ユニークなMVも話題に
Title:獄至十五
Musician:打首獄門同好会
強烈なバンド名がまずは強いインパクトを残すロックバンド、打首獄門同好会。デス声も繰り広げるハードコアなヘヴィーロックバンドながらも、お米のおいしさをそのまま歌にした「日本の米は世界一」や、タイトルそのまま「はたらきたくない」「布団の中からでたくない」など、日々のくらしの中で感じたことを素朴に歌詞にのせたスタイルが特徴的で、サウンドと歌詞の大きなギャップがインパクトとなっています。特にそんなコミカルな歌詞をそのまま漫画などで表現したMVがYou Tube上で大きな話題となり、どちらかというとネット主導で人気を確保してきました。
そんな彼らもなにげに結成15年目の中堅バンド。その結成15年目を記念してリリースされたベストアルバムが本作です。とはいえ彼ら、10周年の時もベストアルバムをリリースしているそうで、本作はその続編。2014年にリリースされた前作「10獄〜TENGOKU〜」以降にリリースされた曲を集めたベスト盤となっています。そのため、オールタイムベストではなく、ある意味、わずか5年の間にリリースされた曲だけ収録された内容なのですが、主にネット上で話題になった曲はこの5年にリリースされた曲ばかりで、代表曲はほぼ網羅されたベスト盤、と言ってもいい選曲になっています。
さて、ヘヴィーなサウンドとコミカルな歌詞のギャップが特徴、というとSEX MACHINEGUNSと方向性はかぶります。彼らも出身地である愛媛のみかんについて歌った「みかんのうた」が代表曲ですし、同作ではやはり「愛媛のみかんは世界一」と同じようなことをシャウトしています。そういう意味では彼らのスタイルは若干、マシンガンズの二番煎じと感じる部分もあるのですが、日常というよりももっと広いネタを題材にしているマシンガンズに対して、彼らは本当に日常の中で素朴に感じた出来事を歌にしているという点で異なった方向性を示しています。
その結果としてリスナーからすると非常に共感度の強い歌詞が多いのが特徴的で、冷蔵庫にとっていたプリンを食べられた、という恨みを延々と歌った「TAVEMONO NO URAMI」だったり、歯が痛いけど虫歯じゃないと言い聞かせている「歯痛くて」だったり、題材的にはたわいないネタなのですが、聴いていて、わかるわかると思ってしまうような曲が並びます。またサウンド的にも「布団の中からでたくない」のように、布団の中に入っている時はボッサ風のほんわかした曲調で歌いつつ、布団から出た瞬間にヘヴィーなデス声で寒さを強調するなど、彼らのバンドスタイルをうまくいかしたコミカルな作風も印象に残ります。
そんな彼らの曲を今回のベスト盤では楽しく聴くことが出来たのですが…ただ、後半になるとちょっと飽きてきてしまいました。その理由としては明確で、はっきり言うとネタがかぶりすぎ。例えば「島国DNA」も「日本の米は世界一」も、単純に食事が上手いという叫ぶだけのネタでかぶっていますし、「はたらきたくない」と同じ方向性の「だらだらしたい」なんて曲もあります。「なつのうた」と「布団の中から出たくない」も「暑い」と「寒い」を変えただけのネタ。わずか5年の間の作品なのですが、ネタとしてちょっとかぶりすぎでは?
確かに純粋にユニークな歌詞の曲を楽しめたのは間違いないのですが、今後のことを考えると、このままではちょっと辛いかも、とも感じてしまいました。ネタ被り上等!!と突き進む手もあるにはあると思うのですが、それを差し引いても、もうちょっとネタのバリエーションを増やした方が…。彼らの魅力も感じられた一方、問題点も見えてしまったベスト盤でした。
評価:★★★★
打首獄門同好会 過去の作品
そろそろ中堅
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