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2019年11月

2019年11月30日 (土)

カクバリズム移籍後の作品を収録

Title:Kicell's Best 2008-2019
Musician:キセル

2000年のインディーデビュー以来、シンプルなサウンドから生み出される独特の空気感で独自の音楽性を築いてきた、辻村豪文・友晴の兄弟によるデゥオ、キセル。2001年にSPEEDSTAR RECORDSからメジャーデビューした後、2006年にインディーズレーベルのカクバリズムに移籍。本作は、そのカクバリズム移籍後の楽曲を収録したベストアルバム。ただ2枚組のアルバムとなっており、Disc2ではメジャーレーベル時代の曲のリメイクが収録されており、オールタイムベスト的にも楽しめるアルバムとなっています。

そんな彼らのベスト盤ですが、まず1曲目「くちなしの丘」がある意味、最も「ありのままのキセル」といったイメージの曲となっています。ここ最近、彼らのステージを見ていないのですが、以前見たキセルのライブというと、辻村兄弟2人だけがギターをかかえてステージに乗り、カセットテープで流されるちょっとチープさもあるリズムマシーンの音をバックに静かにギターを奏でるというスタイル。この曲はまさにそのスタイルでの演奏となっており、カセットテープから流れてくるかのようなリズムマシーンの音とシンプルなギターの演奏のみというスタイルになっています。ただこのシンプルさに暖かみと懐かしさを感じさせると同時に、独特なグルーヴ感を覚える作風が実に魅力的に仕上がっています。

ただ今回のベスト盤でインディーズ移籍後のここ最近の曲を聴くと、全体的には以前より音が分厚くなって、よりグルーヴ感と彼ららしい浮遊感が増したような印象を受けました。「富士と夕闇」などはちょっとハワイアン的なギターの音色とクラリネット(?)の独特なリフが絶妙な浮遊感を醸し出していますし、「覚めないの」もギターリフとベースの奏でるギターリフが心地よさを生み出しています。「山をくだる」もワウワウギターとクラリネット(?)で作り出される浮遊感が心地よい感じですし、「ひとつだけ変えた」も浮遊感あるギターが独特のグルーヴを作り出しています。

普通、この手のサウンドは使われる製作費の関係上、メジャー時代の方がより分厚い豪華なサウンドが使われることが多いのですが、彼らの場合は逆。この傾向はメジャー時代の作品のリメイクでも顕著で、今回リメイクされた「ピクニック」にしろ「エノラゲイ」にしろ、あきらかに原曲に対して大きくアレンジに手が加えられており、オリジナルに比べると、独特の浮遊感とグルーヴ感がより強調されたようなアレンジに仕上がっています。イメージとしてはよりほんわかとした暖かさと懐かしさを感じさせつつ、不思議なうねりの中に身をゆだねるようなサウンドといった感じでしょうか。インディーズ時代ではそんなキセルの魅力がアレンジ面でもより強調され、その方向性が明確になったような印象を受けます。

そんな独特のサウンドながらもメロディーラインは意外とポップで十分なインパクトのあるメロを聴かせており、例えば「ビューティフルデイ」はピアノのサウンドが印象的に奏でられる中、切ないメロディーが胸をうちますし、「夕凪」なども郷愁感あるメロディーラインがインパクト十分。その独特のサウンドのみならず、メロディーラインでも十分に勝負できるポテンシャルを持ったミュージシャンだということをあらためて認識しました。

デビュー時から高い注目を集めてきたバンドであることは間違いないのですが、ただ正直なところ、一部の音楽マニア受けに終わってしまい、ブレイクには至っていない彼ら。しかし今回ベスト盤をあらためて聴くと、サウンドの独自性、メロディーラインのインパクトともに高いレベルを維持しているバンドであることにあらためて気が付かされ、なぜ彼らがいまひとつブレイクできないのか、不思議にすら感じてしまいました。確かにいわゆるフェス受けするバンドではないし、失礼ながら決して華のあるグループではないし、そういう意味でなかなか広い層への訴求力が足りない…のかもしれないのですが…。今からでも遅くないので、このベストアルバム、幅広い層に是非とも聴いてほしい作品だと思います。少なくともインディーズ時代に入り、その魅力はより深化しているように感じました。当初のインディーデビューから20年近くが経過し、そろそろ「ベテラン」の域に入って来た彼らですが、これからの活躍も楽しみになるベスト盤でした。

評価:★★★★★

キセル 過去の作品
magic hour

SUKIMA MUSICS
明るい幻
The Blue Hour


ほかに聴いたアルバム

flask/おいしくるメロンパン

本作が4枚目のミニアルバムとなる3ピースロックバンドの新作。メランコリックさを感じるメロディーラインが魅力的なギターロックバンドなのですが、一方でサビのインパクトを含めてフックの弱さを感じてしまうのですが、残念ながら本作でもそれは同様。「candle tower」のような、よりハードなロック色を強めた曲などがひとつのインパクトとはなっているのですが、どちらかというとやはりメロディーラインが彼らの売りだし、そこでインパクトを取ってほしいような。毎作、惜しさを感じてしまいます。そろそろ、もう一皮むけてほしいところですが…。

評価:★★★★

おいしくるメロンパン 過去の作品
indoor
hameln

Attitude/Mrs.GREEN APPLE

本作でBillboard Hot Albums1位を獲得するなど人気上昇中の男女混合5人組ロックバンド。もともととても明るいポップチューンが魅力的なバンドだったのですが、前作あたりから、その方向性で吹っ切れたような底抜けに明るいポップチューンを聴かせてくれるようになったのですが、本作も前作同様、吹っ切れたような明るさが魅力的。前作同様、ストリングスやピアノ、エレクトロサウンドも取り入れた分厚いサウンドが素直に気持ちよく、楽曲のスケール感も心地よい感じ。しんみり聴かせるバラードナンバーもあるのですが、そんな曲も含めて、明るさを感じさせるポップチューンの並ぶ、気持ちの良いアルバムでした。

