紹介しました。今回はその第2弾ともいえるアルバム。同作を監修・選曲した音楽評論家の深沢美樹氏選曲・監修によるコンピレーションアルバムで、「ルンバ」と呼ばれるコンゴのポピュラーミュージックのうち1946年から1962年のSP音源を収録したコンピレーションとなっています。

この1946年から62年にかけて「ルンバ」という音楽スタイルが確立していったそうで、本作はそのスタイルが確立していく過程を追ったコンピレーションアルバムとなっています。まさにサブタイトルである「最初のルンバから真のルンバへ」というのがこのアルバムのキーフレーズ。「最初のルンバ」というのは「ルンバ」の音楽スタイルが確立していない40年代あたり、単なる「カッコいい音楽」的な意味で「ルンバ」という呼称が使われていたとか。それが徐々に「ルンバ」という音楽のスタイルを確立していく過程がこのアルバムで体感することが出来ます。

実際、このコンピレーションを聴いて強く感じるのがこの16年間におけるコンゴの音楽の大きな進歩でした。アルバムは「ルンバ」と記載されたコンゴ・ポピュラーミュージック史上最初のレコード、Orchestre Odeon-Kinoisというバンドの「Fatouma」「Jeanne」という曲からスタートするのですが、正直、素人の吹奏楽団レベルのイメージのちょっとチグハグさを感じる曲。独特なテンションを感じるリズム感に独自性は感じるのですが、音楽的スタイルも確立していませんし、全体的に未熟さを強く感じます。

Disc1はまさにそんな「ルンバ」が音楽的に確立される前の「最初のルンバ」を集めたもの。楽曲的には確かにスタイルは確立されておらず、トライバルな色合いが濃い曲や、冒頭でも書いたパームワインからの影響も濃い曲などが並びます。もちろん、後の「真のルンバ」につながるようなラテンテイストの強い曲も。全体的には「ルンバ」といっても統一感が薄く、音楽的にも未熟さが残る感があるのですが、ただ個人的にはこの未熟さが楽曲の勢いにもつながっており、Disc1の収録曲は結構気に入っています。

一方、Disc2になると、まさに「真のルンバ」として音楽的に確立した後の曲。ラテンらしいリズムパターンも確立し、演奏も洗練されてきています。Moujos executee par L'Orchestre O.K.Jazzというグループの「Yo Te Ilma Moucho」はキューバンな雰囲気もかなり強く、一般的な「ルンバ」のイメージにも近い印象もあります。

ただその反面、どこか感じるアフリカらしい独特のリズム感が大きな魅力に感じるのもDisc2の曲で、Henri Bowane na bana Loningisaの「Yo Kolo Ye Kele」はメロディーやギターの演奏こそメロウで洗練されているのですが、手拍子のリズムやコール&レスポンスのコーラスにトライバルな部分を強く感じさせる曲となっています。

Disc2の最後の60年代あたりの演奏となるとさらに演奏も洗練。録音状況がよくなったという部分も大きいのですが、Disc1の最初から聴くと、隔日の感があります。ある意味、「たった16年」なのですが、その間の大きな進歩には驚かされました。

ちなみに本作のもうひとつ大きな目玉が41ページにもわたる深沢美樹氏による楽曲解説。「ルンバ」成立に至る過程がかなり綿密に記載されており、このコンピレーションのガイドブックとして、解説片手に音楽を聴き進めると、よりコンゴの音楽を深く知ることが出来ます。まさに力作ともいえるブックレットで、ストリーミングがメインとなりつつある最近の音楽シーンの中で、このような分厚い解説の存在こそ、フィジカルが今後も力を持ち続ける道のように感じます。ただ一方、こちらの解説、固有名詞が多く、正直なところ若干わかりづらい部分も・・・。また、「ルンバ」というと一般的にはキューバの音楽をイメージするのですが、その「ルンバ」とコンゴの「ルンバ」との関係性なども知りたかったような・・・。

そんな訳で、実に聴きごたえのあるコンピレーションアルバムだった本作。ちょっとマニアックな感がなきにしもあらずなのですが、その点を差し引いても、純粋にアフリカの音楽的魅力を存分に味わえることの出来る作品でした。

