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2019年11月11日 (月)

事実上、初のベスト盤

Title:Perfume The Best "P Cubed"
Musician:Perfume

最近、すっかり女性アイドル勢が「ロックフェス」などに出演することが珍しくなくなってきました。個人的には無条件にそのような状態が受け入れられている状況には疑問を感じる部分が強いのですが、それはともかくとして、ある意味、そのような流れを最初につくってきたユニットは彼女たちPerfumeといえるかもしれません。中田ヤスタカによるクオリティーの高いテクノポップはロックリスナー層にも訴求し、幅広い支持を集めました。

私自身もPerfumeが出てきた時は、昔の日本のアイドルグループとは異なり、ダンスや音楽を主軸としたプロフェッショナルな大人の女性的な部分を全面に押し出した方向性に、新たな流れを感じました。ただ、残念ながらその後、結局AKBグループのような、以前の日本のアイドルと同じような、幼く、素人っぽい女性グループが主流になってしまってしまうのですが…。ただPerfume自身はその後も中田ヤスタカプロデュースの下、テクノポップ路線を貫いているのはご存じの通りです。

さて、今回紹介する本作は彼女たちにとって初となるベスト盤。ブレイク前の作品を集めた企画盤的な「ベスト盤」や海外向けのベスト的なコンピレーションアルバムのリリースはありましたが、ブレイク後の代表作をまとめた正式なベスト盤は今回が初となります。中田ヤスタカがプロデューサーで参加して以降の彼女たちの楽曲がリリース順に収録。また新曲「ナナナナナイロ」も収録されています。

Perfumeについてはシングル単位では一通り聴いてはいるものの、アルバム単位できちんと聴いたのは2008年にリリースされた「GAME」と現時点で最新作となる「Future Pop」のみ。その2枚のアルバムを聴いた印象としては、最新アルバムの方がよりサウンドを前面に押し出したような曲作りをしている、という印象を受けました。確かに実際、今回のベスト盤を聴いても、ほぼインスト曲である「FUSION」など彼女たちの歌声よりもサウンドを前に押し出したようなポップチューンが目立ちます。ただもっとも、初期の作品でも「Dream Fighter」などサウンドが主体となっている楽曲もありますし、逆に比較的最近の曲でも「Hold Your Hand」のようなアイドルポップ的な色合いの強い曲もあったりして、決して彼女たちの作風に著しい変化があった訳ではありません。アルバム全体として、しっかりとした統一感を覚える内容に仕上がっていました。

なにより初期の作品から最近の作品まで共通しているのは彼女たちの歌声が中田ヤスタカのサウンドのひとつの素材として溶け込んでいる点でした。普通のアイドルポップというと、当たり前ですが女の子たちの歌声が前に押し出されているケースが大半。特に日本のアイドルポップは、ロリ声やアニメ声など、正直変に男性に媚びたような声を出すアイドルが多く、個人的には一種の嫌悪感を覚えるケースが多いのですが、彼女たちの場合は歌声もしっかりとサウンドを構成するパーツとしてピッタリとマッチ。そういう意味でも非常に聴きやすく、また、そういうった点がPerfumeが多くのリスナー層に支持された要因のように感じました。

また、特にここ最近に至って、サウンド的にも挑戦的な作風の曲も増えてきており、中田ヤスタカが自由にPerfumeの作品に取り組んでいるように感じます。同じ中田ヤスタカが全面プロデュースをしているミュージシャンとしては、例えばきゃりーぱみゅぱみゅの場合、彼女自身の色が濃いために、その彼女の色に引きずられるような形で楽曲の方向性が決定してしまうところがあるのですが、Perfumeの場合はポップな作品から若干挑戦的な作品まで受け入れられるような土壌があり、結果、中田ヤスタカが自分のやりたいように曲づくりを行えているように感じました。

そういう点もあって、エレクトロ作品主体ながらもアイドルポップ色の強い曲から、挑戦的なサウンド主体の曲まで幅もあり、全3枚組ながらもバリエーションのある作品で一気に楽しむことが出来たベストアルバムに仕上がっていました。またあくまでもサウンドの中の素材として徹している部分も彼女たちのプロとしての矜持を感じることが出来ますし、そういう意味では他のアイドルグループとは一線を画するようにも感じます。まだまだ彼女たちの活躍は続きそうです。

