アルバムレビュー(邦楽)2019年

2019年8月19日 (月)

ブルースロック色がより強く

Title:NEW LOVE
Musician:B'z

先日、BUMP OF CHICKENのアルバム評の中で「BUMP OF CHICKENというバンドが何を求められているのか、メンバーがしっかりと理解しており、そしてそれにしっかりと答えることが出来た」ということを書きました。ミュージシャンとして長年活動を続け、さらに一定以上の人気を保持し続ける一番の秘訣は、この「ファンが自分たちに何を求めているかわかっており、かつそれにしっかりと答えられる」ということだと思うのですが、その点、おそらく良くも悪くもそういうことが出来る日本で一番のミュージシャンのひとつが間違いなくB'zではないでしょうか。昨年でデビュー30周年。いわば「大いなるマンネリ」な部分は否定できないのですが、長年、高い人気を保持し続ける大きな理由のひとつが、ファンがB'zに何を求めているのか、メンバーがよくわかっており、かつそれにしっかりと答えているというのが大きな要因であるのは間違いないでしょう。

今回、約1年半ぶりとなる新作なのですが、まず1曲目「マイニューラヴ」からギターリフを中心に構成されているハードロックテイストの強いナンバー。ある意味、リスナーがB'zに求めている「ロック」な部分を体現化したような楽曲からのスタートにリスナーはグッと惹きつけられます。

本作では比較的、このギターリフを主導としたハードなロックチューンが目立つ作品になっており、その後も「デウス」やへヴィーなサウンドが目立つ「Da La Da Da」など外連味なくロックなサウンドを聴かせる楽曲が目立ちます。ここらへん、下手なバンドだと中途半端に打ち込みを入れてきたり、下手に違うスタイルを目指そうとするのですが、B'zの場合は、ファンキーなリズムを入れたりホーンセッションを入れたりとそれなりに「色」をつけてくるのですが、コアの部分ではしっかりとB'zとして求められる要素を抑えており、聴いているリスナーを安心させます。ここらへん、彼らの非常に巧みな部分であるように感じます。

一方、もうひとつB'zらしさを感じさせるのはへヴィーなハードロック路線に反して意外と親しみやすく、かつ「歌謡曲」的であるメロディーライン。そこも今回のアルバムでもしっかりと抑えられています。例えば「兵、走る」もハードロック調のアレンジと反してメロディーはポップでわかりやすく、かつ前向きな歌詞が印象的ですし、「俺よカルマを生きろ」なども歌詞もメロディーも「歌謡曲」調な仕上がりとなっています。ここらへん、良くも悪くもJ-POP的であり、いわば「良心的なロックリスナー」からB'zが敬遠される要素のひとつではあるのですが、ただ一方では多くのリスナーに支持される大きな要因であるのも事実。そういうファンが彼らに求める要素を本作でもしっかりと抑えています。

ただ、そんな中でも今回のアルバムはタイトルの「NEW LOVE」が「自分たちが好きな音楽をやってますという気分をタイトルにした」と語っているように、比較的、彼らの作品の中では好き勝手に演った感の強いアルバムに仕上がっています。前作「DINOSAUR」もハードロック志向の強い作品になっていましたが、今回の作品はさらにハードロック寄り、もっといえばブルースロック寄りとなっておりサウンド的には泥臭さも感じます。あまり売れ筋を意識していないという意味とサウンドの方向性という意味では1994年の「The 7th Blues」に似たようなタイプの作品にも感じました。

しかし残念だったのは前作「DINOSAUR」でもメロディーのインパクトが薄いように感じたのですが、その傾向は今回の作品にも引き継いでしまいました。また、その結果でもあるのですが、全体的には終盤になるにつれて少々失速気味。最初は気持ちよく聴けていても、全55分というアルバムの長さとしてはちょうどよい長さではあるものの、終盤の方はちょっとダレてしまいました。そこらへん、やはりかつての勢いはなくなってしまったのかなぁ、ということも感じてしまった作品。ただ、最初から書いている通り、良くも悪くもB'zらしいアルバムではあるので、ファンなら安心して気持ちよく聴けるアルバムだったと思います。なんだかんだいってもこのスタイルを30年以上続けられるというのは彼らのすごさでしょう。まだまだその人気は続いていきそうです。

評価:★★★★

B'z 過去の作品
ACTION
B'z The Best "ULTRA Pleasure"
B'z The Best "ULTRA Treasure"
MAGIC
C'mon
B'z-EP
B'z The Best XXV 1988-1998
B'z The Best XXV 1999-2012

EPIC DAY
DINOSAUR

| | コメント (0)

2019年8月18日 (日)

強い「癖」を感じさせるピアノ曲

Title:BEST of PIANISM
Musician:三柴理

今回紹介するのは、ピアニスト三柴理のベストアルバム。三柴理・・・ロック好きならばその名前を何度も耳にする機会があるのでしょうか。もともとは筋肉少女帯で「三柴江戸蔵」としてメジャーデビュー。その後、筋少は脱退するものの、ソロとして数多くのミュージシャンとコラボを行い、また2000年からは筋少で一緒だった大槻ケンジと特撮を結成。最近ではくるりのアルバムにも多く参加しています。

個人的に彼は大好きなピアニストのひとり。身長180cmを超える巨漢でありながらも非常に繊細なピアノの音色を奏でつつ、そのメロディーは一種独特なもの。不協和音的に奏でられるメロディーをあえて入れてくるあたり、非常に大胆不敵であり、その繊細さと大胆さのミスマッチが彼のピアノの大きな魅力に感じます。

本作はそんな彼のキャリアを総括するようなソロ作のベストアルバム。自身が作曲したナンバーのみならず、筋少や特撮、クイーンやエマーソン・レイク&パーマーのカバーもおさめられています。もっともベスト盤といいつつ8曲までがこのベスト盤が初出だそうですので、オリジナルアルバム的にも楽しめる1枚となっています。

さて、三柴理の魅力はまず1曲目の「黎明第二稿」から存分に味わうことができます。本人作曲によるこのピアノ曲は大胆なピアノの演奏を聴かせてくれる一方、ダイナミックな演奏の中に流れるメロディーラインは繊細さも感じさせます。さらにこのピアノのフレーズも、単純に「美しい旋律」と言えない強い癖を感じられ、まさに三柴理の魅力を存分に感じられる作品になっています。