評価:★★★★★

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2019年9月 2日 (月)

ドラマのスコアをまとめた最新作

Title:Kiri Variations
Musician:CLARK

最近ではオーケストラや舞台音楽などへの楽曲提供など精力的な活動を見せているCLARK。今回のアルバムは前作「Death Peak」から約2年4か月ぶりとなる新作となります。ただ、純然たる新作ではなく「Kiri」というイギリスのテレビドラマに使われた楽曲をまとめたアルバムになっています。

前作「Death Peak」はメタリックで複雑なビートで構成された、比較的挑戦的な意欲作となっていたように感じます。ただ今回のアルバムに感じたのは、やはりテレビドラマに使われた楽曲ということもあってでしょうか、前作に比べると良くも悪くも聴きやすい作品に仕上がっていたという感想抱きました。

例えばアルバムの2曲目「Simple Homecoming Loop」はピアノにシンセの音色が重なり、とても美しい空間を作り出している楽曲になっていますし、続く「Bench」もバイオリンのメロディアスな音色が印象に残ります。さらに「Kiri's Glee」はシンプルな笛の音をアコギによってシンプルで可愛らしい雰囲気の楽曲に仕上げています。

その後も悲しげなストリングスが印象に残る「Tobi Thwawrted」やエレクトロニカのビートに載せて男女のボーカルが厳かに静かに歌う、歌モノの「Cannibal Homecoming」など、楽曲によって様々なアイディアを取り込んだエレクトロサウンドをベースとしつつも、全体的には聴きやすく、メロディアスという印象の強い曲が並びます。

また、ドラマのイメージなのでしょうか、アルバムを通じて荘厳な雰囲気を感じさせるアレンジが多く、「Primary Pluck」「Banished Hymnal」など、シンセを取り入れつつ、少々ゴシック調な要素も感じさせる曲も目立ち、アルバム全体としても重厚な雰囲気を強く感じさせるアレンジが大きな特徴に感じられました。

もちろん一方では「Forebode Pluck」のようにゴシック風のチェンバロが不協和音のアルペジオを奏でるようなナンバーや、「Forebode Knocker」のようにピアノの単音でサウンドが構成されているような、挑戦的なナンバーもチラホラ。そういう意味ではもちろん単純なポップのアルバム・・・とはちょっと異なるのは言うまでもありません。

そういう意味でいろいろと聴きどころのあるアルバムには間違いありません。ただアルバムの後半の方はピアノやシンセを用いて荘厳な雰囲気をただ作り出しているだけといった感じの、どちらかというと良くも悪くもドラマのBGM的な曲も多く、若干飽きてしまった部分も。もちろん総じて彼のファンならば満足できる作品だとは思うのですが、傑作が続いていたここ最近の作品に比べると若干見劣りがする・・・かな?

評価:★★★★

CLARK 過去の作品
Totems Flare
Iradelphic
CLARK
Death Peak


ほかに聴いたアルバム

Brandon Banks/Maxo Kream

本作がメジャーデビュー作となるアメリカのラッパーによるアルバム。トラップを取り入れたダークでダウナーな雰囲気のラップとサウンドが特徴的ですが、ポップな要素に加えてどこかコミカルさも感じさせる楽曲もあり、アルバム全体としてはいい意味で聴きやすさを感じます。全47分という長さながらも15曲入りと1曲あたり3分程度の長さであるため、次々と曲が展開していく構成も聴きやすさの要因に。今後のブレイクも予感させる1枚です。

評価:★★★★

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2019年9月 1日 (日)

楽しいポップソングの中にロックな要素も

Title:Duck
Musician:Kaiser Chiefs

イギリスの人気ロックバンド、カイザー・チーフスの約1年9ヶ月ぶりとなるニューアルバム。デビュー当初はイギリスで期待のバンドということで日本でも多くメディアに取り上げられていたのですが、ここ最近は以前ほど日本では話題に上ることが少なくなってしまったように感じます。ただ、イギリス本国では相変わらず高い人気を誇っており、前作「Stay Together」もイギリスのナショナルチャートで4位にランクイン。ちょっと久々となった本作も3位に入ってくるなど、変わらぬ人気を感じさせます。

