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2019年12月24日 (火)

前作と同じレコーディングで生まれた作品

Title:PYROCLASTS
Musician:Sunn O)))

アメリカのドゥーム・メタルバンド、Sunn O)))のニューアルバム。今年4月にアルバム「Life Metal」をリリースしたばかりの彼らですが、それからわずか半年。早くもニューアルバムがリリースされました。とはいっても今回のアルバム、前作とは全く異なる文脈の中でリリースされた作品、という訳ではなく、前作「Life Metal」でのセッションの音源が元となったアルバム。そのため、前作同様、プロデュースはかのスティーブ・アルビニが手掛け、彼のスタジオ、Electrical Audioでレコーディングを行った作品となっています。

そういうこともあり、楽曲的な方向性としては前作「Life Metal」から大きな変化はありません。圧倒的な音の壁がこちらにのしかかってくるような、そんな感覚が襲ってくるようなアルバムになっています。43分という長さの作品にもかかわらず、わずか4曲入り。1曲あたり10分以上の長さの楽曲が4曲並ぶ内容。長尺の中にただただ音の世界に圧倒される、そんな作品に仕上がっています。

基本的には4曲とも、同じピッチのギターノイズが延々と続いていく内容。ただ、そんな中でも1曲目「Frost」は重いメタリックなノイズが展開していく楽曲。続く「Kingdoms」は同じメタリックな作風ながらも、どこかメロディアスな感覚を覚えるから不思議です。3曲目「Ampliphaedies」は同じギターノイズながらも、もうちょっと高音域が展開していく楽曲になっており、最後の「Ascension」も3曲目同様の比較的高めのピッチのギターノイズが延々と続く作品になっています。

そんなヘヴィーなギターノイズが展開していく作品ながら、そのノイズ音には不快さは全くなく、ある種のポピュラリティーすら感じさせる内容になっています。そういう意味では楽曲に難解さはほとんど感じず、意外と広いリスナー層が楽しめそうな楽曲に。確かにわかりやすいメロディーラインはないのですが、そのギターノイズに圧巻されているうちに、いつの間にかはまってしまう、そんなアルバムではないでしょうか。

ちなみに今回のアルバムは、「Life Metal」のレコーディングうち、1日の最初と最後に行われたある種、音慣らし的なセッションの中で生まれた音源を収録した作品だそうで、そういう意味では「Life Metal」の習作とも言える作品ですし、また、同作のアウトライン的な作品と言っていいかもしれません。また、そのためでもあるのでしょうが、ギターノイズの中にボーカルが入ったり、シンフォニックな音が入ったりと、それなりにバリエーションのあった「Life Metal」に比べると、こちらは最初から最後まで一貫してギターノイズの嵐。そういう意味では楽曲としての構成が整っているのは前作の方と言えるかもしれません。

ただ本作も、ただただギターノイズのみで構成された作品は、ある意味Sunn O)))というバンドだけで作り上げられた音であり、彼らのコアの部分が出た作品と言っていいかもしれません。また、音慣らし的なセッションの中で生まれたからこそ、彼らの本質的な部分が顔を覗かせているとも言えるかもしれません。純粋にアルバムの出来としては前作の方が上かもしれませんが、本作も間違いなく傑作と言えるアルバム。その音の世界に圧倒されてください。

評価:★★★★★

Sunn O))) 過去の作品
Life Metal

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