またアルバムの中で大きく印象に残るのが、本作が初出となるクイーンの「ボヘミアン・ラプソディー」のカバー。ダイナミックなサウンドと力強いフレディー・マーキュリーの歌が印象に残るナンバーなのですが、これをピアノ1本でカバー。ただ、楽曲の持つダイナミックな雰囲気はそのままに、一方ではまるで歌うような感情的なピアノの音色も強い印象に残るカバーに仕上げており、まさに三柴理の魅力がつまったカバーとなっています。

基本的には叙情感たっぷりに聴かせつつも一方では非常に癖の強いフレーズが頻発する、個性あふれる演奏が大きな魅力。ただ一方では音楽的なバリエーションも非常に広く、筋少のカバーである「サンフランシスコ」ではメタリックなサウンドに仕上げていますし、シルヴァノ・ブソッティの「友のための音楽」は現代音楽にも挑戦している楽曲。一方ではもともと国立音大に在籍したこともあるようにクラッシックの素養も兼ね備えたミュージシャンなだけにショパンの「雨だれ(Prelude Op.28 No.15)」も難なくこなしています。ただどの曲も三柴理らしい一癖を加えており、しっかりと彼の曲として仕上げてきている点も大きな魅力といえるでしょう。

美しいピアノ曲のアルバムながらも、そんな中に強烈な三柴理の個性を感じさせるアルバム。この世界感、かなり癖になりそう。それだけに多くのミュージシャンが彼のピアノの音色を取り入れるのでしょう。今後も、彼の名前はいろんな場所で見かけることになりそう。また次の彼のソロアルバムも楽しみです。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

Epitaph/Koji Nakamura

いままでNYANTORAやiLL名義で活動を続けていた元スーパーカーのボーカリスト、ナカコーこと中村弘二の本名名義での2枚目となるアルバム。もともとはストリーミングサービスで制作過程を公表する「Epitaph」プロジェクトで作成された楽曲をまとめた作品。エレクトロサウンドの中にHIP HOPやインダストリアル的な要素など様々な音楽性を感じさせ、その実験性を感じさせます。ただ、その当時の彼の気分がそのまま収められたアルバムではあるのですが、意外と全体としてはまとまりのある「ちゃんとしたアルバム」に仕上がっているあたりが興味深いところ。全体的にはドリーミーな雰囲気の作風に仕上がっており、ナカコーの「今」を楽しめる作品に仕上がっていました。

評価:★★★★

Koji Nakamura 過去の作品
Masterpeace

| | コメント (0)

2019年8月16日 (金)

ピアノオンリーながらもバリエーション豊かに

数多くのCMソングや映画音楽を手掛けるミュージシャン、高木正勝。最近では細田守監督の作品をよく手掛け、昨年公開された「未来のミライ」の映画音楽でも話題となりました。そんな彼が昨年から今年にかけて2枚のピアノアルバムをリリースしました。

Title:Marginalia
Musician:高木正勝

紹介するのがちょっと遅くなってしまいましたが、昨年11月にリリースされたピアノアルバムの第1弾。そして・・・

Title:MarginaliaⅡ
Musician:高木正勝

そして、こちらが前作に続けて今年リリースされた第2弾となります。楽曲はすべてピアノオンリーのサウンドであり、曲によっては女性の美しいコーラスが入ってきたりもします。彼の前作「かがやき」では京都の山村にて自然の音を取り入れたサウンドが特徴的だったのですが、今回のアルバムに関してもフィールドレコーディングを実施。ピアノの音色に自然の音が混ざった音の世界が繰り広げられています。

タイトルはいずれも「Marginalia」とつけられた上で「#+番号」で区別されています。基本的に小さい数字から順番に並べられているものの番号的には飛び飛びになっており、かつ「Marginalia」で飛ばされた番号が「MarginaliaⅡ」に収録されていたりします。おそらく、「#1」から順番に作っていき、イメージに合うものを曲の雰囲気に合わせて「Marrginalia」と「MargginaliaⅡ」に振り分けたということろではないでしょうか。

楽曲的にはいずれもシンプルなメロディーを聴かせてくれる曲ばかりで、いわば「現代音楽」のような聴き手を選ぶような曲はありません。いずれもピアノのみの曲ではあるものの、バリエーションは様々であり聴き手を飽きさせません。例えば「#1」はミニマル的な曲の構成が耳を惹きますし、「#3」はピアノの2つの音が寄り添ったり離れたりして展開していくユニークかつ可愛らしさを感じる曲。「#23」では女性の歌が入るのですが、この歌が何語なのか不明な言語。優しい雰囲気の曲なのですが、このボーカルのため不思議な感触のする曲となっています。

「Ⅱ」の収録曲の方でもピアノの早弾きで清涼感を覚える「#17」や女性のハイトーンボイスが加わり、どこか幻想的な雰囲気となっている「#35」、ループするようなサウンドが特徴的な「#13」や哀愁漂うメロディーが心に残る「#39」など、演奏はピアノのみにも関わらず、実に様々なタイプの楽曲が並んでおり、2作とも70分を超えるボリュームながらもリスナーを飽きさせません。

そんな訳で幅広い方にアピールできる傑作アルバムであることは間違いないのですが・・・このアルバムのもうひとつの狙いである「フィールドレコーディング」という側面からすると、ちょっと物足りなさも感じてしまう部分はありました。まず1作目の「Marginalia」に関しては、正直、ほとんど自然の音が入った曲はありません。鳥の声が効果的に入った「#8」や虫の声が入った「#23」あたりくらいでしょうか。一方、「MarginaliaⅡ」に関しては自然の音が積極的に取り入れられています。ただ、「#44」「#43」のように自然の音が効果的に用いられている曲もあるのですが、正直、それ以外の曲に関してはピアノが鳴っている後ろで、そういえば外の音が聞こえるような・・・という程度。あまり自然の音をうまく取り込んだ、という印象は受けませんでした。

