アルバムレビュー(邦楽)2019年

2019年6月17日 (月)

ライブのたびに新曲!

世の中を斜めから見たようなユニークな視点で切り取った歌詞が大きな魅力のシンガーソングライター、TOMOVSKY。そんな彼が昨年のはじめに、ライブのたびに新曲を発表し、年末にそれをまとめたアルバムをリリースすると宣言。結果として毎回、ライブのたびに必ず新曲を発表し、アルバムを発表。見事、公約を達成しています。今回紹介するのは、そうしてリリースされた2枚のアルバムです。

Title:SHINKYOKU TIME 2018-1
Musician:TOMOVSKY

Title:SHINKYOKU TIME 2018-2
Musician:TOMOVSKY

この「ライブのたびに新曲を披露する」という公約のすごいところは、本当に文字通り、「ライブのたび」という点。ワンマンや対バン形式のライブ、イベントなどはもちろん、インストアライブのような類のライブでも新曲を作ってきているようで、そのスタンスはかなり徹底しています。

また、新曲が誕生するその瞬間をとらえているという点も大きな特徴で、全編、新曲披露時のライブ録音。そのため、録音環境が整っていないような会場ではかなり音が悪い曲もあるのですが、新曲発表に際してのTOMOVSKYのMCや、その時の観客の反応もそのまま収められており、一種のドキュメンタリーのような感触のある作品にもなっていました。

そんな肝心の楽曲の方なのですが、基本的にはおそらく2度とライブでは演らないだろうなぁ、というような即興的な曲やネタ曲がメイン。特に地方ライブではその地方のネタをそのまま取り込んだような曲が多く、ライブハウスの名前そのままな「FANDANGO」やら「九州ピーポー」やら、さらにそのまま「マツモト」「名古屋」なんて曲まで登場しています。

ほかにもアカペラのラップだけというスタイルの「無意味に燃えてるぜ」みたいな「これで新曲でいいの?」と思うような曲もあったり、「食っとけよ」のような替え歌があったり、そこで見たポスターの標語をそのまま歌詞にしただけだろ?といった感じの「犯罪者が恐れるのはあなたの視線」なんて曲もあったりします。

ただし、そんなネタ曲なども含めて、彼らしいユニークな視点を取り込んだ歌詞も目立ち、ライブのたびに作られる即興的な新曲にも関わらず、TOMOVSKYの魅力をしっかりと感じられる曲が多く収録されていました。視覚から与える影響についてユニークに歌った「トンボのめがねと同じしくみ」だったり、郷愁的な雰囲気を漂させつつ、「流氷もあの雲もただの水」と根も葉もないことを歌う「流氷もあの雲も」だったり、異常気象のことを「天気の神がバランス感覚ないからだ」と歌う「お天気の神」など、ユニークな視点は冴えまくっています。

ほかにもふたの留め具がバカになってパカっと空いてしまうコロコロを「自我が芽生えた」と歌うシュールな「ピンクコロコロに自我」という曲もあったり、「ギリギリセーフ」なんかはハロウィンをテーマとした一発ネタが笑える曲になっていますし、即興的なテーマでも強いインパクトを受ける曲が少なくありません。

またもちろんそんな即興的な曲ばかりではなく、例えば「平成の次はまた昭和」なんかは「また昭和が来るからやり直せる」というユニークながらもちょっと切ない歌詞も印象に残る曲で、次のアルバムに収録されていても不思議ではないしっかりとした曲になっていましたし、幼い頃の思い出を歌った「お盆」も子供の頃の思い出の中の父親が今の自分よりも年下という歌は、おそらくある一定の年代以上の方にとっては強く共感できそうな内容で、こちらも次のアルバムに収録されていても不思議ではない内容になっていました。

彼のオリジナルアルバムは、比較的一本のテーマに従った曲が多く、それもまた魅力的なのですが、今回のアルバムはテーマ性がなかっただけに自由度がより広く、そういう意味ではテーマに従ったオリジナルアルバム以上に、ありのままのTOMOVSKYの魅力を強く感じることが出来たアルバムとも言えるかもしれません。確かに即興的なネタ曲も少なくありませんでしたが、その誕生の瞬間をとらえたというユニークさも併せて、聴きごたえのある魅力的なアルバムでした。

評価:どちらも★★★★★

TOMOVSKY 過去の作品
幻想
秒針
いい星じゃんか!
終わらない映画
BEST3
SHAAA!!!
FUJIMI


ほかに聴いたアルバム

ALIVE -The live history-/KOKIA

KOKIAの最新作は2010年から2018年に行われたライブから曲をピックアップして収録した2枚組のライブベスト。オーケストラアレンジのスケール感あるアレンジからアコースティックのシンプルなアレンジから自由自在に歌いこなす彼女の、透明感があってファンタジックなボーカルスタイルが大きな魅力。序盤のちょっと説教じみたMCにはちょっと引いてしまった部分はありましたが、最後までその世界観が楽しめるライブベストに。正直、少々感情過多な部分もあり、その点は賛否別れそうな部分はあるのですが、その点を差し引いても実に強い魅力を感じるライブ盤に仕上がっていました。

評価:★★★★

KOKIA 過去の作品
The VOICE
KOKIA∞AKIKO~balance~
Coquillage~The Best Collection II~
REAL WORLD
Musique a la Carte
moment
pieces
心ばかり
Where to go my love?
I Found You
EVOLVE to LOVE-20 years Anniversary BEST-
Tokyo Mermaid

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2019年6月15日 (土)

アルバム1枚 13,000円也(!)

Title:The KING
Musician:Anarchy

日本の「下流社会」の様子をリアルに描いたリリックが注目を集め、人気を博しているラッパー、Anarchyの新作。今回の新作は、なんといってもその売り方が大きな話題となっています。なんと、CDの販売価格が13,000円(!)。今回の価格設定について本人は「一度でいいから自分が作ったものに自分で値段をつけてみたい」と語っていましますが、ダウンロードやストリーミングなどで簡単に曲が聴ける今だからこそ、あえてCDに価値を見出し、一般的な価格から大きくかけ離れた高値を付けるという試みは非常におもしろいと思います。

ただ、今回、結果としてAmazonのレビューでも荒れてしまったようにその売り方に大きな問題を抱えてしまいました。それは、CDの限定生産を公言し予約を促したのですが、実際はCDだけではなくストリーミングやダウンロード販売も行われた点。もっとも、CD販売に価値を見出さず、どういう形でも曲さえ聴ければいいというリスナーも少なくなく、またその姿勢も決して否定できません。そのため、CDをあえて高値で販売した一方、その試みを良しとしないリスナーのためにもストリーミングやダウンロード販売を行うこと自体については問題ありません。問題は、ストリーミングやダウンロード販売を行うことを当初のCD販売の告知時に公表しなかったこと。その結果、CD自体に13,000円という価値を見出していなくても、他に聴く手段がないから、と考えたファンが泣く泣く大枚をはたいたようなケースが出てしまい、そういうファンにとっては、今回の売り方が一種の詐欺まがいのように感じられる結果になってしまっています。このやり方については事実上、ファンを騙すような恰好になってしまい、非常に残念に感じます。

さて、そんなちょっと「ケチ」がつくことになってしまった今回のアルバムですが、まず大きな特徴としてAnarchyをはじめとする13人のラッパーが参加。ソロ曲1曲の他はすべて他のラッパーとのコラボ作となっている作品になっていました。その唯一のソロ作はタイトル曲であり1曲目を飾る「The KING」。彼とHIP HOPとの出会い、そしてHIP HOPへの愛情と決意を綴ったリリックが印象的。本作は彼のソロ作ですが、数多くのラッパーの名前が登場し、リリックの中で様々なラッパーとのコラボが行われた作品になっています。

