歌謡曲路線がより強く
Title:DEEP BLUE
Musician:9mm Parabellum Bullet
9mmとしてはちょっと久しぶりとなる約2年4ヶ月ぶりとなるニューアルバム。その間、2018年にはボーカルの菅原卓郎が歌謡曲をコンセプトとしたソロアルバムをリリースするなど、ソロ活動も行われました。その後リリースされたのが本作。その菅原卓郎のソロ活動が影響を受けたのか…はわかりませんが、今回のアルバムはいままでの作品以上に歌謡曲志向の強いアルバムになっていたように感じました。
例えば「夏が続くから」なども、郷愁感たっぷりのメロディーラインやアコギのフレーズなどはまさに歌謡曲路線。歌詞も夏の風景を物悲しく描いた恋愛歌となっており、ちょっと湿った歌詞の世界観もまさに歌謡曲といった感じ。「Ice Cream」もこれでもかというほど悲しみを帯びたメロディーもいかにも歌謡曲的ですし、どろどろ溶けた恋愛模様を描いた歌詞も実に歌謡曲的といった感じの曲になっています。
もともと9mmの音楽はマイナーコード主体のメロディーラインが主となっており、「歌謡曲的」な雰囲気はいままでの曲にもありました。しかし今回のアルバムについてはそれがより自覚的になっており、かつ、あえていえば非常にベタさを感じさせるような曲調に仕上がっていたように感じます。結果として良くも悪くもいままでのアルバムよりもわかりやすい作風に仕上がっていましたし、ファンの間でも賛否のある作風になっていたようです。
例えば、タイトルチューンである「DEEP BLUE」もヘヴィーで疾走感あるバンドサウンドは9mmらしいダイナミズムを感じつつ、こちらもある意味、わかりやすい歌謡曲風のメロディーラインが印象に残るナンバー。「君は桜」も好きな人を桜に例えるという、非常にベタさを感じさせる歌詞になっていました。
一方ではその結果としていままでの彼らのダイナミックなヘヴィネスさが若干薄れたという側面も否定はできません。「Getting Better」のようにデス声を入れてダイナミックに展開していく楽曲もありましたが、全体的にはポップな作風がより前に押し出された感のあるアルバムになっており、その点も賛否がわかれる部分になっていたようです。
ただ個人的には本作は良い意味でわかりやすさが増して、彼らの魅力をより強く感じられるアルバムになっていたように感じます。特に歌謡曲路線を押し出したことにより、いままでちょっと中途半端さに感じられた、歌謡曲的なメロディーラインとダイナミックな彼らのバンドサウンドのバランスがほどよく取れたようにも感じました。ある意味、ちょっとどっちつかずの感のあったいままでのアルバムから、本作では今後の9mmの方向性がより明確になったようにも感じました。
もっとも、次回作は一転、ヘヴィネスさをより前に押し出した作品になるかもしれませんし、今後の彼らがどのような道を進んでいくかは不明なのですが…ただ、今の9mmの興味のありかが非常によくわかる傑作アルバムに仕上がっていました。いい意味で聴きやすい内容なだけに、彼らについてはじめて触れるアルバムとしてもお勧めできそうな1枚。これからの彼らの活躍も楽しみです。
評価:★★★★★
9mm Parabellum Bullet 過去の作品
Termination
VAMPIRE
Revolutionary
Movement
Dawning
Greatest Hits
Waltz on Life Line
BABEL
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