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2019年11月 9日 (土)

あえて「ミックステープ」という形で

Title:AFTERMIXTAPE
Musician:KREVA

今年、ソロデビュー15周年を迎えたKREVA。その区切りとなる年を記念すべく9ヶ月連続リリースとしてシングルやDVD、またはベストアルバムをリリースし続けてきましたが、本作がそのトリを飾る10弾目となるアイテム。前作「嘘と煩悩」以来、約2年7か月ぶりとなる待望のニューアルバムとなりました。

今回のアルバムで特徴的なのはやはりそのアルバムタイトル。ここで「ミックステープ」とは、HIP HOPそれもアメリカのものを聴くような方にはおなじみかと思いますが、HIP HOPのミュージシャンがよくリリースするアルバムの形態のこと。もともとサンプリングという形態がよく取られるHIP HOPというジャンルにおいては、元ネタのミュージシャンの許可を取らずサンプリングを使用することがよくあり、そんなイリーガルな形態で作られれたアルバムは通常のリリース形態で販売されず、カセットテープという形で路上販売されており、そんなカセットテープのことを「ミックステープ」と呼んでいました。

最近ではカセットテープという形よりもネット上で無料ダウンロードのような形でリリースされることが多くなってきていますが、いまでも数多くの著名なミュージシャンが「ミックステープ」という形でアルバムを突如リリースするケースが少なくありません。そんな中、特にアメリカのラッパー、Chance The Rapperは無料ダウンロードのみのリリース形態にも関わらず、ビルボードチャートでベスト10入りを記録。さらには音源をリリースしていないミュージシャンとしては史上初、グラミー賞を受賞するなど大きな話題となりました。

もっとも今となっては大物ミュージシャンがミックステープという形でアルバムをリリースしてくることもあり、通常のアルバムとミックステープの境目もあいまいになりつつあります。そんな中、今回、KREVAのニューアルバムはあえて「ミックステープ」というアルバムタイトルでリリース。残念ながら通常のリリース形態となっており無料ダウンロードという形態ではありません。ただ、ジャケット写真はあえて「ミックステープ」をイメージさせるようなチープなジャケットとなっているほか、なにより今回のアルバム、KREVAが自分のやりたいことを自由にやった、非常に自由度の高いアルバムという、まさにミックステープのようなアルバム構成になっているそうです。

やりたいことをやった、という意味でもっとも典型的なのがリリック。例えば「アイソレーター」は世間のマナー違反に対して怒りをつづったリリック。社会派な歌詞といえば社会派なのですが、若干、わざわざ歌わなくちゃいけないほどの題材なのか…と思わないこともなかったり…。「リアルドクターK」なんかも医者をテーマに歌っているのですが、こちらも題材としてはどうなんだろうと思わないこともなかったり…。ただ、それだけKREVAがまずは歌いたいということを歌っているという点で、曲自体も肩の力がいい意味で抜けているような印象を受けます。

さらに「それとこれとは話がべつ!」もユニーク。リリックの内容的にはタイトルそのままなのですが、タイトルのフレーズが非常に耳に残りますし、RHYMESTERの宇多丸と小林賢太郎が参加しているですが、ちょっと理屈っぽく、かつユーモラスなリリックはある意味、RHYMESTERっぽさも強く感じます。聴いていてとても楽しくなるような1曲でした。

サウンド的にもNulbarichのJQが参加し、シティポップ調にまとまった「One」だったり、ドラムンベース風の「S.O.S.が出る前に」だったり、メロウなエレクトロトラックにまとめた「君の愛 Bring Me To Life」だったり、非常に自由度が高いトラックも特徴的。結果としてアルバム全体として若干統一感にかけるきらいがないではないのですが、それ以上に楽曲としての自由度の高さが楽しくなってくるような作品に仕上がっていました。

そんなまさに好き勝手にアルバムを作ったような自由度の高い作品。もっとも、KREVAはソロになってから、比較的(いい意味で)好き勝手に活動を行っている印象も強く、そういう意味では今回のアルバムがいままでの作品と比べて際立って自由度が高い、といった感じではないのかもしれませんが…。ソロ活動15周年の最後を締めるに相応しい、KREVAらしさがきちんと出ていた良作でした。さて、次はそろそろKICK THE CAN CREWの新作も??

評価:★★★★★

KREVA 過去の作品
心臓
OASYS
GO
BEST OF MIXCD NO.2
SPACE
SPACE TOUR
KX
嘘と煩悩
存在感
成長の記録 ~全曲バンドで録り直し~


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