リリックが印象的といえば続くMIYACHIとコラボした「Run It Up」が印象的。今風なトラップのサウンドが耳に残る作品なのですが、「いくらいくらいくら?俺の価値はいくら?」というリリックに今回、13,000円という価格設定を行った彼の考えが反映されています。また、コラボという面で一番印象に残ったのが般若とのコラボ「Kill Me」。一発で般若とわかるその声が印象的ですし、またユニークなライムが耳に残りますし、さすがは「ラスボス」と思わせる般若の実力が反映されたコラボになっていました。

アルバム全体としては今風のトラップ風のリズムが目立つダークな雰囲気のトラックが印象的。ただ、正直言うと、13人とのラッパーとのコラボということなのですが、そのコラボがあまり上手くいかされていなかったようにも感じます。その理由として全体的にAnarchyの個性を強く押し出しすぎてしまい、ラッパーの個性がさほど生かされていなかったように感じた点。逆に言うと、それほどAnarchyの個性が強かったということも言えるのでしょうが、もうちょっとゲストの個性を前に出してもよかったのでは?もっとも、般若なんかは十分彼の個性を発揮していただけに、コラボしたラッパーの多くがAnarchyに負けてしまっているというだけのことかもしれませんが・・・。

また、いままでアンダーグラウンドを押し出したリリックが多かった彼でしたが、どうも今回のアルバムではリリックが丸くなった、というよりも若干型にはまったようなリリックが多くなってしまって、「アンダーグラウンド風」のみを醸し出しているだけで、インディーズ時代の「ヤバさ」がなくなってしまっている感を覚えます。もっともこの傾向はメジャーデビュー以降のアルバムに共通する問題点。ただ、そんな中でも今回のアルバムのラストを締めくくる「Lucky13」では、そんな彼の原点とも言える貧乏時代の思い出と感謝をリリックにしており、胸をうつ内容に仕上がっていました。

とりあえず売り方という点はともかくとして純粋にアルバムの内容としては下のような評価で。正直言って、アルバムの内容として13,000円か、と言われると、熱心なファンじゃなければ「うーん」と思ってしまうような感じかもしれません。よほどのファンじゃなければストリーミングか、(ストリーミングは権利の関係か1曲、未配信となっていますので)ダウンロードで十分かと。ちなみにレンタルも解禁されているので、そちらもありかも。試みとしてはおもしろいとは思います。ただその告知方法が残念に感じるアルバムでした。

評価:★★★★

Anarchy 過去の作品
Dream and Drama
Diggin' Anarchy
DGKA(DIRTY GHETTO KING ANARCHY)
NEW YANKEE
BLKFLG


ほかに聴いたアルバム

Sanctuary/中田裕二

ソロとして早くも8枚目となるニューアルバム。相変わらずの歌謡曲路線にはある種の安定感も覚えるのですが、ただ、全体的にはちょっとマンネリ気味。ラップを取り入れた曲もあったり、今回は打ち込みを取り入れた作品も多かったのですが、肝心の歌自体に関してはインパクト不足で、正直なところ、最後の方は飽きてしまいました。そろそろ新機軸を見せてくれるか、もうちょっとメロディーか歌詞にインパクトが欲しいところ。

評価:★★★

中田裕二 過去の作品
ecole de romantisme
SONG COMPOSITE
BACK TO MELLOW
LIBERTY
thickness
NOBODY KNOWS

CHANGES/NAMBA69

ご存じ、Hi-STANDARDのフロントマン、難波章浩率いるNAMBA69のニューアルバム。ko-hey加入後、フルアルバムとしては本作が初となりますが、以前に比べて音がかなり分厚くなり、パンクロックというよりもハードコア的な様相が強くなってきたアルバムになっています。ただし、分厚いサウンドになってもメロディアスでポップなメロは相変わらず。むしろサウンドが分厚くなったため、ポップのキュートさがより際立ったようにも感じられるアルバムでした。

評価:★★★★

NAMBA69 過去の作品
21st CENTURY DREAMS
LET IT ROCK
Ken Yokoyama VS NAMBA69(Ken Yokoyama/NAMBA69)

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2019年6月10日 (月)

伝説のバンドによる伝説のステージ

Title:三田祭 1972
Musician:村八分

1969年から1973年の4年間のみ活動し、その激しいパフォーマンスで「伝説的なバンド」として今でも名高い村八分。本作は1972年11月23日に、慶応義塾大学三田祭の前夜祭でのライブの模様を収録したライブアルバム。もともとこのライブの模様は2000年に「Live'72-三田祭-」として発表されていましたが、今回は新たに発見されたコピーテープを使用。ゆらゆら帝国などでおなじみのエンジニア、中村宗一郎によるリマスタリングが施され、新たにリリースされました。

そんなリマスタリングが施されたアルバムなのですが、それにも関わらず正直言って音はかなり悪いです。曲によってはボーカルのチャー坊こと柴田和志の声がほとんど聴こえないような曲もあり、その点は「リマスタリングだから」といって期待すると若干期待はずれに感じる部分があるかもしれません。もっとも、当時の機材で、かつ学園祭での演奏ということを考えれば、この音の悪さでも仕方ないのでしょうが・・・。

ただ、そんな音の悪さを差し引いても、70年代初頭にこれだけかっこいいバンドが日本に居たのか!!ということをあらためて驚かされる迫力ある演奏が実に魅力的なアルバムになっています。シャウト気味のしゃがれ声で歌うチャー坊のボーカルが非常にカッコよく、強く印象に残ります。また、迫力あるバンドサウンドも印象的。サウンド的にはローリングストーンズからの影響が顕著で、特に「あッ!!」のギターリフなどはまさにそのまんま。もっとも1972年といえば、ストーンズにとっては「メイン・ストリートのならず者」がリリースされた頃で、今から考えると、ようやくそのスタイルを確立させてきたころ。その頃に、ストーンズフォロワーとはいえ、ここまでの実力を感じさせるバンドが日本に居たということは驚きです。

なにより彼らのカッコよさを感じさせる大きな要素はそのリズム感の良さのように思います。ともすれば今ですらそう感じることが多いのですが、どうも日本人はリズム感が悪いようで、スクエアでグルーヴ感が皆無のリズムを奏でるロックバンドが今でも少なくありません。そんな中で彼らは、それこそストーンズに通じるようなブラックミュージックからの影響をしっかりと感じさせるグルーヴィーな演奏を聴かせてくれます。また、「水たまり」「機関車25」などブルースの影響をダイレクトに感じさせるギターを聴かせてくれたりして、こちらの演奏も見事。正直、メロディーラインにはちょっと和風というか歌謡曲的な部分も垣間見れるのですが、このリズムのカッコよさが彼らの大きな魅力になっているように感じます。

時代的にはちょうどこの年の2月にあさま山荘事件が発生するなど、学園紛争の余波が残る時代。オーディエンスには政治思想を持ったグループも詰めかけるなど、かなり物々しい雰囲気だったとか。今回のライブ盤ではそんな緊迫感も演奏を通じて感じることが出来ます。逆に、これだけ緊迫感のある演奏は、こんな会場の雰囲気を反映してのことだった、と言えるかもしれません。この緊張感あふれる雰囲気もこのライブ盤の大きな魅力に感じます。

また今回のアルバムには、当日の模様をおさめたDVDも収録。ただ、こちらはねじ巻き式の8mmフィルムで撮影されたため、断片的な映像。音も入っているのですが、こちらは撮影者監修の元で、後付けで音を重ねたもの。途切れ途切れの映像であり、鑑賞用というよりは、記録的な価値の強い映像となっています。ただ、この断片的な映像なのですが、そこからはしっかりと当日のアグレッシブな彼らのステージの魅力が伝わってきます。今の目から見ても、これよりかっこいい演奏を聴かせてくれるロックバンドは今の日本でどのくらいあるんだろう・・・と考えてしまうような、魅力的なステージでした。

こんなカッコいいバンドが、今から40年以上前に日本に存在していたということにあらためて驚かされるライブ盤。音的には非常に悪いため、聴きずらさを感じる部分も少なくありませんが、それを差し引いても「名盤」と言えるライブ盤だったと思います。時代の空気も感じられるロック好き必聴のアルバムです。

評価:★★★★★

村八分 過去の作品
ぶっつぶせ!!