ここらへんは若干、なんでだろう?と思う部分もあるのですが、ただそこの狙いは別として純粋にピアノ曲のアルバムとしては非常に良くできた傑作アルバムであることは間違いありません。その美しいピアノの響きとメロディーに最初から最後まで聴き惚れる内容で、高木正勝の実力を存分に感じる傑作になっています。基本的に小難しい部分はないため、広い層にお勧めできる作品。特に細田守監督の映画を見て「音楽がいいな」と思った方には無条件でお勧めできるアルバムです。その美しいピアノの世界に酔いしれてほしい作品です。

評価:どちらも★★★★★

高木正勝 過去の作品
Tai Rei Tei Rio
TO NA RI(原田郁子+高木正勝)
おむすひ
かがやき

| | コメント (0)

2019年8月 9日 (金)

BUMP OF CHICKENらしい作品

Title:aurora arc
Musician:BUMP OF CHICKEN

約3年5ヶ月ぶりとなるBUMP OF CHICKENの待望のニューアルバム。アルバムリリースの間隔としてはちょっと久しぶりということになった今回のアルバムですが、ただ、その間、比較的積極的な活動が目立っていたため、あまり久しぶりというイメージはありません。彼らに限らない最近の傾向として、シングルをCDでリリースすることが稀になり、この約3年5ヶ月の間にCDシングルのリリースは1枚のみでしたが、7曲も配信限定でのシングルをリリースしていました。

そしてリリースされた今回のアルバムですが、先行リリースされたシングルがすべて収録。全14曲中9曲までが先行リリースされたシングル曲という内容となっており、ある種のベスト盤的な感覚すら覚えるような内容となっていました。新曲が少な目という点は賛否両論わかれるところで(うち1曲はイントロ的なインスト曲ですし)、配信シングルもすべて追っているようなファンにとってはちょっと物足りなさを感じてしまう点は否定できません。

ただ一方ではシングル曲をまとめたアルバムということもあって、実にBUMP OF CHICKENらしいナンバーが並ぶアルバムになっていたように感じます。特に感じたのは、おそらくファンや、あるいは熱心なファンではないようなリスナー層にとって「これがBUMP OF CHICKENだ」と思わせるような曲が多かったように感じます。

例えばアルバムタイトルにもなっている「Aurora」もそうでしょう。爽快さのあるギターサウンドにちょっと切なさも感じるメロディーライン。リスナーに勇気を与えてくれるような歌詞の世界観に「宇宙」を感じさせる「Aurora」というタイトルまで含めて、まさにバンプらしい作品。同じく、「宇宙」を感じさせるタイトルの「シリウス」もそうでしょう。疾走感あるギターサウンドにちょっとファンタジックな要素を含む前向きなメッセージを含んだ歌詞も、バンプらしい楽曲。サビに入る部分の転調も藤原基央のある種の手癖を感じさせます。

「アンサー」も前向きなメッセージ性の強いファンタジックな歌詞の世界観がおそらく多くの方がバンプに期待するような歌詞でしょうし、続く「望遠のテーマ」もバンドサウンドの色合いが強いナンバーですが、こちらも前向きな歌詞に強い希望を感じさせます。今回の新曲でも「新世界」も彼ららしい明るいラブソング。「君といる僕が一等賞」という言葉の使い方が実に藤原基央らしい感じ。ただ打ち込みをつかったリズミカルでダンサナブルなナンバーになっており、アルバムの中でのひとつのインパクトとなっています。

BUMP OF CHICKENというバンドが何を求められているのか、メンバーがしっかりと理解しており、そしてそれにしっかりと答えることが出来た作品、今回のアルバムに関してはそんな印象を強く受けました。その結果としてアルバム全体として決して目新しさはありません。ただ、リスナーからの期待にしっかりと、それも高い次元で答えることが出来る彼らの実力を感じると共に、こういうことをしっかりと出来るあたりが長いこと人気を獲得し続ける大きな要因なのでしょう。聴き終わった後、いい意味で「BUMP OF CHICKENを聴いた」という強い満足感を得ることが出来るアルバム。彼らの人気はまだまだ続きそうです。

評価:★★★★★

BUMP OF CHICKEN 過去の作品
orbital period
COSMONAUT
BUMP OF CHICKEN Ⅰ[1999-2004]
BUMP OF CHICKEN II [2005-2010]

RAY
Butterflies


ほかに聴いたアルバム

留まらざること 川の如く/宮沢和史

2016年に体調不良のため歌手活動を無期限停止していた宮沢和史。その後、無事復活し、約3年ぶりにソロ名義でのアルバムリリースとなりました。全8曲入りという短い内容ながらも日本民謡や沖縄民謡、ラテンの曲など、彼の音楽的趣味がよくわかる構成になってました。ただ、うちセルフカバーが2曲、活動休止中に提供した映画主題歌1曲が含まれて全8曲という点、まだリハビリ中といった印象も受けるのですが、しっかりと彼の健在ぶりを感じさせるアルバムになっていました。

評価:★★★★

宮沢和史 過去の作品
寄り道
MIYATORA(宮沢和史&TRICERATOPS)
MUSICK

I'm not chick/noodles

ドラムスのayumiが脱退し、2人組となってしまった約2年ぶりとなるニューアルバム。とはいってもそのスタイルは以前から全く変わらず、特に本作では10年ぶりにthe pillowsの山中さわおがプロデュースを手掛けた作品ということもあって、以前以上に彼女たちらしい疾走感あるギターロックを聴かせてくれています。まあ、山中さわおプロデュースということもあり以前以上に「女版ピロウズ」という印象が強く感じるアルバムになっているのですが、その点を差し引いても、いい意味で外連味の無いポップなギターロックを楽しめる作品になっていました。

評価:★★★★★

noodles 過去の作品
SNAP
Explorer
Metaltic Nocturne

| | コメント (2)

2019年8月 5日 (月)

圧巻する2枚組セルフタイトル作

Title:THA BLUE HERB
Musician:THA BLUE HERB

その独特なスタイルで熱烈な支持をうける札幌出身の3人組HIP HOPユニット、THA BLUE HERB。途中、ソロ作を挟みつつ、THA BLUE HERBとしては約7年ぶりとなる待望のニューアルバムが完成しました。そんな久々のニューアルバムは圧巻の2枚組、全30曲という構成。さらにはセルフタイトルの作品になっており、その力の入れようがわかります。さらには作品はあくまでもILL-BOSSTINO、O.N.O.、DJ DYEというメンバー3人のみで作られており、客演は一切なし。まさにセルフタイトルというスタイル通り、これぞTHA BLUE HERBだ、という作品になっています。

