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2019年12月

2019年12月31日 (火)

2019年ベストアルバム(暫定版)

今年も残すところ1時間弱となりました。毎年恒例の年間私的ベストアルバム暫定版。まだ2019年に発売されたアルバムの中で聴いていないものもあるため、正式版は例年通り2月はじめに発表する予定ですが、まずはその候補を紹介します。

邦楽編

まずは上半期のベスト5を振り返ります。

1位 PUNK/CHAI
2位 30/電気グルーヴ
3位 834.194/サカナクション
4位 三毒史/椎名林檎
5位 underground/SPARTA LOCALS

これに続く下期のベスト盤候補は・・・

THA BLUE HERB/THA BLUE HERB
LOLIPOP SIXTEEN/SOLEIL
新しい人/OGRE YOU ASSHOLE
燦々/カネコアヤノ
音の門/国府達矢
スラップスティックメロディ/国府達矢
スターシャンク/Cocco
見っけ/スピッツ

うーん、正直言うと、もちろんここに並べたアルバムはいずれも傑作アルバムであることは間違いないのですが、全体的には年間ベストクラスの傑作は少なかった印象が。悪い意味で10枚選ぶのに苦労しそうな結果だったように思います。ただ、まだ聴いていない名盤候補も何枚かあるため、そちらに期待したいところなのですが・・・さてさて。

洋楽編

こちらもまずは上半期のベスト5。

1位 Live In London/Mavis Staples
2位 When I Get Home/Solange
3位 Africa Speaks/SANTANA
4位 Weezer(Black Album)/Weezer
5位 Patience/Mannequin Pussy

これに続く下期のベスト盤候補は・・・

Duck/Kaiser Chiefs
i,i/Bon Iver
Basking In The Glow/Oso Oso
Cuz I Love You/Lizzo
Norman Fucking Rockwell!/Lana Del Rey
Jaime/Brittany Howard
Two Hands/Big Thief
Jesus Is King/Kanye West

こちらも邦楽編同様、ここにあげた作品は文句なしに名作揃いですが、年間ベストクラスは例年に比べて少なかった印象も。ただ、邦楽編よりは、まだ、10枚選ぶのは苦労しなさそうな印象もあります。正直、邦楽洋楽ともに、突出した1枚というのは少なかったような印象も受けます。ただ、洋楽編もまだ聴きのがしている作品もあるため、1月中に残ったアルバムもチェックしていきたいところ。さて、今年の10枚はどうなるか・・・?

それでは、みなさん、よいお年を!!

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2019年12月30日 (月)

2019年ライブまとめ

今年も残るところはあと2日。恒例のライブまとめです。

1/23(水) Superorganism JAPAN TOUR 2019(名古屋CLUB QUATTRO)
2/5(火) TEENAGE FANCLUB JAPAN TOUR 2019(名古屋CLUB QUATTRO)
2/21(木) ZUKUNASI LAST ONEMAN SHOW!!!~ズクナシ出し尽くし大感謝祭~(渋谷CLUB QUATTRO)
3/8(金) the pillows REBROADCAST TOUR(名古屋ダイアモンドホール)
5/16(木) NOEL GALLAGHER'S HIGH FLYING BIRDS JAPAN TOUR 2019(愛知県芸術劇場大ホール)
6/4(火) 斉藤和義 弾き語りツアー2019 "Time in the Garage"(名古屋国際会議場センチュリーホール)
7/2(火) 長島温泉 歌謡ショウ 大石まどかショウ(長島温泉 湯あみの島)
8/1(木) 湯~とぴあ宝 夏祭り(湯~とぴあ宝駐車場(笠寺))
8/8(木) あいちトリエンナーレ2019 サカナクション 暗闇-KURAYAMI-(愛知県芸術劇場大ホール)
8/22(木) あいちトリエンナーレ2019 Chilla: 40 Days Drumming&円頓寺デイリーライブ(butaji)(なごのアジール/円頓寺駐車場)
9/5(木) ベッド・イン TOUR 2019「男女6人秋物語」(名古屋JAMMIN')
9/6(金) あいちトリエンナーレ2019 Chilla: 40 Days Drumming&円頓寺デイリーライブ(奇妙礼太郎)(なごのアジール/円頓寺駐車場)
9/13(金) あいちトリエンナーレ2019 円頓寺デイリーライブ(環ROY)(円頓寺駐車場)
9/27(金) TOUR「NUMBER GIRL」(名古屋ダイアモンドホール)
10/4(火) フラワーカンパニーズ presents DRAGON DELUXE DELUXE(名古屋国際会議場センチュリーホール)
10/11(金) あいちトリエンナーレ2019 円頓寺デイリーライブ(七尾旅人)(円頓寺駐車場)
11/25(月) COALTAR OF THE DEEPERS 25TH ANNIVERSARY "THE VISITORS FROM DEEPSPACE"TOUR 2019(名古屋アポロベイス)
12/10(火) レキシTOUR2019 アナザーレキシ~あなたの知らないレキシの世界~(名古屋国際会議場センチュリーホール)

今年は結構、ライブに通ったなぁ・・・と感じた1年。特にいろいろと話題となったあいちトリエンナーレの関連イベントでなかなかお得なライブが何度も見れたのはうれしかったです。そんな中でベスト3は・・・

3位 レキシ@アナザーレキシ~あなたの知らないレキシの世界~

なにげに2年連続の3位(笑)。開催日当日の、それも午後3時にチケットを確保して急きょ見ることの出来たライブ。「あなたの知らないレキシの世界」ということで、昨年のライブと比べるとネタは抑えめ。「音楽」の側面に重点を置いたステージだったのですが、それでもやはりネタは要所要所に仕込まれており、最後はやはりレキシらしいライブだったなぁ、というエンタテイメント性豊富のとても楽しめるステージでした。

2位 NUMBER GIRL@TOUR「NUMBER GIRL」

やはり今年、最も楽しみにしていたライブといえば間違いなくこれでしょう。NUMBER GIRLのまさかの復活ツアー。リアルタイムでは何度も足を運んだナンバガのライブでしたが、復帰後初のライブも、かつての彼らに比べて全く見劣りのしない迫力のステージに圧巻されました。ナンバガの後追いのファンの方も、なぜ彼らがあれほど多くのフォロワーを生み出し、「伝説」のような扱いをされているか、このライブでその理由がわかったのではないでしょうか。素晴らしいステージでした。

1位 ベッド・イン@男女6人秋物語

以前から一度は見てみたかった「地下セクシーアイドル」、ベッド・インのステージ。予想通りだったのですが、昭和バブルネタや下ネタ系含めて、終始ネタ満載のエンタテイメント色強いステージ。ただ一方、もともとはロックバンド出身の彼女たちだけにライブバンドとしての基礎体力は十分すぎるほど持っており、予想以上にロック色の強い迫力あるパフォーマンスを見せてくれました。最初は、1度は見たいけど、1度で飽きるかな、と予想していたのですが、これが予想外にネタ的な部分だけではなく音楽的な部分でも十分に楽しめたステージで、また彼女たちのライブを見てみたい、そう強く感じさせてくれる内容でした。

今年も多くの素晴らしいライブを見ることが出来た1年でした。さて、来年はどんな素晴らしいステージに出会えるか・・・また多くのライブに足を運びたいです。

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2019年12月29日 (日)

圧巻のステージ

Title:Live At Home With His Bad Self
Musician:James Brown

「ファンクの父」「ファンクの帝王」などと呼ばれ、60年代にファンクミュージックを確立。後のミュージックシーンにあまりにも大きな影響を与えたミュージシャン、ミスター・ダイナマイトことジェームス・ブラウン。今年、彼の新しいライブアルバムがリリースされたということで話題となっています。本作は1969年10月1日に、彼の出身地、オーガスタで行われたライブの模様をおさめた作品。もともとは1969年にライブアルバムとしてリリースする予定だったものの、その後リリースされたシングル「Sex Machine」が大ヒットを記録。そのため、同曲も収録したライブアルバム「Sex Machine」がリリース。同作にこの日の音源は一部収録されているものの、このたび、ライブから50周年を記念して完全版のリリースとなりました。

さて、ジェイムス・ブラウンといえば、そのライブに定評のあるミュージシャン。特にアルバムはオリジナルアルバムよりもライブアルバムが彼を代表する「名盤」として紹介されることが少なくありません。特にこのライブ盤に代わってリリースされることとなったライブアルバム「Sex Machine」は彼を代表する名盤、どころかソウルミュージックを代表する名盤として、今なお多くの音楽ファンに愛聴されています。

そんな彼の、それも名盤「Sex Machine」と同時期というからもっとも脂ののった時期のステージの模様を収録したライブアルバムである訳ですから、その内容が悪い訳がありません。ライブはいきなり彼の代表曲である「Say It Loud I'm Black And I'm Proud」からスタート。ファンキーなサウンドと力強いボーカル。まだスタート直後で会場の暖まり方はいまひとつな部分はあるのですが、その迫力あるライブパフォーマンスにまずは魅了されること間違いありません。

ただ、彼のライブの魅力は、このアップテンポでファンキーな、会場を盛り上げる楽曲が続くから、ではありません。MCを挟んで事実上の2曲目となる「World」では哀愁たっぷりのボーカルで力強く歌い上げるソウルなミディアムテンポチューン。その後、ファンキーなインスト曲が続いたかと思えば、「If I Ruled The World」は感情たっぷりに歌い上げる歌声が胸をうつ、ムーディーなソウルバラード。むしろ前半では、ファンキーなリズムよりも、彼のその力強くも感傷的なボーカルに胸をうつ、バラードナンバーが大きな魅力となっています。

その後もファンキーな「I Don't Want Nobody To Give Me Nothing(Open Up The Door I'll Get It Myself)」「I Got The Feelin'/Licking Stick-Licking Stick」などで盛り上げつつ、「Try Me」のようなソウルバラードも間に挟み、その歌声を聴かせます。アップテンポなファンク一辺倒ではなく、緩急つけた楽曲とそしてそれら変化に富んだ曲調でも易々と歌い上げるジェイムス・ブラウンのボーカルが、彼のライブに定評がある大きな理由のように強く感じました。

しかし圧巻はやはりこのアルバムの終盤でしょう。「Give It Up Or Turnit A Loose」からまさにファンクの帝王らしい、ファンキーでアップテンポな曲が続いていきます。その後、基本的に楽曲の間はシームレスでライブは一気に終盤戦に。序盤とは異なり会場もすっかり暖まったため、ライブ会場の熱気も伝わってきます。特に事実上のラストとなる「Mother Popcorn」は、これでもかというほどシャウトしまくるジェイムス・ブラウンのボーカルとライブバンドの熱気に圧倒される演奏に。9分にも及ぶ長尺の曲で、最後になればなるほど熱量はどんどんと上がっていき、まさに最高のテンションの中、ライブは幕を閉じます。その迫力満点のパフォーマンスにジェイムス・ブラウンの実力を存分に感じられる内容となっていました。

ジェイムス・ブラウンの代表作に名前を連ねても全く違和感のないようなライブ盤の傑作だったと思います。間違いなく、なぜジェイムス・ブラウンのライブがあれだけ評価されているのか、このアルバムを聴いても十分納得が出来るのではないでしょうか。こういうアルバムがいまさらながらリリースされたということを非常にうれしく感じます。ブラックミュージックが好きな人はもちろん、そうでなくてもお勧めしたい傑作ライブ盤です。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

Kind/Stereophonics

2、3年に1度、コンスタントにアルバムをリリースし、なおかつどのアルバムもチャート上位に食い込んでくる、イギリスの国民的バンドとも言えるStereophonicsの約2年ぶりとなるニューアルバム。最近のアルバムは比較的バリエーションのある曲調のアルバムが続いていましたが、今回のアルバムはイギリスというよりもアメリカのロックからの影響を受けたような、渋いブルースロックが主軸となっているアルバム。もともと、ここ何作か、軽いポップなアルバムが続いたかと思えば、泥臭い作風のアルバムをリリースするというスパンが続いていたのですが、今回のアルバムは泥臭いアルバムのターンといった訳でしょうか。個人的には、今回のアルバム、ちょっと泥臭すぎて、あまり好みではなかったかも。悪いアルバムではないと思うのですが。

評価:★★★★

STEREOPHONICS 過去の作品
Decade In The Sun-Best Of Stereophonics
KEEP CALM AND CARRY ON
Graffiti On The Train
Keep The Village Alive
Scream Above The Sounds

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2019年12月28日 (土)

80年代に一世を風靡した女性ロックシンガー

Title:Ayumi of AYUMI~35th Anniversary BEST 完全版
Musician:中村あゆみ

80年代を代表する女性ロックシンガー、中村あゆみ。1985年にシングル「翼の折れたエンジェル」がカップヌードルのCMソングにもなり大ヒットを記録しました。本作はそんな彼女のデビュー35周年を記念してリリースされたオールタイムベスト。もともと5年前の30周年の時点で同タイトルのベスト盤をリリースしていたのですが、本作はそこに収録曲も増やし、2枚組としてリリース。タイトル通り「完全版」と言う内容になっています。

中村あゆみと言えば、主にティーンエイジャーの心の叫びをそのまま歌にのせるスタイルで若い世代の絶大な支持を受けたミュージシャン、といったイメージになるのでしょうか。ある意味、今以上にアイドルシンガーが席巻していた80年代において、装飾されたラブソングがメインだったアイドルポップスがメインだったヒットチャートの中で、ティーンエイジャー、特に女の子の本音をそのまま歌にしたり、あるいは複雑な心境を抱きがちなティーンエイジャーに対する応援歌として、絶大な支持を得ていたミュージシャンだった、というイメージがあります。

実際、本作にも収録されている大ヒットシングル「翼の折れたエンジェル」は、ラブソングのスタイルはとっているものの、まさにやり場のないティーンエイジャーの心境に重きを置いたような歌詞になっていますし、同じくヒットを記録した「ともだち」などもティーンエイジャー向きらしい、友だちの大切さを歌った歌詞になっています。また、もうちょっと時代を下ったヒット曲になるのですが、「HERO」もタイトル通りの力強い応援歌となっており、スマッシュヒットを記録しました。

この80年代の女性ロックシンガーで、ティーンエイジャーの複雑な心境を歌う、というシンガーで同じく思い出されるのが渡辺美里でしょう。二人とも同い年どころか誕生日がわずか14日しか離れていないうえに、デビューも1年だけの違い。中村あゆみのブレイク作となった「翼の折れたエンジェル」が85年のヒットならば、渡辺美里のブレイク作「My Revolution」も86年のヒットと、ほぼ同じ時期にデビューし、かつブレイクしており、2人が比較されることも少なくありません。

ただ、その後(主にアルバム単位ですが)ミリオン作を連発した渡辺美里に対して中村あゆみはそれなりにスマッシュヒットを記録し続けたのですが、若干人気の面では寂しい印象は否めません。しかし今回、中村あゆみのブレイク期の作品を聴いてみると、正直言うと、渡辺美里ほどの大ブレイクに至らなかったのもわからないではないかな、という印象も受けてしまいました。渡辺美里がブレイク以降、ティーンエイジャーの心境を歌うシンガーとして軸足を確保し、かつ、徐々にロック路線からポップス路線にシフトしていったのに比べると、中村あゆみについては、若干その方向性が定まっていなかったように感じます。特に初期の作品については、その時代性もあるのでしょうが、アイドル的な売り方も捨てきれなかったようで、「翼の折れたエンジェル」の次のシングルとなる「A BOY」はどこかアイドルポップ的な様相も感じます。

その後もポップス色が強くなったかと思えば、ロックに寄ったりと、チグハグさは最後まで抜けきれません。結果として90年代も「HERO」のようなロックテイストの強いスマッシュヒットがありつつ、徐々にその名前はヒットシーンから遠ざかってしまいました。ここらへん、もうちょっとロック風を貫くか、ポップ路線にシフトするか、一貫したものがあれば、もうちょっと中村あゆみの人気は確かなものになっていたんじゃないかなぁ、と今回のベスト盤を聴いて感じてしまいました。

特に気になるのはその後の彼女の動向。ある意味、非常にベタな方向性といえば方向性なのですが、ここ最近の曲は「紬 -tsumugi-」「アジアの海賊」など歌謡曲、もしくは演歌の方向にまでシフトしていっています。まあこの点に関しては渡辺美里も2000年代以降、迷走して、一時期、ベテランシンガーがベタな方向性として取りがちなジャズの方向性にシフトしていたので、お互い様といった感じはするのですが…。この演歌・歌謡曲路線の曲も決して悪くはないのですが、彼女が歌わなくてもいいのにな、とも感じてしまいます。

彼女の代表曲は網羅されており、中村あゆみというシンガーの歩みを知るには最適な1枚。もちろん名曲も多く、十分楽しめたアルバムなのは間違いありません。一方で彼女のウィークポイントのようなものも感じてしまう、そんなベスト盤でした。渡辺美里がここ最近、80年代の原点に回帰したようなアルバムをリリースし、若干人気を回復させていますが、彼女もそろそろ80年代の彼女らしい曲を聴いてみたいような印象も…。せっかくパワフルな歌唱力の持ち主なので、単なる懐メロ歌手に終わらない活躍を期待します!