ほかに聴いたアルバム

Mr.cook/東野純直

最近、ラーメン屋での修行を経て、独立。人気ラーメン店の店主として成功を収めたことも話題となった東野純直。ただ、音楽活動も継続しているようで、このたび8年ぶりとなるニューアルバムがリリース。彼はデビューアルバム以来、アルバムタイトルの頭文字がAからスタートし、アルファベット順に並んでいるのですが、本作ではついに「M」まで到達。「Mr.cook(=料理人)」というタイトルはまさに今の彼を表しているタイトルという訳でしょうか。

そんな久々となったニューアルバムですが、楽曲のスタイルとしては以前と全く変わりません。ピアノをバックに歌う爽やかなポップチューンの連続。本作では分厚いバンドサウンドでダイナミックに聴かせる曲も多く、スケール感を覚える曲も少なくありません。ここらへんの音の分厚さは90年代っぽい感じもするのですが、良くも悪くも安定感のあるポップソングが楽しめる1枚でした。

評価:★★★★

東野純直 他の作品
GOLDEN☆BEST 東野純直~アーリーシングルコレクション~
Loading Myself

THE WORLD/go!go!vanillas

最近、人気上昇中のロックバンド、go!go!vanillasのニューアルバム。彼らのアルバムは今回はじめて聴いたのですが、基本的にポップで軽快なギターロックをメインに、ガレージロックな作品があったり、サマーポップ風のさわやかなナンバーがあったり、カントリー風の曲があったりとバラエティー豊富。ひとつ核となるような曲が欲しいかも、という印象も受けるのですが、そのバリエーションの多さに最後まで飽きずに楽しめるアルバムになっていました。

評価:★★★★

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2019年6月 3日 (月)

圧巻な音世界は健在

Title:weak
Musician:WRENCH

今回紹介するバンドについては、個人的にはまずは懐かしい名前だな、という感覚が先に立ちます。1994年にインディーズでセルフタイトルのミニアルバム「WRENCH」でデビュー。デビュー当初はラウドロックの流れに乗り、大きな話題を集め、1998年と2000年のAIR JAMにも出演するなどして一気に注目を集めました。その後もフジロックやサマソニに出演するなど大きな注目を集めたものの、メンバーの脱退などもあり徐々に名前を聞く機会が減ってきました。

そんな中、久々にその名前を聴いたのがこのニューアルバム。なんと前作から11年ぶりとなる新作だそうで、まだまだ彼らはその活動を続けていたと久しぶりに知ることが出来てちょっとうれしくなりました。そしてそんな久々となる新作なのですが、かつてライブを中心に多くの音楽リスナーを魅了したWRENCHがいまなお健在であるということを実感させられるアルバムに仕上がっていました。

さてWRENCHというとハードコアの文脈でデビューしてきたバンドでしたが、デビュー当初からエレクトロサウンドやダブ、サイケロックなどの要素を取り入れてきており、ともすれば「暴れること」一辺倒になりがちなシーンの中においてある種のクレバーさを感じさせるバンドでした。そんな方向性は本作でも健在。まず1曲目「KIRAWAREMONO」では強いドラミングにリバーブのかかったダビーなボーカルが乗り、さらには分厚いバンドサウンドがこれにからむサイケな要素の強いナンバー。続く「NOCHINOI」もまずエレクトロビートからスタートし、そこに迫力あるバンドサウンドがのっかかる疾走感ある楽曲に仕上がっています。

とにかく向こうから激しい音が攻めてくるような楽曲はその後も続きます。「Nothing」はへヴィーなギターリフがからむ、よりメタリックな要素の強い楽曲。さらに「New World」でもヘヴィーなギターに力強いドラムでこれでもかというほどハードなサウンドを展開。ここらへんは彼らのハードコアな側面がより前に押し出されたナンバーになっています。

後半も「ヘルノポリス」でエレクトロサウンドに疾走感あるバンドサウンドをからませたサウンドを聴かせたかと思えば、続く「公然スペース罪」では凶器とも思えるエレクトロノイズが耳に襲い掛かります。さらに続く「tORA」もノイズミュージック的な要素の強いナンバーに、そして「Sound Wave」ではドラマの音声をサンプリングした出だしから不気味なノイズが展開される楽曲に。この終盤はノイジーなサウンドに圧巻される楽曲展開となっています。

そしてラストの「Future Now?」はリズミカルなトラックにシンセも取り入れた分厚いバンドサウンド。リズミカルなラップも加わりこのアルバムの集大成ともいえるサイケロックで締めくくられます。全10曲55分。その音の世界に終始圧倒させられるアルバムになっていました。

最初にも書いた通り、もともとエレクトロやサイケなどの要素を加えたバンドでしたが、久々となるアルバムではその方向性がよりクリアになり、そしてその方向にさらに突き進んだアルバムになっていたと思います。そのため、最初から最後まである種の迷いのないフルスロットルなサウンドで終始圧巻。また、以前のアルバムではある種のマッチョイムズ的な要素を強く感じられ、それが個人的にはマイナス要素だったのですが、今回のアルバムではそのような要素をあまり感じませんでした。

デビューから25年が経つ、まさにベテランバンドの彼ら。ただ残念ながらその長い活動に反してここ最近、あまり話題にのぼることが少ないように思います。しかし、今回のアルバムを聴く限りでは、彼らの実力は以前と比べて全く衰えていません。今回、この紹介文で彼らのことをはじめて知った方にも是非とも聴いてほしい1枚。その音の世界に圧倒されてください。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

REIWA/清竜人

ミュージカル色の強いステージで観客の度肝を抜いたかと思えば、いきなりアイドルグループ清竜人25を結成。その後はライブの参加者全員がメンバーというTOWNというプロジェクトを実施するなど、次々とその活動のスタイルを変化させるシンガーソングライター清竜人。次の一手はどう来るかな?と思ったら、なんと正統派歌謡曲路線に挑戦。それも令和最初の日にリリースされた本作に「REIWA」と名付けるなど、時代を意識したような作品に仕上がっています。

そんな彼の「歌謡曲」なのですが、「天才」という評判も高い彼だけにそのメロディーラインは文句なしなものの、楽曲全体の出来としては残念ながらいまひとつ。ひとつの原因が彼の声で、その声質も歌い方もちょっと歌謡曲にマッチしていないように感じます。歌詞も「歌謡曲らしい」フレーズを使っているのですが、いまひとつパンチ不足。歌謡曲として一番重要な「インパクト」に欠けていたように感じました。

もちろん最低限のレベルには到達しており悪いアルバムではないのですが、ちょっと合わなかったかな。評価は彼のその挑戦心を加味して下の評価に。さて、彼の次の一手は何だ?

