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2019年12月14日 (土)

2つの異なるスタイルで

今年、インディーズデビューから20年が経過(!)。デビュー当初の見立てと反して、未だに根強い人気で積極的な活動を続けるPOLYSICS。そんな彼らが、今年、なんとPOLYSICSと並行し、The Vocodersというバンドを立上げ、ポリと同時に活動を開始しました。この2つのバンド、例えば同じライブで前半がポリ、後半がThe Vocodersというスタイル…ではなく、完全に別バンドとして活動。ライブツアーもポリ、The Vocoders別々の会場を回り、ついにPOLYSICSとThe Vocoders同時に2枚のアルバムをリリースしました。

Title:In The Sync
Musician:POLYSICS

まずこちらが約2年ぶりとなるPOLYSICSのニューアルバム。こちらはいつも通りのPOLYSICS。イントロ的な1曲目「Broken Mac」に続いてはじまる「Piko」はタイトルからしてもポリらしいのですが、急かすようなリズムがコミカルなパンキッシュなナンバー。続く「Check Point」はシンセの音とギターサウンドで軽快かつハイトーンのボーカルもまじえてユニークに展開する、これまたPOLYSICSらしいポップチューンと続いていきます。

ただ今回のアルバムは特にThe Vocodersとの違いを意識したのか、POLYSICSのスタイルの中でも特にシンセの音とバンドサウンドでパンキッシュなサウンドを聴かせるようなナンバーが並んでいました。その後も「It's Noisy」のようなタイトル通りのノイジーギターでパンキッシュな曲や、ハードロックなギターでダイナミックに聴かせる「Frame On」のようにメロディーを聴かせる歌モノのスタイルではなく、アバンギャルドさも垣間見せつつコミカルさも感じるそのサウンドを聴かせるスタイルの曲が続きます。

今回のアルバムの中で唯一の「歌モノ」だったのが最後を飾る「Part of me」。実はこの曲、The Vocodersバージョンを同時に発表しており、両者の聴き比べが楽しめる楽曲。POLYSICSのアルバムの最後を飾りつつ、The Vocodersのアルバムの1曲目にもってくるなど、両者のつながりを意識したユニークな構成に。ポリのバージョンの方はメロを前に押し出しつつ、バンド色も強い楽曲になっていました。

The Vocodersとの差を明確にしようとした結果、歌モノでポップな楽曲が少なくなり、ポリのパンキッシュな側面が強調された今回の作品。ポリらしい作品には仕上がっていたのですが、個人的にはもうちょっとポップな歌モノが聴きたかったかも。ただ、The Vocodersと合わせて聴いてほしいという感じなのでしょうか。ある意味、POLYSICSの特色がより強調されていたアルバムに仕上がっていました。

評価:★★★★

POLYSICS 過去の作品
We ate the machine
We ate the show!!
Absolute POLYSICS
BESTOISU!!!
eee-P!!!
Oh!No!It's Heavy Polysick!!!
15th P
Weeeeeeeeee!!!
MEGA OVER DRIVE
ACTION!!!
HEN 愛 LET'S GO!
HEN 愛 LET'S GO! 2~ウルトラ怪獣総進撃~
What's This???
Replay!
That's Fantasitc!

Title:1st V
Musician:The Vocoders

そしてこちらがThe Vocodersのデビューアルバム。アルバムタイトルもジャケットも、POLYSICSの1stアルバム「1st P」を意識したような作品に仕上がっています。The Vocodersは「カフェテクノグループ」を自称しているバンドのようで、演奏スタイルもポリとは変えてきています。おなじみ黄色のつなぎにサングラスというスタイルのポリに対して、The Vocodersは赤いスーツでサングラスはなし。ライブも基本的に座って聴くスタイルのようで、ライブハウスで暴れさせるというスタイルのPOLYSICSのライブとは大きく異なります。

楽曲的にもバンド名の通り、メンバー全員がボコーダーを使い歌うスタイル。今回、POLYSICSとの共演となっている「Part of me」ではパンキッシュなポリのバージョンと比べると、BPMもちょっと落として、おとなしく聴かせるスタイルになっています。また、この曲に限らず「Catch On Everywhere」「New Melody」「Shizuka is a machine doctor」などPOLYSICSの曲のカバーも数多く収録。いずれもテンポを落としてパンク色を薄め、一方、テクノポップ色を強くした作風に仕上げています。

パンキッシュなバンドサウンドメインのPOLYSICSとはまた異なる音楽性を打ち出すことにより、ポリではできなかったスタイルに挑戦したバンド…といった感じなのですが、ただ率直に言うと、このスタイル、本当にポリでやれなかったのかなぁ、といった印象は受けてしまいます。基本的に打ち込み+バンドサウンドというスタイルはポリと一緒ですし、ポリのカバーにしても雰囲気は変えているものの原曲と比べてガラッと感じが変わった、という感じではありません。もっとも、楽曲だけではなくライブスタイルもPOLYSICSと大きく変えており、そういう側面も含めてPOLYSICSとしての活動と区別したかったのかもしれませんが。

ただ、全員がボコーダーで歌うというスタイルを取った結果、メロディアスなポップソングを目指しながら、いまひとつ歌が印象に残らない内容になってしまったのは残念。あえてボコーダーを使ったのもポリとは異なる特徴を付けたかったからなのでしょうか。歌モノでありつつボーカルにエフェクトをかけるスタイルを今後、どう生かしていけるのか…今後の課題のように感じました。

評価:★★★★


ほかに聴いたアルバム

Black Map/ストレイテナー

途中、ベスト盤のリリースを挟みつつ、オリジナル作としては「Future Soundtrack」以来、約1年4作ぶりとなる新作のミニアルバム。相変わらず曲によって出来栄えに差があり、1曲目「STNR Rock and Roll」は文句なしでかっこいいものの、日本語詞となった2曲目以降は悪くはないけど、シンプルで平凡なギターロックといった印象が。決して悪いわけではないのですが、いまひとつストレイテナーとしての個性を感じられなかったミニアルバムでした。

評価:★★★★

ストレイテナー過去の作品
Immortal
Nexus
CREATURES
STOUT
STRAIGHTENER
21st CENTURY ROCK BAND
Resplendent
Behind The Scene
Behind The Tokyo
COLD DISC
Future Soundtrack
BEST of U -side DAY-
BEST of U -side NIGHT-

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