相変わらずの自由度の高さ
Title:UC100W
Musician:UNICORN
今年は、なんとUNICORNは100周年!…といってももちろん彼らが100年も活動している訳ではなく、彼らが再結成して10周年、ABEDONが加入して今のメンバーとなった初のアルバム「服部」から30周年、そして川西幸一が還暦を迎えて60周年で、合わせて100周年…という、ある意味彼ららしい謎?な足し算によって100周年を迎えた彼ら。既に今年に入って「UC100V」というアルバムをリリースしましたが、そこからわずか半年、早くもニューアルバムがリリースされました。
再結成してからの彼らはメンバーそれぞれがおのれの個性をフルに発揮したバラバラで自由度の高い作風が大きな魅力でした。その傾向は、特にここ最近のアルバムに関してより顕著にあらわれており、自由度がますます高まったように感じます。ABEDON作曲のエレクトロチューン「M&W」からはじまり、奥田民生作曲による「チラーRhythm」、そしてあいかわらずのハードロック志向のテッシーによる「That's Life」、さらにEBI作詞作曲「TYT」はEBIらしい哀愁感の強い歌謡曲風のナンバーと、序盤の4曲だけピックアップしてもすべてバラバラ。それぞれの個性が走りまくっている曲が並んでいます。
その後も「BLUES」は奥田民生らしいブルースロックなサウンドに川西幸一のラップ風のボーカルがのるユニークなスタイルですし、ABEDONによる「D-D-D-,Z-Z-Z-」はダイナミックでサイケの要素も取り入れたナンバーと、各々のメンバーが自分の音楽的嗜好をフルに発揮した曲が並んでいます。
こういう自由度の高い傾向は再結成後の彼らの作品に共通しているので、そういう意味では平常運転なのですが、ただここ最近ではその自由度がより強くなってきており、良くも悪くも売れることを無視したような作風になってきているように感じます。その結果としてアルバムとしてもバラバラな感が強くなっていますし、今回のアルバムに関しては純粋に音楽的な出来を考えた際に、正直言うと、悪い意味でまとまりがなく、さらに楽曲的な核となるような曲がない結果、自由度が高すぎてアルバムの内容がぼやけてしまったアルバムになっていたように感じます。
特に再結成後の自由度の高いアルバムに関しては、メンバー各人が自由になりつつも、要所要所でファン以外にもアピールできるような真面目につくったポップチューンが入っており、それが核となりアルバムを引き締めていました。そんな曲を通常は奥田民生かABEDONあたりが作ってきたのですが、今回のアルバムに関してはむしろ奥田民生やABEDONが率先して自由度の高い曲を作ってきています。あえていえばラストに収録されているシングル曲でもある「DENDEN」がアルバムを引き締めている感があるのですが、アルバム最後の曲でもあり、ちょっと時すでに遅しの感がありました。
今回のアルバムも素直に聴いていて楽しいアルバムであることは間違いないのですが、ただ自由度が高すぎて少々暴走気味かなぁ、という感が否めません。各人自由な作風に走るのは彼らの大きな魅力であり、今後も続けてほしいのは間違いないのですが、もうちょっと全体を引き締めるような楽曲も何曲か収録してほしいなぁ。いいアルバムだとは思うのですが、ちょっと彼ららしさが行き過ぎた感も否めない、そんな1枚でした。
評価:★★★★
ユニコーン 過去の作品
シャンブル
I LOVE UNICORN~FAN BEST
URMX
Z
ZII
Quarter Century Single Best
Quarter Century Live Best
イーガジャケジョロ
ゅ13-14
半世紀No.5
D3P.LIVE CD
UC100V
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