なんてこと書いていながらも、実は私自身、彼らのアルバムを聴くのは2008年の「Off with Their Heads」以来、11年ぶり。その間にアルバムを3枚もリリースしていたのですが、え?そんなにスルーしていたっけ??とちょっと意外な感じもしました。もっとも今回のアルバムを聴いてみたのも、なにか強いきっかけがあった訳ではなく「なんとなく」なんですが・・・。

そんな久々に聴いてみた彼らのアルバムなのですが、とにかく外連味のない楽しさあふれるポップチューンの連続で最初から最後までワクワク楽しめるポップアルバムに仕上がっていました。もともと以前のカイザー・チーフスのイメージもブリット・ポップの正当な継承者という印象の強い、ポップなギターロックバンドというイメージがありました。さすがに今となって「ブリット・ポップ」といった感じもないのですが、ストレートにポップで楽しい作風というのは今も変わっていません。

特に今回のアルバムではエレクトロサウンドを取り入れたリズミカルで楽しいポップチューンが並んでいることが大きな特徴。「Wait」「Record Collection」「The Only Ones」さらには「Electric Heart」といったリズミカルな曲が並んでおり、聴いていて純粋にワクワクさせられる構成となっています。そもそもアルバムの最初を飾る「People Know How to Love One Another」からしてホーンセッションを取り入れて爽快でとても明るい雰囲気をかもしだしているポップチューン。リスナーは最初の最初からワクワクした気持ちでアルバムを聴き進めることが出来ます。

そのほかも「Northrn Holiday」「Kurt vs. Frasier (The Battle for Seattle)」などポップなメロディーラインが光るメロディアスな楽曲ならも並んでおり、終始、彼らのメロディーセンスが光る楽しいアルバムに仕上がっています。一方、ユニークなのが、例えば「Golden Oldies」のようにバンドサウンドの泥臭さがちょっとしたアクセントとして加えられている曲も見受けられる点。アルバム全体としてはポップという印象の強い作品だったのですが、その中でも確実にロックバンドとしての主張を感じられる部分が多々あり、このロックバンドとしての部分がアルバムの中でほどよいインパクトとなっていたようにも思います。

前述のように日本では以前ほど名前を聞かなくなってしまった彼らですが、本国での人気が示すとおり、楽曲の魅力は以前から全く変わっていませんでした。私も本作が久々に聴いてみたアルバムとなってしまいましたが、今後はコンスタントにアルバムをチェックしてみないと・・・。これだけの傑作をリリースしているのであれば、彼らの人気はまだまだ続きそうです。

評価:★★★★★

Kaiser Chiefs 過去の作品
Your Truly,Angry Mob
Off With Their Heads

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2019年8月23日 (金)

ドリーミーな世界観が前面に

Title:King's Mouth:Music and Songs
Musician:The Flaming Lips

途中、ベスト盤のリリースはあったものの、オリジナルアルバムとしては約2年半ぶりとなるThe Flaming Lipsのニューアルバム。今回のアルバムはもともと、今年4月に行われた年に1度のレコードの祭典、レコード・ストア・デイでアナログ盤として4,000枚限定でリリースされた作品。このアルバムは、The Flaming Lipsのフロントマンでもあるウェイン・コインのアート作品「King's Mouth」のサントラ的な位置づけを持つアルバムだそうで、ほぼ全編にわたり、元The Clashのミック・ジョーンズがナレーションとして参加。リスナーを「King's Mouth」の世界へと誘導しています。ちなみにこの「King's Mouth」なる作品はインスタレーションによる作品だとか。インスタレーションとはWikipediaによると「ある特定の室内や屋外などにオブジェや装置を置いて、作家の意向に沿って空間を構成し変化・異化させ、場所や空間全体を作品として体験させる芸術」と定義付られているのですが、この「King's Mouth」という作品は前衛芸術家としても活躍しているウェイン・コインによる、非常にシュールな作品に仕上げられているそうです。

