2019年最大の注目盤
Title:Traveler
Musician:Official髭男dism
2019年の音楽シーンを代表するミュージシャンと言えば、間違いなく彼らOfficial髭男dismでしょう。ご存じの通り、今年彼らがリリースした「Pretender」が大ヒットを記録。5月リリースのこの曲はいまだにチャートの上位をキープしています。さらに彼らがすごいのは、その後リリースされた「宿命」「イエスタデイ」も「Pretender」同様のロングヒットを続けている点。ベスト10のうち3曲をヒゲダンが独占し続けるチャートが続いていますし、特にBillboard Hot 100ではストリーミングチャートにおいてヒゲダンの3曲がベスト3を独占する事態が続いています。
そんな中、ついにリリースされたオリジナルアルバムは、まさに2019年最大の注目盤と言えるでしょう。特に、このアルバム、冒頭にいきなり「イエスタデイ」「宿命」と大ヒット曲を並べてきています。さすがに「Pretender」はアルバム後半に配置されており、アルバム全体のバランスを保ってはいますが、インパクトあるヒット曲2曲をいきなり冒頭に持ってくるあたり、この2曲に頼らなくても、最後まで飽きさせずにアルバムを聴かせることが出来るという、彼らの自信を感じさせます。
実際、「イエスタデイ」「宿命」の後からも彼らの勢いを感じさせるバラエティー富んだポップチューンが並びます。ちょっとファンクの要素も入ったダンスチューン「Amazing」にミディアムテンポでムーディーな「Rowan」、シティポップ風の「最後の恋煩い」、ホーンセッションも入って分厚いサウンドも特徴的なロッキンなチューン「FIRE GROUND」など、バラエティー富んだ展開が続き、そして2019年を代表するヒットチューン「Pretender」に流れ込みます。この様々なタイプの音楽性から彼らの音楽的な素養の深さを感じます。
そんな感じで、特にブラックミュージックからの影響を含め、Official髭男dismからは音楽的な深いバックボーンを感じる部分が少なくありません。ただ一方、比較的シンプルなバンドサウンドでメロディーラインもインパクトあってわかりやすいメロディーライン。楽曲的には間違いなくJ-POPの範疇に入る楽曲になっています。前作「エスカパレード」の感想にも書いたのですが、個人的にはもっとソウルやR&Bの要素を前に出した方がおもしろいのでは?と思ってしまいますが、「Pretender」の大ヒットでもわかるように、そういったジャンルは隠し味的な感じで抑えておき、J-POP的なわかりやすさを前に押し出した方が多くのリスナーの支持を得られるのでしょう。今回のアルバムに関しては、多くのリスナーの支持を得られている彼らならではの、ある種の勢いを強く感じました。
もっともJ-POPのミュージシャンというと、なんとなくロックっぽい音が鳴っているルーツレスなバンドが多い中、彼らに関してはわかりやすいポップなメロの向こうに間違いなくソウルやR&B、ファンクの要素を感じられます。そしておそらく今後の彼らにとってそういう深い音楽的な素養が大きな武器になるでしょう。そういう意味でもまだまだ彼らの可能性は大きく広がっているように感じます。2019年を代表するミュージシャンとなった彼らですが、来年以降もその勢いは続きそうです。
Official髭男dismというと、シングル「ノーダウト」がフジテレビの月9ドラマの主題歌になったりと、ここ最近、ブレイクの最右翼と言われ続けてきました。今年はまさにその期待に応える結果が出せた訳ですが…ただ、それにしてもここまで大ヒットになるとは思いもしませんでした。しかし、このアルバムもそんな彼らの今の勢いを強く感じさせる傑作に仕上がっていました。これからの彼らの活躍も楽しみになってくる、そんな1枚でした。
評価:★★★★★
Official髭男dism 過去の作品
エスカパレード
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