評価:★★★★

Mrs.GREEN APPLE 過去の作品
TWELVE
Mrs.GREEN APPLE
はじめてのMrs.GREEN APPLE
ENSEMBLE

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2019年11月29日 (金)

どこかで聴いたことある曲がいっぱい

今回紹介するのは、長年作曲家として活躍し、数多くのヒット曲を生み出し、2015年には日本レコード大賞功労賞も受賞している作曲家の小林亜星の作品集。CMソングやアニメソングなどでの活躍も目立つ彼らしく、楽曲のジャンル別に4組にわかれてのリリースとなっています。

Title:小んなうた 亞んなうた ~小林亜星 楽曲全集~ 歌謡曲編

まずこちらは歌謡曲篇。都はるみの「北の宿から」や、「裸の大将」の主題歌としておなじみのダ・カーポ「野に咲く花のように」のような、誰もが知っているようなスタンダードナンバーも収録されています。・・・が、全体として歌謡曲に関しては「ヒット曲」は少な目。おそらく彼の本領が発揮されているのは、その他のCMソングやアニメの主題歌になるのではないでしょうか。

Title:小んなうた 亞んなうた ~小林亜星 楽曲全集~ コマーシャル・ソング編

まずCMソング。全体的にはアラフォーの私にとっても物心つく前の、ちょっと昔のCMソングも多いのですが、日立のCMソングとしておなじみの「この木なんの木」をはじめとして、「積水ハウスの唄」「酒は大関こころいき」「ネオソフト『おいしい顔篇』」など、あの有名なフレーズも彼が作っていたのか…と驚いてしまうようなおなじみのフレーズが並んでいます。このタイトルを見て、頭の中にフレーズが浮かんだとしたら、そう、その曲です。CMソングによっては、セリフを含めてCMをそのまま収録したトラックもあり、貴重な音源にもなっていました。

Title:小んなうた 亞んなうた ~小林亜星 楽曲全集~ こどものうた編

キッズソングをまとめた「こどものうた編」も、収録曲的にはちょっと昔の曲が多く、「ピンポンパン体操」などはリアルタイムで大ヒットしたようですが、アラフォー世代にとっても、なじみないほど昔の曲も少なくありません。ただ、そんな中で、今でも「スタンダードナンバー」的に多くの日本人にとっておなじみなのが、「まんが日本昔ばなし」のエンディングとしておなじみの「にんげんっていいな」と、童謡としてすっかりおなじみの「あわてんぼうのサンタクロース」でしょう。個人的には合唱曲「未知という名の船に乗り」も(確か中学生の頃だったと思うのですが)昔、学校で歌った記憶があり懐かしさを感じるのですが、今の学生も歌っているのでしょうか?

Title:小んなうた 亞んなうた ~小林亜星 楽曲全集~ アニメ・特撮主題歌編

そして彼の本領がもっとも発揮されている分野といえば、「アニメ・特撮主題歌編」。その収録曲が多いだけに2枚組になっています。こちらも1970年代あたりの曲が多く、私よりももっと前の世代になじみのある曲が多いのですが、それでも「ガッチャマンの歌」「花の子ルンルン」「ユカイツーカイ怪物くん」にプロゴルファー猿のオープニング「夢を勝ちとろう」など懐かしい曲が多く収録されています。ちなみに「ひみつのアッコちゃん」「魔法使いサリー」という2大魔女っ娘アニメ(?)の主題歌をどちらも同じ人が書いていたというのははじめて知りました…。

さて、こうやって彼の代表曲を並べて聴くと、彼がもっとも脂ののっていた頃は70年代あたりから80年代にかけてで、私くらいの世代だとむしろ、役者やバラエティー番組への出演でおなじみというイメージが少なくありません。実際、私の彼に対するイメージは「わくわく動物ランド」の回答者だったり、「パッとさいでりあ」のCMに出てくるおじさん…だったりします。もちろん作曲家としての彼も知っていたのですが、あらためてこうやって代表曲を聴くと、今でもスタンダードナンバーとして知られている曲の多さに驚かされます。

特にアニメソングやCMソング、キッズソングなどでそのヒット曲が多いという特徴からもわかるように、彼の最大の魅力は、誰もが一度聴いたら忘れられないようなキラーフレーズを書いてくる点、なのでしょう。わずか15秒でリスナーの心をつかむ必要のあるCMソングや、子どもたちの心をすぐにつかめるようなわかりやすさが求められるキッズソングやアニメソングで彼が引っ張りだこなのは、そういうキラーフレーズを書いてくれる、という要素が多いように感じます。

一方、彼に限らず数多くのヒット曲を抱えるような作曲家は同じような特徴があるのですが、小林亜星としての「色」はほとんどなく、演歌からポップス、童謡から合唱曲、ロックにフォークとあらゆるジャンルの曲を非常に起用に書いています。ただその中でも「どこか洋楽からの影響を感じる」といった、よくよく聴くとどこかそのルーツが垣間見れる部分もある作曲家も少なくない中、彼についてはそんな洋楽などからの影響はほとんど感じません。ある意味、良くも悪くも無味無臭の歌謡曲といった印象を受けてしまいます。

ただ、そんな無味無臭だからこそ多くの人の心に残る、いい意味で癖のない楽曲を書いてくるのでしょう。また、「にんげんっていいな」や「野に咲く花のように」に代表されるような、リスナーをほっとさせるような、暖かさを感じる曲を書いてくるのも彼の大きな魅力のように感じるのですが、それも、癖のないフレーズを書いてくるからこそ、多くの人の心のひだにふれるような楽曲を生み出してくるのでしょう。