評価:★★★★


ほかに聴いたアルバム

あかりおねえさんの ニコニコへんなうた/町あかり

町あかりが「あかりおねえさん」として出演している、フジテレビ系およびBSフジの子供番組「じゃじゃじゃじゃーン!」の中での人気コーナー「あかりおねえさんのニコニコへんなうた」で歌われた曲を集めた企画盤。前半は童謡の替え歌、後半はオリジナルの童謡が収録。「池じゃなかった! どんぐりころころ」ではあの石野卓球がアレンジに参加するなど、豪華なアレンジャー勢も魅力的で、楽曲は童謡なのに異常にクオリティーの高いアレンジが特徴的なアルバムになっています。

ただ、個人的にはこの手の童謡の替え歌というのが正直苦手…。個人の好みの問題もあるのですが、なじみのメロに変な替え歌を付けられて頭にこびりつくのがすっごく嫌なんですよね…。まあ、これは完全に個人の趣味の話なのですが、ただ正直全体的に、良くも悪くも子ども用の童謡というよりも「子ども用みたいに作られた大人向けのポップス」といった印象を強く受けてしまいます。最近、子どもと一緒にNHKの朝の幼児向け番組でつくられた曲を良く聴くのですが、こちらの曲は子どもの興味や、子どもがちょうど覚えたような言葉、覚えてほしい言葉を上手く取り入れた、非常に考えこまれた良質な童謡を提供しているのですが、正直、本作に収録されている曲はそういった考慮をされたような跡はほとんどなく、あくまでも大人の感覚でつくられた「子ども用っぽい曲」といった感じになっています。もちろん、大人が聴く分には、それはそれで楽しめることは間違いなく、そういう意味ではコンセプチュアルで楽しいアルバムであることは間違いないのですが…。

評価:★★★★

町あかり 過去の作品
ア、町あかり
あかりの恩返し
EXPO町あかり
収穫祭!(町あかり&池尻ジャンクション)

BEGIN ガジュマルベスト/BEGIN

なんか、ここ最近、企画盤的なアルバムばかりリリースしている印象もあるのですが…本作はBEGINのベストアルバム。彼らはいままで「シングル大全集」と名付けたベスト盤をリリースし、かつ節目の年にシングル曲を追加し、再リリースし続けてきましたが、本作はそれとはまた異なる軸でのベスト盤だそうで、ライブの定番曲をまとめたベスト盤だとか。そのため「恋しくて」「島人ぬ宝」のような代表曲も収録しつつ、全体的にはしっかりと聴かせるバラードナンバー、あるいは聴いていて楽しくなるような明るい曲のような、いかにもライブ映えしそうな曲が並んでいます。BEGINの全貌を捉えた、といった感じではないのかもしれませんが、BEGINというミュージシャンの魅力をしっかり詰め込んだベスト盤になっていました。

評価:★★★★★

BEGIN 過去の作品
3LDK
ビギンの島唄 オモトタケオ3
ビギンの島唄 オモトタケオのがベスト
トロピカルフーズ
Potluck Songs

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2019年12月26日 (木)

ベテランバンドの新作が1位獲得

今週のHot Albums

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

今年最後のアルバムチャートはあのベテランバンドが1位獲得です。

今週のHot Albumsで1位を獲得したのはLUNA SEAのニューアルバム「CROSS」が獲得。CD販売数は3位、PCによるCD読取数は15位だったもののダウンロード数で1位を獲得し、総合順位では1位獲得となりました。LUNA SEAといえば結成は平成元年。まさに平成とともに歩んできたバンドが、令和最初の年の最後のヒットチャートを締めくくりました。オリコン週間アルバムランキングでは初動売上2万9千枚で3位初登場。前作「LUV」の2万7千枚(4位)より若干ですがアップしています。

2位はスターダストプロモーション所属の女性アイドルグループ、私立恵比寿中学「playlist」がランクイン。CD販売数は1位だったものの、ダウンロード数12位、PCによるCD読取数も27位に留まり、総合順位では2位となりました。オリコンでも初動売上3万3千枚で2位初登場。前作「MUSiC」の4万7千枚(2位)よりダウン。

3位には「Fate song material」が初登場。アニメシリーズ「Fate/Zero」「Fate/stay night [Unlimited Blade Works]」「Fate/Apocrypha」「Fate/EXTRA Last Encore」のオープニング、エンディング曲を集めたオムニバスアルバム。CD販売数2位、PCによるCD読取数は7位。オリコンでは本作が初動売上3万4千枚で1位を獲得しています。

続いて4位以下の初登場盤です。まず5位に「バンドリ! ガールズバンドパーティ! カバーコレクションVol.3」がランクイン。スマートフォン向けゲーム「バンドリ! ガールズバンドパーティ! 」で配信中のカバー曲を集めたアルバムの第3弾。オリコンでは初動売上2万1千枚で4位初登場。同シリーズの前作「バンドリ!ガールズバンドパーティ!カバーコレクションVol.2」の2万3千枚(6位)より若干ダウン。

6位には男性声優斉藤壮馬「my blue vacation」がランクイン。5曲入りのミニアルバム。CD販売数6位、ダウンロード数20位、PCによるCD読取数37位。オリコンでは初動売上1万5千枚で5位初登場。前作「quantum stranger」の2万4千枚(4位)からダウン。

7位はWACK所属の女性アイドルグループEMPiRE「the GREAT JOURNEY ALBUM」がランクイン。CD販売数は5位だったものの、その他のチャートは圏外となり総合順位は7位に。オリコンでは初動売上1万4千枚で6位初登場。前作「EMPiRE originals」の1万2千枚(8位)から若干のアップ。

8位にも女性アイドルグループがランクイン。まねきケチャ「あるわけないの」が初登場。CD販売数は7位だったもののダウンロード数81位、PCによるCD読取数圏外で総合順位はこの位置に。オリコンでは初動売上1万2千枚で7位初登場。前作「きみわずらい」の5千枚(12位)からアップ。

初登場最後は10位にRoyal Scandal「Q&A-Queen and Alice-」がランクイン。歌唱動画などの投稿で人気を博したluz、奏音69と、自らの絵を投稿して人気を博したRAHWIAによるユニットのデビュー作。CD販売数は8位だったもののダウンロード数56位、PCによるCD読取数97位で総合順位もこの位置に。オリコンでは初動売上1万2千枚で8位初登場です。

今週の初登場盤は以上。一方、ロングヒット盤はOffical髭男dism「Traveler」。今週は6位から4位にさらにアップ。ダウンロード数2位、PCによるCD読取数1位をキープし、まだまだロングヒットは続きそうです。

今週のHot Albumsは以上。チャート評はまた来週の水曜日に!

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彼女の幅広い音楽性を感じる

Title:Turnable
Musician:竹内まりや

竹内まりやにとってデビュー40周年というメモリアルイヤーとなった今年。日本レコード大賞の「特別賞」を受賞したり、さらには初の紅白歌合戦出場が決まるなど、様々なビックニュースも飛び込んでいますが、なんといってもファンにとって大きな出来事だったのが本作のリリースでしょう。全3枚組となる本作は、1枚目が「More Expressions」と名付けられ、ベストアルバム「Expressions」に収録しきれなかった曲を集めたアナザーベスト。2枚目「Mariya's Rarities」は未発表音源やレア音源、セルフカバーなどをあつめたアルバム。そして3枚目は、旦那である山下達郎がパーソナリティーを務めるラジオ番組「サンデー・ソングブック」の中の名物コーナー「まりやの課外活動」でカバーした洋楽のスタンダードナンバをCD化しています。

3枚のCDはそれぞれ(例外もありますが)基本的には、自ら歌う前提で作った曲、他の人が歌う前提で作った曲、第三者の曲を自ら歌った曲という形で収録されています。それらの曲をまとめて聴いてまずは感じる感想として、彼女は本当にバラエティー豊かな曲を作って、そして歌うミュージシャンなんだな、ということを強く感じます。公私ともに大きな影響を受けている山下達郎と同様、まず大きな影響を感じさせるのが50年代や60年代のオールディーズ。このアルバムの冒頭を飾るDisc1の1曲目「すてきなヒットソング」などはまさにそんなオールディーズからの影響が顕著ですし、「アンフィシアターの夜」なども同じく昔ながらもロックンロールからの影響を強く受けた曲になっています。

一方、Disc2に収録されている曲のうち、ほかのシンガー、特にアイドル勢などに提供した曲に関しては、非常の歌謡曲テイストの強いナンバーが並びます。例えば岡田有希子に提供した「憧れ」や、松田聖子に提供した「声だけ聞かせて」が顕著な例でしょうか。本人が作った曲ではありませんが、加山雄三の曲のカバー「君のために」やCMソングとして話題となった「You & Night & Whisky ~ウイスキーが、お好きでしょ」のような歌謡曲テイストの強いナンバーも収録されており、歌謡曲からの影響を強く感じると同時に、また彼女の歌声自体、歌謡曲のようなウェットな作風の曲によくマッチしているように感じます。

ほかにも「幸せの探し方」はラテンの要素が入ったポップスに仕上がっていますし、「静かな伝説(レジェンド)」に至っては、歌詞の雰囲気も含めて中島みゆき的な雰囲気を醸し出している楽曲になっているなど、全体的には楽曲のバリエーションの広さを強く感じます。洋楽から、特に50年代、60年代のオールディーズの影響を強く受けている点は、旦那である山下達郎と同じなのですが、歌謡曲な雰囲気を感じるポップチューンを含めて、洋楽的なカラリとした雰囲気を感じる山下達郎に比べると、竹内まりやの曲は、ある意味より日本的なウェットさを感じるという点で大きな違いを感じさせます。音楽的に似た路線を歩むこの夫婦ですが、一方では明確な両者の違いも感じることが出来ました。

またDisc3は洋楽のカバー。特に前半はビートルズのおなじみの曲のカバーが延々と続くのですが、こちらはほぼ原曲通りのカバーになっており、あまり竹内まりや独自の解釈というおもしろさはないものの、原曲への敬愛ぶりが強く感じさせられるカバーになっていました。カバー曲はオールディーズやジャズなどからのカバーも多く収録されており、竹内まりやのルーツを知るにはうってつけの選曲と言えるかもしれません。

全3枚組、トータル3時間半を超えるボリュームあふれるアルバムでしたが、アナザーベストやセルフカバーの選曲により、竹内まりやのより幅広い音楽性を知ることが出来、非常に興味深く感じられた企画盤になっていました。デビューから40年が経過した彼女ですが、旦那様ともども、まだまだ日本の音楽シーンに大きな影響を与えてくれそうです。

評価:★★★★★

竹内まりや 過去の作品
Expressions
TRAD
REQUEST -30th Anniversary Edition-

で、今回は「Turnable」に連動する形でリリースされたもう1枚のアルバムも一緒に紹介します。

Title:岡田有希子 Mariya's Songbook
Musician:岡田有希子

1984年にデビュー。一躍トップアイドルの仲間入りを果たしたものの、それからわずか3年後、1986年に人気絶頂の最中に自殺という形でわずか18年の生涯に幕を下ろしたアイドル歌手、岡田有希子。彼女の自殺報道に影響を受けた若者の自殺が相次いだとされ、当時は一種の社会問題となった出来事でした。そのこともあり、彼女の楽曲はしばらく事実上の封印状態だったのですが、ここ最近、徐々に彼女の楽曲もリリースされるようになり、本作はデビューシングル「ファースト・デイト」をはじめとした彼女に数多くの楽曲を提供してきた竹内まりやの曲を収録したアルバムとなっています。

アルバム「Turnable」にも竹内まりやによるセルフカバーが何曲が収録されています。竹内まりやのセルフカバーも決して悪くはないのですが、より清純な雰囲気を醸し出す岡田有希子本人のボーカルの方が、より曲の雰囲気にはマッチしているように感じます。全体的にはピュアな女の子のはじめての恋を描いたような作品が多く、彼女がどのような売り出され方をしたのかよくわかります・・・といってもこの時代のアイドル歌手の典型的な売り出し方だとは思うのですが。

楽曲的には良くも悪くもいかにも80年代のアイドル歌謡曲という印象が強い点は否めないのですが、そこはさすが竹内まりやだけあって、歌謡曲のテイストが強くても、要所要所に洋楽の影響も垣間見れ、キラリと光るものを持っているポップソングが並んでいました。岡田有希子をリアルタイムで知らなくても、竹内まりやが好きならばチェックしても損はないアルバム。とはいえ、彼女の澄み切った歌声を聴くと、もし彼女が今も生きていたら・・・と感じてしまう、そんなアルバムでした。

評価:★★★★

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2019年12月25日 (水)

今年最後のヒットチャートを締めくくるのは・・・

今週のHot100

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

早いもので、今週が今年最後のヒットチャートとなります。

そんな今年最後のヒットチャートを締めくくったのは間違いなく今年を代表する1曲。Official髭男dism「Pretender」が見事2週連続の1位を獲得しました。今週もストリーミング数、You Tube再生回数、カラオケ歌唱回数で1位を獲得。ダウンロード数も4位につけ、総合順位で1位。まさに今年の最後にふさわしい結果となっています。

ちなみに「イエスタデイ」は8位から6位に、「宿命」も9位から8位にアップ。ストリーミング数は「イエスタデイ」3位、「宿命」4位を維持しており、ここに来て総合順位も再びアップ。まだまだヒゲダンの3曲同時ランクインは続きそう。

2位初登場は嵐「A-RA-SHI:Reborn」。彼らが1999年にリリースしたデビュー作「A・RA・SHI」をリメイクした配信限定のシングル。歌詞に大幅に英語が加わり、アレンジも今風に変化。原曲のイメージがかなり変化した楽曲になっています。ただ…正直、嵐は結局、このデビュー曲を超えるヒット曲は出せませんでしたね…。ダウンロード数1位、ストリーミング数22位、Twitterつぶやき数5位で総合順位はこの位置に。

3位初登場は豆柴の大群「りスタート」がランクイン。TBS系バラエティー「水曜日のダウンタウン」から生まれた4人組女性アイドルグループで、安田大サーカスのクロちゃんがプロデュースを手掛けています。CD販売数1位ながらもPCによるCD読取数48位、Twitterつぶやき数10位でそのほかは圏外となり総合順位も3位に。オリコン週間シングルランキングでは初動売上6万4千枚を獲得し、本作が1位を獲得しています。

続いて4位以下の初登場曲です。7位に男性5人組アイドルグループDa-iCE「BACK TO BACK」がランクイン。CD販売数は3位だったものの、ダウンロード数33位、ラジオオンエア数14位、PCによるCD読取数35位、Twitterつぶやき数36位と奮わず。総合順位は7位に留まりました。オリコンでは初動売上3万6千枚で2位初登場。前作「FAKE ME FAKE ME OUT」の3万8千枚(3位)から若干のダウンとなっています。

初登場組はあと1曲。10位に「白日」が大ヒット中のKing Gnu「Teenager Forever」がランクイン。来年1月15日に発売予定のニューアルバム「CEREMONY」からの先行配信曲。ソニーワイヤレスヘッドホン/ウォークマンCMソングとなっています。ダウンロード数では見事2位を獲得。ただストリーミング数は14位、ラジオオンエア数12位、Twitterつぶやき数48位に留まり、総合順位では10位に。一方、「白日」の方は3位からワンランクダウンの4位に。ダウンロード数は5位から7位にダウンしてしまいましたが、ストリーミング数、You Tube再生回数は2位をキープ。まだまだロングヒットを続けています。

ほかのロングヒット組としてはあいみょん「マリーゴールド」が先週の10位から9位にアップ。なんとかベスト10ヒットをキープしています。ストリーミング数は先週と変わらず6位をキープ。ただYou Tube再生回数は3位から5位にダウンしてしまいました。

今週のHot100は以上。明日はHot Albums!

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2019年12月24日 (火)

前作と同じレコーディングで生まれた作品

Title:PYROCLASTS
Musician:Sunn O)))

アメリカのドゥーム・メタルバンド、Sunn O)))のニューアルバム。今年4月にアルバム「Life Metal」をリリースしたばかりの彼らですが、それからわずか半年。早くもニューアルバムがリリースされました。とはいっても今回のアルバム、前作とは全く異なる文脈の中でリリースされた作品、という訳ではなく、前作「Life Metal」でのセッションの音源が元となったアルバム。そのため、前作同様、プロデュースはかのスティーブ・アルビニが手掛け、彼のスタジオ、Electrical Audioでレコーディングを行った作品となっています。

そういうこともあり、楽曲的な方向性としては前作「Life Metal」から大きな変化はありません。圧倒的な音の壁がこちらにのしかかってくるような、そんな感覚が襲ってくるようなアルバムになっています。43分という長さの作品にもかかわらず、わずか4曲入り。1曲あたり10分以上の長さの楽曲が4曲並ぶ内容。長尺の中にただただ音の世界に圧倒される、そんな作品に仕上がっています。

基本的には4曲とも、同じピッチのギターノイズが延々と続いていく内容。ただ、そんな中でも1曲目「Frost」は重いメタリックなノイズが展開していく楽曲。続く「Kingdoms」は同じメタリックな作風ながらも、どこかメロディアスな感覚を覚えるから不思議です。3曲目「Ampliphaedies」は同じギターノイズながらも、もうちょっと高音域が展開していく楽曲になっており、最後の「Ascension」も3曲目同様の比較的高めのピッチのギターノイズが延々と続く作品になっています。

そんなヘヴィーなギターノイズが展開していく作品ながら、そのノイズ音には不快さは全くなく、ある種のポピュラリティーすら感じさせる内容になっています。そういう意味では楽曲に難解さはほとんど感じず、意外と広いリスナー層が楽しめそうな楽曲に。確かにわかりやすいメロディーラインはないのですが、そのギターノイズに圧巻されているうちに、いつの間にかはまってしまう、そんなアルバムではないでしょうか。

ちなみに今回のアルバムは、「Life Metal」のレコーディングうち、1日の最初と最後に行われたある種、音慣らし的なセッションの中で生まれた音源を収録した作品だそうで、そういう意味では「Life Metal」の習作とも言える作品ですし、また、同作のアウトライン的な作品と言っていいかもしれません。また、そのためでもあるのでしょうが、ギターノイズの中にボーカルが入ったり、シンフォニックな音が入ったりと、それなりにバリエーションのあった「Life Metal」に比べると、こちらは最初から最後まで一貫してギターノイズの嵐。そういう意味では楽曲としての構成が整っているのは前作の方と言えるかもしれません。

ただ本作も、ただただギターノイズのみで構成された作品は、ある意味Sunn O)))というバンドだけで作り上げられた音であり、彼らのコアの部分が出た作品と言っていいかもしれません。また、音慣らし的なセッションの中で生まれたからこそ、彼らの本質的な部分が顔を覗かせているとも言えるかもしれません。純粋にアルバムの出来としては前作の方が上かもしれませんが、本作も間違いなく傑作と言えるアルバム。その音の世界に圧倒されてください。

評価:★★★★★

Sunn O))) 過去の作品
Life Metal

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2019年12月23日 (月)

ゴスペル色が強い新作

Title:Jesus Is King
Musician:Kanye West

Kanye West単独名義では昨年6月にリリースされた「Ye」以来、約1年4ヶ月ぶりとなるニューアルバム。前作「Ye」は非常に内省的なアルバムで、自身の双極性障害を告白するという、ある種衝撃的ともいえる内容になっていました。その後、昨年9月にニューアルバム「Yandhi」をリリースすると発表していたものの延期になった上に立ち消え。一方で今年に入って「サンデー・サービス」という自らの楽曲やカバー曲をゴスペルとして披露するパフォーマンスを行っていたり、Twitter上で「世俗の音楽はもう作らない。これからはゴスペルしかやらない」とつぶやいたりしていましたが、そんな流れもありニューアルバムはアルバム全体にわたってゴスペル色の強い作品に仕上がっています。

