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2019年11月12日 (火)

王道路線を追求

Title:Why Me?Why Not.
Musician:Liam Gallagher

ご存じ、元oasisのギャラガー兄弟の弟、リアム・ギャラガーのニューアルバム。oasisの解散から早くも10年が経過(!)したものの、いまだに再結成を望む声は絶えず、兄弟の動向にも大きな注目を集め続ける彼ら。お兄ちゃんノエル・ギャラガーはNoel Gallagher's High Flying Birdsとしての活動をコンスタントに続ける一方、リアム・ギャラガーはoasis解散後、バンドBEADY EYEを結成。ただこのバンドはアルバム2枚をリリースした後に解散し、その後はソロ名義で活動を開始。本作が2枚目のオリジナルアルバムとなります。

そんなギャラガー兄弟ですが、解散後の音楽的な2人のスタンスはある意味、大きく異なりました。ノエルの方はoasisのイメージから異なるような新たな音楽性に挑戦。ここ最近でも打ち込みなどを大胆に取り入れたダンスチューンを発表し、音楽的な幅を広げています。一方リアムはoasisの方向性を引き継ぐ…というよりも初期oasisのサウンドを彷彿とさせるような、まさに王道的な楽曲を歌い続けています。

先行シングルとなっている「Shockwave」などもまさに実にoasisっぽいナンバーで、軽快なリズムにグルーヴィーなサウンド、ちょっと憂いを感じるメロディアスなポップといい、ある意味、リスナーとして望んでいるリアム像をそのまま体現化しているようなナンバーですし、彼のボーカルにもピッタリとマッチしています。タイトル曲「Why Me?Why Not.」もバンドサウンドにストリングスを入れた、これでもかというほど分厚いサウンドに心地よさを感じる楽曲に仕上がっていますし、続く「Be Still」もちょっとしゃがれたリアムのボーカルがピッタリとマッチする、実に彼らしいテンポよいロックチューンに仕上げられています。

さらに後半もサイケ風のサウンドでグルーヴィーに聴かせる「The River」に、同じくヘヴィーなギターサウンドをバックにグルーヴィーに歌い上げる「Invisible Sun」と、まさに王道とも言えるナンバーで気持ちよく楽しめる作風に。最後はミディアムチューンでしんみりとメロディーを聴かせる「Misunderstood」に軽快なポップチューン「Glimmer」とメロディーを聴かせるポップ色の強い楽曲で締めくくり。バンドサウンドを強調した路線をポップなメロを強調した路線をしっかりと両立させてリスナーを楽しませる構成となっていました。

今回も前作と同様、グレッグ・カースティン、アンドリュー・ワイアットというソングライティングチームにリアム本人が加わり楽曲を作成していますが、3人のチーム編成がしっかりと決まった形での、まさにリアム・ギャラガーらしさを追及した作風に仕上げられていました。そんな曲調ゆえに歌いやすかったのか、彼のボーカルも冴えまくっている印象が。ソングライターとしても作品の中で力を発揮している彼ですが、それ以上になによりもあのボーカリストとしての独特の歌声に強い魅力を感じさせるアルバムに仕上がっていたと思います。

そんな感じで良く出来ている作品だとは思いますし、実際、アルバムの売れ行きも好調。先行シングルとなった「Shockwave」もソロキャリア史上最大のヒット曲となったそうです。そういう意味で、リスナーとしてはこういう姿を追い求めているんだな、ということが実によくわかる作品になっていたと思います。ただ、個人的にはちょっとあまりにも王道すぎる、oasisとしての影を追い求めすぎている感はどうしてもマイナス要素として感じてしまいます。まあ、確かにリアムのボーカルスタイルとしてはこういう楽曲スタイルが一番ということはわかるといえばわかるのですが…。それにしてもソロとしてもうちょっと挑戦してほしい感じはするのですが…。

もっとも、このスタイルがやはり彼としてはピッタリと似合っており、売上も好調ということを考えると、今後もこのスタイルでのアルバムは続いていきそう。その一方、oasis再結成の噂は消えずに続いており、今後の動向も気になるところ。個人的には次の作品はoasisで…と思うのですが…まあ、そううまくはいかないだろうなぁ、やっぱり。

評価:★★★★

Liam Gallagher 過去の作品
AS YOU WERE

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