評価:★★★★

清竜人 過去の作品
WORLD
MUSIC
WORK
BEST
WIFE(清竜人25)
TOWN(清竜人TOWN)

ANTI/HYDE

L'Arc~en~Cielのボーカル、HYDEによるソロアルバム。全英語詞でハードコアや疾走感あるグランジ系のギターロックの要素を取り入れたサウンドは洋楽的指向が強い反面、耽美的なボーカルやヘヴィーな曲でもサビになるといきなりポップになるメロディーラインは完全にJ-POP。サウンド的にもメロディー的にも良くも悪くもベタな感じはするのですが、そこらへんは洋楽的な部分とJ-POP的な部分をよくバランスを保ちつつ展開している印象。方向性はONE OK ROCKと似ている印象も受けるのですが、洋楽方面に走りすぎて最新アルバムでは底の浅さが露呈してしまったONE OK ROCKと比べると、しっかりと自分の立ち位置を認識している部分、さすがラルクとして長い間、音楽シーンのトップを走り続けてきただけはあるな、と感じるアルバムでした。

評価:★★★★

HYDE 過去の作品
HYDE

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2019年6月 2日 (日)

はっぴいえんどフォロワーながらもサウンドに独特な個性が

Title:STORY
Musician:never young beach

これがメジャー2作目、インディーズも含めると4作目となる5人組ロックバンド、never young beachの最新作。もともとは「名前程度は聞いたことがある」程度の印象のバンドだったのですが、先日、CDショップのお勧めとして並んでいたのを試聴してみてよさげだったのでアルバムをはじめて聴いてみた次第。これが予想以上に良い作品になっており、一気に気になるバンドとなりました。

個人的に当初このバンドに食指が伸びなかった理由として、なんとなくの偏見なのですが、昨今よくありがちな「フェス」仕様のロックバンドだと誤解していたから。しかし、実際に聴いてみるとこれが予想外だったのですが、よくありがちなパンク風のポップロックバンド、ではなく、まさかのはっぴいえんど直系のフォークロックバンドだったから正直ちょっとビックリしてしまいました。

まずアルバムの冒頭を飾る「Let's do fun」からしてスティールパンを取り入れたトロピカルなサウンドはもろ細野晴臣。続くタイトル曲「STORY」の郷愁感を覚えるメロディーラインといい、「歩いてみたら」の和風な雰囲気を感じる暖かみあるメロといい、完全にはっぴいえんど近辺からの影響を強く感じさせます。

その影響はメロディーのみならず、例えば「春を待って」だとか「春らんまん」だとかタイトルからしてはっぴいえんどの色合いを強く感じますし、その「春らんまん」や「歩いてみたら」で感じられる叙情的な歌詞の世界観もはっぴいえんどからの影響を強く感じさせます。

・・・なんてことを書いていると全体的に単なるはっぴいえんどのフォロワーで終わってしまいそうな感もありますが、ただその一方で彼らが非常にユニークなのはサウンド的にはっぴいえんどという範疇に留まらず、しっかりと現代の音を入れてきている点だったと思います。サウンド的にもアコースティックなサウンドがベースとなるフォーキーな色合いを強く感じさせますが、一方で音数はそぎ落とし、エッジを利かせた音作りが大きな特徴。特に空間を聴かせるようなサウンドとなっており、タイトでスタイリッシュな作風を感じさせます。

さらには例えば「春を待って」などではファンキーで少々アフロポップからの影響すら垣間見れるサウンドになっていたり、「思うまま」もベースラインのサウンドにファンキーさを感じさると同時にミニマルミュージックからの影響すら感じさせたりとなにげに音楽的な幅の広さを感じさせます。そんな作風はどこかポストパンクの影響すら感じさせるものであり、個人的にはVampire Weekendあたりに通じるものすら感じたりもして・・・。このポストパンク的なサウンドと叙情的かつ和風なフォーキーな作風の融合というのが非常にユニークかつ彼らの大きな魅力に感じました。

正直言うと、歌詞にしろメロにしろ、ちょっと未熟さを感じる部分もあり、さらなる成長を期待したい点も少なくはありません。ただそういう点を差し引いても現状、既に独特な個性を持っており、非常のおもしろいアルバムに仕上がっていたと思います。逆に未熟さに感じられた点は今後の伸びしろとしてバンドの行く末が楽しみにすらなってきます。間違いなく、注目すべき期待の新人バンドです。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

ジャズ/ドレスコーズ

純然たるオリジナルアルバムは「平凡」以来約2年ぶりとなるドレスコーズの新作。前作「平凡」が傑作だっただけに最新作も期待したのですが・・・ちょっと期待はずれだったかなぁ。基本的にいままでの彼らしい、自由度の高く、ポップな要素を詰め込んだようなアルバムになっているのですが、どうも全体的にはいろいろと詰め込みすぎでゴチャゴチャした印象が否めません。もうちょっと方向性を明確にして交通整理が行われれば、前作のような傑作になりえたような感じもするのですが。悪いアルバムではないのですが、やりたいことが多すぎて、ちょっと暴走気味に感じました。

評価:★★★★

ドレスコーズ 過去の作品
the dresscodes
バンド・デ・シネ
Hippies.E.P.

オーディション
平凡

CIRCUS CIRCUS/ゆるふわギャング&Ryan Hemsworth

実生活でも恋人同士のラッパー、Ryugo IshidaとNENEと、プロデューサーAutomaticによるユニット、ゆるふわギャングがカナダのプロデューサーRyan Hemsworthと組んでリリースされた配信限定のアルバム。ゆるふわギャングといえば酩酊感たっぷりのトラップのサウンドに日常生活を綴ったラップが魅力的なのですが、今回のアルバムは残念ながらトラップの要素は薄く、酩酊感もあまり感じません。リリックもこれといってピンとくるようなものはなく、全体的にはゆるふわギャングの良さがいまひとつ出ていないように感じたアルバム。「Mars Ice House」「Mars Ice House II」と傑作が続いていただけにちょっと残念でした。

評価:★★★

ゆるふわギャング 過去の作品
Mars Ice House
Mars Ice House II

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2019年5月31日 (金)

感慨も深い30周年のベスト盤

Title:カーネーション
Musician:辛島美登里

1990年にシングル「サイレント・イヴ」が大ヒットを記録し、一躍人気シンガーの仲間入りを果たした女性シンガーソングライター、辛島先生のデビュー30周年を記念してリリースされたベストアルバム。ちなみにこの「デビュー30周年」というのは1989年にリリースされた「時間旅行」から起算されたもので、実はこの前に何枚かシングルをリリースしており、厳密なデビュー作は1984年の「雨の日」というシングルだそうです。ただ、本格的な歌手活動のスタートという意味で公式的には「時間旅行」が「デビュー作」と謳われているようです。

しかし彼女ももうデビューから30周年かぁ・・・と個人的には感慨深いものがあります。私的な話となりますが、高校時代の友人に辛島美登里の熱烈なファンだった奴がおり、彼につれられて彼女のライブ(正式にはラジオの公開収録)に足を運んだことがあるのが今となってはいい思い出。また、自分にとっても1991年にリリースされた彼女のアルバム「GREEN」は、私がポピュラーミュージックを聴き始めた直後に聴いたアルバムの1枚という意味でも印象深い作品。そういう意味でも自分にとって中高生の頃の思い出が強いシンガーのひとりであって、そんな彼女がもうデビュー30周年という事実に時の流れを感じてしまいます。