全4組、5枚のCDによるフルボリュームの内容でしたが、耳なじみある曲も多かったため、最後まで楽しむことが出来る作品集でした。現在87歳の彼。さすがに以前ほど精力的な活動は行っていないようですが、まだまだお元気なようで、今でも時折、メディア等に出演されているようです。アラフォー世代よりもっと上の世代の方にとっては、さらに懐かしく感じる曲も多いかも。今回紹介した曲に懐かしさを感じるような方は是非チェックしておいてほしい作品集です。

評価:どれも★★★★

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2019年11月28日 (木)

ベスト3は紅白出場組

今週のHot Albums

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

新譜なのであくまでも偶然なのですが、今週のベスト3はいずれも紅白出場組が並びました。

まず1位に輝いたのが、今年で3度目の出場となるK-POPの女性アイドルグループTWICE「&TWICE」。CD販売数1位、ダウンロード数4位、PCによるCD読取数6位で総合順位も見事1位に。日本盤では2枚目となるフルアルバム。オリコン週間アルバムランキングでも初動売上12万4千枚で1位獲得。直近作はベスト盤「#TWICE2」で同作の初動20万枚(1位)よりダウン。またオリジナルアルバムとしても前作「BDZ」の18万1千枚(1位)からダウンしています。

2位は先週1位の椎名林檎のベストアルバム「ニュートンの林檎~初めてのベスト盤~」。CD販売数及びPCによるCD読取数は3位でしたが、ダウンロード数では見事1位を獲得。総合順位では2位となっています。ちなみに彼女も今年7度目となる紅白出場を決めています。もう7回も出てるんだ…。

そして3位にはEXILEの弟分のダンスグループ、GENERATIONS from EXILE TRIBE「SHONEN CHRONICLE」がランクイン。CD販売数は2位ながらもダウンロード数及びPCによるCD読取数は7位に留まり、総合順位は3位という結果に。彼らも今年、紅白初出場を果たしています…が、白組の他の初登場組(Official髭男dism、Kis-My-Ft2、菅田将暉)に比べると、かな~り印象が薄かったような。オリコンでは初動4万9千枚で2位初登場。直近作はベスト盤「BEST GENERATIONS」で初動11万4千枚(2位)、オリジナルの直近作「涙を流せないピエロは太陽も月もない空を見上げた」の9万4千枚(2位)であって、いずれからもダウンしています。

続いて4位以下の初登場盤です。まず5位には刀剣男士 formation of 三百年「ミュージカル『刀剣乱舞』 ~三百年の子守唄~」がランクイン。ゲーム「刀剣乱舞」から派生したミュージカルの出演俳優によるアルバム。2017年には全く同一名義、同一タイトルのアルバムがリリースされているのですが、こちらは2019年の公演のキャストによるアルバムのようです。CD販売数は4位ながらもダウンロード数42位、PCによるCD読取数35位で総合順位は5位。オリコンでは初動売上1万3千枚で4位初登場。2017年リリースの同一名義、同一タイトルの作品の初動売上1万8千枚(4位)からダウンしています。

6位には「アナと雪の女王2 オリジナル・サウンドトラック」が初登場。2013年に公開された大ヒットを記録した映画「アナと雪の女王」。サントラ盤も大ヒットを記録しましたが、本作は現在公開中の第2弾映画のサントラ盤。本作ではPanic At The DiscoやWeezerといったミュージシャンたちも参加していることでも話題となっています。CD販売数は11位でしたがダウンロード数は3位となり総合順位ではベスト10入り。今後の映画のヒット次第ではロングヒットになる可能性も。ちなみにオリコンでは初動売上7千枚で7位初登場。前作「アナと雪の女王 オリジナル・サウンドトラック」の1万4千枚(9位)よりは大きくダウンしています。

7位初登場は東京スカパラダイスオーケストラ「ツギハギカラフル」。デビュー30周年を記念してリリースされた同作は2枚組のアルバムとなっており、歌モノとインスト、それぞれ1枚ずつのCDに収録されているのが特徴的。CD販売数5位ながらもダウンロード数16位、PCによるCD読取数36位で総合順位はこの位置に。オリコンでは初動売上9千枚で5位初登場。直近作はライブ盤「2018 Tour「SKANKING JAPAN」"スカフェス in 城ホール"2018.12.24」で同作の3千枚(19位)からは大きくアップ。オリジナルアルバムの前作「GLORIOUS」の6千枚(11位)からもアップしています。

そして8位にはイギリスの人気ロックバンドColdplay「Everyday Life」がランクイン。CD販売数10位、ダウンロード数6位、PCによるCD読取数51位。前作から約4年ぶりとなるニューアルバムとなりました。オリコンでは初動売上5千枚で10位初登場。前作「A HEADFULL OF DREAMS」の初動1万3千枚(7位)からダウンしています。

初登場組最後は9位に「『MANKAI STAGE『A3!』~SUMMER 2019~』 MUSIC Collection」がランクイン。イケメン役者育成ゲーム「A3!(エースリー)」を舞台化した「MANKAI STAGE『A3!』~SUMMER 2019~」での楽曲を収録したアルバムとなっています。CD販売数9位、ダウンロード数8位、PCによるCD読取数54位。オリコンでは初動売上4千枚で11位初登場。同じ舞台の楽曲を収録した前作「『MANKAI STAGE『A3!』~AUTUMN&WINTER 2019~』MUSIC Collection」の6千枚(12位)からダウンしています。

最後にロングヒット曲。Hot100で快進撃を続けるOfficial髭男dismですが、アルバムでも快調にヒットを続けています。「Traveler」は先週の2位からランクダウンしたものの4位をキープ。これで7週連続のベスト10ヒットに。ダウンロード数2位、PCによるCD読取数1位と上位にランクインしているほか、CD販売数も6位とベスト10入りを続けており、まだまだロングヒットが続きそうです。

今週のHot Albumsは以上。チャート評はまた来週の水曜日に!