もっとも私たち日本人にとっては、英語詞のためストレートに内容がわからない、ということもあり、時として海外のミュージシャンが宗教色の強い楽曲を作っても、その意味がなかなか伝わらないというケースは少なくありません。ただ、今回のカニエのアルバムに関しては、1曲目のイントロ的なナンバー「Every Hour」からして、クワイヤの力強い合唱曲といういかにもゴスペル的な楽曲となっており、続く「Selah」もカニエによる物悲しくも力強いラップが聴けるのですが、バックのシンセのサウンドはいかにも教会音楽的な荘厳な雰囲気を醸し出していますし、こちらもクワイヤによる「ハレルヤ」というコーラスが重なっており、日本人にとっても嫌でも宗教色の強いアルバムである事実が感じとれます。

その後もタイトルそのまま「God Is」ではゴスペル風のコーラスがのったり、アウトロ的な「Jesus Is Lord」もタイトルそのままの歌詞が流れてきたりと、宗教的な雰囲気がわかりやすい色合いの曲も少なくありません。ただもちろん、それらの曲も含めてアルバムの出来としては、Kanye Westらしい実に完成度の高い楽曲が収録されていました。なんでもリリース当日まで夜を徹してミキシング作業を続けていたとか…彼の音楽に対するつよいこだわりも感じます(…と同時に、ギリギリまでそういう作業が出来てしまうのは、配信リリースの良い点でもあり、見切りを付けられないという点では悪い点なのかもしれませんね…)。

例えば「Follow God」ではループするサンプリングを効果的に用いた、カニエウエストらしいHIP HOPチューンに仕上げていますし、「On God」も爽快さを感じるエレクトロトラックが魅力的なラップチューン。さらには「Hands On」も重厚なエレクトロトラックが強いインパクトを残す中、噛みしめるようなカニエのラップも印象に残る楽曲になっており、アルバム全体としては、ゴスペル色の強い作品とはいえ、一方ではしっかりとKanye Westらしさを強く感じさせる内容となっています。また、「Closed On Sunday」もアコギをバックに哀愁感たっぷりに聴かせる歌が心に響きますし、「Water」も美しいコーラスラインをバックに、美メロとも言えるメロディーを聴かせるソウルな楽曲に。歌モノとしても魅力的な楽曲も多く、そういう面でもいい意味での聴きやすさも感じられるアルバムに仕上がっていました。

またアルバムの長さとしても、ここ最近のカニエの共通していることなのですが、全11曲で27分という短さ。そういう点でも聴いていて一切ダレることなく、一気に聴ききれるアルバムになっており、このアルバムの長さもいい意味で同作を聴きやすい作品と感じられる大きな要素となっていました。宗教色が強いため文化的背景によって受ける印象が異なる可能性もあるものの、日本人としてはその宗教的色合いが決してマイナスには働かず、かつカニエらしさもしっかりと残した魅力的な傑作アルバムに仕上がっていました。ちなみに12月25日には続編として「Jesis Is Born」をリリース予定とアナウンスしているカニエ。前科があるのであまり期待はしていないのですが、リリースされたら今年最後の傑作アルバムとなりそう…期待しないであさってを待っていたいと思います。

評価:★★★★★

KANYE WEST 過去の作品
GRADUATION
808s&Heartbreak
MY BEAUTIFUL DARK TWISTED FANTASY
YEEZUS
The Life Of Pablo
Ye


ほかに聴いたアルバム

What's Going On Live/Marvin Gaye

今年、「幻のアルバム」と言われた「You're The Man」をリリースし、大きな話題となったソウルミュージック界のレジェンド、マーヴィン・ゲイ。今度はそれに続きライブアルバムをリリース。1971年にリリースされ、ソウルミュージックというジャンルを越えて、音楽史にその名を遺す名盤となった「What's Going On」。本作はその翌年、1972年5月1日にアメリカ・ワシントンDCのJ.F.ケネディ・センターで行われたライブの模様を収録したもの。「What's Going On」からの楽曲はもちろんのこと、60年代のヒット曲もメドレーで披露したこのライブ。原曲以上に感情を込めてメロウにその歌声を聴かせてくれており、歌手としてのマーヴィンの魅力も堪能できる作品に。新たなライブの名盤登場を予感させる1枚でした。

評価:★★★★★

Marvin Gaye 過去の作品
You're The Man

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2019年12月22日 (日)

バラエティー富んだエレクトロサウンド

Title:Crush
Musician:Floating Points

今回紹介するミュージシャンは、ロンドンを拠点に作曲家、プロデューサー、さらにはDJとして活躍を続けているミュージシャン、Floating Points。今年、サカナクションとサマソニのコラボレーションイベント「NF in MIDNIGHT SONIC」にDJとして参加。また来日公演も決定するなど、日本でも確実にその知名度を上げてきています。2019年にはColdcutのメンバーが立ち上げた、ロンドンのクラブ系のインディーレーベル「Ninja Tune」と契約。本作は同レーベルからリリースされる第1弾アルバムとなりました。

楽曲的には比較的、音数を絞ったシンプルでエッジの効いたエレクトロサウンドを力強いビートに載せて展開していくサウンド。ただ、今回13曲入りのアルバムなのですが、13曲それぞれが別の顔を持った非常に凝ったバラエティーに富んだ作風に展開していっているのが大きな魅力。前作「Elaenia」はジャズやクラシック、ブラジリアンポップの要素まで入れた作風…と紹介されていた記事を読んだ(アルバムは聴いていませんが…)のですが、今回のアルバムも、全体的にはさすがに前作ほどのバラバラな音楽性は感じなかったのですが、多様な作風が魅力に感じました。

例えば1曲目「Falaise」から、エレクトロサウンドの中にどこかエキゾチックな雰囲気を感じさせる楽曲からスタート。続く「Last Bloom」は強いリズムに様々なエレクトロサウンドが重なる、典型的なビートミュージックに仕上がっていますし、「Anasickmodular」もビート感あるエレクトロサウンドの中に流れる、ストリングスのような伸びやかな音が一種の優雅さとスケール感を醸し出しています。

中盤の「LesAlex」もテンポのよいリズミカルなナンバーで、こちらはテクノなダンスチューン。ライブで聴いたら非常に気持ちよさそうなナンバー。「Bias」は不気味な雰囲気のエレクトロサウンドが奏でるメロディーが妙な哀愁感を醸し出している点が印象的ですし、「Sea-Watch」も悲しい雰囲気が楽曲全体に流れるエレクトロチューン。ほかにもわかりやすいリズムのダンサナブルな四つ打ちナンバーから、複雑なサウンドで挑戦的な作風を感じるナンバーまで様々なバリエーションを感じさせます。

ただ、全体的には決してわかりやすいメロディーラインが流れている訳ではないのですが、テンポのよいリズムが流れている曲も多かったり、意外と哀愁味を帯びたサウンドが印象的だったりした結果、アルバム全体としては意外とポップで聴きやすいアルバムという印象を受ける作品になっていました。アルバム全体で50分というちょうどよい長さも聴きやすい大きな要素ですし、そんな中でもバリエーション富んだ作風のため、最初から最後まで全くダレることなく最後まで楽しめるという点もポップに感じさせる大きな要因でしょう。

エレクトロやビートミュージックが好きな方なら無条件でお勧めできそうな、良い意味でポップさを感じさせるアルバムだったと思います。「NF」での来日もありましたし、さらには来日公演も控えているみたいで今後、日本でもさらに注目を集めそうなミュージシャン。今、注目しておきたいエレクトロミュージシャンなのは間違いないでしょう。

評価:★★★★★

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2019年12月21日 (土)

いつも違うレキシ…?

レキシTOUR2019 アナザーレキシ~あなたの知らないレキシの世界~

会場 名古屋国際会議場レインボーホール 日時 2019年12月10日(火) 18:30~

昨年のライブツアーに引き続き、レキシのワンマンライブに足を運んできました!といっても、実は今回、レキシのライブに行こうと決めたのは当日。事前にソールドアウトしていたので今回のライブは行くのをあきらめていたのですが、14時くらいに機材席・見切席解放による当日券販売を知り、当日券販売開始の15時ちょうどにチケットを確保したところ、見事に確保成功。ライブ開始わずか3時間半前にチケットを確保したのですが…発券してみてビックリ!前から3列目という超特等席!!会場に足を運ぶと、ちょうど下手側のステージを外れた場所だったのですが、1、2列目はなく、事実上の最前列!おそらく「見切り席」という扱いなのですが、問題なくステージ全体を見渡すことが出来る席で、池ちゃんもバンドメンバーも至近距離で堪能してきました!

で、開始予定時間を5分程度まわった時点でライブがスタートとなったのですが、いきなり最初は意外な選曲の「Takeda'」からスタート。原曲はU-zhaanのタブラのみをフューチャーした珍曲(?)なのですが、これがこの日は歌詞をステージ前のスクリーンに映し出しつつ、非常におしゃれな雰囲気の曲調に。そしてそのまま「SHIKIBU」へ。登場したメンバーはなんと全員が革ジャンというスタイルで、「ロック風」を醸し出したステージに。今回のライブツアー、コンセプトが「アナザーレキシ」ということで、いつものネタ満載のレキシのライブとは異なり、真面目なロック風のステージとなっていました。

そのまま「甘えん坊将軍」と続きます。「真面目なステージ」というコンセプトらしく、ネタは少な目…なのですが、続くMCではロックなステージということで池ちゃんが氷室京介のセリフをパロったり、矢沢永吉のセリフをパロったりと、やはりそこはネタ満載なんですね…(^^;;というユーモラスなMCを展開していきます。

続く「Good bye ちょんまげ」でも会場のファン全員に、頭の上で手でちょんまげのポーズをさせたりと、やはりいつも通りのネタはそれなりに組み込んだ展開に。「KATOKU」で盛り上げた後の「妹子なぅ」では、歌詞に登場する「『Don't Look Back 飛鳥』じゃなくてロックなら『Don't Look Back In Anger』でしょう!!」といきなりoasisの「Don't Look Back In Anger」を歌い出したりと、ここらへんはいつも通りのレキシのステージになっていました(笑)。

そして続いては「チルドレンにも寄せて行く」ということで、NHK Eテレの幼児向け番組「みいつけた」に提供した「ひみつのヒミコちゃん」のセルフカバーへ!実はちょうど子供が「みいつけた」を見ている世代で、この曲も何度も聴いたことがあり、秘かに名曲だと思っていただけに、まさかこの日のステージで聴けたのはかなりうれしく、心の中でガッツポーズしてしまいました(笑)。その後、「出島で待ってる」と続き、ムーディーでアダルトな雰囲気ということで、「どげんか遷都物語」「僕の印籠知りませんか?」をかなりムーディーでアダルティーな雰囲気で聴かせてくれました。さらにその後は一転「salt&sugar」で観客を盛り上げます。このあたりの展開もネタは少な目。あくまでも曲で盛り上げていくスタイルでどんどんと進んでいきます。

とはいえ、その後のMCでは、またメンバーをいじって楽しませるユーモアなMCに。ベースのヒロ出口こと山口寛雄には「コブクロの方ですか?」と話しかけたり、トランペットの元妹子こと村上基には「エドシーランですか?」と話しかけたりしつつ、この元妹子とサックスのTAKE島流しこと武嶋聡のシンセでいきなりYMOの「Rydeen」を弾かせ、さらにはここに「あなた~あなた、私なの?~♪」なんていう奇妙な替え歌載せて歌ったりと、相変わらずのネタ満載のMCとなっていました。

さらに「君がいない幕府」「旧石器ベイベ」「憲法セブンティーン」をメドレー形式で聴かせた後は、再びステージ前に幕が下ります。インターリュード的なインスト「レキシ ト ア・ソ・ボ」をバンドメンバーのみの演奏で奏でる中、スクリーンには「レキシ、変わらなきゃいけないの?」と問いかけるナレーションが、エヴァンゲリオンの最終回を彷彿とさせるような映像をバックに語られます。

そして再び登場したレキシは、前半のロッキンな衣装から一転、いつも通りの袴スタイルで登場!ここからはいつも通りのレキシのステージといった感じで、おなじみ「きらきら武士」で盛り上げた後、おなじみ「KMTR645」へ。最初、「今日はロックだからイルカの風船はなし」と語っていたのですが、予想通り、おなじみのイルカのビニール風船が登場。イルカのビニール風船のよしお君は「ロック」ということでなぜか目の部分にサングラスが書かれていました。そして恒例、「KMTR645」にのせてイルカのビニール風船が客席を舞います。この日は一番前の席ということで、しっかりイルカのよしお君にタッチすることが出来ました(笑)。

さらに「KMTR645」の途中では、パンクロック風?ということでブルーハーツの「リンダリンダ」が歌われたり、さらにはX JAPANの「紅」が突然間に挟んできたりと、ここらへんのネタ満載なのは相変わらず(笑)。そして大盛り上がりのうちに本編終了…という雰囲気なのですが、池ちゃん含んでメンバーはステージ上から去らず。アンコールの拍手を観客に求めて、少しだけアンコールの声が飛んだかと思うと、そのままアンコールに突入しました。

アンコールでは…何もやらないうちに客席からは、ライブグッズの稲穂のレプリカをみんな掲げます。この日は新商品ということでLEDを組み込んで光る稲穂が登場。暗い観客席の中で非常にきれいに光っていました。私も最前列の特権で後ろの客席をふり向いたのですが、客席全体が非常にきれいに輝いていました…稲穂なのに(笑)。

そしておなじみ「狩りから稲作へ」に突入。またいつものノリで、「たかゆかしき~♪」から「たかおかさき~♪」に変わって、さらには「げきだんしき~♪」となり、最後は「げきだんしき~キャッツ!」と叫ぶというお決まりの展開に…と思うと、なぜか池ちゃん、「キャッツ!」の後に突然怒り出してステージから去って行ってしまいます。急な展開にあわてふためくバンドメンバーたち。池ちゃんを呼び戻すべく、メンバー全員がステージを去っていきます。

…とおもむろにスクリーンが下がり、コント(?)がスタート。楽屋に戻った池ちゃんは「変わらなきゃいけないのに結局一緒じゃないか」といら立ちが隠せない様子。そこに登場したのがキャッツにちなんでか猫の格好をしたやついいちろう(笑)。なぜか悪いのはいつまでも変われないバンドメンバーということになり、「行くところまで行って戻れないようにしなくちゃ駄目だよ」という話になぜかなり…

そしてメンバー全員が再びステージに登場するのですが、最後のコスプレはなんと全員、セーラー服の女装という格好!!みんなで「セーラ服をぬがさないで」ならぬ「セーラ稲穂を揺らさないで」なる曲をアイドルさがならに踊りながら歌います。これには会場も大爆笑。最後はこの格好で「狩りから稲作へ」の続きを歌った後、「LOVEレキシ」で締めくくり…かと思いきや、最後はおニャン子クラブの「じゃあね」をバックに再びアイドルさながらに踊りながらステージを去っていきました。最後は池ちゃんみずから大きく「じゃあね」と書道で書かれた看板をかかげてライブは終了。3時間弱のステージでした。

そんな訳で「アナザーレキシ」と題うたれ、ロックだったりアダルティーだったり、「ネタ」ではなく曲を聴かせるような構成で、確かに特に前半に関しては、いつものように曲の中でこれでもかというようにネタを入れるスタイルではなく、普通に曲を聴かせるステージになっていました。とはいえ、そんな展開は前半だけ(笑)。後半はいつもの通り、ネタを挟みまくりのユニークなステージで、イルカのビニール風船やら「キャッツ!」やら定番のネタは今回も登場。もっとも前半も「曲を聴かせる」といいつつ、ちょこちょこネタを挟んだり、ユニークなMCを聴かせたりと、非常に楽しいステージだったのは相変わらずだったんですけどね。

結局、最後は非常にレキシらしいステージで締めくくり。なんだかんだいってもやはりレキシらしいエンタテイメントあふれるユーモラスなライブに仕上がっていました。いやあ、今回もとても楽しいステージで、あっという間にライブが終わった、非常に濃い3時間でした。特に今回はほぼ最前列でステージを見せたということもあり、細かい部分も含めて、ネタを堪能できた3時間。ライブに行くことを決めたのが開演わずか3時間半前だったのですが、心から足を運んでよかったなぁ、と思えたステージでした。

おそらくこの日のステージが私の今年のライブ納め。しかし最後の最後でとても楽しいライブに出会うことが出来ました!昨年に続き、2年連続2度目のレキシのライブとなったのですが…また、是非ともレキシのライブには足を運びたいです!!

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2019年12月20日 (金)

待望の続編!