もっとも最近は彼女の活動もスローペース。20周年の時もベスト盤「オールタイム・ベスト」をリリースしており、その後にリリースされたアルバムは3枚のみ。さらにその3枚のうち2枚までがカバーアルバムであって、そういう意味では「ベスト盤出しすぎじゃない?」という印象も受けてしまいます。

ただ、その10年前にリリースした「オールタイム・ベスト」は全17曲入りでCD1枚のみという彼女のキャリアを考えればかなり凝縮した構成。本作も同じくCD1枚に17曲のみ収録という凝縮した内容になっており、そのため、前作とはかぶらない曲が多く、「オールタイム・ベスト」を聴いていたとしても今回のアルバムも十分楽しめる構成になっていました。今回のアルバムでも彼女のヒット曲「サイレント・イヴ」「あなたは知らない」「愛すること」などはきちんと押さえられているのですが、「サイレント・イヴ」は今回のアルバムのための再録。「あなたは知らない」は2014年にリリースされたアルバム「colorful」で再録されたバージョンとなっています。「サイレント・イヴ」はここ最近、毎作にように再録がアルバムに収録されており、そろそろ「サイレント・イヴ」のバージョン違いだけを収録したアルバムが1枚出来ちゃうんじゃないか、と思っちゃうんですが(苦笑)。

その他もブレイク前の1990年にリリースしたシングル「ツバメ」やデビュー前に永井真理子に楽曲提供し、彼女が注目されるきっかけとなった曲のセルフカバー「瞳・元気~都会のひまわり~」、シングル「愛すること」のカップリングで知る人ぞ知る的な名曲「明日へのターン」など、前作に収録されていない注目曲も数多く収録されており、そういう意味ではファンにとってもうれしい1枚となっています。

そしてその肝心な内容の方ですが、こちらは言うまでもありません。まさに辛島「先生」という愛称の通りの恋愛に対する大人のレッスンが受けられるような女性心理をしっかりと読み込みつつ、女性に対しての後押しになるような前向きなラブソングの連続。特に彼女の楽曲のスタイルは、デビュー前に楽曲提供された「瞳・元気」から既に確立されており、あらためて彼女の実力を感じさせます。ここ最近は残念ながらあまりヒット曲もなく(というよりも楽曲自体あまりリリースされておらず)、おそらく若い方にとっては辛島先生の名前を知らない方も多いかと思いますが、そんな方にこそ是非とも聴いてほしい名曲が詰まったベスト盤になっています。

ちなみに今回、ラストにアルバムのタイトルチューンでもある新曲「カーネーション」が収録。伸びやかに聴かせるAORに仕上がっているのですが、その歌詞もメロディーも全盛期に比べて全く衰えておらず、ボーカルも今でも澄んだボーカルが魅力的。また積極的に音楽活動を開始すれば、以前のようなヒット曲がリリースできるのでは?と思うほどの出来栄えとなっています。

そんな訳で初心者の方でも文句なく薦められるベストアルバム。ただ一方、そろそろオリジナルアルバムも聴きたいなぁ、とも思えてしまいます。特に新曲が魅力的だっただけに、こんな曲をまたたくさん聴きたい!まだまだこれからのご活躍も期待しています!

評価:★★★★★

辛島美登里 過去の作品
オールタイムベスト
辛島美登里 パーフェクトベスト
colorful
Cashmere


ほかに聴いたアルバム

東京スカパラダイスオーケストラトリビュート集 楽園十三景

スカパラのデビュー30周年を記念してリリースされた、13人のミュージシャンたちがスカパラの曲をカバーしたトリビュートアルバム。うーん、正直言うと、まあ無難なカバーではあるのですが、スカパラの曲をうわべだけでとりあえずカバーしてみましたといった感じの内容がほとんど。まさかのインストカバーに仕上げた氣志團の「砂の丘~Shadow on the Hill~」は良かったのですが、それ以外はいまひとつ、スカパラをトリビュートしているとは感じられない、平凡なカバーの曲が並んでいました。

評価:★★★

Chime/sumika

ストリングスやピアノを取り入れた爽快なポップチューンが魅力的なロックバンド、sumikaの最新作。底抜けに明るいポップチューンが大きな魅力で、楽曲によってはちょっと星野源っぽいかも?と思わせる部分も。メロディーのインパクトも増してきて、人気が高まるとともに脂ものってきているように感じます。ただ一方、悪い意味でルーツレスなJ-POPバンドらしい音楽的な底の浅さもちらほら。ニューオリンズ風の曲なんかもあって彼らの進みたいベクトルはわかるのですが、ソウルやブルースなどの要素が皆無のため楽曲としてどうも薄っぺらさも感じてしまいます。そこらへんは開き直ってメロディーラインの圧倒的なインパクトで突き進むという手もあるのですが、そのほどのグッドメロディーを書けているかというとそれは微妙といった感じ。今後の成長次第といった感じはするのですが・・・。

評価:★★★★

sumika 過去の作品
Familia

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2019年5月26日 (日)

日本をテーマに

Title:246911
Musician:SPIN MASTER A-1&Shing02

ラッパーのShing02が、彼のツアーDJを務めたこともあるDJ、SPIN MASTER A-1と組んでリリースしたニューアルバム。今回のアルバムはShing02にとって2008年にリリースした「歪曲」以来の日本語詞によるアルバムとなります。今回のアルバム、タイトルとなる「246911」はおそらく日本人なら誰もが知っている小の月の語呂合わせ「西向く侍」から取られたもの。Shing02は現在、アメリカ在住なのですが、そんな彼だからこそ「日本人らしさとは何か」ということをよく感じるそうで、今回のアルバムはそんな「和」をテーマとしたアルバムになっていました。

そのため、今回のアルバムで大きな特徴となっているのはトラックに和楽器を多く取り入れている点。1曲目「Mirage/蜃気楼」からまずは美しい琴の音と太鼓のリズムを取り入れたサウンドで楽曲はスタートします。「Kane/鐘」でも琴の音をミニマル・ミュージック的に取り入れているのが印象的ですし、「Gensou/幻想」のように和風な音と今風なトラップ風のリズムを見事融合させているサウンドも見事。「Zantetsu/斬鉄」のような、太鼓や笛の音を用いつつ、ドリーミーに聴かせるトラックも印象に残ります。

またそんなサウンド以上に印象に残ったのがShing02のリリックでした。日本を舞台とした物語的な歌詞が非常にユニークで、「Tanuki/狸」は日本の民話のような、狸とウサギの物語となっていますし、アルバムの中の一つの核となっているのが「Shigurui/死狂い」。本人はインタビューで「八百屋お七の話をサンプリングした」と語っているように、江戸をテーマとした物語に。さらに話はそのまま「Sanzu/三途」へとつながり、ストーリーテラーとしての実力を感じる連作となっています。

和楽器をサンプリングさせたサウンドに日本を舞台にした時代劇的なストーリーが繰り広げられ、まさに「日本らしさ」を体現したアルバムになっていた本作。ただ、和楽器を取り入れれるとベタな和風になってしまう部分が多いのですが、一方では今どきのサウンドも巧みに取り入れることにより、しっかりと今のHIP HOPシーンにキャッチアップされているため、決して「ベタ」には陥っていません。リリックも物語的なリリックが多いため、この手のアルバムにありがちな単純な日本賛美に陥っていない点も聴いていて違和感なくすんなりとその世界観を楽しめた大きな要因だったように思います。