正直言うと、全30曲入りの今回のアルバム、楽曲のバリエーションとしてはさほど多くはありません。O.N.O.のトラックにしても今回のアルバムに関して言えば、決して目新しかったり斬新だったりする訳ではなく、ある意味、いつものTHA BLUE HERBといった感じ。ピアノを取り入れて物悲しく聴かせるトラックは、メランコリックでメロディアスでありつつ、どちらかというとBOSSのラップのサポートを第一としたトラック作りのように感じます。ただ一方では、非常に個性的でインパクトのあるBOSSのラップの後ろで鳴りつつ、トラック自体も「これぞO.N.O.のトラック」というような強いインパクトを持っていることは間違いありません。

ただ、楽曲の面からは決して目新しいといった印象を受けず、良くも悪くもいつものTHA BLUE HERBという印象を受ける内容になっているものの、それでも全30曲2時間半に及ぶアルバム、最後まで耳を離せず一気に聴いてしまうのは、BOSSが綴り、そしてラップで刻むそのリリックであることは間違いありません。BOSSの様々な思いのたけを綴られたリリックは、リスナーに楽曲をBGM的に聴くことを一切拒否しています。セルフタイトルらしい力の入れようを感じる圧巻のリリックが続いていました。

アルバムは「EASTER」「WE WANT IT TO BE REAL」さらには「介錯」とシーンの中での自らの決意を綴った曲からスタート。さらに新しいHIP HOPシーンに対する皮肉を込めたメッセージを綴った「AGED BEEF」などは今のシーンに対する率直で厳しいスタンスが耳に残ります。

さらに中盤は一転、「THERE'S NO PLACE LIKE JAPAN NOW」ではオリンピック批判をはじめとした日本の今について綴った社会派な内容に。さらに「REQUIEM」では戦争から戦後を生き抜いた人たちに対する挽歌とも言えるメッセージが強い印象を抱きます。そして間違いなくDisc1のハイライトとも言えるのが「TWILIGHT」。おそらく若くしてこの世を去った後輩について綴った歌詞で、亡くなった後輩に捧げるリリックが涙腺を緩くする内容になっています。

もっとも個人的に今回のアルバムで一番印象に残り、かつ泣けたのがDisc2の「UP THAT HILL(MAMA'S RUN)」。おそらくDVから離婚したシングルマザーの母親として決意と覚悟を綴った歌詞で、子どもを持つ親ならば間違いなく泣けてくる内容ですし、それにこんな歌詞、よく書けるなぁ、と非常に感心してしまいました。ちなみに父親視点からの「HEARTBREAK TRAIN(PAPA'S BUMP)」がこの曲の前にあるのですが、こちらは父親の勝手な言い分に男としてもあまり共感できない・・・。

その後も東日本大震災について綴った「スーパーヒーロー」や力強い前向きのメッセージが印象的な「LOSER AND STILL CHAMPION」など、最後の最後まで耳を離せないナンバーが続きます。まさにセルフタイトルのアルバムの通り、非常に力のこもったメッセージが次から次への展開される内容に。全体的にはあくまでもBOSSのラップとそのリリックを聴かせることに焦点をあてたようなアルバムになっているように感じました。もちろん、そんなBOSSのラップが生きてくるのもO.N.O.のトラックがしっかりとラップを支えているからなのは間違いありませんが、アルバムとしてはラップを聴かせるという点を重視したような構成に感じましたし、結果としてTHA BLUE HERBの魅力をしっかりと伝える作品になっているように感じました。

セルフタイトルという力の入れ方は伊達じゃない傑作アルバム。2枚組というフルボリュームでありつつ、一切ダレることがなく最後まで文句なしに聴き切れてしまう作品になっていました。決して派手な作風ではないもののTHA BLUE HERBここにありを強く感じさせるアルバムで、間違いなく今年を代表する1枚と言えるでしょう。彼らの実力を強く実感てきた作品でした。

評価:★★★★★

THA BLUE HERB 過去の作品
TOTAL


ほかに聴いたアルバム

TOKI CHIC REMIX/土岐麻子

土岐麻子が直近でリリースした2枚のオリジナル「PINK」「SAFARI」に収録されていた曲を、様々なミュージシャンがリミックスを手掛けたリミックスアルバム。リミックスをほどこしたのは曽我部恵一、砂原良徳、tofubeats、WONK、Awesome City Club、STUTSなど、ベテラン勢から新進気鋭のミュージシャンまで豪華なメンバーがズラリと並んでいます。「PINK」「SAFARI」はシティーポップなアルバムでしたが、今回参加しているミュージシャンたちも、基本的には「シティーポップ」と呼ばれる音楽を奏でるミュージシャンたち。そのため、基本的には軽快なエレクトロのリミックスが多かったのですが、原曲の雰囲気と土岐麻子のボーカルの持ち味をよく生かしたリミックスに仕上がっていたと思います。若干、その分、良くも悪くもあくのつよいリミックスはなかったけど・・・「PINK」「SAFARI」が気に入ったのなら、文句なしに楽しめる1枚です。

評価:★★★★

土岐麻子 過去のアルバム
TALKIN'
Summerin'
TOUCH
VOICE~WORKS BEST~
乱反射ガール
BEST! 2004-2011
CASSETTEFUL DAYS~Japanese Pops Covers~
HEARTBREAKIN'
STANDARDS in a sentimental mood ~土岐麻子ジャズを歌う~
Bittersweet
PINK
HIGHLIGHT-The Very Best of Toki Asako-
SAFARI