Title:Everything Not Saved Will Be Lost Pt.2
Musician:Foals

イングランド出身5人組のギターロックバンドによるニューアルバム。今年3月、4年ぶりとなるニューアルバムをリリース。「Everything Not Saved Will Be Lost Pt.1」と名付けられたタイトル通り、その時から近いうちの第2弾リリースがアナウンスされていましたが、そこから約7ヶ月、その最新作がリリースされました。前作「Pt.1」は非常に優れた出来栄えの傑作アルバムだっただけに今回のアルバムも楽しみにしていたのですが、結果としてその期待にそぐわない傑作アルバムがリリースされました。

前作「Pt.1」ではニューウェーブの影響を強く感じるエレクトロサウンドがメインとなっている作品に仕上がっていました。ただ、今回のアルバム、純粋にその続編、といった感じではなく、前作からその方向性を変えた作風が大きな特色になっていました。今回のアルバムで特徴的だったと言えるのは非常にロックテイストが強くなったという点。イントロ的な1曲目に続いてはじまる2曲目「The Runner」では非常にヘヴィーなギターリフからスタート。若干シャウト気味なボーカルを含めて、ハードロックな色合いの強い作風に仕上がっています。

この方向性はその後もアルバム全体を通じて続いていきます。「Black Bull」もヘヴィーなギターリフ主導の中、ボーカルのシャウトが耳に残るロッキンな楽曲に仕上がっていますし、「Like Lightning」もテンポ良いリズミカルな楽曲ながらもヘヴィーなギターリフが楽曲の軸となっています。

その傾向は後半も続き、「10,000Feet」もヘヴィーなギターでゆっくり展開されるダイナミックなナンバー。シンセの音を加えた分厚いサウンドが楽曲にスケール感を与えています。ラストを締めくくる「Neptune」もゆっくりとへヴィーなギターサウンドでスケール感を持って聴かせる楽曲。10分にも及ぶ長尺の楽曲で、全編ダークなサウンドで、どこか怪しげに展開されるサウンドに最後まで惹きつけられる楽曲に仕上がっています。

そんな感じでエレクトロサウンド主体だった前作とはうってかわってロックサウンドが主体となった今回のアルバム。ただ、アルバムとして前作と並べて聴くと、方向性的には意外と近いものも感じます。まず共通点としては前作同様、どこか漂う80年代的な空気感。前作もニューウェーブな作風がどこか80年代的な空気を感じさせるものだったのですが、今回のアルバムに関してもハードロックなサウンドにはどこか80年代的な空気も感じられます。

また、ポップでインパクトあるメロディーラインを聴かせるという点も共通項。ただ、この点に関しては前作の方がより美しいメロディーラインを前に押し出しており、インパクトの点では前作の方が上だったかも。もっとも今回のアルバムでも十分ポップなメロを聴かせてくれており、その魅力を楽しめる作風には仕上がっているのですが。

売上的にもこのアルバムでバンド初となるイギリスの公式チャートで1位を獲得したとか。どちらかというと前作の出来の良さが今回のアルバムの売上に反映されたような感じも強いのですが、それだけ多くのファンが注目したアルバムだったということなのでしょう。もちろん、1年間で2枚のアルバムを作り、そしてどちらも傑作だったという事実からもバンドとしての勢いを感じさせます。彼らの活躍はまだまだ続きそうです。

評価:★★★★★

FOALS 過去の作品
TOTAL LIFE FOREVER
Holy Fire
Everything Not Saved Will Be Lost Pt.1

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2019年12月19日 (木)

話題のグループからのソロデビュー

今週のHot Albums

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

人気グループからのソロデビュー作です。

今週1位を獲得したのは莉犬「タイムカプセル」でした。動画配信や歌唱動画の投稿などで人気を博したグループ、すとろべりーぷりんすのメンバーであり、本作がソロデビュー作となります。CD販売数1位、PCによるCD読取数5位の一方、ダウンロード数は30位とネット出身の割にはダウンロードが弱いのは、手元にフィジカルを持っておきたい熱狂的なファンが多いという、アイドル的な人気が強いからでしょう。オリコン週間アルバムランキングでは初動売上6万3千枚で2位初登場。

2位はご存じ人気女性声優、水樹奈々「CANNONBALL RUNNING」。途中、ベスト盤を挟みつつ、約3年ぶりとなるニューアルバム。CD販売数、ダウンロード数、PCによるCD読取数がいずれも3位ながらも総合順位は2位となりました。オリコンでは初動売上3万5千枚で3位初登場。直近のベスト盤「THE MUSEUM III」の初動売上4万5千枚からも、オリジナルアルバムとして前作となる「NEOGENE CREATION」の4万6千枚(2位)からもダウンしています。

3位は関ジャニ∞、NEWSのメンバーとして活動した後、今年9月にジャニーズ事務所を退社した錦戸亮のソロデビューアルバム「NOMAD」が獲得。CD販売数は2位ながらもダウンロード数4位、PCによるCD読取数9位で総合順位は3位という結果に。オリコンでは初動売上7万6千枚で、見事1位を獲得しています。

続いて4位以下の初登場盤です。まず4位にとんねるずの木梨憲武によるアルバム「木梨ファンク ザ・ベスト」がランクイン。10月に配信限定でEP盤「木梨ファンク 〜NORI NORI NO-RI〜」をリリースしましたが、本作はそのEPに収録された4曲を含む、木梨憲武単独名義では初となるフルアルバム。B'zの松本孝弘や久保田利伸、星野源、藤井フミヤなど豪華なメンバーがズラリと並んでいます。さすが木梨憲武といった感もある一方、有名人とのつながりをやたら強調するのは、良くも悪くも昔からのとんねるずらしい感じも…。CD販売数は10位、PCによるCD読取数は47位に留まりましたが、ダウンロード数では1位を獲得。総合順位でも4位に食い込みました。最近、人気の凋落ぶりがネタにされることの多くなったとんねるずですが、やはりまだまだその人気は根強いようです。オリコンでは初動売上1万枚で8位初登場。

5位にはサンダードラゴン from SUPER★DRAGON「TRIANGLE –THUNDER DRAGON-」がランクイン。スターダストプロモーション所属の男性アイドルグループSUPER★DRAGONのメンバーのうち、年少5人による別働ユニットによるミニアルバム。CD販売数4位、そのほかはランク圏外という結果ながらも総合順位で5位にランクインです。オリコンでは初動売上1万9千枚で4位初登場。先週は同じくSUPER★DRAGONのメンバーのうち、年長4人からなる別働ユニット、ファイヤードラゴン from SUPER★DRAGONのミニアルバム「TRIANGLE -FIRE DRAGON-」がリリースされていますが、同作の初動6千枚(20位)から大幅にアップ。メンバー内での人気格差が露骨に出てしまった感があります。

7位初登場はシンガーソングライダー秦基博「コペルニクス」。途中、オールタイムベストのリリースがあったこともあり、オリジナルアルバムとしては約4年ぶりの新作となります。CD販売数6位、ダウンロード数9位、PCによるCD読取数で7位獲得。オリコンでは初動売上1万3千枚で6位初登場。直近作のベスト盤「All Time Best ハタモトヒロ」の初動4万2千枚(1位)からも、オリジナルとしては前作の「青の光景」の初動4万2千枚(2位)からも大きく初動売上枚数を落とす結果となりました。

初登場最後、8位には女性5人組のボーカルグループLittle Glee Monster「I Feel The Light」がランクイン。全5曲入りのEP盤。表題曲はなんと、かのEarth,Wind&Fireとコラボレーションを果たしたという意欲作となっています。CD販売数は5位ながらもダウンロード数22位、PCによるCD読取数は29位となり、総合順位は8位に留まりました。オリコンでは初動売上1万4千枚で5位初登場。直近のフルアルバム「FLAVA」の初動5万2千枚(1位)からはダウンしています。

最後にロングヒット盤ですがOfficial髭男dism「Traveler」は今週、7位から6位にアップ。PCによるCD読取数は1位をキープしているほか、ダウンロード数も5位から2位にアップ。Hot100でも「Pretender」が快進撃を続ける彼らですが、Hot Albumsでも彼らの快進撃は続きそうです。

今週のHot Albumsは以上。チャート評はまた来週の水曜日に!

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2019年12月18日 (水)

再び1位返り咲き

今週のHot100

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

3週ぶり3度目の1位獲得となります。

今週1位はOfficial髭男dism「Pretender」が通算3度目の1位獲得。年末に向けて、人気がさらに加速している感があります。ストリーミング数は今週も1位を獲得したほか、You Tube再生回数、カラオケ歌唱回数も1位獲得。ダウンロード数も4位につけてきたほか、ここにきてラジオオンエア数も20位につけてきており、今年1年の振り返りという意味でもこの曲が取り上げられる機会が増えてきたのでしょう。年末の賞レース、さらには紅白と、さらに彼らの人気は続きそうです。

ただし「イエスタデイ」は6位から8位、「宿命」は7位から9位にダウン。ストリーミング数は今週も「イエスタデイ」3位、「宿命」4位につけているのですが、順位的には徐々にダウンしてきています。もっとも、ここらへんの曲も年末に取り上げられる機会も増えてきそうで、ランクアップも期待できそう。ここでふんばるか、このままフェイドアウトするのか…注目です。

2位初登場は名古屋を拠点とする男性アイドルグループMAG!C☆PRINCE「Try Again」。ただ、CD販売数は1位を獲得したものの、それ以外のチャートがすべてランク圏外という、CDをファンズアイテムとして購入する一部の固定ファン限定ヒットという典型的なチャートパターンになっています。オリコン週間シングルランキングでは初動売上6万4千枚で1位獲得。前作「ゴメン、、離したくない」の8万3千枚(2位)からダウン。

3位はKing Gnu「白日」が先週と変わらず同順位をキープ。ストリーミング数及びYou Tube再生回数はいずれも2位、ダウンロード数は5位といずれもすぐ上の順位が「Pretender」となっており、なかなかヒゲダンの壁を打ち崩せない状況が続いています。年末から年始にむけて、この2曲のデッドヒートが注目されそうです。

続いて4位以下の初登場曲です。まず5位にsumika「願い」が先週の25位からCDリリースにあわせてランクアップし、ベスト10に初登場してきました。テレビ朝日系ドラマ「おっさんずラブ-in the sky-」主題歌。冬の季節をイメージした暖かい雰囲気のミディアムポップ。CD販売数7位、ダウンロード数9位、ストリーミング数12位、ラジオオンエア数13位、Twitterつぶやき数17位。一方、PCによるCD読取数では見事1位を獲得しています。オリコンでは初動売上1万7千枚で6位初登場。前作「イコール」の1万5千枚(7位)からアップ。

7位には女性シンガーLiSA「unlasting」が先週の97位からCDリリースにあわせてランクアップ。アニメ「ソードアート・オンラインアリシゼーション」エンディングテーマ。エキゾチックな雰囲気で哀愁感たっぷりのダイナミックな良くも悪くもアニソンらしいバラードナンバー。CD販売数4位、PCによるCD読取数2位、Twitterつぶやき数3位を獲得。一方、ダウンロード数は15位に留まり、総合順位も7位となりました。ちなみにLiSAは、先週ベスト10に返り咲いた「紅蓮華」も6位にランクイン。先週の5位からワンランクダウンながらも2週連続のベスト10ヒットとなり、今週LiSAは2曲同時ランクインとなっています。ちなみに「紅蓮華」も通算5週目のベスト10ヒットながら、年末にむけてロングヒットの様相を見せていますが、ストリーミング数で5位を記録している一方、You Tube再生回数は43位とお茶の間レベルへの波及はいまひとつ。今後、紅白出場などで、いままでのアニメファン層以外のリスナー層も開拓できるかがカギとなりそうです。

一方、今週はベスト10返り咲き組も。三代目J Soul Brothers from EXILE TRIBE「冬空」がCDリリースにあわせて19位から4位にランクアップ。2週ぶりのベスト10返り咲きとなりました。CD販売数2位、PCによるCD読取数で5位を記録。一方、ダウンロード数26位、ストリーミング数29位、Twitterつぶやき数は43位に留まり、総合順位は4位に。オリコンでは初動売上5万3千枚で2位初登場。前作「SCARLET feat.Afrojack」の6万2千枚(2位)からダウンしています。

そしてロングヒット曲。今週は初登場が比較的多かった影響で、残念ながらランクダウンしてしまったロングヒット曲も目立ちます。あいみょん「マリーゴールド」は8位から10位にダウン。ついに後がなくなりました。彼女は残念ながら今年の紅白出場を逃し、年末に大きくランクアップしてくる要素も少ないため、ちょっと厳しいか?ただストリーミング数6位、You Tube再生回数3位とまだまだがんばっているのですが…。

さらに今週、ついに米津玄師「馬と鹿」が9位から11位にランクアップし、ベスト10落ち。さらにFoorin「パプリカ」も10位から13位にダウンです。ただ、Foorinは紅白出演を決めていますし、米津玄師も今年話題のミュージシャンの一人なだけに、年末にむけて再度のランクアップもありそうです。なにげに米津玄師は「Lemon」もいまだに14位にランクインしており、こちらの返り咲きも可能性がありそう…。

今週のHot100は以上。明日はHot Albums!

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2019年12月17日 (火)

ミュージシャンとしての矜持を感じる

Title:Same Thing
Musician:星野源

すっかり国民的スターとしてその地位を確立した星野源。音楽ファンならご存じかと思うのですが、もともと彼はインストバンドSAKE ROCKのメンバーとしてデビューしており、本籍地は間違いなくミュージシャンであり、かつ以前から非常に高い評価を受ける音楽を作り続けていました。ただ、最近は俳優などマルチタレント的な活動も目立ち、一般的に星野源という名前が売れ出したのもどちらかというと俳優としての活躍があったから。それだけにひょっとしたら彼の音楽活動のことを、俳優などで売れてきたタレントが片手間に音楽活動をやっている、という勘違いをしているような方もいるかもしれません。

今回紹介するのは10月に急きょリリースされた4曲入りのEP盤。ただ今回の作品は「売れっ子ミュージシャン」というイメージが強くなった星野源が、「売れっ子」のイメージにとらわれず、音楽的な挑戦をした作品になっているように感じました。そもそも1曲目に収録されているタイトルチューン「Same Thing」は、最近注目を集めているイギリスのインディーロックバンドSuperorganismがゲストで参加。当サイトでも紹介したことあるミュージシャンですが、自由な曲作りで、いかにもインディーらしいロックバンド。楽曲的にもSuperorganismの色合いの濃い、アバンギャルドさを感じるポップチューンになっています。そんな中でもしっかり星野源としての色も入れているのですが、最近の星野源のヒット曲と比べると、あきらかに異質な楽曲に仕上がっています。

2曲目「さらしもの」も今、話題のラッパー、PUNPEEが参加。ループするトラックといい、HIP HOP色の強いナンバーに。1曲目に比べると、星野源の色合いが強い楽曲なのですが、それでもHIP HOPにグッと寄った作品になっており、星野源の音楽的な挑戦を強く感じさせます。さらに3曲目「Ain't Nobody Know」も、新進気鋭のイギリスのシンガーソングライターTom Mischが参加。こちらも最近のR&Bの流行を積極的に取り入れたような楽曲になっており、彼の新しい音楽に対する貪欲さを感じさせるポップチューンになっています。

そして最後を締めくくる「私」はアコースティックギター1本で聴かせるフォーキーなナンバー。ここ最近、ホーンセッションなどを取り入れて分厚いサウンドの分厚い曲作りが目立つ彼でしたが、ブレイク前は比較的アコースティックなサウンドでシンプルな曲調が彼の音楽の特徴でした。今回のラストソングはまさにそんなブレイク前の作風を彷彿とさせる楽曲。原点回帰的なものを感じさせますし、また、その曲が「私」というタイトルをつけて、内省的な歌詞を聴かせており、「国民的スター」となった今、あえて自身を見つめ直している彼の姿を垣間見ることが出来ます。

直近作「POP VIRUS」は傑作アルバムではあったものの、ここ最近の彼の人気から来る重圧感をアルバムから感じるような内容になっていました。今回のアルバムはそんな重圧感から解放されるべく、あえて「売れ線ミュージシャン」としての殻を取りのぞき、ミュージシャンとしてやりたいことをやった作品のように感じました。そういう意味では、国民的スターとして期待される曲をつくらなくてはいけない彼にとって、このアルバムからは、ミュージシャンとしての矜持を保つべくリリースされた作品のようにも感じました。今回の作品に収録されている楽曲は、ブレイクしてから星野源を知った人、俳優やタレントとしての彼を好きになった人にとっては、ちょっと違和感を覚える作品になっていたかもしれません。ただ、ブレイク前から彼のことを知っている人にとっては、間違いなく星野源の魅力を再認識できる傑作だったと思います。個人的にも音楽的自由度が低く感じられた「POP VIRUS」よりも好きな作品かもしれません。ただ、この方向性でフルアルバムを作るというのは、彼の立場的にも難しいんだろうなぁ、ということも感じてしまうのですが…。次のアルバムに今回のこの作品で取り入れた方向性が反映されることを期待しつつ、これからの星野源の活躍にも要注目です。

評価:★★★★★

星野源 過去の作品
ばかのうた
エピソード
Stranger
YELLOW DANCER
POP VIRUS


ほかに聴いたアルバム

或る秋の日/佐野元春

佐野元春のニューアルバムは、配信でリリースされた4曲に新曲4曲を加えた8曲入りのアルバム。半数が既発表曲ということでちょっと寂しく感じますし、また楽曲的にも「秋」というイメージで統一されているのか、爽快さもありつつも、全体的にはインパクトの強いメロディーラインはなく、全体的に地味な印象が。よく言えば「大人のポップス」というイメージでしょうか。かなり落ち着いた印象を受けるアルバムでしたが、それでも聴かせる部分はしっかりとツボをおさえてくるあたり、佐野元春の実力も感じられるアルバムでした。

評価:★★★★

佐野元春 過去の作品
ベリー・ベスト・オブ・佐野元春 ソウルボーイへの伝言
月と専制君主
ZOOEY
BLOOD MOON
MANIJU
自由の岸辺(佐野元春&THE HOBO KING BAND)

濡れゆく私小説/indigo la End

最近はゲスの極み乙女。やこのバンド以外にもジェニーハイやら美的計画やら数多くのプロジェクトを同時並行させて活動を進めている川谷絵音。そんな中でindigo la Endでも約1年3か月というスパンで新作をリリースするあたり、川谷絵音のワーカホリックぶりがうかがえます。今回もindigoらしい哀愁感たっぷりのメロディーラインが魅力的な作品に。ただ川谷絵音の脂がのりまくっていた前作「PULSATE」に比べると、今回も安定感はあるものの、若干、無難にまとめている感を感じてしまいました。相変わらずの悲しげなメロは印象的ながらも、似たタイプの曲がどうしても多くなってしまうのもマイナス要素。良作ではあると思うのですが…個人的にはそろそろ川谷絵音も手を広げすぎず、ゲスとindigoの活動に注力した方がいいように思うのですが…。

評価:★★★★

Indigo la End 過去の作品
あの街レコード
幸せが溢れたら
藍色ミュージック
Crying End Roll
PULSATE

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2019年12月16日 (月)

なんと今年2作目!