そのこのアルバムの元となる「King's Mouth」なる作品については私は見ていないのですが、「シュール」というその作品に対する評価に合ったような、楽曲全体として非常にドリーミーな作風に仕上がっていました。アルバムはミック・ジョーンズのナレーションからスタートするのですが、それに続く「The Sparrow」もアコースティックなサウンドにスペーシーなエフェクトがかけられてメロディアスながらも幻想的な雰囲気の楽曲に。続く「Giant Baby」もミック・ジョーンズのナレーションからスタートし、それに続く楽曲もゆっくりと、まるで夢の世界を歩いていくような、エレクトロサウンドとアコースティックなサウンドのバランスが絶妙な作品に仕上がっています。

その後もバンドサウンドで不穏さを醸し出す「Feedaloodum Beedle Dot」やコーラスを用いてダイナミズムとドリーミーな雰囲気を出している「Funeral Parade」、ストリングスやピアノをバックに歌われるハイトーンボイスのボーカルで夢のような世界を作り上げている「Mouth of the King」など、もともとThe Flaming Lipsというバンドはもともとドリーミーなサイケポップを奏でるバンドなのですが、その方向性がより強調されるような世界観の楽曲が並んでいます。

そのため全体的にドリーミーなサウンドが前に押し出されメロディーラインとしてさほどはっきりとインパクトのあるポップな作風の曲は少ないのですが、それでもしっかりとThe Flaming Lipsの魅力であるポップでキュートなメロはアルバムの中の要所要所で楽しむことが出来ます。例えば「How Many Times」もドリーミーなサウンドの中でとても優しくメロディアスでポップなメロディーが耳を惹きますし、MVも作成された「All for the Life of the City」も、ハープの音色や鳥の声などを取り入れて夢のような世界観をサウンドで構築しつつも、メロディーラインはポップでとても心地よいものに仕上げています。

アルバムの最後を締めくくる「How Can a Head」もストリングスとシンセの音色でドリーミーな空間を作りつつ、彼ららしいキュートでポップなメロディーをしっかりと聴かせるナンバーになっており、アルバム全体を締めくくっています。The Flaming Lipsらしいサイケポップな作品に仕上げられていました。

アルバム全体としてはやはり「King's Mouth」というアート作品のサントラという位置づけからでしょうか、正直言ってわかりやすいインパクトや派手さはあまりありません。ただ一方、サントラというコンセプトがはっきりしていることもあってアルバム全体としてはまとまりがあり一貫性あるサウンドが楽しめるアルバムに仕上がっていたと思います。また、ドリーミーなサウンドという方向性をベースにしながらもサイケポップというThe Flaming Lipsの魅力をしっかりと生かしている作品になっていたように感じました。

前作「Oczy Mlody」はサイケなサウンドに正直、最後の方は聴いていて疲れてしまった作品になっていたのですが、今回は40分程度という長さもあり、またアート作品を生かすためか、音的には抑えめ気味な構成として仕上がっていたため、いい意味でアルバム全体としてもすっきりとしてまとまっていた内容に仕上げられていたように感じました。彼ららしいとても心地よいドリーミーなアルバムとなっていた本作。その世界観を最初から最後まで楽しめた傑作アルバムと言えるでしょう。

評価:★★★★★

THE FLAMING LIPS 過去の作品
EMBRYONIC
The Dark Side Of The Moon
THE FLAMING LIPS AND HEADY FWENDS(ザ・フレーミング・リップスと愉快な仲間たち)
THE TERROR
With a Little Help From My Fwends
Oczy Mlody
GREATEST HITS VOL.1


ほかに聴いたアルバム

Order In Decline/SUM 41

カナダ出身のパンクバンドSUM 41の約3年ぶりとなるニューアルバム。パンク・・・というよりはメロコアやハードロックの色合いが強い楽曲が並んでいるのですが、哀愁感あふれるメロディーラインはインパクトはあり良い意味で日本人受けしそうなイメージも。全体的にはちょっと似たタイプの曲が多いかなぁ、という印象も受けるのですが、全36分という短さもあり、飽きることなく一気に聴き切れるアルバムに仕上がっていました。