テレビアニメ放送40周年記念 ドラえもん うたのコレクション

タイトル通り、テレビ放送40周年を記念して、過去の「ドラえもん」の主題歌・挿入歌を収録した4枚組のアルバム。Disc1,2は声優勢が一新された後の楽曲が、Disc3,4は懐かしい大山のぶ代時代の楽曲が収録されています。「大山ドラ」で育ってきた世代としては圧倒的にDisc3,4の方が懐かしいのですが、大人になって聴くと、Disc3,4の曲は出来の良し悪しの差が大きく、トータルでは「水田ドラ」時代の曲の方がしっかりと作られているという印象も。昔の曲から今の曲まで網羅されているので、「大山ドラ」で育ったパパママの世代と「水田ドラ」を触れている子供の世代が同時に楽しめるコンピになっています。

評価:★★★★

| | コメント (0)

2019年7月29日 (月)

ベテランらしい安定した良作

Title:ウ!!!
Musician:ウルフルズ

約2年ぶりとなるウルフルズのニューアルバム。ギターのウルフルケイスケがソロ活動に専念するためウルフルズとしての活動を休止。3人組となって初となるアルバムとなりました。

そんなニューアルバムですが、1曲目にはいきなり度胆を抜かれます。いきなりエレクトロサウンドが飛び込んでくるディスコ調のテクノポップチューン。一応、先行配信曲なのでこのアルバムで初お目見え、ではないのですが、ルーツ志向のバンドサウンドで泥臭いイメージのあるウルフルズとしては、3人組になって方向転換か??と驚かされます。(もっとも、彼らのブレイク作、「ガッツだぜ!!」もディスコ風のナンバーでしたので、ウルフルズの方向性として「いままでにない」といった感じではないのですが)

ただし2曲以降はいかにもウルフルズらしい曲の連続で、まずは安心させられます。続く「リズムをとめるな」は大ヒットした映画「カメラを止めるな!」を意識したタイトルですが、タイトル通り、テンポよいバンドサウンドが終始続く、軽快だけどメロにはちょっと切なさを感じさせるギターロック。そして続く「ワンツースリー天国」はまさに彼らの真骨頂ともいうべきロックンロールナンバー。さらにそこから一転、「ひとつふたつ」はソウルフルに聴かせるソウルバラードのラブソングに仕上がっています。

さらに続く「ありがっちゅー」も暖かい雰囲気にさせてくれる歌詞が印象的なロックチューン。さらに「生きてく」もスウィートなソウルナンバーで、こちらもほっこりと暖かい感じなのが魅力的。ちなみにインタビューではこの2曲を「今までウルフルズでやってそうでやってなかったタイプの曲。」と語っています。そういう面で彼らなりの挑戦を感じさせますが、そんな曲でもしっかりと「ウルフルズ色」に染め上げており、「彼ららしさ」を感じさせてしまう点、彼らの個性と実力を感じさせます。

その後も力強いバラードナンバー「抱きしめたい」やピアノが入って爽快感のある「変わる 変わる時 変われば 変われ」と続き、リズミカルで前向きな歌詞が明るいロックンロールチューン「パワー」へと続きます。最後は2003年にリリースされたアルバム「ええねん」に収録されている彼らの代表曲のひとつ「愛がなくちゃ」のセルフカバーで締めくくり。ある意味、実に彼ららしいラブソングでアルバムの幕は下ります。

そんな訳で、彼らなりの挑戦を感じつつも、アルバム全体としてはウルフルズらしさを感じさせるアルバム。ベテランらしい、きちんと自分たちの立ち位置を踏まえた上で、新しいこととファンに求められることのバランスを上手くとったアルバムだったように感じます。また前作「人生」がルーツ志向なアルバムだったのに対して、本作はルーツ志向な部分を垣間見せつつ、全体的には明るくポップな要素の強い作品だったように感じました。とりあえずしばらくは3人組になってしまった彼らですが、ウルフルズとしての活動に心配はなさそう。これからの彼らにも期待です。

評価:★★★★★

ウルフルズ 過去の作品
KEEP ON,MOVING ON
ONE MIND
赤盤だぜ!
ボンツビワイワイ
人生

| | コメント (0)

2019年7月27日 (土)

不安と前向きな気持ちが同居

Title:トワイライト
Musician:スカート

青春の1ページを切り取ったような、ちょっと甘酸っぱさも感じる漫画のジャケット絵が強い印象に残る澤部渡のソロプロジェクト、スカートのメジャー2作目となるアルバム。ちなみにこのジャケットは「このマンガがすごい!2019」のオンナ編第1位を獲得した「メタモルフォーゼの縁側」の作者、鶴谷香央理による書下ろしだそうです。

このジャケットの絵からは、どこか切なさと、それと同時に前向きな爽やかさを感じさせます。そして、そんな切なさや寂しさと前向きさが同居した複雑な心境は本作のスカートの作風に沿っていました。まずアルバムは女性アイドルグループNegiccoのKaedeに提供した曲のセルフカバー「あの娘が暮らす街(まであとどのくらい?)」からスタートします。この曲は、「ひとりじゃ不安だけど それでも逃げ出したい」という逃避行をにおわせるような表現が登場します。ただ一方最後はタイトルである「あの娘が暮らす街まであとどのくらい?」と、おそらく恋人の元に向かっているであろう、明るさと希望を感じさせつつ曲は締めくくられます。

さらに「君がいるなら」でも

「眠れない夜にはしごをかけて
風もない春に寄り添う
今がこのまま続いて行くならば
不安でも前を見ていたい」
(「君がいるなら」より 作詞 澤部渡)

と爽やかさを感じる表現ながらも、どこか影の部分を想像してしまう歌詞が印象に残ります。

ただそんな不安や影の要素を感じつつも、「歩き出そう 風がどんなに強くても」と歌う「ずっとつづく」や「指をつないで 扉の向こうへ」と締めくくる「ハローと言いたい」など前向きな希望を感じさせる曲も目立ちます。ただ、単純な前向き応援歌ではなく、その向こうにある決して上手くいくばかりではない現実も垣間見れる歌詞になっており、それが本作の大きな魅力に感じました。

また爽やかさを彩るような風景描写も印象的で、高田馬場での乗り換え風景を描いた「高田馬場で乗り換え」のような曲もあれば、春を描いた風景描写も印象的な「遠い春」や暗い海辺に佇み、不安を感じる恋人を描いた「花束にかえて」など心境にあった風景をしっかりと切り取った歌詞も大きな魅力となっています。