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2019年11月27日 (水)

ヒゲダンの快進撃は続く

今週のHot100

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

先週、紅白出演者発表に留まりヒゲダンの曲が再びランクアップしましたが、今週はさらにヒゲダンの曲が躍進しました。

今週1位は、間違いなく今年最大のヒット曲となったOfficial髭男dism「Pretender」が先週の2位からランクアップ。10月28日付チャート以来5週ぶり2度目の1位獲得となりました。ダウンロード数、ストリーミング数、You Tube再生回数、カラオケ歌唱回数でいずれも1位を獲得。いまだ圧倒的な強さを見せつけています。また先週3位だった「宿命」は今週5位にダウンしてしまいましたが、代わって「イエスタデイ」が4位から3位にアップ。3週ぶりのベスト3返り咲きとなっています。ちなみに今週もストリーミング数では1位「Pretender」2位「イエスタデイ」3位「宿命」とベスト3独占が続いています。

2位初登場はハロプロ系女性アイドルグループアンジュルム「私を創るのは私」。CD販売数は1位だったのですが、ダウンロード数43位、ラジオオンエア数42位、PCによるCD読取数29位、Twitterつぶやき数33位と振るわず、総合順位でも2位に留まりました。オリコン週間シングルランキングでは初動売上6万9千枚で1位初登場。「恋はアッチャアッチャ」の4万8千枚(2位)よりアップしています。

続いて4位以下の初登場曲ですが、まず6位に三代目J Soul Brothersの登坂広臣ことHIROOMI TOSAKA「OVERDOSE」が先週の49位からCDリリースにあわせてランクアップし、ベスト10入りです。ハイトーンボイスにトラップ風のリズムも入った今風のR&Bナンバー。CD販売数は2位でしたが、ダウンロード数57位、ストリーミング数100位、PCによるCD読取数20位、Twitterつぶやき数24位に留まり、結果、総合順位は6位となりました。オリコンでは初動売上3万3千枚で2位初登場。前作「SUPERMOON」(4位)から横バイとなっています。

8位初登場はスターダストプロモーション所属の男性アイドルグループ超特急「Revival Love」。CD販売数は3位、PCによるCD読取数7位、Twitterつぶやき数では1位に輝きましたが、ラジオオンエア数47位、そのほかのランキングは圏外となり、総合順位ではこの位置に留まりました。オリコンでは初動売上2万6千枚で3位初登場。前作「Hey Hey Hey」の3万3千枚(4位)からダウンしています。

初登場はあと1曲。10位に元NMB48のメンバーで、現在はシンガーソングライターとして活動している山本彩「追憶の光」がランクイン。日テレ系バラエティー「ダウンタウンDX」エンディングテーマで小林武史プロデュースによる作品となっています。PCによるCD読取数8位、ラジオオンエア数では1位を獲得していますが、ダウンロード数29位、PCによるCD読取数40位、Twitterつぶやき数15位で総合順位はギリギリ10位にランクインとなりました。

一方ロングヒット組ですが、まずKing Gnu「白日」が先週の5位から4位にランクアップ。なんとここに来て自己最高位を記録しています。ストリーミング数はヒゲダンに阻まれ4位となっていますが、You Tube再生回数は4位から3位に、ダウンロード数は8位から6位にアップ。ここに来て注目度がアップしています。

あいみょん「マリーゴールド」は先週から変わらず7位をキープ。一時期に比べると勢いは落ちているのですが、なかなかしぶとくベスト10をキープしています。まだまだロングヒットは続きそう。一方、米津玄師「馬と鹿」は残念ながら6位から9位にダウン。この曲もここまでか?それとも来週の巻き返しがあるのか?もっともダウンロード数は2位、PCによるCD読取数は1位を獲得しており、まだまだ強さは感じられるのですが・・・。

また、先週ベスト10に返り咲いたFoorin「パプリカ」は今週11位にダウン。残念ながらベスト10返り咲きは1週で終わりました。ただ、今後紅白出場で再度注目が集まると考えられるため、年末にかけてのランクアップが期待できそうです。

今週のHot100は以上。明日はHot Albums!

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2019年11月26日 (火)

ジャズシーン以外にも強くアピール

Title:Kind Of Pink
Musician:ユッコ・ミラー

本格派のジャズ・サックスプレイヤーとして評価を受けながらも、ギャルっぽいルックスやそれを強調するかのような奇抜なファッション、さらには一時期は「萌え」系を狙ったようなキャラ設定など、飛び道具の部分も大きな注目を集めました。前作「SAXONIC」ではあのピコ太郎とコラボを行ったり、最近ではYou Tuberとしても活躍するなど、ジャズシーンに留まらず、広い層へアピールしようとするその活動スタイルも彼女の大きな特徴と言えるでしょう。

今回のアルバムに関してもそんな本格派のジャズプレイヤーとしての彼女と、ジャズ以外のポップシーンへ広くアピールしようとする彼女の姿が同居するような作品となっていました。「本格派」という点では、彼女のサックスはもちろんのこと、グラミー賞を3度受賞しているデイヴィッド・マシューズがピアノ及びアレンジャーとして参加している点。また楽曲としても冒頭を飾る「Blue Stilton」はアグレッシブなサックスプレイで、まずはサックスプレイヤーとしての実力をアピールしていますし、デイヴィット・マシューズのピアノの演奏も強く印象に残ります。「Poppin' Shower」も本格的なモダンジャズのナンバー。サックスのテンポよい躍動感あるメロディーを奏でるサックスソロが耳に残りますし、続くピアノの軽快でテンポよいピアノソロも強い印象に残ります。全体的にもイージーリスニング的な要素が強かった前作に比べても本格的なモダンジャズの曲もぐっと増え、より彼女のサックスプレイヤーとしての実力を感じさせてくれました。