評価:★★★★

SUM 41 過去の作品
UNDERCLASS HERO

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2019年8月20日 (火)

アフリカへのラブレター

Title:The Lion King:The Gift
Musician:Beyonce

先日から日本でも公開となり話題となっているディズニー映画の実写版「ライオン・キング」。映画にはなんとビヨンセが声優として参加しているのですが、その彼女が映画からインスパイアされ、プロデュース、キューレイターとして作成されたアルバム「The Lion King:The Gift」が急きょリリースされました。

アルバムは一般的なサントラ盤・・・ではなく、映画から影響を受けて作成された楽曲を収録したコンピレーションアルバム。以前、映画「ブラック・パンサー」にちなんだ、同じようなコンピレーションアルバムがリリースされましたが、基本的なスタイルはそちらに近い感じでしょうか。もちろん、Beyonce本人が参加している楽曲がメインとして収録されているのですが、とにかく参加しているミュージシャンが豪華。旦那であるJay-Zはもちろん、Kendrick LamarやPharrell Williamsなどといったミュージシャンが参加しています。

さらに今回のアルバム、「The Gift」というタイトルは、映画「ライオン・キング」の舞台となったアフリカン・ミュージックに対して敬意を示し、「アフリカに対するラブレター」を意味するものだそうです。そのため今回のアルバムにはYemi Alade、Burna Boy 、Tiwa Savageといった主にナイジェリアで活動するミュージシャンたちも数多く参加しています。

そのため全体的に今回のアルバムではトライバルな雰囲気の曲が多く、Yemi Aladeら、ナイジェリアのミュージシャンが中心となった「DON'T JEALOUS ME」ではトライバルなリズムとボーカルを聴かせてくれるリズミカルな楽曲となっていますし、Burna Boyによる「JA ARE E」もメロウな雰囲気のメロディーを漂わせつつ、そんな中でアフリカらしい勇壮な雰囲気が感じられるナンバーとなっています。また、「WATER」もトライバルなリズムが押し出されたナンバーに。ただ、Pharrell Williamsが参加しているこの曲は、彼らしい非常に軽快である種の楽しさも感じられるポップな楽曲に仕上がっています。

上でもチラッと書いた「ブラック・パンサー」のインスパイア・アルバム「Black Panther: The Album」でも南アフリカのミュージシャンが数多く参加し、トライバルな要素の強いアルバムになっていました。アメリカの黒人のミュージシャンたちにとっては、やはり自分たちのルーツであるアフリカに対する憧憬が強いのでしょうか。今回、アフリカのミュージシャンが数多く参加している背景には、「ライオン・キング」の舞台となっているという理由はもちろん、そんなアフリカン・アメリカンたちのアフリカに対するあこがれを強く感じさせる内容となっています。

ただ、全体的にはリズムなどでトライバルな要素を組み込んだだけ、といった感じで、例えば先日紹介したAfrica Expressのようにアフリカ音楽を積極的に取り込んで、という感じではなく、主軸となっているのはあくまでもアメリカのR&BやHIP HOP。そこにアフリカ的な要素を加えているという程度になっているため、アフリカ音楽を期待しているとちょっと違うのかもしれません。

もちろん、Beyonceも非常に力を入れたアルバムになっているだけにその内容には間違いありません。まさにアルバムのオープニングにふさわしい、何かがはじまるかのような力強さを感じる「BIGGER」からスタートし、Kendrick Lamarとコラボした「NILE」でもダウナーなトラックの中で彼女のボーカルとケンドリックのラップがほどよい気だるさをもって楽曲にインパクトを与えています。

ラストは映画にも使われている「SPIRIT」で締めくくられているのですが、こちらはある意味、ディズニー映画の主題歌らしい、スケール感を覚えるバラードナンバー。ただBeyonceのボーカルにもいつも以上に力が入っており、非常に迫力のある楽曲に仕上がっています。映画は、元のアニメ版を含めて見たことがないのですが、なんとなく映画のシーンにもピッタリと来る雰囲気のあるナンバーになっていました。