ただ一方、この手の企画にありがちなのですが、自分の理想像を歴史の中に無理やり反映させたフィクション的な歴史観が登場している部分があり、その点は非常に残念でした。具体的に言えば「Jin/陣」。この中で、Shing02は武士を孤高の求道者として描いていますが、その描き方にはかなりの違和感があります。この中で「商人にだまされ 町人に笑われ 農民にたかられ」という表現が出てくるのですが、江戸時代の武士といえば絶対的な権力者。例えば古典落語の世界でも武士は町人たちにいばりまくっていて怖い存在として描かれているように、影でとやかくいわれるのはともかく、面と向かってバカにできる存在ではありません。どうもここ最近、武士やら侍やらを必要以上に美化するような傾向があり、変な理想像に違和感を覚えることが多いのですが、この曲に関しても残念ながら強い違和感を覚えました。

そんなマイナス点はありつつも、ただ全体としては日本というテーマを変に排外主義的な要素と結びつけることなく、うまくHIP HOPの世界に落とし込めていた傑作だったと思います。物語性強い歌詞は多くのリスナー層が楽しめそう。サウンド面でもリリック面でも彼らの実力がよく反映されたアルバムに仕上がっていた作品でした。

評価:★★★★★

Shing02 過去の作品
歪曲
SURDOS SESSIONS: Nike+ Training Run
1200Ways(Shing02+DJ $HIN)
S8102(Sauce81&Shing02)


ほかに聴いたアルバム

KAZUYOSHI SAITO 25th Anniversary Live 1993-2018 25<26 〜これからもヨロチクビーチク〜 Live at 日本武道館 2018.09.07/斉藤和義

ライブツアー毎の毎度おなじみ感の強い斉藤和義のライブアルバム。ただ今回はタイトル通り25周年の記念ライブ、それも昨年9月に実施した日本武道館のライブの演奏曲をすべて収録という内容になっており、選曲もベスト盤的な内容。まさに彼のライブの集大成的な作品となっており、聴き応え十分。彼のライブの魅力はもちろん、楽曲の魅力も十分感じられるアルバムになっていました。

評価:★★★★★

斉藤和義 過去の作品
I (LOVE) ME
歌うたい15 SINGLES BEST 1993~2007
Collection "B" 1993~2007
月が昇れば
斉藤“弾き語り”和義 ライブツアー2009≫2010 十二月 in 大阪城ホール ~月が昇れば 弾き語る~
ARE YOU READY?
45 STONES
ONE NIGHT ACOUSTIC RECORDING SESSION at NHK CR-509 Studio
斉藤
和義

Kazuyoshi Saito 20th Anniversary Live 1993-2013 “20<21" ~これからもヨロチクビ~ at 神戸ワールド記念ホール2013.8.25
KAZUYOSHI SAITO LIVE TOUR 2014"RUMBLE HORSES"Live at ZEPP TOKYO 2014.12.12
風の果てまで
KAZUYOSHI SAITO LIVE TOUR 2015-2016“風の果てまで” Live at 日本武道館 2016.5.22
斉藤和義 弾き語りツアー2017 雨に歌えば Live at 中野サンプラザ 2017.06.21
Toys Blood Music
歌うたい25 SINGLES BEST 2008~2017
Kazuyoshi Saito LIVE TOUR 2018 Toys Blood Music Live at 山梨コラニー文化ホール2018.06.02

HOMETOWN MUSIC LIFE/坂本サトル

ロックバンドJIGGER'S SONのボーカルで、1999年にはソロでリリースした「天使達の歌」がスマッシュヒットを記録し話題となったシンガーソングライター坂本サトルのニューアルバム。2枚組の作品で、1枚目はリクオや加藤いづみ、松本英子などとのコラボ曲を収録。2枚目はサッカーチームのサポーターや福祉作業所の方、故郷の小中学生に東日本大震災の被災者の方と一緒に作り上げた楽曲を収録。「みんなで作り上げた」という意味で暖かみを感じさせるアルバムになっていました。

楽曲の方は比較的シンプルなポップスがメイン。ただ、今回のアルバムで一番良かったのはリクオと組んだ「タビガラス」で、彼のしゃがれたボーカルはこの曲のようなブルース調の曲に合っているように思います。個人的にはもっとブルース寄りの曲を聴いてみたいなぁ、とも思ってしまいました。また椎名林檎の「ギブス」のカバーも彼の歌声が妙にマッチしていて味わいのあるカバーに仕上がっていました。2014年に故郷青森に拠点を移し、これがその第1弾アルバムだとか。そんなふるさとでの活動開始にピッタリな、温かさを感じるアルバムでした。

評価:★★★★

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2019年5月19日 (日)

魅力的な客演が数多く

Title:ベストバウト2 RHYMESTER Featuring Works 2006-2018
Musician:RHYMESTER

この音楽サイトで紹介しているように、個人的にいろいろなタイプの音楽を紹介しているのですが、そんな中、もっともゲストミュージシャンとして最もその名前を聴く機会が多いミュージシャンのひとつが間違いなくRHYMESTERです。以前からジャンル問わず様々なミュージシャンのゲストとして参加する彼らですが、そんな彼らの客演集を集めた企画盤がリリースされました。もともと2007年に「ベストバウト」として同じく客演集がリリースされていますが、本作はその「ベストバウト」の第2弾アルバムとなります。

ゲストミュージシャンとしての彼らが目立つのは、やはりその数も影響しているのでしょうが、彼らのプレイ自体が非常に個性的で、聴けばすぐにRHYMESTERだ!と気づくというのが大きな要因だと思います。Mummy-Dと宇多丸はどちらもラッパーとしてインパクトある声と個性を持っており、唯一無二ともいえる存在。逆にだからこそ多くのミュージシャンからゲストとして呼ばれるのでしょう。

ただ、数多くのミュージシャンとコラボを重ねる彼らですが、その面子を見ると、決して「仕事を選ばない」というスタイルではありません。その仕事ぶりは多岐に及び、今回のアルバムでもゴスペラーズのようなR&B、スキマスイッチのようなポップス、Base Ball Bearのようなギターロックや10-FEETのようなパンク、さらにはSOIL&"PIMP"SESSIONSのようなジャズから果ては加山雄三まで様々なジャンルの曲が並びます。ただ、どのミュージシャンも間違いなく一定以上の実力を持ったミュージシャンばかり。以前からRHYMESTERが参加しているミュージシャンは一定の信頼感が置けたのですが、こうやって並べると、決してジャンルに壁は設けていないものの、彼らなりにいい意味でしっかりと仕事を選んでいる様子もうかがえます。

また今回のアルバムも「客演集」とはいえ、スキマスイッチの「ゴールデンタイムラバー」やBase Ball Bearの「The Cut」のように、あくまでもそれぞれのミュージシャンの曲の中に、チラッとRHYMESTERのラップが重なるだけの、まさに文字通りの「ゲスト」として参加している曲もあれば、一方ではRHYMESTER名義の「本能」のように、RHYMESTERの曲の中で椎名林檎の「本能」をサンプリングしている曲だったり、加山雄三名義の「旅人よ」のように、同じくRHYMESTERの曲の中に加山雄三の曲がサンプリングされているというスタイルだったり、むしろ相手のミュージシャンの方が「ゲスト」扱いだったりする曲も少なくありません。そういう意味でもバラエティーのある内容のアルバムになっていました。