ただ一方では普段、ジャズをあまり聴かないようなリスナー層にもすんなりと受け入れられそうなナンバーも目立ちます。典型的なのが「『名探偵コナン』メイン・テーマ」。ご存じ有名アニメの中で使われているインストチューンなのですが、ムーディーなサックスで聴かせます。おそらく多くの方にとっては耳なじみあるメロディーなので、ジャズを普段聴かないような方でも違和感なく楽しめそう。

また「海の見える街」はジブリアニメ「魔女の宅急便」、最後を飾る「人生のメリーゴーランド」は同じくジブリの「ハウルの動く城」で使われた久石譲によるナンバーのカバー。こちらもおそらく多くの方にとっては耳なじみあるナンバーとなっており、幅広い層が違和感なく楽しめそうなナンバーに。ただ、どちらもしっかりとジャジーなアレンジにまとめあげており、モダンジャズのナンバーと並べて聴いても違和感ない構成になっていました。

You Tuberとして活躍する彼女のスタイルを含め、普段の彼女の行動はジャズに興味がないような層でも自分の音楽を聴いてもらおうと、自覚的に動いているように感じます。そして今回のアルバムはそんな彼女の方針がアルバムの内容にそのまま反映されていたと言えるでしょう。もちろん、この方向性は決して本作に限らず、前作でも感じられました。ただ、その結果として登場したのが前作ではピコ太郎とのコラボという飛び道具的な作品になっており、それはそれでインパクトもあり楽しかったのですが、今回のアルバムに関しては飛び道具に頼らず、ジャズナンバーと比べても違和感ないようなポップチューンを並べています。

飛び道具に頼らないという点ではこのジャケット写真も印象的で、いままでの作品はカラーのジャケット写真で彼女の奇抜なファッションやカラフルに染められた髪をアピールするようなジャケットになっていましたが、本作はモノクロ。初回盤では肩を出したセクシーなスタイルを見せてくれるものの、全体的には落ち着いた大人な雰囲気を感じます。You Tubeでは以前の彼女のような奇抜な活動の動画をアップしているようですが、アルバムではあくまでも音楽で勝負、といった感じなのでしょう。アルバムの内容を含めて、そんな彼女の方向性を強く感じることが出来ました。

本格派な曲とポップな曲をほどよくバランスさせたアルバムで、まさに今、彼女のやりたいことを体現化した作品と言えるのかもしれません。ポップミュージシャンとのコラボやテレビ番組などの出演も少なくなく、彼女の知名度は今後、さらに上がっていきそうな予感も。これからの彼女にも要注目です。

評価:★★★★★

ユッコ・ミラー 過去の作品
SAXONIC

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2019年11月25日 (月)

比較的コンスタントにリリースされた復帰後3枚目

Title:Beneath The Eyrie
Musician:Pixies

1980年代後半のインディーロックシーンで活躍し、その後の多くのバンドに影響を与えたPixies。2004年にまさかの再結成を果たしたものの、その後はライブを中心に活動を続け、2014年にようやく約23年ぶりとなるニューアルバムをリリースし大きな話題となりました。その後はオリジナルメンバーであるキム・ディールが脱退という残念なニュースがあったものの、新メンバー、パズ・レンチャンティンが加入。その後は比較的コンスタントにアルバムをリリースし、本作も前作「Head Carrier」から約3年のスパンでの新作リリースとなりました。

80年代の頃はいずれも傑作アルバムのオリジナル作を4枚リリースしシーンに衝撃を与えた彼ら。それだけに活動再開後のアルバムにも、良きにしろ悪しきにしろ注目が集まりました。ただそんな中でリリースされた2枚のアルバムは、いずれも往年の彼らを彷彿とさせるような出来で評判は悪くありません。そして今回のアルバムも往年の彼らを彷彿とさせるような楽曲が少なくありません。例えば「On Graveyard Hill」などは微妙に歪んだギターサウンドが実にPixiesらしさを感じますし、ラストを締めくくる「Death Horizon」などもちょっと切ないメロディーに彼ららしさを強く感じます。

ただ今回のアルバムは、Pixiesらしい歪んだノイズギターと、意外とポップでキャッチーなメロという主軸はそのままに、微妙にいままでのスタイルと変えてきた作風の曲も目立ちました。例えば1曲目を飾る「In the Arms of Mrs.Mark of Cain」などはちょっとダークな雰囲気とグルーヴィーなギターはいままでの彼らとはちょっと異なる雰囲気を感じさせます。「Silver Bullet」もムーディーな雰囲気に、いままでの作風よりも「大人」な匂いを覚えますし、「St.Nazaire」もいつもよりしゃがれ声を前に持ってきて、いつも以上にヘヴィーな作風に仕上げています。

いままでのPixesらしさをきちんと残しつつ、一方では少しずつ軸足をずらした新たなスタイルに挑戦した復帰後3枚目。こう書くと、かなり理想的なスタンスでの作風のように感じますし、実際、この方向性自体は大正解に感じます。感じる…んですが…。正直、いままでの復帰後のPixiesのアルバムもいまひとつピンと来ていなかったのですが、残念ながら今回のアルバムも「悪くはないんだけど…」という印象にとどまってしまいました。

出来としては決して悪くないし、往年の彼らを彷彿とさせる部分も少なくなく、素直に楽しめた、と言えないわけではありません。ただ、やはり全体的には無難にまとまっていた感は否めませんし、どこか小さくまとまってしまった感も否めません。80年代のアルバムと比べると、どうしても物足りなさが残ってしまうのも事実で。個人的にPixiesが好きだからこそ、高いハードルを設けすぎといわれると否定は出来ないのですが…。