さて、スカートの曲ですが、歌詞も大きな魅力なのですが、それ以上にメロディーも大きな魅力。もともとはスピッツのバックバンドに参加して話題になった彼ですが、スピッツのように暖かい雰囲気のポップスが大きな特徴になっています。特にメジャーデビュー作となった前作「20/20」でメロディーにインパクトが出てきたのですが、今回のアルバムもいい意味でメロディーがあか抜けてきているように思います。

あえて言うのならフォーキーな雰囲気にはくるりのような雰囲気を感じます。メロディー的にわかりやすいサビがあるわけではないのに、聴き終わった後に強く印象を残すという点もくるりに似ていますし、同時に澤部渡のメロディーセンスの良さを感じさせます。ただ、くるりと比べると、例えば「遠い春」などAORの要素も強く感じさせ、ここらへんは歌い方も含めて、どこかキリンジを彷彿とさせる部分も。くるりとキリンジの中間を行くサウンドといった感じでしょうか。

ただ、くるり+キリンジ÷2といっても決して既存のミュージシャンのコピーではなく、そこはしっかりスカートとしての色を出しています。確かに決してサウンドの面では目新しい感じではないものの、暖かさを感じるメロディーとサウンドは聴いていて安心しますし、また歌詞の世界観をしっかりとサポートしているようにも感じました。

メジャー2作目となった本作ですが、前作から引き続き、いい意味でインパクトも増してスカートの魅力をしっかりと出すことのできた傑作アルバムに仕上がっていたと思います。ポップスが好きならば、間違いなく聴いておきたい1枚です。

評価:★★★★★

スカート 過去の作品
CALL
20/20


ほかに聴いたアルバム

大きな玉ねぎの下で/サンプラザ中野くん

元爆風スランプのボーカル、サンプラザ中野くんの新作は、爆風スランプの代表曲で1989年にリリースされ大ヒットした「大きな玉ねぎの下で」のリメイクを中心とした6曲入り(うち1曲はカラオケ)のミニアルバム。同じく代表曲のひとつである「月光」のセルフカバーを収録しているほか、オカモトラバーズ研究所とのコラボ曲「岡本と友だち」、QUEENの日本語直訳カバー「女王様物語」、お笑いコンビ野生爆弾のくっきー作詞作曲歌唱による「月光」のアンサーソング「日光」が収録されているなど、真面目な側面とギャグの側面が混在したような楽しい1枚になっています。

ただリメイクの「大きな玉ねぎの下で」に関しては正直言ってサンプラザ中野くんの声があまり出ていない・・・不快というほどではなく曲自体は十分楽しめるものの、ちょっと残念に感じました。ただ、そんな気になる点はあるものの、今聴いてもやはりこの曲は名曲ですね。武道館を舞台にペンフレンドとの切ない恋愛を描いた風景描写が絶妙。なんでペンフレンドが会場に来なかったのか一切語られていませんが、そこをいろいろと想像できる余地がある点もまたこの曲を名曲にしている要素のように思います。ちなみに今となってはかなり時代を感じさせる歌詞に。「ペンフレンド」とか完全に死語になってしまいましたしね。でも、はじめて会う異性にドキドキ感を覚えるのはいつの時代も変わらず、そういう意味ではこの曲もしっかりと時代を超えた名曲と言えるのでしょう。

このシリーズ、まだ第3弾、第4弾もありそうだなぁ。次は「リゾ・ラバ」とか「涙2」あたりか?若干、露骨なアラフォーホイホイ的な後ろ向きな企画な点は気にかかるのですが、率直にアラフォー世代としては楽しめた1枚でした。

評価:★★★★

サンプラザ中野くん 過去の作品
Runner

美空ひばりトリビュート Respect HIBARI -30 years from 1989-

没後30年の区切りの年にリリースされた、主にポップス系ミュージシャンによる美空ひばりへのトリビュートアルバム。妖艶に歌い上げる吉井和哉や煤けた雰囲気が楽曲にもマッチしている徳永英明。ちょっとコミカルなカバーが楽しいNICO Touches the Wallsや、2曲目の「東京キッド」のカバーでは、ちょっとこなれすぎた感がマイナスだった松山千春もラストの「津軽のふるさと」ではその歌唱力を遺憾なく発揮し、その実力を見せつけました。

基本的には感情を込めたカバーを非常に上手く歌い上げている人ばかりで、ちょっと浮いている感のある倖田來未も意外と力強いボーカルで他のミュージシャンに決して負けていませんでした。ただそんな中、唯一このメンツに参加しているのが疑問だったのが水谷豊。それも「川の流れのように」という代表曲をカバーしたのですが、完全にそこらへんの飲み屋のおじさんのカラオケレベル・・・。いや、彼は歌が下手なのは知っていたので最初から全く期待はしていなかったのですが、他のミュージシャンが上手い人ばかりだったので、その酷さが際立ちます。なんで参加させたんだろう?その点は非常に残念でしたが、そこを差し引けばよくできたカバーがそろったアルバムだったと思います。参加ミュージシャンが好きな方はチェックして損のない1枚です。

評価:★★★★

| | コメント (0)

2019年7月26日 (金)

刺激的なサウンドで要注目のロックバンド

Title:Schlagenheim
Musician:black midi

今、ロンドンで最も刺激的と言われる4人組ロックバンド、black midi。ロンドンを拠点に活動を続け、みるみるうちに注目を集め、このデビューアルバムも大きな話題に。各種メディアを中心に大絶賛を受けました。また、日本でも徐々に話題になっており、様々な場所で絶賛と共にその名前を見る機会が増えてきています。まさに今、もっとも注目度の高いバンドのひとつと言えるでしょう。

そもそもこのアルバムはジャム・セッションを基調として5日間で完成させたアルバムだそうです。そのためアルバムの内容を一言で言うには非常に難しい、バンドの様々な側面が次々にあらわれる作品となっていますが、ただ、それゆえに非常に緊迫感のあるアルバムに仕上がっていたと思います。

まずアルバムはダイナミックなバンドサウンドが迫力満点に耳元に押し寄せてくる「953」からスタート。ハードコアテイストの強い作風にまずは圧倒されるのですが、途中から突然、歌のパートもスタート。この歌もまた、不規則さゆえに楽曲に一種の緊迫感を与えています。この出だしの「953」はプログレ的な色合いも強く、イメージ的には70年代あたりのロックの雰囲気も感じます。