また、意外とRHYMESTERが参加するようなタイプの曲は比較的似たような方向性の曲が多く、具体的にはファンクやジャズなどの要素を色濃く入れた楽曲が目立ちました。そんなファンクやジャズの要素とメインのミュージシャンの音楽性が上手くマッチしている曲も多く、それこそがRHYMESTERとのコラボの醍醐味と言えるのかもしれません。そんな理想的なコラボに数多く出会えるアルバムになっていたと思います。

そしてなんといってもよかったのがラストを飾るSCOOBIE DOとのコラボ「やっぱ音楽は素晴らしい」でしょう。もともとファンクバンドであるSCOOBIE DOとRHYMESTERの相性は抜群。そして、音楽を心から愛する2つのグループによって歌われるタイトル通りのメッセージは聴いているこちらもワクワク楽しくなってくるような曲。まさに本編のラストを飾るにふさわしい名曲でした。

そんな訳でRHYMESTERの魅力がしっかりとつまった、まさに「裏ベスト」と呼ぶにふさわしい企画盤でした。RHYMESTERのファンはもちろんですが、参加ミュージシャンのファンも是非。これを機に、RHYMESTERの魅力にはまるかも・・・。

評価:★★★★★

RHYMESTER 過去の作品
マニフェスト
POP LIFE
フラッシュバック、夏。
ダーティーサイエンス
The R~The Best of RHYMESTER 2009-2014~
Bitter,Sweet&Beautiful
ダンサナブル


ほかに聴いたアルバム

panta rhei/tacica

ミニアルバムだった前作「新しい森」から約1年8ヶ月ぶり。フルアルバムとしては「HEAD ROOMS」から実に3年ぶりとなるギターロックバンドtacicaの新作。tacicaのイメージというと良くも悪くもシンプルなギターロックバンドという印象で、どうも個性が薄いという印象があります。今回のアルバムに関しても比較的シンプルなギターロックといった印象で、強烈な個性といったものはありません。ただ今回の作品、外連味の無いバンドサウンドが楽曲にうまくマッチしており、メロディーも決して派手なフックが効いているわけではないのですが、すんなり耳になじむポップチューンに。派手さはないのですが、ついつい聴き進めてしまう魅力のあるアルバムになっていました。個人的には彼らのいままでの作品の中で一番の出来だったかも。次にも期待したくなる作品でした。

評価:★★★★

tacica 過去の作品
jacaranda
jibun
HOMELAND 11 blues
LOCUS
HEAD ROOMS
新しい森

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2019年5月18日 (土)

厳しい現実と日常を描写

Title:Ride On Time
Musician:田我流

山梨県一宮町(現笛吹市)出身のメンバーを集めたHIP HOPクルー、stillichimiyaのMCとしても活躍しているラッパー、田我流。2014年にstillichimiyaとしてのアルバムを、また2015年には田我流とカイザーソゼ名義によるバンドプロジェクトでのアルバムをリリースしていますが、純粋にソロ名義でのHIP HOPアルバムとしては2012年の「B級映画のように2」以来となる、久々のニューアルバムがリリースされました。

その前作「B級映画のように2」ではリリースが福島原発事故の直後ということもあり、反原発を前に押し出した社会派な色合いが強いナンバーに。またトラックとしてもヘヴィーなトラックを聴かせてくれており、社会への不安をテーマに載せたアルバムに仕上げていました。今回のアルバムも「Broiler」というある種の監視社会となる現代社会への警告をテーマとした社会派な曲が序盤に入っており、また「Vaporwave」も現在の無機質で寂しい郊外の模様を描写するなど、社会派的なメッセージを感じさせる曲がまずは目立ちます。

ただ、一方では今回のアルバムは現実の日常を描写した歌詞が目立ったように思います。特に印象的なのは「Deep Soul」で、家族を持った父親が、いかに家族を守るかというテーマ性を持った厳しい現実を描写したリリックになっており、暗い雰囲気のトラックと相成り、非常に印象的なラップに仕上げられています。思えばstillichimiyaというHIP HOPクルーも地元一宮町の合併反対という社会派的なテーマ性を持ちながら、あくまでも「地元」という日常に立脚するスタイルを取っています。それと同様、前作では社会派なテーマ性をかかげた田我流ですが、今回のアルバムではあくまでも日々の日常に立脚したスタイルがメイン。社会派な歌詞も、そんな日常の延長線上にある、ととらえているのかもしれません。

また、サウンド的には今回、前作から大きく変化しています。ハードコアとまではいかずとも比較的ヘヴィーな作風が目立った前作に比べると、今回のアルバムは「Back In The Day 2」やタイトルチューンの「Ride On Time」などトラップからの影響を強く感じるサウンドの曲が並びます。さらには「Simple Man」「Changes」などエレクトロサウンドを入れつつメロウにまとめているトラックも目立ち、ヘヴィーというよりもダークだけども哀愁を感じるトラックが多いように感じます。トラップからの影響というのは、ある意味、今の時代にアップデートした結果といった感じなのでしょうが、全体的には歌詞のテーマ性も含めて、ヘヴィーなトラックでゴリゴリと主張する前作に比べると、サウンドからは等身大的なスタイルを感じました。

そんな日常の現状を描写しつつ、実質上のラストチューンとなる「Anywhere」はメロウな女性ボーカルによる歌を取り入れ、スチールパンを取り入れ、少々カリブ風なサウンドも含めさわやかな雰囲気に。また、歌詞には力強く前向きなメッセージ性も感じられ、最後は明るい雰囲気を感じさせます。

ただし、そんな明るい雰囲気のラストに対して気になるのが今回のアウトロ。今回、1曲目とラストはそれぞれイントロとアウトロと位置づけられているのですが、忘れ物をみつけ、約束に間に合わず、田我流が車に飛び乗って急いで出発しようとしている、ある種のあせりを感じるイントロに対して、アウトロの最後は田我流が奥さんと子供と一緒に車に乗って出発しようとする明るい家族の日常で終了。アウトロとイントロはループするような構成になっているのも印象的。これに関してはいろいろな解釈ができそうですが・・・。明るい雰囲気の終盤と暗い雰囲気の序盤をループさせ、明るい日常も突然、変わっていくということを示唆しているのかもしれません。

前作からするとアルバムの印象が少々変化した今回のアルバムですが、今回も田我流のメッセージを感じさせる、ついつい何度も聴きたくなる傑作アルバム。今回のアルバムも必聴です。

評価:★★★★★

田我流 過去の作品
B級映画のように2


ほかに聴いたアルバム

"TWO OF US"Acoutsic Session Recording at VICTOR STUDIO 302/LOVE PSYCHEDELICO

LOVE PSYCHEDELICOが、自身初となるアコースティックライブツアー「LOVE PSYCHEDELICO Premium Acoustic Live “TWO OF US” Tour 2019」に先立ち、3月6日にビクタースタジオで行ったセッションライブの模様を収録したアルバム。映像作品がリリースされるのと同時に、配信限定でアルバムもリリースされました。ライブの趣旨の通り、アコースティックなセッションとなっている本作。全編アコースティックギターの音色が効果的に用いられており、これがまたLOVE PSYCHEDELICOのロッキンな作風とピッタリマッチ。ある意味、彼女たちの楽曲のコアな部分がむき出しになったような演奏が繰り広げられており、非常にカッコいいセッションになっていました。これはこのアレンジでのアルバムリリースも期待したいほど。ゾクゾクっとするカッコよさを感じさせる作品です。

評価:★★★★★

LOVE PSYCHEDELICO 過去の作品
This Is LOVE PSYCHEDELICO~U.S.Best
ABBOT KINNEY
IN THIS BEAUTIFUL WORLD
LOVE PSYCHEDELICO THE BEST I
LOVE PSYCHEDELICO THE BEST Ⅱ