とはいえ、凡百のギターロックバンドと比べると、間違いなくすぐれたアルバムであるのは事実。そういう意味ではギターロック好きには素直におすすめできる作品だと思います。個人的にはやはり今後のPixiesにも期待してしまうのですが…あと一歩、さらなる傑作を次は期待したいのですが…。

評価:★★★★

PIXIES 過去の作品
EP1
EP2

Indy Cindy
Doolittle25
Head Carrier

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2019年11月24日 (日)

ようやくリリースされた2枚同時リリース作

昨年、15年ぶりのニューアルバム「ロックブッダ」をリリースした男性シンガーソングライター国府達矢。同作はその傑作ぶりが大きな注目を集め、各種メディアでも年間ランク上位にランクインされました。その「ロックブッダ」リリース時には年内にあと2枚アルバムをリリースする予定とアナウンスされていたのですが、残念ながらその年はアルバムがリリースされず。「ロックブッダ」リリース後、約1年半が経過して、ようやく待望となる2枚のアルバムがリリースされました。

Title:音の門
Musician:国府達矢

まず1枚目となるのが「音の門」と名付けられた本作。非常にシンプルなサウンドで歌を聴かせるスタイルというのが、まず本作の大きな特徴となっています。静かにギターをつま弾きながら歌われる「日捨て」からスタートし、続く「きみさえいれば」もシンプルなアコギの弾き語りのラブソングとなっています。その後も静かなサウンドをバックとしたポエトリーリーディングである「こころよりじゆう」、アコギをつま弾きながらもハイトーンボイスで幻想的に聴かせる「ライク ア バーチャル」など比較的にシンプルなサウンドで歌を聴かせるスタイルが目立ちますし、またアコースティックギターを用いるフォーキーな雰囲気の作品も目立ちます。

ただし、シンプルなサウンドの歌モノ、という単純なイメージで終わらないのがこのアルバム。序盤、シンプルな曲が続いたかと思えば、いきなり飛び込んでくるのが3曲目の「悪い奇跡」。ノイジーなギターを響かせつつ、パーカッションの音色を重ねる非常に独特なサウンドが耳を惹きます。さらに「KILLERS」は静かなサウンドに緊迫感あふれる作風。「人を殺したいと思ったことはある?」というかなり過激な歌詞もあり、非常に不気味な作品に仕上げられています。そして「重い穴」もエフェクトをかけたアコギが不気味に鳴り響く作品で、タイトル通りの深い穴の奥底から歌声がうごめくように響いてくる、とても不気味な雰囲気が強い印象に残る作品となっています。

後半も「posion free」などはアコギでシンプルな作風ながらも、微妙にずれた音と少しエフェクトをかけたボーカルが微妙な不気味さを醸し出していますし、「思獄」もアコギの弾き語りながらもエフェクトをかけられてドリーミーな雰囲気に仕上がっています。アルバム全体としては非常に不気味な雰囲気を感じさせる作風となっており、かつどこかファンタジックさも。不気味な暗い森の中を歩いているような、そんな感覚を受けるアルバムとなっていました。

ただ最後を締めくくるのは「おつきさま」というシンプルでフォーキー、暖かい歌声を聴かせる曲。「月」というキーワードは1曲目の「日」と対比されているのでしょうか。暗い森を抜け出して、月明かりに照らされたような、ちょっとほっとした雰囲気でアルバムは幕を閉じます。ただラストの歌詞が「なまなましい おつきさま」というちょっと独特な表現で締めくくられている点、最後の最後まで異質感を覚えるような内容になっているのですが…。

評価:★★★★★

Title:スラップスティックメロディ
Musician:国府達矢

で、同時にリリースされたのが本作。シンプルなサウンドのイメージのあった「音の門」と比べると、本作は1曲目「青の世界」から、分厚いバンドサウンドからスタート。スペーシーなシンセも入って来たりしており、ある意味、「音の門」と対比するような形となっています。

2曲目「キミはキミのこと」もアコギが入りつつ、サイケなギターサウンドが加わり分厚い音が特徴的ですし、その後も「廻ル」も分厚いノイズギターで埋め尽くされたサウンドに。「窓の雨」もノイジーなギターサウンドでゆっくりと聴かせる作品となっていますし、「青ノ頃」もサイケなギターサウンドに、後半はダイナミックなバンドサウンドが加わるような楽曲。ラストを締めくくる「シン世界」も、特に後半、ギターサウンドにエレクトロのサウンドが加わり、これでもかというほどの音の塊をぶつけつつ、グルーヴィーなリズムを聴かせる作品に仕上げています。

そんな訳で、アコギ主導だった「音の門」とは対照的な本作ですが、歌詞やメロの面でも対照的。「キミはキミのこと」もメロディーラインのみ取り出せば非常にポップにまとまった作品になっていますし、「not matter mood」などもポップでメロディアスな作品になっています。歌詞にしても「彼のいいわけも」などは約束を守らない友人に対する愚痴という、日常的かつシンプルなテーマとなっていますし、「窓の雨」もおそらく恋人と別れた直後の心境、という比較的わかりやすい題材をテーマとしています。不気味さや怖さを感じられた「音の門」の曲の歌詞と比べると、もうちょっと日常に近い部分を歌ったような曲も多く、「音の門」を聴いた後に聴くと、ある種の爽やかさすら感じられます。

サウンド面で国府達矢の実力を発揮した「音の門」に対して、メロディーメイカーとしての彼の実力を発揮したのが本作といった感じでしょうか。2つのアルバムで、彼の違った側面をしっかりと示すことが出来た作品となっており、国府達矢のミュージシャンとしての奥行の深さを感じらせる作品でした。前作「ロックブッダ」の傑作ぶりでシーンを驚かせた彼でしたが、それに続く2作は、「ロックブッダ」から生じた彼の対する期待にしっかりと応えられていた傑作アルバムに仕上がっていたと思います。どちらも年間ベスト候補と言えるほどの傑作。あえていえば個人的には「音の門」の方がよりすごい作品のように感じたかな?あらためて彼のすごさを感じた2作でした。