評価:★★★★★

Perfume 過去の作品
GAME
Future Pop


ほかに聴いたアルバム

小さな夜~映画「アイネクライネナハトムジーク」オリジナルサウンドトラック~/斉藤和義

伊坂幸太郎原作の短編小説「アイネクライネナハトムジーク」の映画のサントラ盤。もともと、同作は伊坂幸太郎と斉藤和義の絆から生まれた作品だそうで、かつてから斉藤和義のファンを公言していた伊坂幸太郎に斉藤和義が作詞のオファーをしたところ、小説なら、ということで書き上げたのが同作。一方、斉藤和義はこの小説から「ベリー ベリー ストロング〜アイネクライネ〜」を作成したそうです。

そんな訳で映画化にあたり劇中音楽を斉藤和義が担当することになった訳ですが、もちろん「ベリー ベリー ストロング〜アイネクライネ〜」も収録。他にも映画のために斉藤和義が書き下ろした主題歌「小さな夜」も収録されています。ただ、基本的には劇中で使われるインスト曲がメイン。そのため映画を見ていない人には楽しめない曲が多い…のですが、この手のサントラにありがちなワンアイディアのワンフレーズが流れるだけの曲というよりは、しっかりせっちゃんらしい暖かいメロディーラインの流れる曲がメインとなっており、映画を見ていなくてもそれなりに楽しめるアルバムに仕上がっていました。斉藤和義ファンなら映画を見ていなくてもチェックしておいて損のないアルバムです。

評価:★★★★

斉藤和義 過去の作品
I (LOVE) ME
歌うたい15 SINGLES BEST 1993~2007
Collection "B" 1993~2007
月が昇れば
斉藤“弾き語り”和義 ライブツアー2009≫2010 十二月 in 大阪城ホール ~月が昇れば 弾き語る~
ARE YOU READY?
45 STONES
ONE NIGHT ACOUSTIC RECORDING SESSION at NHK CR-509 Studio
斉藤
和義

Kazuyoshi Saito 20th Anniversary Live 1993-2013 “20<21" ~これからもヨロチクビ~ at 神戸ワールド記念ホール2013.8.25
KAZUYOSHI SAITO LIVE TOUR 2014"RUMBLE HORSES"Live at ZEPP TOKYO 2014.12.12
風の果てまで
KAZUYOSHI SAITO LIVE TOUR 2015-2016“風の果てまで” Live at 日本武道館 2016.5.22
斉藤和義 弾き語りツアー2017 雨に歌えば Live at 中野サンプラザ 2017.06.21
Toys Blood Music
歌うたい25 SINGLES BEST 2008~2017
Kazuyoshi Saito LIVE TOUR 2018 Toys Blood Music Live at 山梨コラニー文化ホール2018.06.02
KAZUYOSHI SAITO 25th Anniversary Live 1993-2018 25<26 〜これからもヨロチクビーチク〜 Live at 日本武道館 2018.09.07

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コメント

ゆういちさん、こんばんは。

ついにPerfumeに星5つつけてくれましたね!とはいってもまあほぼ中田ヤスタカの手柄でしょうけど・・・
ゆういちさんにはぜひ一度Perfumeのライブを見てほしいです!とはいっても普通のライブだと「PTAのコーナー」というゆういちさん的に「う~ん・・・」となりそうなゴリゴリのアイドルノリのコーナーがあるので、そこは目をつぶってもらう必要がありますが・・・こないだ渋公でやったRefurmeが名古屋でやってくれれば一番いいんですけど(RefurmeというのはMC無しでパフォーマンスを続けるというライブです)。

投稿: 通りすがりの読者 | 2019年11月12日 (火) 00時22分

私もperfume好きなので今回の高評価は嬉しいです。最近のperfumeの路線は中田ヤスタカ色が強すぎて、正直聞いてて疑問に
感じるところもあったのですが、ベスト
以降は原点回帰しつつ今のperfumeならではの良曲を出しているように個人的には
思います。


投稿: はるひ | 2019年11月21日 (木) 14時52分

>通りすがりの読者さん
Perfumeは実は何年か前のサマソニで一度ライブは見ています。ちょうどブームの真っ最中でかなり盛り上がっていました。

>はるひさん
個人的にはどちらかというと最近の路線が好きだったりするのですが、ベスト盤を聴くと、いい意味でシングルでバランスをとっている感があります。今度、どういう方向になっていくのか、注目ですね。

投稿: ゆういち | 2019年11月28日 (木) 22時20分

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