« 結成15周年プロジェクト | トップページ | ヒゲダン人気は続く… »

2019年11月 5日 (火)

二重構造の構成がユニーク

Title:House of Sugar
Musician:(Sandy)Alex G

アメリカ・ペンシルヴェニア出身の男性シンガーソングライター、(Sandy)Alex GことAlexander Giannascoli(アレックス・ジアンナスコーリ)。もともとデビュー前からアメリカのダウンロードサイトBandcamp上でアルバムを発表してきたのですが、そこで大絶賛を受けると、なんとかのフランク・オーシャンに才能を認められ、彼のアルバム「Blonde」「Endless」に参加し、大きな話題となりました。そんな彼は2015年、イギリスのインディーレーベル、ドミノ・レコーズからデビュー。さらなる注目を集めて、本作が3枚目となるアルバムとなります。

今回はじめて彼のアルバムを聴いたのですが、フォーキーで美しいメロディーを主軸としつつ、サイケやエレクトロなどの要素も取り入れた、非常にユニークなアルバムとなっていました。本作はいきなりサイケデリックなナンバー「Walk Away」からスタート。若干不穏な雰囲気から本作がスタートします。しかし続く「Hope」はアコギベースで軽快に聴かせるポップチューン。さらに「Southern Sky」もアコギとピアノのフォーキーなサウンドをベースにちょっと切ないメロディーが耳を惹く爽やかなポップチューン。このフォーキーでシンプルなサウンドに美しいメロディーラインという構成がアルバムの中の主軸となって作品は展開していきます。

特にメロディーラインで美しいのが後半の「Cow」。こちらもアコギでしんみり聴かせるサウンドを軸にファルセットボイスで美しく聴かせるボーカルが強く印象に残ります。実質上、アルバムのラストを締めくくる「Crime」も、ちょっと懐かしさを感じるメロディーラインに強く心惹かれる楽曲に仕上がっており、最後までメロディーラインの美しさが印象に残る作品に仕上がっています。

ただ、本作がユニークなのは単純にフォーキーでポップなアルバムで終わっていない点でしょう。それは中盤。サイケでドリーミーな「Near」からはじまり、続く「Project2」もドリーミーでポストロック的なエレクトロのインストチューン。打ち込みのリズムを取り入れたポップチューン「Bad Man」と続き、「Sugar」はピアノにエレクトロサウンドを加えた分厚いサウンドで不穏な雰囲気で展開していくダイナミックなインストナンバー。前半と後半のフォーキーな雰囲気とは一転、実験的な雰囲気の楽曲が並ぶ展開となっています。

この、フォーキーなポップと実験的なエレクトロチューンという二重構造がこのアルバムの最大の魅力。フォーキーなポップチューンも、これだけでしっかりと美しいメロディーを聴かせる名曲が並んでいるのですが、ここに中盤のエレクトロチューンが並ぶことにより、音楽性に厚みが加わります。また、二重構造といっても、例えば「Hope」では打ち込みのサウンドを入れてきていますし、逆に「Bad Man」ではポップなメロディーが流れているなど、決して両者が完全に分離している訳ではなく、そのため、アルバム全体としてもしっかりと楽曲の流れが出来上がっており、中盤の展開にも違和感はありません。そういう意味でも実によく出来たアルバムに仕上がっていました。

まだ本国でも耳の早い音楽ファンに知られているようなタイプのミュージシャンのようですが、今後、徐々に注目を集めさらにブレイクが期待えきそう。これからの活躍も楽しみなシンガーソングライター。今のうちに要チェックです。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

Hollywood's Bleeding/Post Malone

前作「Beerbongs & Bentleys」が大ヒットを記録。特にアメリカのBIllboard Hot 100のベスト20に9曲を同時ランクインさせ、The Beatlesの記録を54年ぶりに更新したということでも大きな話題になりました。本作はそれに続く、約1年5ヶ月ぶりとなる新作。今時のトラップミュージックの要素を取り込んだエレクトロサウンドがメイン。メロディーはどこか物悲しく哀愁感も覚えるものの、必要以上に暗い雰囲気にはならず、いい意味で聴きやすいポップソングとしてまとめています。本作もアメリカやイギリスをはじめ、世界各国のチャートで1位を獲得するなど大ヒットを記録していますが、ほどよく今の音を取り込んだインパクトあるメロディーのポップソングは確かに多くのリスナー層にアピールできそう。大ヒットも納得です。

評価:★★★★

Post Malone 過去の作品
Beerbongs & Bentleys

The Nothing/KORN

アメリカのへヴィーロックバンドによる約3年ぶりとなるニューアルバム。前作に引き続き、よい意味でKORNらしい作品となった本作。デス声がほどよいインパクトとなっているダイナミックなサウンドに、意外とメロディアスでポップという形容すら似合いそうなメロディーラインも魅力的。ここ最近のアルバムの中では非常に聴きやすい出来に仕上がりつつ、一方でKORNらしいヘヴィネスさもきちんと残したアルバムに仕上がっていました。私が聴いたKORNのアルバムの中ではベストの出来かも。

評価:★★★★★

KORN 過去の作品
Untitled
KORNIII:REMEMBER WHO YOU ARE
THE PASS OF TOTALITY
The Serenity of Suffering

|

« 結成15周年プロジェクト | トップページ | ヒゲダン人気は続く… »

アルバムレビュー(洋楽)2019年」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« 結成15周年プロジェクト | トップページ | ヒゲダン人気は続く… »