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2019年11月17日 (日)

待望の復帰作

Title:Cause and Effect
Musician:Keane

アルバムをここで紹介するたびにこのようなことを書いているような気がするのですが…イギリスでは大人気なのに、なぜか(イギリスのロックが売れることの多い)日本ではいまひとつ人気の伸びないバンド、Keane。日本人受けするようなメランコリックな美メロが魅力的なバンドなだけに、なぜあまり売れないのか不思議なのですが…。

そんな彼らは2013年にリリースされたベスト盤を最後に活動を休止。その後も1日も早い復帰が待ち焦がれていましたが、そんな中、ついに6年ぶりに活動を再開。5月にはミニアルバムがリリースされ、同作はこのサイトでも紹介しましたが、ついに待望の約7年ぶりとなるニューアルバムがリリースされました。

シンプルなサウンドにシンプルなサウンドに聴かせる美メロという構成は以前と変わりありません。ピアノを取り入れてしんみり聴かせたり、シンセを取り入れてきたり、曲によってスペーシーな作風の曲もあるのですが、どの曲もあくまでも「歌」を聴かせるスタイルがメイン。いろいろな音を取り入れていても必要以上に仰々しくなることはありませんし、そういう意味ではシンプルに、徹底的に歌を聴かせることを主眼としたスタイルに、いい意味でのこだわりを感じさせます。

今回のアルバムも少々インパクトの薄さを感じる序盤を過ぎ、これぞKeaneの魅力と感じるのが中盤。ピアノを中心としてシンプルでも切ないバラードを聴かせる「Strange Room」、シンセを取り入れて本作の中では比較的スケール感のあるアレンジがインパクトとなっている「Phases」、テンポよいナンバーながらもサビの切ないメロディーラインの展開が耳に残る「Stupid Things」など、Keaneの本領発揮とも言えるようなメロディアスなポップチューンが並んでいました。

そんな感じで、久しぶりとなるKeaneの美メロを楽しみつつアルバムを聴きすすめて行ったのですが、どうもアルバムを聴き進めていくにつれてどうにも物足りないような気分を感じつつ、本編は幕を下ろしました。何が物足りないんだろう…と思いつつ、今回聴いたアルバムがDeluxe Editionだったのでボーナストラックを聴きすすめていくと…まさにこのボーナストラックのラスト2曲に、自分がKeaneに追い求めていた曲が流れてきました。

このラスト2曲、ピアノメインで静かに聴かせるアレンジに静かに歌い上げるハイトーンのボーカル。これでもかというほど胸がかきむしられるような狂おしく切ないボーカルとメロディーラインが実に美しいナンバー。そう、この胸をかきむしられるような美しいメロディーライン、それが今回のアルバム本編に足りなかった大きな要素でした。

ただ、このボーナス曲2曲は「Stupid Things」と「I'm Not Leaving」とどちらもアルバム本編に収録されている曲のバージョン違い。あらためて本編に収録されているナンバーと比較すると、確かに元曲でも狂おしいようなメロディーを聴くことができるものの、テンポが少々早く、かつ分厚いアレンジに隠れてしまい、ボーナストラックで聴けたような胸をかきむしられるような感覚をあまり感じることが出来ませんでした。

そういう意味では今回のアルバム、決してKeaneのソングライティングのスキルが劣ったわけではなく、どちらかというとアレンジがいまひとつKeaneの良さを生かし切れていなかったのでは?という印象を抱きました。そういう意味では非常に惜しいアルバムとも言える本作。今回、プロデューサーとして、メンバーのトム・チャップリンのソロ作にかかわったというデヴィット・コステンが参加したのですが、彼との相性があまり良くなかったのかなぁ。Keaneらしい魅力は随所に感じるものの、全体的にはいままでの彼らの作品と比べると少々物足りなさが残る作品に。次回作に期待したいところです。

評価:★★★★

KEANE 過去の作品
Perfect Symmetry
NIGHT TRAIN
Strangeland
The Best Of Keane
Retroactive-EP1

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