評価:★★★★★

国府達矢 過去の作品
ロックブッダ


ほかに聴いたアルバム

BLOOD SHIFT/浅井健一

ここ最近、浅井健一&THE INTERCHANGE KILLS名義の作品が続いていたため、「浅井健一」名義では約5年ぶりとなるソロアルバム。一時期の乱発ぶりがようやく落ち着き、ここ最近、ある程度落ち着いて曲づくりを行っているためか、一時期の「どうしたんだ?」というような駄作連発がようやくなくなった感があります。今回のアルバムでもヘヴィーでストイックなギターサウンドは素直にカッコよさを感じる部分も多く、哀愁感帯びたメロディーにもインパクトが増した感も。ただそれでも1曲1曲はカッコよくても、全体的には似たタイプの曲が多く、最後の方はちょっとダレてしまった感もあるのですが…。

評価:★★★★

浅井健一 過去の作品
Sphinx Rose
PIL
Nancy
METRO(浅井健一&THE INTERCHANGE KILLS)
Sugar(浅井健一&THE INTERCHANGE KILLS)

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2019年11月23日 (土)

脂ののった時期の未発表音源

Title:Blue World
Musician:John Coltrane

ご存じ、モダンジャズを代表するサックスプレイヤー、ジョン・コルトレーン。昨年、未発表のスタジオ録音作「ザ・ロスト・アルバム」が発表され大きな話題となり、日本でも大ヒットを記録しました。今回はその大ヒットした「ザ・ロスト・アルバム」に続く未発表音源集。もともと1964年に映画「Le chat dans le sac (“The Cat in the Bag")」用に録音された音源だそうで、録音された音源はジョン・コルトレーンのオリジナル作の再録だそうですが、その存在についていままで知られておらず、彼の代表する名盤である「至上の愛」の約半年前のパフォーマンスということもあって大きな注目を集めたアルバムになっています。

そんな今回の演奏は、黄金のカルテットと呼ばれるジョン・コルトレーン(ts) マッコイ・タイナー(p) ジミー・ギャリソン(b) エルヴィン・ジョーンズ(ds)の4人による演奏。実際に、息のあったメンバーによる脂ののった演奏が実に素晴らしく、まずアルバムの冒頭を飾る「Naima」では実に優しく語り掛けるような、ムーディーなサックスの演奏にまずは心を奪われます。ムーディーなサックスの演奏から、ソロでのアグレッシブな演奏への切り替えも素晴らしいタイトルチューンの「Blue World」に、息のあった演奏でテンポよく聴かせる「Like Sonny」などなど、どの曲も聴かせどころたっぷりの曲が並びます。

個人的にはもちろんコルトレーンのサックスも素晴らしかったのですが、それと同じくらい耳を惹いたのがマッコイ・タイナーのピアノの音色。「Naima」でもちょっと癖のあるフレーズがコルトレーンに負けず劣らず主張を繰り広げていますし、「Blue World」ではアグレッシブなサックスの音色のバックに展開する、実にユニークな和音が耳を惹きます。ある意味、かなりピアノはピアノでかなり強い個性と主張を感じたのですが、ただそれでも決してコルトレーンのサックスの邪魔をすることなく、しっかりと引き立てている点はバンドメンバーの絶妙なバランスを感じさせます。

また特に今回のアルバムで核ともなっているのが「Village Blues」。今回のアルバムではTake1からTake3までの3度の演奏が収録されています。どれもムーディーなサックスの音色が強い印象を受ける楽曲なのですが、特に4曲目、5曲目にTake1とTake3の演奏を並べて収録されていることでその両者の聴き比べが出来るのがユニークな構成。Take3はTake1に比べると、より感情のこもったムーディーなサックスの演奏を繰り広げている一方、ピアノの音色は逆に軽やかになっており、その対比によりサックスの印象がより際立つ演奏になっており、Take1からTake3への大きな進化を感じる構成になっていました。

前述の通り、「至上の愛」の半年前のパフォーマンスということもあり、バンドとしても実に脂がのった状況であり、未発表であることが信じられないくらいの素晴らしいパフォーマンスを楽しめる傑作アルバムでした。ある意味、モダンジャズとしては王道的な演奏でもあり、そういう意味では幅広い層にも楽しめる演奏ではないでしょうか。コルトレーンの新たな代表作の誕生と言ってもいい名盤です。

評価:★★★★★

John Coltrane 過去の作品
The Final Tour: The Bootleg Series, Vol. 6(Miles Davis&John Coltrane)
Both Directions At Once:The Lost Album(ザ・ロスト・アルバム)


ほかに聴いたアルバム

This Is The Place/Noel Gallagher's High Flying Birds

先日は弟、リアムのアルバムを紹介しましたが、こちらはお兄ちゃん、ノエル・ギャラガーの新譜。表題曲を含む新曲3曲に表題曲のリミックス2曲を加えた5曲入りのEP。oasis時代からの王道路線を貫くリアムに対して、エレクトロサウンドをふんだんに取り入れて、oasisとは異なる道を歩もうとするのが顕著なのがノエル。リミックス2曲もエレクトロアレンジに仕上げています。かと思えば「A Dream Is All I Need To Get By」ではアコースティックなサウンドで郷愁感あるメロを聴かせたりと、しっかりとメロディーメイカーとしての才も垣間見せています。個人的には、新たな路線に挑戦するお兄ちゃんを応援したいところ。次のフルアルバムも楽しみです。