しかし一方、続く「Speedway」は、ミニマル的なリズム感を覚えるような作品に。ラップのように淡々と歌われるボーカルも含めてイメージとしてはバンドサウンドを主導としながらも、むしろエレクトロ的なテイストも感じさせる作風に。イメージとしてはクラフトワークも彷彿とさせました。

さらに「Reggae」はアバンギャルドな様相を帯びた作風になっていますし、「Near DT,MI」はダークな雰囲気でありつつシャウトの入ったボーカルにパンキッシュな要素を感じさせます。「bmbmbm」もトーカティブなボーカルで淡々と続くような展開が緊迫感を感じさせますし、「Ducter」も途中、トライバルでファンキーなリズムが登場してきたかと思えば、ラストはギターノイズで埋め尽くすサイケな展開となってきます。

基本的には変拍子のリズムを主導としつつ、ハードコア的な要素を感じさせるダイナミックなバンドサウンドを聴かせ、サイケやアバンギャルドの要素を取り入れた実験的なロックサウンド、とあえて一言で言えばそんな感じでしょうか・・・全然一言じゃありませんが・・・(^^;;全体的には70年代のプログレからの影響も強く感じる一方で、そう一言ではとらえきれない様々な音楽からの影響も感じられます。決して今風のサウンドといった感じではないものの、決して懐古趣味でもない、本当に独特なサウンドを感じさせるバンドです。

評判通り、今後さらに注目をあつめそうな刺激的でとてもおもしろいバンドの登場だと思います。決して人懐っこい感じではないのですが、聴き始めるとどんどんとはまっていきそうなそんな魅力があります。これからのロックシーンをかき回していきそうな予感が・・・今後が非常に楽しみです!

評価:★★★★★

| | コメント (0)

2019年7月21日 (日)

ジェットコースターのようなアルバム

Title:
Musician:女王蜂

メンバー全員、年齢、国籍、性別まで不明という謎にみちたプロフィールに奇抜なファッションがとにかくインパクトのあるバンド、女王蜂。2011年のメジャーデビュー後も確実にその人気を伸ばしてきました。ただ個人的には彼らのスタイルが非常におもしろいと思う反面、楽曲がミュージシャンイメージのインパクトに負けてしまっていたというのがいままでの彼らのアルバムの感想でした。

しかし、今回のアルバムではついに、楽曲のインパクトが彼らのミュージシャンとしてのインパクトに追いついてきました。今回の彼らのアルバムについて一言で例えるとまるでジェットコースターのようなアルバムと言っていいかもしれません。最初から最後まで次々と楽曲のスタイルが変わっていく構成に最後まで耳の離せない、非常にスリリングな作品になっていました。

アルバムの1曲目「聖戦」はストリングスも入って優雅な雰囲気にスタート。哀愁感たっぷりのメロとダイナミックなバンドサウンドは女王蜂っぽいものの、端整なサウンドには逆に意外性も感じさせます。ただ続く「火炎」は琴の音色で和風を施したサウンドと打ち込みのリズムのアンバランスさがユニークな和風なナンバーに展開。さらに「魔笛」では和風なメロを奏でながらもファンキーなリズムでギターリフ主導のロックなナンバーに、と次々と異なるタイプの作風の曲が展開されていきます。

女王蜂の真骨頂的なのが中盤の「先生」。ファルセットを用いた中性的なボーカルスタイルに「むすんでひらいて」のメロディーを入れつつ、妖艶さとエロチシズムを感じさせる和のテイストのロックが、まさに女王蜂らしい怪しさがむんむん楽曲全体から漂ってくる楽曲。禁断の恋愛を描いた歌詞にもゾクゾクさせられます。まさに彼らのアーティストイメージが楽曲とピッタリマッチした楽曲に仕上がっていました。

さらにジェットコースターのような展開は後半も続いていきます。タイトルチューンの「十」は静かな雰囲気の前半から、後半は打ち込みやストリングスも入れたダイナミックで分厚いサウンドに変化。そこから「Serenade」はディスコ風のダンサナブルなナンバーに一気に変化。さらに「HALF」ではハードロック風なギターリフを聴かせるヘヴィーなロックチューンへと展開していきます。

最後を締める曲が「Introduction」というタイトルなのがまたユニーク。こちらは比較的ポップでリズミカルなギターロックチューン。ただ、ポップな曲調の中でもどこか怪しげな雰囲気を感じさせる部分がチラホラ感じられるのが女王蜂らしいといった感じでしょうか。最後の最後まで耳を離せない展開が続くアルバムになっていました。

ただ、これほどバリエーションのある内容ながらもアルバム全体としては女王蜂らしさがしっかりと貫かれており、統一感をちゃんと感じられる作品になっていました。こちらは女王蜂というミュージシャン自体が強いインパクトを持っている影響でしょうか。彼らが演っていれば、どんな曲でもしっかりと女王蜂の曲になる・・・そんなインパクトありすぎるミュージシャンイメージが、バラバラな作風の今回のアルバムではうまい方向に作用していたように感じました。

いままで少々物足りなさを感じることの多かった彼らのアルバムでしたが、今回のアルバムは文句なしの傑作といえる出来だったように感じます。今回のアルバムでは、アルバムとして初のベスト10ヒットを記録しましたが、そんな人気の高さも納得の1枚でした。

評価:★★★★★

女王蜂 過去の作品
孔雀
蛇姫様
奇麗
失神
Q


ほかに聴いたアルバム

SICK(S)/BLUE ENCOUNT

BLUE ENCOUNTの新作は全6曲入りのミニアルバム。1曲目の「PREDATOR」は疾走感あるギターロックで垢抜けた感もあり非常にカッコいい楽曲に仕上がっていました。その後の楽曲に関しては1曲目と比べると若干平凡なギターロックという傾向にあったことは否定できないのですが、インパクトもありポップなメロをしっかりと聴かせる楽曲に仕上がっていたと思います。個人的にはもう一皮むけてほしい感のあるバンドなのですが、それなりに楽しむことの出来たミニアルバムでした。