Title:Two Hands
Musician:Big Thief

ニューヨーク、ブルックリンを拠点としている4人組インディーロックバンドBig Thief。今年5月にリリースした2枚目のオリジナルアルバム「U.F.O.F.」が高い評価を受け、大きな話題となりました。当サイトでも紹介させていただきましたが、美しいメロディーラインにボーカル、エイドリアン・レンカーの歌声が強い印象に残る傑作アルバムで、個人的にも一気に気になるバンドとなりましたが、それからわずか5ヶ月。早くも3枚目となるニューアルバムがリリースされました。

今回のアルバムは前作が完成してからわずか5日後にレコーディングを開始したそうで、それだけ彼らのバンドとしての勢いを感じさせます。もちろんわずか5ヶ月というインターバルということもあり、基本的な方向性としては前作から大きな違いはありません。静かでフォーキーな雰囲気を持ったサウンドと美しいメロディーライン、そしてエイドリアンの感情のこもった静かで美しいボーカルを軸とした曲作り。前作「U.F.O.F.」を気に入った方なら、文句なしに今回のアルバムも気に入るのではないでしょうか。

ただ、サウンド的には終始アコースティックでフォーキーなサウンドを聴かせてくれた前作と比べると、バンド色が強く感じるようになりました。「Forgotten Eyes」もギターサウンドを聴かせる楽曲で、エイドリアンのボーカルにも力強さを感じさせますし、「The Toy」もエイドリアンの歌を静かに聴かせる楽曲ながらも、ギターサウンドを前に押し出したサウンドメイキングに。「Sholders」も力強いギターサウンドが前に押し出された楽曲になっていますし、「Not」もバンドサウンドをバックに男性コーラスを加えた力強い歌声が印象に残る楽曲に仕上がっています。

もちろんアコースティックなサウンドが主体となっている曲もあり、「Wolf」などはまさにアコギのアルペジオのフォーキーな楽曲を、透き通るようなエイドリアンのボーカルで聴かせるアコースティックなサウンド構成に。この曲なんかは実に美しいメロディーラインが印象に残る楽曲になっており、アルバムの中でも特に魅力的な傑作になっていました。

全体的にアコースティックな作風の曲が多く、時折入るギターサウンドがインパクトとなっていた前作とは対照的に、ギターサウンドが押し出した作品がメインとなっており、時折入るアコースティックな作風の曲がインパクトとなっていた今回のアルバム。そういう意味で前作とは対になっているアルバムと言えるでしょう。ただ、もっともフォーキーなメロディーラインは前作から変わりませんし、エイドリアンの感情がこもったボーカルの魅力も前作と同様。そういう意味では上でも書いた通り、アルバムとしての本質的な部分は前作から変わらないと言ってもいいでしょう。

前作が傑作だっただけに、今回のアルバムは前作に比べると日本のメディアでも比較的取り上げられる機会がグッと増えたように感じます。シンプルで美しいメロディーラインは広い層に支持されそうですし、インディーバンドとはいえ、この手のバンドにありがちなわかりにくさ的なものは皆無。そういう意味でも日本でも今後、さらに支持が広がりそう。前作が気に入った方にはもちろん、今回はじめて彼女たちの名前を知ったという方にも文句なしにお勧めできる傑作です。

評価:★★★★★

Big Thief 過去の作品
U.F.O.F.

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2019年12月15日 (日)

多彩なゲストが参加

Title:Juice B Crypts
Musician:BATTLES

デビュー以来、唯一無二の音楽性で多くの音楽ファンから高い支持を集めているアメリカのエクスペリメンタルロックバンド、BATTLES。今回リリースされた約4年ぶりのニューアルバムですが、まず大きな特徴として非常に多くのゲストが参加したアルバムとなっていました。Yesの初代ボーカリスト、Jon Andersonに、ポストパンクバンドLiquid LiquidのSal Principato、台湾のエクスペリメンタルロックバンド落差草原WWWWやアメリカはシアトル出身のHIP HOPデゥオ、Shabazz Palacesなど、多彩なミュージシャンがズラリと並び、いままでにない賑やかなラインナップのアルバムに仕上がっています。

まず全体的に言えば、ダイナミックなバンドサウンドで力強い演奏を聴かせるスタイルは健在。さらにエレクトロサウンドを入れつつ、複雑な構成になっているスタイルも、BATTLESらしさを感じます。そんな彼ららしさを強く感じるのは表題曲の「Juice B Crypts」。ダイナミックなバンドサウンドにエレクトロの要素が入っている、いかにも彼ららしい楽曲なのですが、エレクトロサウンドにどこかユーモラスな要素も入る点が耳を惹く楽曲となっています。

このエレクトロサウンドにユーモラスなセンスを感じるのも今回のアルバムの特徴に感じられます。前述の表題曲に続く「Last Supper On Shasta Pt.1」もまさにそんなエレクトロサウンドにダイナミックなバンドサウンドを加えつつ、どこかユーモラスな雰囲気を感じさせる作品。その他の楽曲にしても、複雑な構成のサウンドを用いながらも、どこかユーモラスと、そしてそれに伴うポピュラリティーを感じさせる点が今回のアルバムの大きな魅力となっていました。

また、様々なゲストが参加したことにより、楽曲のバリエーションがグッと増えたのも今回のアルバムの大きな特徴でしょう。アメリカの女性シンガーであり、またマルチ楽器奏者であるXenia Rubinosが参加した「They Played It Twice」も彼女の伸びやかな歌声と、アバンギャルドさを感じるサウンドが魅力的。Jon Andersonに落差草原WWWWが参加した「Sugar Foot」もいきなり中国語のセリフからスタートし、エキゾチックさを醸し出しつつ、後半には、日本的な祭囃子のようなビートが飛び出したりしてきて、非常にユニークな作風になっています。

Sal Principatoが参加した「Titanium 2 Step」もファンキーなリズムが耳を惹く楽曲になっていますし、Shabazz Palacesが参加した「IZM」もBATTLESらしいダイナミックなバンドサウンドにラップが重なる楽曲になっています。さらに日本限定のボーナストラック「Yurt」には太鼓芸能集団「鼓童」のメンバー・住吉佑太が参加。音数を絞り空間を聴かせるようなサウンドに、和風の太鼓のリズムと横笛の音色が響く日本的な楽曲に。まあ、日本でのリリースを意識した作品なのですが、ボーナストラックにしておくには少々もったいない、非常に魅力的な楽曲に仕上がっています。

BATTLESらしさはそのままに、多彩なゲストが参加することにより音楽性がグッと広がったアルバムになっていた本作。ユーモラスな作品も含めて、意外とメロディアスでポピュラティーも感じさせるメロディーラインが入っているのも大きな魅力。今回、広がった彼らの音楽性が今後どのように展開していくのか、これからも楽しみになってくる作品でした。

評価:★★★★★

BATTLES 過去の作品
MIRRORED
GLOSS DROP
La Di Da Di


ほかに聴いたアルバム

Ghosteen/Nick Cave&The Bad Seeds Cave

オーストラリア出身のシンガーソングライターによるNick Caveによる「Nick Cave&The Bad Seeds Cave」名義のニューアルバム。ピアノやストリングスを使った荘厳な雰囲気のサウンドに、語り掛けるように美しく歌い上げるボーカルが魅力的。御年62歳のベテランシンガーらしく、声には張りがない部分もありますが、その分、渋さを感じさせるボーカルになっており、そんなボーカルと荘厳なサウンドがマッチ。決して派手さはないのですが、じっくりと聴き入りたいアルバムに仕上がっていました。

評価:★★★★

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2019年12月14日 (土)

2つの異なるスタイルで

今年、インディーズデビューから20年が経過(!)。デビュー当初の見立てと反して、未だに根強い人気で積極的な活動を続けるPOLYSICS。そんな彼らが、今年、なんとPOLYSICSと並行し、The Vocodersというバンドを立上げ、ポリと同時に活動を開始しました。この2つのバンド、例えば同じライブで前半がポリ、後半がThe Vocodersというスタイル…ではなく、完全に別バンドとして活動。ライブツアーもポリ、The Vocoders別々の会場を回り、ついにPOLYSICSとThe Vocoders同時に2枚のアルバムをリリースしました。

Title:In The Sync
Musician:POLYSICS

まずこちらが約2年ぶりとなるPOLYSICSのニューアルバム。こちらはいつも通りのPOLYSICS。イントロ的な1曲目「Broken Mac」に続いてはじまる「Piko」はタイトルからしてもポリらしいのですが、急かすようなリズムがコミカルなパンキッシュなナンバー。続く「Check Point」はシンセの音とギターサウンドで軽快かつハイトーンのボーカルもまじえてユニークに展開する、これまたPOLYSICSらしいポップチューンと続いていきます。

ただ今回のアルバムは特にThe Vocodersとの違いを意識したのか、POLYSICSのスタイルの中でも特にシンセの音とバンドサウンドでパンキッシュなサウンドを聴かせるようなナンバーが並んでいました。その後も「It's Noisy」のようなタイトル通りのノイジーギターでパンキッシュな曲や、ハードロックなギターでダイナミックに聴かせる「Frame On」のようにメロディーを聴かせる歌モノのスタイルではなく、アバンギャルドさも垣間見せつつコミカルさも感じるそのサウンドを聴かせるスタイルの曲が続きます。

今回のアルバムの中で唯一の「歌モノ」だったのが最後を飾る「Part of me」。実はこの曲、The Vocodersバージョンを同時に発表しており、両者の聴き比べが楽しめる楽曲。POLYSICSのアルバムの最後を飾りつつ、The Vocodersのアルバムの1曲目にもってくるなど、両者のつながりを意識したユニークな構成に。ポリのバージョンの方はメロを前に押し出しつつ、バンド色も強い楽曲になっていました。

The Vocodersとの差を明確にしようとした結果、歌モノでポップな楽曲が少なくなり、ポリのパンキッシュな側面が強調された今回の作品。ポリらしい作品には仕上がっていたのですが、個人的にはもうちょっとポップな歌モノが聴きたかったかも。ただ、The Vocodersと合わせて聴いてほしいという感じなのでしょうか。ある意味、POLYSICSの特色がより強調されていたアルバムに仕上がっていました。

評価:★★★★

POLYSICS 過去の作品
We ate the machine
We ate the show!!
Absolute POLYSICS
BESTOISU!!!
eee-P!!!
Oh!No!It's Heavy Polysick!!!
15th P
Weeeeeeeeee!!!
MEGA OVER DRIVE
ACTION!!!
HEN 愛 LET'S GO!
HEN 愛 LET'S GO! 2~ウルトラ怪獣総進撃~
What's This???
Replay!
That's Fantasitc!

Title:1st V
Musician:The Vocoders

そしてこちらがThe Vocodersのデビューアルバム。アルバムタイトルもジャケットも、POLYSICSの1stアルバム「1st P」を意識したような作品に仕上がっています。The Vocodersは「カフェテクノグループ」を自称しているバンドのようで、演奏スタイルもポリとは変えてきています。おなじみ黄色のつなぎにサングラスというスタイルのポリに対して、The Vocodersは赤いスーツでサングラスはなし。ライブも基本的に座って聴くスタイルのようで、ライブハウスで暴れさせるというスタイルのPOLYSICSのライブとは大きく異なります。

楽曲的にもバンド名の通り、メンバー全員がボコーダーを使い歌うスタイル。今回、POLYSICSとの共演となっている「Part of me」ではパンキッシュなポリのバージョンと比べると、BPMもちょっと落として、おとなしく聴かせるスタイルになっています。また、この曲に限らず「Catch On Everywhere」「New Melody」「Shizuka is a machine doctor」などPOLYSICSの曲のカバーも数多く収録。いずれもテンポを落としてパンク色を薄め、一方、テクノポップ色を強くした作風に仕上げています。

パンキッシュなバンドサウンドメインのPOLYSICSとはまた異なる音楽性を打ち出すことにより、ポリではできなかったスタイルに挑戦したバンド…といった感じなのですが、ただ率直に言うと、このスタイル、本当にポリでやれなかったのかなぁ、といった印象は受けてしまいます。基本的に打ち込み+バンドサウンドというスタイルはポリと一緒ですし、ポリのカバーにしても雰囲気は変えているものの原曲と比べてガラッと感じが変わった、という感じではありません。もっとも、楽曲だけではなくライブスタイルもPOLYSICSと大きく変えており、そういう側面も含めてPOLYSICSとしての活動と区別したかったのかもしれませんが。

ただ、全員がボコーダーで歌うというスタイルを取った結果、メロディアスなポップソングを目指しながら、いまひとつ歌が印象に残らない内容になってしまったのは残念。あえてボコーダーを使ったのもポリとは異なる特徴を付けたかったからなのでしょうか。歌モノでありつつボーカルにエフェクトをかけるスタイルを今後、どう生かしていけるのか…今後の課題のように感じました。

評価:★★★★


ほかに聴いたアルバム

Black Map/ストレイテナー

途中、ベスト盤のリリースを挟みつつ、オリジナル作としては「Future Soundtrack」以来、約1年4作ぶりとなる新作のミニアルバム。相変わらず曲によって出来栄えに差があり、1曲目「STNR Rock and Roll」は文句なしでかっこいいものの、日本語詞となった2曲目以降は悪くはないけど、シンプルで平凡なギターロックといった印象が。決して悪いわけではないのですが、いまひとつストレイテナーとしての個性を感じられなかったミニアルバムでした。

評価:★★★★

ストレイテナー過去の作品
Immortal
Nexus
CREATURES
STOUT
STRAIGHTENER
21st CENTURY ROCK BAND
Resplendent
Behind The Scene
Behind The Tokyo
COLD DISC
Future Soundtrack
BEST of U -side DAY-
BEST of U -side NIGHT-

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2019年12月13日 (金)

2019年最大の注目盤

Title:Traveler
Musician:Official髭男dism

2019年の音楽シーンを代表するミュージシャンと言えば、間違いなく彼らOfficial髭男dismでしょう。ご存じの通り、今年彼らがリリースした「Pretender」が大ヒットを記録。5月リリースのこの曲はいまだにチャートの上位をキープしています。さらに彼らがすごいのは、その後リリースされた「宿命」「イエスタデイ」も「Pretender」同様のロングヒットを続けている点。ベスト10のうち3曲をヒゲダンが独占し続けるチャートが続いていますし、特にBillboard Hot 100ではストリーミングチャートにおいてヒゲダンの3曲がベスト3を独占する事態が続いています。

そんな中、ついにリリースされたオリジナルアルバムは、まさに2019年最大の注目盤と言えるでしょう。特に、このアルバム、冒頭にいきなり「イエスタデイ」「宿命」と大ヒット曲を並べてきています。さすがに「Pretender」はアルバム後半に配置されており、アルバム全体のバランスを保ってはいますが、インパクトあるヒット曲2曲をいきなり冒頭に持ってくるあたり、この2曲に頼らなくても、最後まで飽きさせずにアルバムを聴かせることが出来るという、彼らの自信を感じさせます。

実際、「イエスタデイ」「宿命」の後からも彼らの勢いを感じさせるバラエティー富んだポップチューンが並びます。ちょっとファンクの要素も入ったダンスチューン「Amazing」にミディアムテンポでムーディーな「Rowan」、シティポップ風の「最後の恋煩い」、ホーンセッションも入って分厚いサウンドも特徴的なロッキンなチューン「FIRE GROUND」など、バラエティー富んだ展開が続き、そして2019年を代表するヒットチューン「Pretender」に流れ込みます。この様々なタイプの音楽性から彼らの音楽的な素養の深さを感じます。

そんな感じで、特にブラックミュージックからの影響を含め、Official髭男dismからは音楽的な深いバックボーンを感じる部分が少なくありません。ただ一方、比較的シンプルなバンドサウンドでメロディーラインもインパクトあってわかりやすいメロディーライン。楽曲的には間違いなくJ-POPの範疇に入る楽曲になっています。前作「エスカパレード」の感想にも書いたのですが、個人的にはもっとソウルやR&Bの要素を前に出した方がおもしろいのでは?と思ってしまいますが、「Pretender」の大ヒットでもわかるように、そういったジャンルは隠し味的な感じで抑えておき、J-POP的なわかりやすさを前に押し出した方が多くのリスナーの支持を得られるのでしょう。今回のアルバムに関しては、多くのリスナーの支持を得られている彼らならではの、ある種の勢いを強く感じました。

もっともJ-POPのミュージシャンというと、なんとなくロックっぽい音が鳴っているルーツレスなバンドが多い中、彼らに関してはわかりやすいポップなメロの向こうに間違いなくソウルやR&B、ファンクの要素を感じられます。そしておそらく今後の彼らにとってそういう深い音楽的な素養が大きな武器になるでしょう。そういう意味でもまだまだ彼らの可能性は大きく広がっているように感じます。2019年を代表するミュージシャンとなった彼らですが、来年以降もその勢いは続きそうです。

Official髭男dismというと、シングル「ノーダウト」がフジテレビの月9ドラマの主題歌になったりと、ここ最近、ブレイクの最右翼と言われ続けてきました。今年はまさにその期待に応える結果が出せた訳ですが…ただ、それにしてもここまで大ヒットになるとは思いもしませんでした。しかし、このアルバムもそんな彼らの今の勢いを強く感じさせる傑作に仕上がっていました。これからの彼らの活躍も楽しみになってくる、そんな1枚でした。

評価:★★★★★

Official髭男dism 過去の作品
エスカパレード

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2019年12月12日 (木)

節目のアルバムが1位獲得。

今週のHot Albums

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

今週の1位は結成20周年、デビュー15周年、10枚目という節目のアルバムが獲得しました。

今週1位はUVERworld「UNSER」が獲得。前述の通りの節目となるアルバムで、CD販売数、ダウンロード数1位、PCによるCD読取数3位で、総合順位で見事1位を獲得しています。オリコン週間アルバムランキングでは初動売上5万6千枚で1位初登場。ただ、売上枚数は直近作「ALL THE BEST」の7万9千枚(2位)からも、オリジナルアルバムでは前作となる「TYCOON」の8万2千枚(2位)よりもダウンしています。

2位は男性アイドルグループBLACK IRIS「METEOR」が初登場。CD販売数2位、そのほかのチャートでは圏外だったのですが、総合順位では2位に食い込みました。本作がデビュー作となります。オリコンでは初動売上2万3千枚で3位にランクイン。

3位には椎名林檎のベストアルバム「ニュートンの林檎~初めてのベスト盤~」が先週の5位からランクアップして2週ぶりにベスト3返り咲き。CD販売数は11位にダウンしてしまいましたが、ダウンロード数が6位から3位と順位を伸ばし、再び上位に食い込んできています。ベスト盤という内容だけに今後のロングヒットも期待できそうです。

続いて4位以下の初登場盤です。まず4位にTHE YELLOW MONKEY「30TH ANNIVERSARY 『9999+1』-GRATEFUL SPOONFUL EDITION-」がランクイン。今年4月にリリースしたアルバムに、デモ音源やライブのSEとして使われた曲4曲を追加。さらに今年のアリーナツアーから宮城セキスイハイムスーパーアリーナのライブの模様を収録したDVDを付けたスペシャルエディション。要するに、すでにリリースされたアルバムの焼き直しで、ファンにとっては同じ音源の買いなおしを強いられる訳で、時々この手の商法は見かけるのですが、THE YELLOW MONKEYがこのようなやり方をするのは非常に残念に感じます。CD販売数3位、PCによるCD読取数58位。オリコンでは元のアルバム「9999」と同じくくりになるようで、今週2万3千枚を売り上げ、2位にランクアップという結果となっています。

6位には愛島セシル(鳥海浩輔)「うたの☆プリンスさまっ♪ソロベストアルバム 愛島セシル『☆light ☆night』」が初登場。女性用恋愛アドベンチャーゲーム「うたの☆プリンスさまっ♪」のキャラクターによるソロアルバム。CD販売数4位ながらPCによるCD読取数は22位に留まり、総合順位もこの位置になりました。オリコンでは初動売上2万2千枚で4位初登場。同シリーズの前作、来栖 翔(下野鉱)「うたの☆プリンスさまっ♪ソロベストアルバム 来栖 翔『Sweet Kiss』」の3万枚(1位)よりダウンしています。

8位には「戦姫絶唱シンフォギアXD UNLIMITED キャラクターソングアルバム2」がランクイン。アニメ「戦姫絶唱シンフォギア」から派生したスマートフォンゲーム「戦姫絶唱シンフォギアXD UNLIMITED」のキャラクターソングを集めたアルバムの第2弾。CD販売数は12位、PCによるCD読取数は25位に留まったものの、ダウンロード数で4位を記録し、総合順位ではベスト10入りを果たしました。オリコンでは初動売上1万枚で12位初登場。同シリーズの前作「戦姫絶唱シンフォギアXD UNLIMITED キャラクターソングアルバム1」の1万4千枚(7位)からダウンしています。

最後、10位には和楽器バンド「REACT」が先週の21位からランクアップして初登場から2週目にしてベスト10入り。和楽器奏者を中心としたメンバーでバンドを結成し、ポップミュージックを奏でることで話題のバンド。先行配信が行われた影響で、Hot Albumsでは先週の時点で初登場でランクインしていました。今週はCDリリースに伴い、CD販売数5位、PCによるCD読取数61位に食い込みましたが、ダウンロード数は先週の10位から19位にダウン。総合順位ではギリギリベスト10入りという結果となっています。オリコンでは初動売上1万6千枚で5位初登場。前作「オトノエ」の3万1千枚(2位)よりダウンしています。

そしてロングヒット組はOfficial髭男dism「Traveler」が今週は先週の8位から7位にアップ。PCによるCD読取数は今週も1位をキープ。まだまだ強さを感じさせる結果となっています。

今週のHot Albumsは以上。チャート評はまた来週の水曜日に!

