ドリーミーなサウンドが魅力的
Title:The Practice of Love
Musician:Jenny Hval
ノルウェーはオスロ出身のシンガーソングライター、Jenny Hvalのニューアルバム。北欧というと数多くのミュージシャンが世界的なヒットを飛ばしていますが、彼女に関しては、まだ「知る人ぞ知る」的な存在のシンガーソングライター。ただ、前作「Blood Bitch」は各種音楽メディアのベストアルバムにランクインされるなど大きな注目を集め、ニューアルバムである本作も高い評価を集めているよう。個人的に完全に初耳のミュージシャンなのですが、はじめてアルバムを聴いてみることにしました。
アルバムは全8曲入り33分という比較的短い内容。いずれもエレクトロのサウンドがメインとなっており、ドリーミーな雰囲気になっているのが大きな魅力となっています。まず序盤の「Lions」「High Alice」「Accident」はいずれもドリーミーなエレクトロサウンドと澄み切った女性ボーカルの歌声がまず耳に残ります。そこにポエトリーリーディングのようなボーカルが重ねられているのはなんとも不思議な感じに…。アルバムの折り返しとなる「The Practice of Love」もポエトリーリーディングのようなボーカルにエレクトロノイズが重なる作風となっており、ドリーミーな雰囲気なのですが、一種独特な不思議な感触の曲調に。しっかりとしたメロディーラインは流れているのですが、前半に関しては、幻想的なエレクトロサウンドの雰囲気を楽しむような曲調になっています。
一方、後半に関しては、同じくドリーミーなエレクトロサウンドを主軸としつつ、メロディーを楽しめる比較的広い層が楽しめるようなポップな作風に仕上がっています。後半戦の冒頭を飾る「Ashes to Ashes」は疾走感あるエレクトロサウンドに軽快なメロディーラインが魅力的なポップチューン。続く「Thumbsucker」もホーンセッションが入りちょっとジャジーな雰囲気を加えたエレクトロポップ。こちらもさわやかなメロディーラインが魅力的。さらに「Six Red Cannas」もスペーシーなサウンドでリズミカルなナンバー。こちらもポップなメロディーよりもドリーミーなサウンドを前に押し出したようなポップチューンなのですが、ダンサナブルな4つ打ちのリズムがメインとなっており、いい意味で「わかりやすい」ダンスチューンに仕上がっています。
そして最後を締めくくる「Ordinary」も荘厳な雰囲気のエレクトロサウンドが楽曲を埋め尽くす中、ポエトリーリーディング的なボーカルの入ったドリーミーな作品で、アルバム全体を締めくくります。どちらかというと前半の雰囲気の曲調に雰囲気が戻り、アルバムは幕を下ろした、といった感じでしょうか。
そんな訳でアルバム全体としてはドリーミーでちょっと独特の味わいのあるエレクトロサウンドを楽しむようなアルバムといった印象。後半は比較的、いい意味で万人受けするような作風の曲が並んでいるものの、全体的には若干癖のあるサウンドが特徴的な印象を受けました。ただ、夢見るような美しいサウンドはメロディー云々関係なく、聴いていて純粋に気持ちよくなる魅力的な内容。確かに独特のサウンドゆえに大ヒットを飛ばすようなタイプのミュージシャンではないものの、気になる方にはとりあえずお勧めしたいアルバムだと思います。まだ知る人ぞ知るシンガーですが、今後、さらに注目を集めてくる、かも。
評価:★★★★★
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