全27曲なのですが、楽曲の間には映画のセリフの一部をピックアップしたインターリュードが入っており、まさに映画に沿った形の構成となっている今回のアルバム。もちろん、映画を見たことのない方にとってもBeyonceの新しいアルバムという感覚で楽しめる作品になっていました。数多くのミュージシャンが参加しているだけに楽曲的にもバリエーションもあり最後まで楽しめる傑作アルバム。Beyonceの実力も感じさせてくれる作品になっていました。

評価:★★★★★

BEYONCE 過去の作品
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2019年8月13日 (火)

アフリカと西洋の融合

Title:EGOLI
Musician:Africa Express

blurのデーモン・アルバーンが中心となりアフリカ音楽にスポットをあてるべく活動しているユニット、Africa Express。今年、EPの「Molo」がリリースされましたが、それに続き待望となるニューアルバムがリリースされました。本作でもデーモン・アルバーンはもちろんのこと、Supper Furry Animalsのグリフ・リース、Yeah Yeah Yeahsのニック・ジナーといったイギリス勢のミュージシャンが参加。一方、いままではマリのミュージシャンと組んでのリリースが多かったのですが、本作ではBCUC、ファカ、インフェイマス・ボイズといった南アフリカのミュージシャンたちと組んでのアルバムとなりました。

まずはアフリカらしい勇壮さも感じさせるトライバルなリズムが大きな魅力となっている本作。例えば「The River」ではトライバルなリズムにしゃがれ声で力強い男性ボーカルと伸びやかな女性ボーカルとのデゥオが印象的で、サウンドにはスケールの大きさを感じますし、ある意味、そのままなタイトルの「Africa To The World」ではリズミカルなリズムと郷愁感あるホーンの調べの対比が印象的な作品で、この対比が楽曲全体としてトライバルな雰囲気を生み出しています。さらに「Mama」のようなチープさも感じさせる打ち込みのリズムで奏でられるトライバルなサウンドもいかにも「アフリカ的」でありたまりません。

ただし、アルバム全体としてはそんなトライバルなリズムを要所要所に聴かせつつ、西洋音楽からの影響が強い、いわば「垢抜けた」印象を感じさせる曲が目立つ内容となっています。例えば「City In Lights」も軽快なリズムが心地よくも80年代風の打ち込みはむしろニューウェーブからの強い影響を感じますし、「Bittersweet Escape」もトライバルなリズムを奏でつつも重厚なサウンドと澄んだ歌声で力強く聴かせる女性ボーカルは非常に垢抜けたものを感じさせます。

またジャンル的にもバリエーションの多い音楽性が大きな魅力となっており、「Where Will This Lead Us To?」はシンプルなリズムは少々トラップの要素すら感じさせるHIP HOPのナンバーになっていますし、「Morals」もオーガニックな雰囲気が漂う作風はアフリカというよりもソウルミュージックに近いものを感じさせます。また「I Can't Move」に至っては完全に80年代のAOR。軽快なシティポップに都会な雰囲気すら感じさせます。

ただ個人的には単なるアフリカ音楽を模倣するのではなく、欧米のポップスと上手く融合させている部分がAfrica Expressの大きな魅力に感じます。単なる現地の音楽を奏でるのならば、現地でいくらでも優れた作品がリリースされている訳で、今の時代、賛否わかれる部分はあるのかもしれませんが、アフリカ音楽の要素を自国の音楽に上手く取り入れて融合させているからこそ、このアルバムが非常に独特で耳を惹く内容となっているのではないでしょうか。

もちろんそこには現地ミュージシャンへのリスペクトがきちんと感じられるという部分は間違いありません。単純なアフリカ音楽ではなくAfrica Expressでしかできない音楽をしっかりと奏でている傑作アルバムになっていました。新しい文化というのはこういう文化と文化の融合から生まれてくるのが常。ここから、新しい音楽がスタートする予感もする1枚でした。

評価:★★★★★

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