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2019年12月22日 (日)

バラエティー富んだエレクトロサウンド

Title:Crush
Musician:Floating Points

今回紹介するミュージシャンは、ロンドンを拠点に作曲家、プロデューサー、さらにはDJとして活躍を続けているミュージシャン、Floating Points。今年、サカナクションとサマソニのコラボレーションイベント「NF in MIDNIGHT SONIC」にDJとして参加。また来日公演も決定するなど、日本でも確実にその知名度を上げてきています。2019年にはColdcutのメンバーが立ち上げた、ロンドンのクラブ系のインディーレーベル「Ninja Tune」と契約。本作は同レーベルからリリースされる第1弾アルバムとなりました。

楽曲的には比較的、音数を絞ったシンプルでエッジの効いたエレクトロサウンドを力強いビートに載せて展開していくサウンド。ただ、今回13曲入りのアルバムなのですが、13曲それぞれが別の顔を持った非常に凝ったバラエティーに富んだ作風に展開していっているのが大きな魅力。前作「Elaenia」はジャズやクラシック、ブラジリアンポップの要素まで入れた作風…と紹介されていた記事を読んだ(アルバムは聴いていませんが…)のですが、今回のアルバムも、全体的にはさすがに前作ほどのバラバラな音楽性は感じなかったのですが、多様な作風が魅力に感じました。

例えば1曲目「Falaise」から、エレクトロサウンドの中にどこかエキゾチックな雰囲気を感じさせる楽曲からスタート。続く「Last Bloom」は強いリズムに様々なエレクトロサウンドが重なる、典型的なビートミュージックに仕上がっていますし、「Anasickmodular」もビート感あるエレクトロサウンドの中に流れる、ストリングスのような伸びやかな音が一種の優雅さとスケール感を醸し出しています。

中盤の「LesAlex」もテンポのよいリズミカルなナンバーで、こちらはテクノなダンスチューン。ライブで聴いたら非常に気持ちよさそうなナンバー。「Bias」は不気味な雰囲気のエレクトロサウンドが奏でるメロディーが妙な哀愁感を醸し出している点が印象的ですし、「Sea-Watch」も悲しい雰囲気が楽曲全体に流れるエレクトロチューン。ほかにもわかりやすいリズムのダンサナブルな四つ打ちナンバーから、複雑なサウンドで挑戦的な作風を感じるナンバーまで様々なバリエーションを感じさせます。

ただ、全体的には決してわかりやすいメロディーラインが流れている訳ではないのですが、テンポのよいリズムが流れている曲も多かったり、意外と哀愁味を帯びたサウンドが印象的だったりした結果、アルバム全体としては意外とポップで聴きやすいアルバムという印象を受ける作品になっていました。アルバム全体で50分というちょうどよい長さも聴きやすい大きな要素ですし、そんな中でもバリエーション富んだ作風のため、最初から最後まで全くダレることなく最後まで楽しめるという点もポップに感じさせる大きな要因でしょう。

エレクトロやビートミュージックが好きな方なら無条件でお勧めできそうな、良い意味でポップさを感じさせるアルバムだったと思います。「NF」での来日もありましたし、さらには来日公演も控えているみたいで今後、日本でもさらに注目を集めそうなミュージシャン。今、注目しておきたいエレクトロミュージシャンなのは間違いないでしょう。

評価:★★★★★

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