the pillowsのアナザーベスト的な
Title:王様になれ オリジナルサウンドトラック
Musician:the pillows
ここのサイトでも以前紹介しましたが、9月に公開されたthe pillowsの結成30周年を記念して公開された映画「王様になれ」。今回紹介するのはその映画のサントラ盤です。映画の中でも数多くのthe pillowsの名曲が使われ、ライブシーンも使われてきましたが、今回のサントラ盤も劇伴のインスト曲を集めたようなスタイルではありません。映画の中で使用されたthe pillowsの曲を収録しているほか、ライブ音源も収録。さらに映画の中でも登場したストレイテナーのホリエアツシによる「ストレンジカメレオン」のカバーやGLAYのTERUとJIROによる「スケアクロウ」のカバーも収録されています。
さて、このアルバムで特に特徴的だったのが全21曲中12曲を占めるthe pillowsの楽曲たち。そのうち「LITTLE BUSTERS」と「この世の果てまで」はライブ音源が収録されているほか、「Sleepy Head」「ハイブリッドレインボウ」そして映画タイトルにもなった「王様になれ」は新録が収録されているなど、ファンにとってもうれしい内容となっています。
ただそれ以上にこのサントラ盤に注目したいのはその選曲。「ハイブリッドレインボウ」や最近、カバー曲がCMにつかわれて話題となった「Funny Bunny」、「LITTLE BUSTERS」や「I think I can」などといった代表曲が収録されている一方、アルバム収録曲でベスト盤などに収録されていない「MY FOOT」やカップリング曲「Sleepy Head」、さらにはライブ会場限定のシングル曲だった「どこにもない世界」などといった曲も収録され、単純なベスト盤とは異なるアナザーベスト的な選曲となっています。
今回のサントラ盤に使われたのは映画にも使用された曲なのですが、今回収録された楽曲の多くが、がんばっているのにどこか世間になじめず、上手くいかない人たちへのエールという映画のテーマに沿った歌詞の曲になっています。また、そのような歌詞のテーマはthe pillowsの中でも、おそらくファンに最も支持されているようなテーマであり、また彼らの歌詞の世界の「コア」とも言えるテーマ。今回収録されている曲は、そんなもっともthe pillowsらしさを体現化した曲を集めた選曲とも言える内容になっていました。
映画の中でヒロインが主人公にthe pillowsを知るために最初に聴くべきアルバムを貸していましたが、このアルバムはそんなアルバムの1枚に加わりそうな、the pillows初心者が彼らがどんなバンドが知るためにはうってつけの選曲のアルバムとなっていました。the pillowsも結成30年というベテランバンドとなり、代表曲も多くなってきましたが、そんな数多く代表曲の中で、特にthe pillowsらしい曲をギュッと1枚のアルバムに凝縮してセレクトした内容となっているため、the pillows初心者が最初に手を出すには最適の1枚と言えるでしょう。
ちなみにそんなおそらくthe pillowsらしさを最も体現化している曲のひとつである「ストレンジカメレオン」もthe pillowsバージョンで聴きたかったな…という点はちょっと残念。カバー2曲に関しても、どちらも素晴らしいカバーであることは間違いないし、映画の中でも効果的につかわれていたカバーなので、サントラに収録するのは当然の選択肢であるのですが…。
一方、ライブ音源に関しては、これまたthe pillowsというバンドのライブの魅力を知るという意味では絶好のセレクトと言えるでしょう。今回ライブ音源が使用されていたのは映画中で使用されていた、というのが最大の理由なのでしょうが、これにより彼らのライブの雰囲気も伝わってきます。まさに初心者が最初に聴くthe pillowsのアルバムとして実にふさわしい収録曲になっていました。
また劇伴曲のインストは全7曲。映画を見ていた方にとっては映画のシーンを彷彿とさせる曲ですし、また山中さわお作曲の曲だけにthe pillowsファンにとってもチェックしておきたい楽曲。もっとも楽曲的には1、2分程度の短い曲ですので、映画を見ていない方にとっても全体の流れを妨げない程度の長さとなっており、そういう意味では映画のサントラ盤でありがちな「映画を見ていない人にとっては退屈なインスト曲の連続」という感じにはなっていません。そういう点からも本作はthe pillows初心者にもお勧めできる内容と言えます。
といった感じで、まさにthe pillowsというバンドがどんなバンドか知るために最適なベスト盤的なアルバム。映画を見ていない方にも強くお勧めしたい作品になっていました。またファンにとっても新録やライブ音源もあり非常にうれしい内容に。そしてあらためて彼らの素晴らしさを実感できる、そんなアルバムでした。
ちみに映画を見た時の感想はこちらから。
評価:★★★★★
the pillows 過去の作品
LOSTMAN GO TO YESTERDAY
PIED PIPER
Once upon a time in the pillows
Rock stock&too smoking the pillows
OOPARTS
HORN AGAIN
トライアル
ムーンダスト
Across the metropolis
STROLL AND ROLL
NOOK IN THE BRAIN
REBROADCAST
劇場版「フリクリ オルタナ/プログレ」Song Collection「Fool on CooL generation」
ほかに聴いたアルバム
Melodrive/東京カランコロン
底抜けに楽しいポップチューンが大きな魅力のポップバンド、東京カランコロン。2017年からインディーレーベルのTALTOに活動を再開していますが、本作はミニアルバムとしてはTALTOで2枚となるニューアルバムです。本作もリズミカルでテンポのよい楽曲が多いのですが、一方でドリーミーなサウンドも目立ち、軽快なポップチューンがメインだったいままでの作品からバンドとして一歩、新たな歩みを開始したアルバムになっています。ただ、今回のアルバムは残念ながらいままでの彼女たちの作品で聴くことが出来たインパクトある底抜けの明るいポップチューンにはあまり出会えず。ポップアルバムとしては良質な内容だとは思うのですが、東京カランコロンとしての良さがあまり出ているとは言いがたいアルバムになっていました。
評価:★★★★
東京カランコロン 過去の作品
We are 東京カランコロン
5人のエンターテイナー
UTUTU
カランコロンのレンタルベスト
noon/moon
東京カランコロン01
わすれものグルーヴィ
season/マカロニえんぴつ
男性4人組ポップバンド、マカロニえんぴつのミニアルバム。本作はBillboard Hot Albumsでもオリコンチャートでのベスト10ヒットを記録し、一躍ブレイクを果たしました。実は彼ら、所属レーベルは前述の東京カランコロンと同じTALTO。東京カランコロンのライブを見た時に、一度彼らのステージも見たことあります。良質なポップソングを奏でるバンドながら、これといった特徴は薄いなぁ、という印象があったのですが…今回のオリジナルアルバムに関しても正直感想は一緒。良質なポップソングを奏でるバンドなのですが、これといった特徴もなく、なぜこれだけブレイクできたのか、若干不思議にも感じました。悪いバンドではないので、これからどう成長していくのか注目したいところです。
評価:★★★★
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