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2019年12月11日 (水)

ロングヒット組の強さが目立つ

今週のHot100

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

年末に向けて紅白出場勢を中心としたロングヒット組の強さが目立っていますが、今週も、新譜が少な目だった影響もあり、返り咲き組を含めてロングヒット勢がベスト10を占めました。

そんな中で1位を獲得したのはジャニーズ勢。Kinki Kids「光の気配」。CD販売数、PCによるCD読取数及びTwitterつぶやき数で1位獲得。ラジオオンエア数でも9位を獲得し、総合順位では見事1位となりました。最近はソロでの活躍が目立つ彼ら。Kinki Kidsとしては約1年ぶりのシングルとなります。既にベテランといっていい彼ららしい、落ち着いた雰囲気で歌を聴かせるバラードナンバーに。作詞はなんとあの坂本真綾が手掛けています。オリコン週間シングルランキングでも初動売上17万1千枚で1位を獲得。前作「会いたい、会いたい、会えない。」の初動18万枚(1位)よりダウンしています。

そして2位は相変わらずの強さを見せるOfficial髭男dism「Pretender」。今週もストリーミング数のほか、You Tube再生回数、カラオケ歌唱回数で1位をキープ。ダウンロード数も5位から4位にアップし、総合順位では先週と変わらず2位を維持しています。ただ「イエスタデイ」は5位から6位に、「宿命」は6位から7位に下落傾向。とはいえ、ストリーミング数では3位「イエスタデイ」4位「宿命」と先週から順位をキープ。You Tube再生回数も「イエスタデイ」は先週かわ変わらず3位、「宿命」は5位からダウンしたものの7位をキープとまだまだ強さを感じる結果となっています。

さらにここに来て人気が再燃しているKing Gnu「白日」が先週と変わらず3位をキープ。ダウンロード数、ストリーミング数、You Tube再生回数は先週と変わらず2位。ここに来て、一気にお茶の間レベルの知名度が上がって来た感があり、まだまだロングヒットが続きそうです。

続いて4位以下の初登場曲ですが、今週の初登場は1曲のみ。それが4位初登場FANTASTICS from EXILE TRIBE「Time Camera」。EXILEの弟分的なダンスグループ。CD販売数は2位でしたが、そのほかはラジオオンエア数76位、PCによるCD読取数27位、Twitterつぶやき数41位に留まり、総合順位も4位となりました。オリコンでは初動売上5万3千枚で2位初登場。前作「Dear Destiny」の6万8千枚(2位)よりダウンしています。

今週の初登場は1曲のみでしたが、一方でベスト10返り咲き組も。まず5位にLiSA「紅蓮華」が先週の15位からランクアップ。3週ぶりのベスト10返り咲きで、5位は自己最高位タイとなります。特にダウンロード数が13位から5位にアップ。紅白出場をきっかけに配信を中心としてロングヒットとなっているようです。

また10位にはFoorin「パプリカ」が先週の14位からランクアップし、こちらも3週ぶりのベスト10返り咲き。これで6度目のベスト10返り咲きとなっています。主に子供達から絶大な支持を得ているこの曲ですが、こちらも今年の紅白出場をきっかけにさらにロングヒットを続けていきそうです。

一方ロングヒット組ではあいみょん「マリーゴールド」が先週の9位から8位にアップ。米津玄師「馬と鹿」も10位から9位にアップし、今週、新譜が少な目だった影響もあり土俵際の粘り腰を見せています。ただ「マリーゴールド」はストリーミング数5位、You Tube再生回数4位、「馬と鹿」はダウンロード数1位、PCによるCD読取数2位、You Tube再生回数6位と上位をキープしており、まだまだ強さも感じます。

今週のHot100は以上。明日はHot Albums!

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2019年12月10日 (火)

良質なポップソングは変わらず

Title:見っけ
Musician:スピッツ

この間、久しぶりにスピッツのライブに行ってきました。ここでも紹介したフラワーカンパニーズの30周年記念ライブだったのですが、イベントライブのゲストということで持ち時間は45分。「涙がキラリ☆」や「メモリーズ」などといったちょっと懐かしい代表曲を披露してくれたのですが、その一方でこのアルバムにも収録されている、現時点での直近のシングル「優しいあの子」や、「見っけ」の収録曲(多分「ラジオデイズ」だったと思う)も披露してくれました。アルバムリリース直前のステージということもあったのですが、アウエイの観客を(といってもスピッツ目当ての人も相当多かったのですが…)引き付ける必要のあるイベントライブのゲストで、最新アルバムからの曲を披露するあたりにベテランらしからぬ攻めの姿勢を感じさせます。ただライブで聴いてあらためて驚いたのが、彼らの過去の代表曲と最新アルバムからの楽曲をライブで並べて聴いても全く違和感がないという事実でした。

本作は途中、シングルコレクションのリリースもあり、前作「醒めない」から約3年2か月ぶりとなるオリジナルアルバム。ただ、ここ最近、オリジナルアルバムはほぼ3年毎のリリースとなっていたため、ある意味、いつも通りのリリースパターンと言えるかもしれません。その間リリースした「優しいあの子」はNHK朝の連続テレビ小説「なつぞら」の主題歌に採用されるなど、スマッシュヒットを記録。彼らの代表曲のあたらしい1曲となりました。もちろん本作には同曲も収録しています。

そしてリリースされた本作は、前述の通り、まさにいままで通りのスピッツ。いきなり1曲目からタイトル曲の「見っけ」からスタートするのですが、爽やかなメロディーで伸びやかに歌い上げる祝祭色を感じさせるナンバーはいかにも彼ららしい感じですし、続くヒット曲「優しいあの子」はタイトル通り、スピッツらしい優しさを感じる素敵なポップチューンになっています。

今回のアルバムの中で特に歌詞が印象的だったのが「ありがとさん」。楽曲のタイトルから受ける印象とは裏腹に、とても切ないラブソングで、別れた彼女との日々を思い出しつつ、彼女への感謝の気持ちを歌う曲で、その歌詞は聴いていて胸に突き刺ささってきます。また歌詞で言えば、「花と虫」「はぐれ狼」は隠喩的な歌詞が印象的。ここらへんの歌詞の世界観にも非常にスピッツらしさを感じます。

メロディーラインの良さでいえば、もちろんどの曲も素晴らしいのですが、そんな中でも「ブービー」のしんみり聴かせつつ、胸の奥底の弱い部分をついてくるような切ないメロディーラインに心惹かれるものがありました。「初夏の日」のアコギでフォーキーな雰囲気、かつ爽やかに聴かせるメロディーも印象的。またほかにもワルツのリズムで哀愁感たっぷりに聴かせる「まがった僕のしっぽ」など、勢いがあり、フックの効いたメロディーを聴かせるアップテンポな曲ももちろんですが、それ以外の曲にこそ、彼らのメロディーラインの魅力を強く感じることが出来ました。

アルバム全体としては目新しい部分はほとんどありません。「大いなるマンネリ」と言えるかもしれません。それにも関わらず、先日のライブでも感じたように過去の作品と並べて聴いても違和感ゼロ。マンネリな印象もほとんど受けません。それはメロディーにしろ歌詞にしろ、非常にクオリティーが高く、ポップソングとして強度が高いからでしょう。全体的に地味目に感じた前作「醒めない」と比べると、「優しいあの子」や「ラジオデイズ」、あるいは「ありがとさん」のようなメロディー、アレンジ、歌詞の側面でもインパクトが増した感じもしますし、また、実にスピッツらしい曲が並ぶような作品になっていたようにも感じました。いまだに若手のようなみずみずしさを感じさせるスピッツ。今回も文句なしにお勧めできる傑作でした。

評価:★★★★★

スピッツ 過去の作品
さざなみCD
とげまる
おるたな
小さな生き物
醒めない
CYCLE HIT 2006-2017 Spitz Complete Single Collection


ほかに聴いたアルバム

この雨に撃たれて/cali≠gari

cali≠gariのニューアルバムは「雨三部作」と銘打ち、既存曲「冷たい雨」「続、冷たい雨」に新曲「この雨に撃たれて」を収録。「冷たい雨」「続、冷たい雨」のメドレーにそれぞれのカラオケも収録した全7曲入りのミニアルバム。その「雨三部作」は爽やかな雰囲気も感じつつ、タイトルから想像できるような哀愁を感じるメロディーラインが耳に残るナンバー。cali≠gariらしさをしっかりと感じられる楽曲になっていました。

ただ今回のアルバムでよかったのは、この3曲ももちろんのこと、「夕立盤」に付属された、10年前にリリースされたアルバム「10」を一部新録し、全曲リミックスした「10-Rebuid」。パンキッシュな楽曲からエレクトロチューン、アバンギャルドなポップまでcali≠gariの幅広い音楽性を感じられる作品となっており、個人的には本編以上に気に入った内容になっていました。

評価:★★★★

cali≠gari 過去の作品
10
cali≠gariの世界

11
12
13

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2019年12月 9日 (月)

the pillowsのアナザーベスト的な

Title:王様になれ オリジナルサウンドトラック
Musician:the pillows

ここのサイトでも以前紹介しましたが、9月に公開されたthe pillowsの結成30周年を記念して公開された映画「王様になれ」。今回紹介するのはその映画のサントラ盤です。映画の中でも数多くのthe pillowsの名曲が使われ、ライブシーンも使われてきましたが、今回のサントラ盤も劇伴のインスト曲を集めたようなスタイルではありません。映画の中で使用されたthe pillowsの曲を収録しているほか、ライブ音源も収録。さらに映画の中でも登場したストレイテナーのホリエアツシによる「ストレンジカメレオン」のカバーやGLAYのTERUとJIROによる「スケアクロウ」のカバーも収録されています。

さて、このアルバムで特に特徴的だったのが全21曲中12曲を占めるthe pillowsの楽曲たち。そのうち「LITTLE BUSTERS」「この世の果てまで」はライブ音源が収録されているほか、「Sleepy Head」「ハイブリッドレインボウ」そして映画タイトルにもなった「王様になれ」は新録が収録されているなど、ファンにとってもうれしい内容となっています。

ただそれ以上にこのサントラ盤に注目したいのはその選曲。「ハイブリッドレインボウ」や最近、カバー曲がCMにつかわれて話題となった「Funny Bunny」、「LITTLE BUSTERS」や「I think I can」などといった代表曲が収録されている一方、アルバム収録曲でベスト盤などに収録されていない「MY FOOT」やカップリング曲「Sleepy Head」、さらにはライブ会場限定のシングル曲だった「どこにもない世界」などといった曲も収録され、単純なベスト盤とは異なるアナザーベスト的な選曲となっています。

今回のサントラ盤に使われたのは映画にも使用された曲なのですが、今回収録された楽曲の多くが、がんばっているのにどこか世間になじめず、上手くいかない人たちへのエールという映画のテーマに沿った歌詞の曲になっています。また、そのような歌詞のテーマはthe pillowsの中でも、おそらくファンに最も支持されているようなテーマであり、また彼らの歌詞の世界の「コア」とも言えるテーマ。今回収録されている曲は、そんなもっともthe pillowsらしさを体現化した曲を集めた選曲とも言える内容になっていました。

映画の中でヒロインが主人公にthe pillowsを知るために最初に聴くべきアルバムを貸していましたが、このアルバムはそんなアルバムの1枚に加わりそうな、the pillows初心者が彼らがどんなバンドが知るためにはうってつけの選曲のアルバムとなっていました。the pillowsも結成30年というベテランバンドとなり、代表曲も多くなってきましたが、そんな数多く代表曲の中で、特にthe pillowsらしい曲をギュッと1枚のアルバムに凝縮してセレクトした内容となっているため、the pillows初心者が最初に手を出すには最適の1枚と言えるでしょう。

ちなみにそんなおそらくthe pillowsらしさを最も体現化している曲のひとつである「ストレンジカメレオン」もthe pillowsバージョンで聴きたかったな…という点はちょっと残念。カバー2曲に関しても、どちらも素晴らしいカバーであることは間違いないし、映画の中でも効果的につかわれていたカバーなので、サントラに収録するのは当然の選択肢であるのですが…。

一方、ライブ音源に関しては、これまたthe pillowsというバンドのライブの魅力を知るという意味では絶好のセレクトと言えるでしょう。今回ライブ音源が使用されていたのは映画中で使用されていた、というのが最大の理由なのでしょうが、これにより彼らのライブの雰囲気も伝わってきます。まさに初心者が最初に聴くthe pillowsのアルバムとして実にふさわしい収録曲になっていました。

また劇伴曲のインストは全7曲。映画を見ていた方にとっては映画のシーンを彷彿とさせる曲ですし、また山中さわお作曲の曲だけにthe pillowsファンにとってもチェックしておきたい楽曲。もっとも楽曲的には1、2分程度の短い曲ですので、映画を見ていない方にとっても全体の流れを妨げない程度の長さとなっており、そういう意味では映画のサントラ盤でありがちな「映画を見ていない人にとっては退屈なインスト曲の連続」という感じにはなっていません。そういう点からも本作はthe pillows初心者にもお勧めできる内容と言えます。

といった感じで、まさにthe pillowsというバンドがどんなバンドか知るために最適なベスト盤的なアルバム。映画を見ていない方にも強くお勧めしたい作品になっていました。またファンにとっても新録やライブ音源もあり非常にうれしい内容に。そしてあらためて彼らの素晴らしさを実感できる、そんなアルバムでした。

ちみに映画を見た時の感想はこちらから。

評価:★★★★★

the pillows 過去の作品
LOSTMAN GO TO YESTERDAY
PIED PIPER
Once upon a time in the pillows
Rock stock&too smoking the pillows

OOPARTS
HORN AGAIN
トライアル
ムーンダスト
Across the metropolis
STROLL AND ROLL
NOOK IN THE BRAIN
REBROADCAST
劇場版「フリクリ オルタナ/プログレ」Song Collection「Fool on CooL generation」


ほかに聴いたアルバム

Melodrive/東京カランコロン

底抜けに楽しいポップチューンが大きな魅力のポップバンド、東京カランコロン。2017年からインディーレーベルのTALTOに活動を再開していますが、本作はミニアルバムとしてはTALTOで2枚となるニューアルバムです。本作もリズミカルでテンポのよい楽曲が多いのですが、一方でドリーミーなサウンドも目立ち、軽快なポップチューンがメインだったいままでの作品からバンドとして一歩、新たな歩みを開始したアルバムになっています。ただ、今回のアルバムは残念ながらいままでの彼女たちの作品で聴くことが出来たインパクトある底抜けの明るいポップチューンにはあまり出会えず。ポップアルバムとしては良質な内容だとは思うのですが、東京カランコロンとしての良さがあまり出ているとは言いがたいアルバムになっていました。

評価:★★★★

東京カランコロン 過去の作品
We are 東京カランコロン
5人のエンターテイナー
UTUTU
カランコロンのレンタルベスト
noon/moon
東京カランコロン01
わすれものグルーヴィ

season/マカロニえんぴつ

男性4人組ポップバンド、マカロニえんぴつのミニアルバム。本作はBillboard Hot Albumsでもオリコンチャートでのベスト10ヒットを記録し、一躍ブレイクを果たしました。実は彼ら、所属レーベルは前述の東京カランコロンと同じTALTO。東京カランコロンのライブを見た時に、一度彼らのステージも見たことあります。良質なポップソングを奏でるバンドながら、これといった特徴は薄いなぁ、という印象があったのですが…今回のオリジナルアルバムに関しても正直感想は一緒。良質なポップソングを奏でるバンドなのですが、これといった特徴もなく、なぜこれだけブレイクできたのか、若干不思議にも感じました。悪いバンドではないので、これからどう成長していくのか注目したいところです。

評価:★★★★

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2019年12月 8日 (日)