評価:★★★★

BLUE ENCOUNT 過去の作品

THE END
VECTOR

Fetish/夜の本気ダンス

タイトル通り、ダンサナブルなロックが特徴的な夜の本気ダンスの3枚目となるアルバム。正直言って、いままで聴いた2枚のアルバムはあまりピンと来なかったのですが、今回のアルバムはメロディーにもインパクトが増し、またダンサナブルなビートと分厚いバンドサウンドのバランスも絶妙。ロックバンドとしてのダイナミズムさも兼ね備えてきており、いままでのアルバムの中では文句なしに一番楽しめました。ただ、サウンドにしろメロにしろ、あと一歩で傑作になりそうだったのにそこに至らなかったもどかしさを感じる面も。あと一歩、乗り越えてほしい壁も感じてしまったアルバムでした。

評価:★★★★

夜の本気ダンス 過去の作品
DANCEABLE
INTELLIGENCE

| | コメント (0)

2019年7月15日 (月)

あえてバンドサウンドで

Title:成長の記録 ~全曲バンドで録り直し~
Musician:KREVA

今年、ソロデビュー15周年を迎えたKREVA。そんな記念すべき年に年初から、9月連続リリースとしてシングルなどをリリースし続けています。本作はそんな記念リリースの第6弾となるアルバム。彼のソロの代表曲を集めたベストアルバムになるのですが、今回のアルバムでユニークなのはタイトルそのままとなるのですが、全曲、バンドによって録り直しが行われているということ。HIP HOPというとサウンドはいわばサンプリングやら打ちこみやらがメインとなるケースが多く、トラックがバンドサウンドというケースは珍しいのですが、そんな中であえてバンドサウンドで録り直しが行われているという点に非常にユニークなものを感じます。

今回のアルバムリリースに先立つインタビューにおいて、彼は「ここ5年くらい、音楽をやりたい気持ちはあるが言いたいことがない」という旨の発言をしています。言いたいことはあるものの、わざわざ曲にするようなものではないという気持ちになるケースが増えているそうで、そんな中でだからこそ本作では彼の曲の「音楽」という側面にあえて着目したアルバムということになるのでしょうか。

そんな中であらためて本作を聴くとKREVAの曲はポップであるがゆえにサラッと聴けてしまうのですが、一方では確かに彼の言いたいことがつまったメッセージ性の強い楽曲が多いということを、いまさらながら再認識させられます。存在感はある でも でも、決定打が出ていない気がした」と綴る「存在感」は、ブレイク後でも襲われる彼の焦りにようなものがリスナーにも伝わってきますし、現状に満足して成長することをやめてしまった人に対して鼓舞するメッセージを発している「かも」なども、ふと日々の日常に押しつぶされそうな時に聴くと、非常に心に響いてくるものがあります。

ただ、今回、こういう彼のラップを通じてのメッセージがより強く伝わってきている要因として、バンドサウンドによる録り直しが行われたから、という点が非常に大きいように感じます。基本的に今回の録り直しについては原曲のイメージそのままであり、大きな変更はありません。しかし生音を入れることにより、例えば「I Wanna Know You」はよりメロウさが増したように感じますし、「成功」もよりジャジーな雰囲気が強まり、楽曲の雰囲気がよりムーディーになったように感じます。特に「アグレッシ部」では今回、ストリングスの音が原曲以上に楽曲を盛り上げており、メッセージがさらに心に響いてきたように感じました。

「成長の記録」というアルバムタイトル通り、バンドサウンドによって録り直すことにより、楽曲がいずれも原曲よりもさらに成長を遂げたような印象を受ける、そんなアルバムになっていたと思います。ベスト盤は5年前にリリースしたばかりで、これが3作目になるのですが、楽曲が生まれ変わっており、非常に意義のあるアルバムだったと思います。

ちなみに、「言いたいことがない」と言いつつ、9月には待望のニューアルバムがリリースされるKREVA。KICK THE CAN CREWとしてもライブを中心に活動を続けており、なんだかんだ言っても積極的な音楽活動が目立ちます。ソロデビュー15年でまだまだ成長を続ける彼だけに、今後の活動も楽しみです。

評価:★★★★★

KREVA 過去の作品
心臓
OASYS
GO
BEST OF MIXCD NO.2
SPACE
SPACE TOUR
KX
嘘と煩悩
存在感

| | コメント (0)

より以前の記事一覧

その他のカテゴリー

DVD・Blu-ray その他 アルバムレビュー(洋楽)2008年 アルバムレビュー(洋楽)2009年 アルバムレビュー(洋楽)2010年 アルバムレビュー(洋楽)2011年 アルバムレビュー(洋楽)2012年 アルバムレビュー(洋楽)2013年 アルバムレビュー(洋楽)2014年 アルバムレビュー(洋楽)2015年 アルバムレビュー(洋楽)2016年 アルバムレビュー(洋楽)2017年 アルバムレビュー(洋楽)2018年 アルバムレビュー(洋楽)2019年 アルバムレビュー(邦楽)2008年 アルバムレビュー(邦楽)2009年 アルバムレビュー(邦楽)2010年 アルバムレビュー(邦楽)2011年 アルバムレビュー(邦楽)2012年 アルバムレビュー(邦楽)2013年 アルバムレビュー(邦楽)2014年 アルバムレビュー(邦楽)2015年 アルバムレビュー(邦楽)2016年 アルバムレビュー(邦楽)2017年 アルバムレビュー(邦楽)2018年 アルバムレビュー(邦楽)2019年 ヒットチャート ヒットチャート2010年 ヒットチャート2011年 ヒットチャート2012年 ヒットチャート2013年 ヒットチャート2014年 ヒットチャート2015年 ヒットチャート2016年 ヒットチャート2017年 ヒットチャート2018年 ヒットチャート2019年 ライブレポート2011年 ライブレポート2012年 ライブレポート2013年 ライブレポート2014年 ライブレポート2015年 ライブレポート2016年 ライブレポート2017年 ライブレポート2018年 ライブレポート2019年 ライブレポート~2010年 名古屋圏フェス・イベント情報 日記・コラム・つぶやき 映画・テレビ 書籍・雑誌 音楽コラム 音楽ニュース