多彩なゲストが参加
Title:Juice B Crypts
Musician:BATTLES
デビュー以来、唯一無二の音楽性で多くの音楽ファンから高い支持を集めているアメリカのエクスペリメンタルロックバンド、BATTLES。今回リリースされた約4年ぶりのニューアルバムですが、まず大きな特徴として非常に多くのゲストが参加したアルバムとなっていました。Yesの初代ボーカリスト、Jon Andersonに、ポストパンクバンドLiquid LiquidのSal Principato、台湾のエクスペリメンタルロックバンド落差草原WWWWやアメリカはシアトル出身のHIP HOPデゥオ、Shabazz Palacesなど、多彩なミュージシャンがズラリと並び、いままでにない賑やかなラインナップのアルバムに仕上がっています。
まず全体的に言えば、ダイナミックなバンドサウンドで力強い演奏を聴かせるスタイルは健在。さらにエレクトロサウンドを入れつつ、複雑な構成になっているスタイルも、BATTLESらしさを感じます。そんな彼ららしさを強く感じるのは表題曲の「Juice B Crypts」。ダイナミックなバンドサウンドにエレクトロの要素が入っている、いかにも彼ららしい楽曲なのですが、エレクトロサウンドにどこかユーモラスな要素も入る点が耳を惹く楽曲となっています。
このエレクトロサウンドにユーモラスなセンスを感じるのも今回のアルバムの特徴に感じられます。前述の表題曲に続く「Last Supper On Shasta Pt.1」もまさにそんなエレクトロサウンドにダイナミックなバンドサウンドを加えつつ、どこかユーモラスな雰囲気を感じさせる作品。その他の楽曲にしても、複雑な構成のサウンドを用いながらも、どこかユーモラスと、そしてそれに伴うポピュラリティーを感じさせる点が今回のアルバムの大きな魅力となっていました。
また、様々なゲストが参加したことにより、楽曲のバリエーションがグッと増えたのも今回のアルバムの大きな特徴でしょう。アメリカの女性シンガーであり、またマルチ楽器奏者であるXenia Rubinosが参加した「They Played It Twice」も彼女の伸びやかな歌声と、アバンギャルドさを感じるサウンドが魅力的。Jon Andersonに落差草原WWWWが参加した「Sugar Foot」もいきなり中国語のセリフからスタートし、エキゾチックさを醸し出しつつ、後半には、日本的な祭囃子のようなビートが飛び出したりしてきて、非常にユニークな作風になっています。
Sal Principatoが参加した「Titanium 2 Step」もファンキーなリズムが耳を惹く楽曲になっていますし、Shabazz Palacesが参加した「IZM」もBATTLESらしいダイナミックなバンドサウンドにラップが重なる楽曲になっています。さらに日本限定のボーナストラック「Yurt」には太鼓芸能集団「鼓童」のメンバー・住吉佑太が参加。音数を絞り空間を聴かせるようなサウンドに、和風の太鼓のリズムと横笛の音色が響く日本的な楽曲に。まあ、日本でのリリースを意識した作品なのですが、ボーナストラックにしておくには少々もったいない、非常に魅力的な楽曲に仕上がっています。
BATTLESらしさはそのままに、多彩なゲストが参加することにより音楽性がグッと広がったアルバムになっていた本作。ユーモラスな作品も含めて、意外とメロディアスでポピュラティーも感じさせるメロディーラインが入っているのも大きな魅力。今回、広がった彼らの音楽性が今後どのように展開していくのか、これからも楽しみになってくる作品でした。
評価:★★★★★
BATTLES 過去の作品
MIRRORED
GLOSS DROP
La Di Da Di
ほかに聴いたアルバム
Ghosteen/Nick Cave&The Bad Seeds Cave
オーストラリア出身のシンガーソングライターによるNick Caveによる「Nick Cave&The Bad Seeds Cave」名義のニューアルバム。ピアノやストリングスを使った荘厳な雰囲気のサウンドに、語り掛けるように美しく歌い上げるボーカルが魅力的。御年62歳のベテランシンガーらしく、声には張りがない部分もありますが、その分、渋さを感じさせるボーカルになっており、そんなボーカルと荘厳なサウンドがマッチ。決して派手さはないのですが、じっくりと聴き入りたいアルバムに仕上がっていました。
評価:★★★★
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