日本の辺境の地の音楽

今日紹介する2枚のアルバムはいずれも日本の伝統的な音楽を継承しているグループの作品。ただどちらもアイヌや奄美民謡と日本の辺境の地に息づいてきた音楽を今に伝えるグループで、いずれもアイヌの血を引き、自らもアイヌの音楽を世に伝えてきたミュージシャン、OKIが深くかかわった作品になっています。

Title:mikemike nociw
Musician:MAREWREW

まず本作は女性4人組によるグループ、マレウレウによる7年ぶりのアルバム。アイヌの伝承歌「ウポポ」の再生と伝承をテーマとして活動するグループだそうで、OKIがプロデューサーとして参加した作品。長らくメンバーのRimRimが活動を休止し、3人での活動を続けてきましたが、彼女が久々に復帰し、4人メンバーにて制作したアルバムとなっています。

楽曲的にはかなり癖のある独特な内容になっているのが特徴的。楽曲の構成はほぼボーカルのみのアカペラとなっており、所々に三味線的な弦楽器の音色やパーカッションがリズムとして入るだけ。独唱の曲もあれば、一方では4人のボーカルが重層的に重なる曲もあり、特にボーカルが重なるスタイルの曲ははっきりとしたメロディーラインがあるわけではなく、ある種の「うなり」のようなボーカルを聴かせており、独特の幻想的とすら感じるような内容になっています。

録音としてはフィールドレコーディングのような雰囲気をあえて残したであろう方法を取っており、楽曲によってはメンバーのやり取りなどがそのまま残っているような曲もあったりします。おそらくこのような録音方法を取ったのは、現場の雰囲気をそのまま残すことによって、彼女たちが歌っている音楽が、民衆の土着の音楽であるということをより強調したのではないでしょうか。実際、フィールドレコーディングのような録音方法のため、より民衆に息づいた音楽であるということを強く感じる部分もありました。

正直言うと、うねるような歌い方でありわかりやすいメロディーラインもありません。前述のように癖のある楽曲となっており、伝承歌「ウポポ」について詳しく知らないのですが、おそらく「ウポポ」を決して売れるためにわかりやすく解釈した、という感じではなく、むしろ伝統そのままに歌い継いでいるスタイルなのでしょう。そういう意味では決してわかりやすい音楽ではありませんし、万人向けといった感じではありません。どちらかというと興味がある方向け、といった感じでしょうか。ただうねるような伸びやかなボーカルと4人のコーラスワークは非常に素晴らしく、ちょっとしたトリップ感も味わえるような内容に。私たちがよく知るような民謡とも異なるスタイルの歌となっており、このような音楽が日本の片隅で歌い継がれてきたことにも興味のわくアルバムになっていました。

評価:★★★★

Title:Amamiaynu
Musician:Amamiaynu

で、こちらは奄美島唄を歌う朝崎郁恵を中心に結成された、奄美民謡とアイヌ音楽のコラボレーションというとてもユニークなユニット、Amamiaynuのアルバム。OKIもメンバーとして参加しているほか、マレウレウのメンバー、Rekpoも参加しており、今回紹介する2枚のアルバムはとても密接した関係にあるアルバムと言えるでしょう。

基本的には楽曲のスタイルとしては朝崎郁恵が奄美島唄を伸びやかなボーカルで歌いつつ、OKIの奏でるアイヌの伝統な弦楽器、トンコリを中心としたアイヌ音楽的なスタイルのアレンジがのった作品になっています。トンコリの音色に関して言えば「Ikyabiki no yaysama」「Kyuramun rimse」で聴かせる非常に力強い音色が印象に残ります。うねるようなトンコリのサウンドがとても独特で迫力満点。そのサウンドに負けない朝崎郁恵の伸びのあるボーカルも強いインパクトを与えています。

一方で「Miturasanmae kamuy samada」「Sengromui menoko」で聴かせるようなコーラスを重層的に重ねて幻想感を出しているスタイルは、上で紹介しているマレウレウの音楽の方法を引き継いでいるような感じでしょうか。独特なコーラスワークにユニークなものを感じさせます。

そして何と言ってもおもしろいのは、そんな奄美の島唄とアイヌ音楽を融合させながらも、その両者にほとんど違和感のない点でしょう。歴史も文化も全く異なるはずの両者の音楽が、こんなにも相性がいい、というのは非常に興味深い事実のように感じます。実はOKIは以前、沖縄民謡の大城美佐子とコラボアルバムをリリースしていたりします。同作は正直、沖縄民謡の色合いが強すぎたように感じたのですが、今回のユニットでは奄美とアイヌはよりうまく融合されていたように感じます。ただ、大城美佐子とコラボが行えたように、沖縄・奄美の音楽とアイヌの音楽は相性がいいのかもしれません。日本の辺境の2つの伝統的な音楽にどこか共通項があるという事実に非常に興味深さを感じさせます。

ちなみに一種独特で癖がある、という意味ではマレウレウと同様、本作も決してわかりやすいメロディーラインがあるわけではありません。ただ伝統をそのまま伝えようとするマレウレウと比べると、奄美とアイヌの融合という新しい音楽スタイルを模索する本作は一般リスナー層にも十分アピールできる、いい意味でのわかりやすさもありました。そういう意味では奄美民謡やアイヌ音楽に興味を持った入り口的にもお勧めできるアルバムかもしれません。非常におもしろい試みであり、かつその試みが成功しているアルバムだったので、これからも継続的に活動してほしいなぁ。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

NO DEMOCRACY/GLAY

デビュー25周年を迎えた彼らの最新作。「令和」という元号が発表された日に配信オンリーでリリースされた「元号」も収録。ただこの曲、「令和」という単語はもちろん入っておらず、新元号発表からわずか2時間後にリリースされたゴールデンボンバーの「令和」の前に完全にかすんでしまいましたね…。この「元号」や「反省ノ色ナシ」など社会派な曲も収録されているのですが、ただどちらも社会派を名乗るには非常に中途半端。特に体制や権力を批判したり皮肉っているわけでもなく、社会派をきどりながら誰も怒らせないような「忖度」しまくりのナンバーで、悪い意味でJ-POPの王道といった印象を受けました。

そういう意味では逆にアルバムの中盤あたりからは、ある意味25年前から良くも悪くも変化のない、王道のJ-POPナンバーが続き、いろいろと安心できる内容に。はっきり言えば目新しさはゼロなのですが、こういうナンバーをデビューから25年たった今でも臆面もなく作ることが出来るあたりが長年人気を保つ大きな要因なのでしょう。前作「SUMMERDELICS」はオルタナロック寄りにシフトした感の強いアルバムだったのですが、今回のアルバムはグッとJ-POP、もしくは歌謡曲の色合いが強くなった感じがします。ここらへんは前作と本作でバランスを取った感も。なんだかんだいって王道J-POP路線はそれなりに楽しめたのですが。

評価:★★★★

GLAY 過去の作品
GLAY
JUSTICE
GUILTY

MUSIC LIFE
SUMMERDELICS

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2019年12月 7日 (土)

インパクトあるポップなメロが魅力的

Title:Ode To Joy
Musician:Wilco

アメリカのオルタナティブロックバンド、Wilcoの約3年ぶりとなるニューアルバム。ここ最近、メンバーJeff Tweedyのソロアルバムのリリースが続いていたため、バンドのオリジナルアルバムとしてはちょっと久しぶりとなる新作。ユーモラスな不条理漫画がジャケットとなっていた前作から一転、本作はかな~りシンプルなジャケットのアルバムとなっています。

前作「Schmilco」はアルバムの内容としてはフォーキーで非常にシンプルな作風に仕上がっていました。それに続く新作で、かつこれだけシンプルなジャケットの作品。そのためか、今回のアルバムもまずパッと聴いた感じではシンプルな作風に感じられる作品になっています。

まず1曲目「Bright Leaves」は非常に重いドラムのリズムが鳴り響きながらも、サウンド的にはそれに静かなギターが加わるシンプルなサウンド。フォーキーでメロディアスな歌も印象的。ただ微妙にギターの音色が歪んでいるのが彼ららしくユニークに感じます。さらにそれに続く「Before Us」「One and a Half Stars」もアコギを中心としたシンプルでフォーキーな楽曲。ただ、力強いドラムの音やピアノの音なども加わり、楽曲全体としてはアコースティックな感覚ながらも分厚い音作りとなっているのが印象に残ります。

このアコースティックな手触りながらも力強いドラムの音やピアノの音などが加わり分厚い音になっているという点がこのアルバムを通じての最大の特徴。その後も「Quiet Amplifier」「Everyone Hides」「White Wooden Cross」など、同じようにアコギが入ってアコースティックな作風ながらも、様々な音が加わり分厚い音が印象的な作品が続いていきます。なおかつメロディーラインはフォーキーで爽やか、かつポップでメロディアスな点も大きな特徴え、「Everyone Hides」など、軽快なポップで楽しくなってきますし、「We Were Lucky」もしんみりとしたメロディーラインがどこかビートルズ風。さらに「Hold Me Anyway」は軽快で楽しいポップチューンに仕上がっており、飛び跳ねるようなドラムのリズムにはどこかお祭りのような楽しさを感じさせます。

そんな訳でアルバム全体としてはポップなメロディーがインパクトになっている、とても楽しい雰囲気のメロディアスなアルバムに仕上がっていました。前作「Schmilco」に関しては、フォーキーな作風ながらかなり地味といった印象を受けた方も多いかもしれませんが、今回のアルバムに関してはメロディーラインのインパクトも増し、分厚い音作りもあって、いい意味で楽曲に派手さも加わったように感じます。また、「Bright Leaves」や「We Were Lucky」などでは歪んだギターサウンドを絶妙に加えておりサイケな作風も感じられるなど、単純なポップではない、Wilcoらしいスパイスもアルバムからは感じることが出来ます。

今回も彼ららしい非常に良質で、かつメロディーラインにも魅力がつまった傑作アルバムだったと思います。インパクトあるポップなメロディーラインを持った曲も多いだけに広い層が楽しめそうなアルバムでした。いままでも彼らの音楽を聴いてきた方はもちろん、いままでWilcoを聴いたことない、という方にも勧められる1枚です。

評価:★★★★★

WILCO 過去の作品
Wilco(This Album)
THE WHOLE LOVE
Star Wars
Schmilco


ほかに聴いたアルバム

All Mirrors/Angel Olsen

アメリカのシンガーソングライター、エンジェル・エルセン。基本的にはフォーキーな作風ながらもエレクトロサウンドを大胆に取り入れ、ドリーミーな作風が大きな特徴となっている作品に。ジャジーな曲調の作品を聴かせつつ、優しさあふれる彼女の歌声も大きな魅力に。エレクトロな作風で分厚いサウンドに魅力を感じつつ、どこか同時にアコースティックの作品のような暖かさを感じさせる、そんな作品に仕上がっていました。

評価:★★★★★

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2019年12月 6日 (金)

ユニークなMVも話題に

Title:獄至十五
Musician:打首獄門同好会

強烈なバンド名がまずは強いインパクトを残すロックバンド、打首獄門同好会。デス声も繰り広げるハードコアなヘヴィーロックバンドながらも、お米のおいしさをそのまま歌にした「日本の米は世界一」や、タイトルそのまま「はたらきたくない」「布団の中からでたくない」など、日々のくらしの中で感じたことを素朴に歌詞にのせたスタイルが特徴的で、サウンドと歌詞の大きなギャップがインパクトとなっています。特にそんなコミカルな歌詞をそのまま漫画などで表現したMVがYou Tube上で大きな話題となり、どちらかというとネット主導で人気を確保してきました。

そんな彼らもなにげに結成15年目の中堅バンド。その結成15年目を記念してリリースされたベストアルバムが本作です。とはいえ彼ら、10周年の時もベストアルバムをリリースしているそうで、本作はその続編。2014年にリリースされた前作「10獄〜TENGOKU〜」以降にリリースされた曲を集めたベスト盤となっています。そのため、オールタイムベストではなく、ある意味、わずか5年の間にリリースされた曲だけ収録された内容なのですが、主にネット上で話題になった曲はこの5年にリリースされた曲ばかりで、代表曲はほぼ網羅されたベスト盤、と言ってもいい選曲になっています。

さて、ヘヴィーなサウンドとコミカルな歌詞のギャップが特徴、というとSEX MACHINEGUNSと方向性はかぶります。彼らも出身地である愛媛のみかんについて歌った「みかんのうた」が代表曲ですし、同作ではやはり「愛媛のみかんは世界一」と同じようなことをシャウトしています。そういう意味では彼らのスタイルは若干、マシンガンズの二番煎じと感じる部分もあるのですが、日常というよりももっと広いネタを題材にしているマシンガンズに対して、彼らは本当に日常の中で素朴に感じた出来事を歌にしているという点で異なった方向性を示しています。

その結果としてリスナーからすると非常に共感度の強い歌詞が多いのが特徴的で、冷蔵庫にとっていたプリンを食べられた、という恨みを延々と歌った「TAVEMONO NO URAMI」だったり、歯が痛いけど虫歯じゃないと言い聞かせている「歯痛くて」だったり、題材的にはたわいないネタなのですが、聴いていて、わかるわかると思ってしまうような曲が並びます。またサウンド的にも「布団の中からでたくない」のように、布団の中に入っている時はボッサ風のほんわかした曲調で歌いつつ、布団から出た瞬間にヘヴィーなデス声で寒さを強調するなど、彼らのバンドスタイルをうまくいかしたコミカルな作風も印象に残ります。

そんな彼らの曲を今回のベスト盤では楽しく聴くことが出来たのですが…ただ、後半になるとちょっと飽きてきてしまいました。その理由としては明確で、はっきり言うとネタがかぶりすぎ。例えば「島国DNA」も「日本の米は世界一」も、単純に食事が上手いという叫ぶだけのネタでかぶっていますし、「はたらきたくない」と同じ方向性の「だらだらしたい」なんて曲もあります。「なつのうた」と「布団の中から出たくない」も「暑い」と「寒い」を変えただけのネタ。わずか5年の間の作品なのですが、ネタとしてちょっとかぶりすぎでは?

確かに純粋にユニークな歌詞の曲を楽しめたのは間違いないのですが、今後のことを考えると、このままではちょっと辛いかも、とも感じてしまいました。ネタ被り上等!!と突き進む手もあるにはあると思うのですが、それを差し引いても、もうちょっとネタのバリエーションを増やした方が…。彼らの魅力も感じられた一方、問題点も見えてしまったベスト盤でした。

評価:★★★★

打首獄門同好会 過去の作品
そろそろ中堅

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2019年12月 5日 (木)

今週はアニメ系が上位にランクイン

今週のHot Albums

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

今週のHot Albumsはアニメ系のアルバムが上位に並ぶ結果になっています。

まず1位を獲得したのがBad Ass Temple「Bad Ass Temple Funky Sounds」。アニメキャラを使った声優によるHIP HOPプロジェクト、「ヒプノシスマイク -Division Rap Battle-」から登場したグループで、以前、大阪を拠点にしたグループのアルバムが上位にランクインしましたが、こちらは名古屋を拠点としたグループ。名古屋を拠点に活動をしているHIP HOPグループ、nobodyknows+が作詞作曲を担当しています。CD販売数1位、ダウンロード数3位、PCによるCD読取数2位で総合順位では1位獲得。オリコン週間アルバムランキングでも初動売上9万9千枚で1位獲得。同プロジェクトの前作、どついたれ本舗「あゝオオサカdreamin'night」の8万8千枚(2位)からアップしています。

2位にはRADWIMPS「天気の子 complete version」がランクイン。新海誠監督によるアニメ映画「天気の子」。同監督による前作「君の名は。」に続き主題歌&劇伴曲を担当し、サントラ盤も大ヒットを記録したRADWIMPS。その「complete version」ということでサントラ盤に何曲か追加して、再発売するアコギない商法か、と思いきや、サントラ盤に収録された主題歌5曲のフルバージョンを収録したミニアルバムということ。CD販売数2位、ダウンロード数1位、PCによるCD読取数1位により総合順位は2位にランクインしました。オリコンでは初動売上3万5千枚で2位初登場。前作のサントラ盤「天気の子」の4万3千枚(3位)よりダウンしていますが、サントラに追加する形でリリースされたミニアルバムとしては健闘といった感じでしょうか。

3位初登場はPRODUCE 101 JAPAN「PRODUCE 101 JAPAN - 35 Boys 5 Concepts」がランクイン。IZ*ONEをデビューさせた韓国のアイドルオーディション番組「PRODUCE101」の日本版、「PRODUCE 101 JAPAN」のオーディションで使用された楽曲を収録した配信オンリーのミニアルバム。ダウンロード数2位のみでベスト3入りとなりました。ただ本家「PRODUCE101」は現在、投票の段階で不正が行われたとして問題となっていますが、日本版の方は独自の運営体制となっており、韓国の投票不正とは全く関係ないという公式のアナウンスがありましたが、正直言って、額面通り受け取れるのかはかなり微妙という印象。もっとも、この手のオーディション番組は何らかの形で番組側の手が加わっているという認識をしていた方が良いかと思うのですが…。

続いて4位以下の初登場盤です。今週の表題通り、アニメ勢ということで、4位にはフランシュシュ「ゾンビランドサガ フランシュシュ The Best」がランクインです。アニメ「ゾンビランドサガ」の主題歌、劇中歌をまとめたベストアルバム。CD販売数3位、ダウンロード数5位、PCによるCD読取数7位で総合順位は4位に。オリコンでは初動売上2万6千枚で4位初登場。同アニメの前作「ゾンビランドサガ オリジナルサウンドトラックス」の2千枚(27位)から大幅にアップしています。

6位にはハロプロ系女性アイドルグループBEYOOOOONDSの1stアルバム「BEYOOOOOND1St」がランクイン。CD販売数4位ながらもダウンロード数16位、PCによるCD読取数は31位に留まり、総合順位でも6位となりました。オリコンでは初動売上2万6千枚で3位にランクインしています。

初登場組はもう1枚。10位に久保田利伸「Beautiful People」がランクイン。CD販売数7位、ダウンロード数13位、PCによるCD読取数29位で、総合順位ではこの位置に。4年ぶりとなるニューアルバムとなります。オリコンでは初動売上1万3千枚で7位初登場。直近作はコラボベスト「THE BADDEST ~Collaboration~」で、同作の初動1万2千枚(5位)から若干のダウン。オリジナルアルバムとしての前作「L.O.K.」の2万1千枚(3位)よりもダウンしています。

今週の初登場盤は以上。一方、ロングヒットとしてはおなじみOfficial髭男dism「Traveler」は4位から8位に大きくランクダウン。ただPCによるCD読取数は相変わらず1位をキープ。今週で8週連続のベスト10ヒットとなりました。

今週のHot Albumsは以上。チャート評はまた来週の水曜日に!