15th ANNIVERSARY TOUR-THE BEST-LIVE
LOVE YOUR LOVE
LOVE PSYCHEDELICO Live Tour 2017 LOVE YOUR LOVE at THE NAKANO SUNPLAZA

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2019年5月17日 (金)

最初で最後のベスト盤

Title:NEGOTO BEST
Musician:ねごと

2010年にミニアルバム「Hello "Z"」でメジャーデビュー。2011年にリリースした「ex Negoto」がチャートで6位にランクインするなど一躍ブレイクを果たしました。その後もアルバムを計5枚、ミニアルバムをデビュー作含めて2枚リリースし積極的な活動を続けていたものの昨年末に2019年のツアーを最後に解散することを発表。そんな中リリースされたのが彼女たち最初でおそらくラストとなるベストアルバムでした。

ねごとの前身となるバンドが結成したのが2006年。2006年といえばちょうどチャットモンチーが「シャングリラ」でデビューした年。その後デビューした彼女たちはイメージとしてはチャットモンチーに続いて出てきたガールズバンドの走りというイメージ。事実、彼女たちもチャットモンチーのトリビュートアルバムに参加するなど、チャットモンチーを受けたバンドの一組であることは間違いなさそう。本作に収録されている作品でも、特に初期の作品、「ワンダーワールド」などは露骨にチャットモンチーの影響を感じる作品になっていたりします。

ただ、そんな初期のギターロック作品は結局のところ、チャットモンチーのフォロワーというイメージを払拭しきれずにいたのでしょう。彼女たちの方向性として徐々にエレクトロサウンドを取り入れて、バンドとしてのスタイルを確立しようとしました。そしてそんなエレクトロサウンドを大胆に取り入れてリスナーを驚かせたのが2016年にリリースされた「アシンメトリー」。この曲ではギターバンドというよりはエレクトロのミュージシャンとしての彼女たちのベクトルをはっきりと見せた作品になっています。

もっとも、今からこのベスト盤を聴くと、彼女たちは比較的初期の作品からエレクトロサウンドを取り入れていたことい気が付かされます。例えばデビューシングルでもある「カロン」などは楽曲的にはチャットモンチーからの影響を感じる作品ながらもシンセのサウンドを取り入れていますし、2012年にリリースしたシングル「Lightdentity」もエレクトロロックの作品に。こうやってあらためて彼女たちの過去の代表作を聴くと、「アシンメトリー」は突然変異の楽曲ではなく、ある意味、彼女たちの活動の中では必然だったのかな、とも感じてしまいます。

ただし、今回のベストアルバムで彼女たちの過去の代表作を聴いてあらためて感じたのは、残念ながら全体的にどうも中途半端だったかな、という印象でした。初期の作品についてはシンセのサウンドを入れてそれなりに個性を出しつつも、やはり全体的にはチャットモンチーのフォロワー的なイメージはぬぐえませんでしたし、エレクトロサウンドに大々的にシフトした後期の作品についても、正直言って果敢に挑戦するそのスタイルは絶賛に値するものの、サウンド的には決して目新しいものではなく、ロックバンドがエレクトロにシフトという方向性もよくあるパターンという印象を受けてしまいます。

彼女たちは2011年にリリースした「ex Negoto」でベスト10ヒットを記録。翌年リリースしたシングル「sharp #」も「機動戦士ガンダムAGE」オープニングテーマというタイアップの良さもありベスト10ヒットを記録しましたが、その後は売上的には伸び悩み、残念ながら売上的には下降傾向が最後まで続いてしまいました。ただ残念ながら今回のベスト盤で彼女たちの歩みを聴くと、リスナーの耳は正直だな、という印象を受けてしまいます。それなりにインパクトあるポップなメロディーはヒットポテンシャルはあるものの、確かに、これでその人気を持続させるのは厳しいだろうなぁ・・・と思ってしまいました。

メンバーはねごと解散後、おそらくそれぞれソロとして音楽活動をスタートさせるでしょう。いろいろと大変とは思いますが、これからの彼女たちの活躍を期待しつつ、是非、このねごとを超えるような曲を期待したいところ。彼女たちのこれからの活動にも注目していきたいです。

評価:★★★★

ねごと 過去の作品
Hello!"Z"
ex Negoto

"Z"OOM
VISION
アシンメトリe.p
ETERNALBEAT
SOAK


ほかに聴いたアルバム

Transducer/VOLA&THE ORIENTAL MACHINE

今年、突如発表されたNUMBER GIRL再結成のニュース。久しぶりにスポットを浴びるようになったナンバガですが、そのベーシスト、アヒト・イナザワがギターボーカルとして率いるバンド、VOLA&THE ORIENTAL MACHINEも久々の新譜がリリースされました。もともとナンバガとは異なるエレクトロサウンドを積極的に取り入れていた彼らでしたが、本作はエッジの効いたギターサウンドを前面に押し出したロックな色合いの濃いナンバーに、一方後半はいままでの彼らと同じくエレクトロサウンドを前に出したポップな色合いが濃いナンバーが並び、VOLAの幅広い音楽性を感じさせるアルバムになっています。

今回のアルバムも約4年半ぶりだったり、その前も4年のスパンが空いていたりと、正直、バンドとしては散発的な活動となってしまっている彼ら。このタイミングでアルバムというのもこれを逃すとナンバガ再結成があるためまとまった時間が取れないということなのでしょうか。そんな散発的だからこそ、バンドとしての個性やまとまりがちょっと弱い感じがしてしまうのは残念なのですが・・・次回はもっと短いスパンでアルバムがリリースされるとうれしいのですが。

ちなみにアヒト・イナザワといえば2010年にリリースしたアルバム「PRINCIPLE」収録の「Flag」という曲が非常に右翼的ということで一部左派のバッシングにあったことで話題となりました。確かにこの曲を歌詞を読むと、典型的な保守派の主張といった感じで、個人的には相いれません。ただ、正直主張内容については保守系のオーソドックスな主張であって、「特ア」という表現は若干差別的ニュアンスはあるものの、全体として許容されるべき意見の範囲内であって、これを「レイシスト」などと排除するのは、左翼的な主張を一方的に「政治的」と断じて排除しようとする右派のやっていることと大差ないように感じます。反対意見を述べるのはともかく、こういう歌詞を書くこと自体を叩くことはちょっと残念な気がします。

評価:★★★★

VOLA&THE ORIENTAL MACHINE 過去の作品
Halan'na-ca Darkside
SA-KA-NA ELECTRIC DEVICE

SUPER MUSIC/集団行動

元相対性理論の真部脩一と西浦謙助が組んだ新バンドの3枚目となるアルバム。かつての相対性理論を彷彿とさせるような独特な言葉の言い回しやシンプルながらもエッジの効いたリズムが非常に魅力的な1枚。そんな中、へヴィーなギターリフが入ったり、ニューオリンズ風に仕上げたりとバラエティーもグッと増しています。特にラストの「チグリス・リバー」はトライバルなリズムを入れつつ幻想感を覚えるサウンドが魅力的な独特の個性を感じさせる楽曲に。ただ一方、いまひとつボーカルの弱さを感じさせてしまう部分が残念な点。そこらへん気になる部分はあるものの、そろそろ大傑作が聴けそうな予感のする、そんな「何かがはじまる前」を感じるアルバムでした。

評価:★★★★

集団行動 過去の作品
充分未来

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