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2019年12月 4日 (水)

King Gnuついにベスト3入り

今週のHot100

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

紅白出演発表を機に順位を伸ばしてきたKing Gnu「白日」ですが、なんと今週のチャートでは先週の4位からランクアップし3位を獲得。ここに来て初のベスト3ヒットとなりました。特に今週、ストリーミング数で2位を獲得。8週連続で続いていたOfficial髭男dismのストリーミングチャートベスト3独占についに風穴を開けました。さらにダウンロード数、You Tube再生回数でも2位を獲得。

一方、1位を獲得したのが関ジャニ∞「友よ」。日テレ系ドラマ「俺の話は長い」主題歌。歌詞にしても暑苦しい曲にしても、ちょっと前の青春パンクみたいな感じの曲になっています。CD販売数及びPCによるCD読取回数で1位、Twitterつぶやき数2位、ラジオオンエア数37位で総合順位で1位獲得。オリコン週間シングルランキングでは初動売上26万枚で1位初登場。前作「crystal」の21万4千枚(1位)からダウン。

2位はOfficial髭男dism「Pretender」が先週の1位からワンランクダウンながらもこの位置をキープ。ダウンロード数は1位から5位までダウンしたものの、ストリーミング数、You Tube再生回数、カラオケ歌唱回数では1位をキープ。まだまだ1位をキープ。圧倒的な強さを見せています。ただ一方「イエスタデイ」は3位から5位に、「宿命」は5位から6位にダウン。ストリーミング数は「イエスタデイ」3位、「宿命」4位と前述の通り、ベスト3にKing Gnuが割って入られる形にはなりましたがまだまだ上位をキープ。You Tube再生回数も「イエスタデイ」3位、「宿命」5位と上位にランクインしており、まだまだ3曲同時のロングヒットは続きそうです。

続いて4位以下の初登場曲です。まず4位に山下達郎「RECIPE」が先週の54位からCDリリースにあわせてランクアップ。TBS系ドラマ「グランメゾン東京」主題歌。CD販売数は13位に留まりましたが、ダウンロード数で6位、PCによるCD読取数5位、そしてラジオオンエア数では見事1位を獲得しています。オリコンでは初動売上1万枚で9位初登場。前作「ミライのテーマ」の9千枚(12位)からアップしています。

7位には三代目J Soul Brothers「冬空」がランクイン。12月11日CDリリース予定のシングルからの先行配信。ダウンロード数及びTwitterつぶやき数で3位を獲得。配信のみでベスト10ヒットを獲得しています。タイトルから想像できる通りの哀愁感たっぷりのウィンターバラード。

8位には佐倉綾音(天宮さくら)、内田真礼(東雲初穂)、山村響(望月あざみ)、福原綾香(アナスタシア・パルマ)、早見沙織(クラリス)「檄!帝国華撃団<新章>」がランクイン。12月12日発売予定のPS4ゲーム「新サクラ大戦」主題歌。1996年にセガサターン用ゲームとしてリリースされた大ヒットを記録したゲームシリーズの新作で、このシリーズの主題歌としておなじみのナンバーのカバー。配信オンリーながらもダウンロード数で1位を獲得。ほか、Twitterつぶやき数で27位を獲得したのみで、その他のチャートはランク圏外でしたが、総合順位でベスト10入りを果たしました。

今週の初登場曲は以上。一方、ロングヒット曲ですが、まずあいみょん「マリーゴールド」は7位から9位にダウン。ストリーミング数7位、You Tube再生回数4位、カラオケ歌唱回数3位と上位をキープしているものの、紅白からも落選し、年末にかけての底上げが見込めない分、ついに後がなくなって来たかも。さらに米津玄師「馬と鹿」も9位から10位にランクダウン。なんとかベスト10をキープしたものの、こちらも後がなくなりました。

今週のHot100は以上。明日はHot Albums!

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2019年12月 3日 (火)

相変わらずの自由度の高さ

Title:UC100W
Musician:UNICORN

今年は、なんとUNICORNは100周年!…といってももちろん彼らが100年も活動している訳ではなく、彼らが再結成して10周年、ABEDONが加入して今のメンバーとなった初のアルバム「服部」から30周年、そして川西幸一が還暦を迎えて60周年で、合わせて100周年…という、ある意味彼ららしい謎?な足し算によって100周年を迎えた彼ら。既に今年に入って「UC100V」というアルバムをリリースしましたが、そこからわずか半年、早くもニューアルバムがリリースされました。

再結成してからの彼らはメンバーそれぞれがおのれの個性をフルに発揮したバラバラで自由度の高い作風が大きな魅力でした。その傾向は、特にここ最近のアルバムに関してより顕著にあらわれており、自由度がますます高まったように感じます。ABEDON作曲のエレクトロチューン「M&W」からはじまり、奥田民生作曲による「チラーRhythm」、そしてあいかわらずのハードロック志向のテッシーによる「That's Life」、さらにEBI作詞作曲「TYT」はEBIらしい哀愁感の強い歌謡曲風のナンバーと、序盤の4曲だけピックアップしてもすべてバラバラ。それぞれの個性が走りまくっている曲が並んでいます。

その後も「BLUES」は奥田民生らしいブルースロックなサウンドに川西幸一のラップ風のボーカルがのるユニークなスタイルですし、ABEDONによる「D-D-D-,Z-Z-Z-」はダイナミックでサイケの要素も取り入れたナンバーと、各々のメンバーが自分の音楽的嗜好をフルに発揮した曲が並んでいます。

こういう自由度の高い傾向は再結成後の彼らの作品に共通しているので、そういう意味では平常運転なのですが、ただここ最近ではその自由度がより強くなってきており、良くも悪くも売れることを無視したような作風になってきているように感じます。その結果としてアルバムとしてもバラバラな感が強くなっていますし、今回のアルバムに関しては純粋に音楽的な出来を考えた際に、正直言うと、悪い意味でまとまりがなく、さらに楽曲的な核となるような曲がない結果、自由度が高すぎてアルバムの内容がぼやけてしまったアルバムになっていたように感じます。

特に再結成後の自由度の高いアルバムに関しては、メンバー各人が自由になりつつも、要所要所でファン以外にもアピールできるような真面目につくったポップチューンが入っており、それが核となりアルバムを引き締めていました。そんな曲を通常は奥田民生かABEDONあたりが作ってきたのですが、今回のアルバムに関してはむしろ奥田民生やABEDONが率先して自由度の高い曲を作ってきています。あえていえばラストに収録されているシングル曲でもある「DENDEN」がアルバムを引き締めている感があるのですが、アルバム最後の曲でもあり、ちょっと時すでに遅しの感がありました。

今回のアルバムも素直に聴いていて楽しいアルバムであることは間違いないのですが、ただ自由度が高すぎて少々暴走気味かなぁ、という感が否めません。各人自由な作風に走るのは彼らの大きな魅力であり、今後も続けてほしいのは間違いないのですが、もうちょっと全体を引き締めるような楽曲も何曲か収録してほしいなぁ。いいアルバムだとは思うのですが、ちょっと彼ららしさが行き過ぎた感も否めない、そんな1枚でした。

評価:★★★★

ユニコーン 過去の作品
シャンブル
I LOVE UNICORN~FAN BEST
URMX
Z
ZII
Quarter Century Single Best
Quarter Century Live Best

イーガジャケジョロ
ゅ13-14
半世紀No.5
D3P.LIVE CD
UC100V

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2019年12月 2日 (月)

初期のスタイルを彷彿とさせつつ、今のCoccoも表現

Title:スターシャンク
Musician:Cocco

前作「アダンバレエ」から約3年ぶり、通算10枚目となるCoccoのニューアルバム。本作でもアレンジャーとして根岸孝旨を起用。また今回のアルバムタイトルである「シャンク」とはアクセサリー作りにおける「繋ぐ」という技術だとか。今回のアルバムによせて本人は「人生を照らすそんな小さな光を、ひとつづつ繋いで、/また一歩、その先へ進んで行けるということ。/何度も、何度も何度も。/結局、どうしたって止められない歌を/またあなたに届けさせてほしい。」というコメントを残しています。人とのつながりを求める彼女。そんな中にどうしても「歌」という手段を用いざる得ないというスタンス。いずれも実に彼女らしさを感じさせます。

そしてそんな今回のアルバムは、特にサウンド面において彼女の初期のスタイルを彷彿とさせるような出来に仕上がっていました。1曲目「花爛」も、リズミカルなドラムを中心としたダイナミックなサウンドに力強い彼女のボーカルで、どこか感じる悲壮感を含めて、まさにデビュー時の彼女の歌のヒリヒリとした緊迫感を覚えますし、「夕月」も伸びやかで爽やかさを感じるサウンドながらもどこか感じる切なさに彼女らしさを感じます。

「海辺に咲くばらのお話」もストリングスとピアノで切なくスケール感を覚えるサウンドと優しく伸びやかな歌声も初期のCoccoらしさを感じさせますし、途中から力強いバンドサウンドが入り、一気にダイナミズムを増す構成も彼女の王道とも言えるサウンド構成でしょう。ラストを締める「フリンジ」も、ゆっくりとダイナミックなバンドサウンドで、悲しげなメロディーを歌い上げる楽曲で、Coccoファンなら間違いなく壺をつく楽曲だったのではないでしょうか。

「愛してるって
ただそれだけの
ためにだって
ただ今日があって
明日があった」
(「フリンジ」より 作詞 Cocco)

と、人とのつながりを求めつつも、どこか上手くいかない悲しさを歌う歌詞のスタイルも、まさに「これぞCocco」といった印象を受ける方も多いのではないでしょうか。今回のアルバムは間違いなくデビュー時から彼女を応援しているようなファンなら壺をつきまくられるような作品になっていたように思います。

もちろん一方では初期の彼女とは少々異なるバリエーションを感じさせる部分もあり、例えば「願い叶えば」はエレクトロサウンドでダンサナブル、かつキュートなポップに。また、タイトルずばりの「極悪マーチ」などもヘヴィーなCoccoをさらに押し進め、メタルやゴシック色を感じさせる、一風変わったナンバーに仕上がっています。また、アコギ一本で静かに歌うフォーキーな「Gracy Grapes」なども彼女の歌声に強く惹かれる、とても魅力的な楽曲になっています。

また初期の彼女とは異なるという意味では、歌詞にしても絶望感の強かった初期のナンバーとは異なり、優しさや希望の要素が強くなっているのは間違いなく、それはやはり音楽活動を通じて様々な人とのつながりを持ったり、また一児の母となった今のCoccoだからこそ書くことが出来る歌詞の世界観と言えるのかもしれません。例えば前述の「海辺に咲くばらの話」なども

「約束できるよ
道はつながって
必ず必ず
また君に会える」
(「海辺に咲くはらの話」より 作詞 Cocco)

と、歌詞から非常に優しさと希望を感じさせます。

そんな訳で、サウンドや歌詞の面で初期のCoccoを彷彿とさせつつも、一方ではしっかりと今のCoccoの姿も楽曲にあらわしている、そんなアルバムに仕上がっていました。ある意味、Coccoらしさをしっかりと表しつつ、しっかりと今にアップデートしているという理想的な傑作と言えるかもしれません。10枚目のアルバムという区切りにふさわしい、Coccoの魅力がつまった傑作アルバムでした。

評価:★★★★★

Cocco 過去の作品
エメラルド
ザ・ベスト盤
パ・ド・プレ
プランC
アダンバレエ
20周年リクエストベスト+レアトラックス
Cocco 20周年記念Special Live at 日本武道館 2days~一の巻x二の巻~


ほかに聴いたアルバム

PASSION BLUE/土岐麻子

約1年半ぶりとなる土岐麻子のニューアルバムは、前々作「PINK」、前作「SAFARI」に続きトオミヨウをサウンドプロデューサーとして迎えた作品。そのため楽曲的には前々作、前作と同様、エレクトロサウンドを取り入れたシティポップというスタイルで共通しています。ただ、傑作だった前作「SAFARI」と比べると、やはり3枚目ということもあって目新しさは薄くなってしまった感は否めず。まずまずの良作だとは思うのですが、そろそろ次のステップに進んでほしいかも、とも感じてしまったアルバムでした。

評価:★★★★

土岐麻子 過去のアルバム
TALKIN'
Summerin'
TOUCH
VOICE~WORKS BEST~
乱反射ガール
BEST! 2004-2011
CASSETTEFUL DAYS~Japanese Pops Covers~
HEARTBREAKIN'
STANDARDS in a sentimental mood ~土岐麻子ジャズを歌う~
Bittersweet
PINK
HIGHLIGHT-The Very Best of Toki Asako-
SAFARI
TOKI CHIC REMIX

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2019年12月 1日 (日)

貴重な初期楽曲を中心に

COALTAR OF THE DEEPERS 25TH ANNIVERSARY "THE VISITORS FROM DEEPSPACE"TOUR 2019

会場 名古屋アポロベイス 日時 2019年11月25日(月)19:00~

Deepers_live

最近は大槻ケンジ率いる特撮での活動や、アニメやアイドルへの楽曲提供などで精力的に活動しているNARASAKI。もともと彼の「本籍」はCOALTAR OF THE DEEPERSというバンドなのですが、ここ最近は彼の多忙さもあってか、散発的な活動となっていました。ただここ最近、昨年からEPのリリースがあったりと、徐々にDEEPERSとしての活動も増加。今年はデビューアルバム「THE VISITORS FROM DEEPSPACE」リリースから25周年ということで、全国ツアーを実施。名古屋でもライブが行われる、ということで本当に久々、DEEPERSのライブに足を運んできました。過去にさかのぼると2002年に渋谷のCLUB QUATTROでライブを見ていたりするので、実に17年ぶりのライブとなりました。

会場はアポロベイスという比較的小さめのライブハウス。残念ながらソールドアウトとはならなかったようで、9割程度の客の入り。ただ、そのため比較的間近で、余裕をもってライブを楽しむことが出来ました。で、19時10分頃にまずは登場してきたのがKAIMY PLANETSというバンド。今回名前も音もはじめて聞くバンド。3ピースバンドで、女性ドラマーという構成のバンドでした。

楽曲のタイプとしてはシューゲイザーの影響を感じるギターロックで、ガレージロックやハードロックの要素も強い感じ。憂いを帯びたメロディーラインといい、DEEPERSからの影響も感じるバンドで演奏にも迫力があり、かなりの好印象。全5曲30分程度のステージだったのですが、なかなか惹きつけられました。会場も盛り上がり、会場の空気もいい感じで暖まった中、DEEPERSの登場を待ちます。

セットチェンジが終わり、ちょうど20時頃にメンバーが登場。そして最後にパーカー姿でフードを頭にかぶったNARASAKIが登場。「おはよう。DEEPERSはじまるよ」という脱力感あるセリフからライブがスタートしました。この日は1stアルバムの再現ライブということもあり、1stアルバムの曲以外も比較的初期のナンバーが並ぶ構成に。序盤からまず「The Breastroke」、1stアルバムから「Earth Thing」、そして「Cell」と続きます。2002年のライブの時も感じたのですが、CD以上にNARASAKIの声が出ていない…。序盤から迫力あるバンドの演奏で飛ばしまくっているのですが、正直前半に関しては、まだバンドとしての本領が発揮されていないように感じました。

ただ、バンドとしておそらく勢いに乗って来たのが中盤戦、「Sarah's Living For a Moment」あたりからかもしれません。印象的なギターのストロークで会場から大きな歓声があがり、その会場の盛り上がりに呼応するかのように、バンドとしても勢いを増してきました。さらに「Submerge」でさらに盛り上がり、おそらくこの日一番のクライマックスが「The Visitors」。曲の前のMCで、この曲にコンセプトを考えてきたそうで、この日は四部構成とオリジナルより長尺に。最初は優しい雰囲気のポップな感じでスタートするのですが、中盤からどんどん盛り上がっていき、フリーキーなサウンド、さらにはサイケデリックなサウンドへの進化。バンドメンバー全体が真ん中を向いて息をあわせて、爆音でリスナーを圧倒するステージに。緊迫感ある息をのむような演奏を見せ、DEEPERSのバンドとしての実力をこれでもかというほど発揮したステージとなっていました。

そしてここからステージは一気に終盤戦に。「Snow」「Amethyst」「Summer Days」など1stアルバムからの曲が連発。いずれもアップテンポな勢いのある曲で、この頃からNARASAKIのボーカルもはっきりと聴き取れるように(笑)。CDで聴かせるような、意外とキュートな感じのボーカルと、そこから一転、デス声を繰り広げるようなボーカルスタイルがとてもユニーク。バンドの演奏も勢いが増してきましたし、それと同時に会場のテンションも一気にあがっていきます。そして最後は「Blind Love」「Blink」で本編は一度締めくくりとなります。

時間の関係かアンコールでは比較的あっさりとメンバーが再登場。ラストは比較的ポップなメロが楽しめる「When You Were Mine」、そしてそれが終わるとNARASAKIがおもむろにトランペットを取り出し、哀愁あるフレーズを奏で、ラストは1stアルバムから「Killing An Arab」で締めくくり。最後の曲ではヘヴィーでメタリックなバンド演奏を聴かせライブは締めくくり。アンコール込で約1時間45分のステージとなりました。

そんな訳で、1stアルバムからの曲に加えて、初期の代表曲をふんだんに取り入れたライブ。個人的には彼らにはまったのが「Come Over To The Depend」からなので、それ以降の曲も聴きたかったかな、というのもちょっとあることはあるのですが、それでも貴重な初期ナンバーの曲の連続に多いに楽しめるライブになっていました。MCも比較的少な目で、約1時間45分のライブが一気に展開されるステージ。序盤は若干不安に感じる部分もあったのですが、後半は文句なしにCOALTAR OF THE DEEPERSのライブの魅力を堪能できたステージでした。

またDEEPERSのライブは見てみたいけど…NARASAKIが忙しいので、なかなかDEEPERSのライブはやらないんだよなぁ。ちなみに12月に新曲が配信されるらしく、12月30日の東京でのライブでCDも発売されるとか。そちらも気になるのですが、残念ながらこの日はその新曲は演らず!ただ次は是非ともニューアルバムを!そしてそのアルバムをひっさげてのツアーを!期待したいところなのですが、さてさて。

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