評価:★★★★★

NOEL GALLAGHER'S HIGH FLYING BIRDS 過去の作品
NOEL GALLAGHER'S HIGH FLYING BIRDS
CHASING YESTERDAY
Who Built the Moon?
Wait And Return EP
Black Star Dancing

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2019年11月22日 (金)

重い歌詞をポップに聴かせる

Title:yeh
Musician:小谷美紗子

先日紹介したカネコアヤノは音楽的にも高い評価を受け、今、話題の女性シンガーソングライターでしたが、彼女もまた、独特の個性を持ち、かつ音楽的にも以前から高い評価を受けているシンガーソングライターのひとり。特に、その歌詞はデビュー当初から高い評価を受け、昨年は初となる詩集も発売しています。さらに今回のアルバムはその詩集の詩を、歌詞先で曲をつけた作品が多く、いつも以上に歌詞に力が入っている曲が目立ちました。

そのため、歌詞については、少々重い感じの曲が目立ったような印象を受けます。例えば「終戦の船出」などはまさに戦争が終わった後に生きる人の心境を描いた、というかなり重いテーマの作品。ただ、戦争を描いたといっても反戦歌というよりも、戦争が終わった後の人たちの心境から「生きる」ということについて描いたような、さらに重さを感じるテーマ設定になっています。「恋に落ちると馬鹿になる」もある意味、身も蓋もないタイトルになっていますが、こちらもある意味、小谷美紗子流の恋愛論といった感じの歌詞になっており、かなり本質をついたストレートな物言いに重さを感じる内容になっています。

特に歌詞の内容に強い印象を受けたのがラストを飾る「孤独の音が聞こえる」で、自殺を試みようとする人に対して、逆説的に生きることを説いた歌詞。非常に重いテーマ設定ながらも、ある種のユーモアさも感じる内容もあり、強いインパクトを残す曲となっています。もっとも正直なところ、内容的に疑問を感じる歌詞もあり、それが1曲目の「償い税」。ちょっと社会派な歌詞としてはちょっと直感的でポピュリズム的すぎる歌詞に疑問を感じてしまいます。ただ、この曲に限らず、彼女の政治的なメッセージを含んだ歌詞って、昔から変にまじめすぎる内容に違和感を抱く歌詞が多いのですが…。

そんないつも以上に力が入り、かつ重い内容の歌詞のアルバムとなっているのですが、ただ、楽曲自体はそれだけ重い歌詞になっていながらも、意外とポップなメロディーラインでリスナーの耳にすんなりと入ってくるようなポピュラリティーを持った作品に仕上がっていました。例えば「パラダイムシフト」などはシニカルな歌詞の内容に対して、軽快なピアノと爽快なメロディーラインで受け止めることにより、若干重さを感じる歌詞の内容を中和しているような感がありますし、前述の「恋に落ちると馬鹿になる」もジャジーなサウンドで軽快なポップに仕上がることにより、歌詞の内容の割にはいい意味であっさりとポップに聴けるような内容になっていました。

全体的にはピアノを主導として彼女の力強いボーカルを聴かせるようなスタイルの曲が並んでおり、比較的バンドサウンドが強かったここ最近の彼女の曲に比べると、ピアノが前に押し出された、あくまでもソロシンガーとしての小谷美紗子が前に押し出された形のサウンドになっていたように感じます。ただ今回の歌詞の重さを受け止めるには、このようなシンプルな形がむしろプラスになっていたように感じました。

今回のアルバムはそんな歌詞の重さがある故に、ポップで聴きやすいとはいえ、若干聴くのに覚悟がいるような、ポピュラリティーという面では薄い印象も受けます。ただ、一方で間違いなく小谷美紗子の魅力をしっかりと感じさせてくれる作品に仕上がっていたと思います。そんな訳で受け取りにくい部分も含め、しっかりと歌詞の世界を咀嚼して味わってほしいアルバムと言えるかもしれません。歌詞の面での彼女の本気も感じさせるアルバムでした。

評価:★★★★★

小谷美紗子 過去の作品
Odani Misako Trio
ことの は
us

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2019年11月21日 (木)

初のベスト盤が1位獲得

今週のHot Albums

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

アルバムのサブタイトル通り、初のベスト盤となります。

今週1位は椎名林檎の初のベスト盤「ニュートンの林檎~初めてのベスト盤~」が獲得。CD販売数及びダウンロード数で1位、PCによるCD読取数2位で総合順位では見事1位獲得となりました。オリコン週間アルバムランキングでも初動売上9万7千枚で1位獲得。前作「三毒史」の5万7千枚(2位)よりアップ。オリジナルよりもベスト盤の売上を大きく上げた点、浮動層からの支持もうかがえる反面、満を持してのベスト盤でも初動が10万枚を超えなかったというのはちょっと寂しい印象も…。

2位は先週1位のOffical髭男dism「Traveler」がワンランクダウンながらもベスト3をキープ。CD販売数は5位ながらもダウンロード数2位、PCによるCD読取数は1位を確保して総合順位でも2位につけています。

そして3位には小沢健二「So kakkoii 宇宙」が初登場。今や伝説ともなっているギターポップバンド、フリッパーズ・ギターのメンバーとしてデビュー。90年代にはお茶の間レベルでの支持を得て一世を風靡するものの、2000年代以降、音楽活動をほぼ停止させ、事実上の引退状態となっていました。その後、2010年代以降、徐々に活動を再開。2017年には待望のシングル「流動体について」をリリース。そしてこのたび、ついにオリジナルアルバムがリリースされました。オリジナルアルバムとしては2006年の「Ecology of Everyday Life 毎日の環境学」以来となるんどえすが、同作は全編インストのアルバムとなるので、実質的には2002年の「Eclectic」以来、実に17年ぶりの新作となりました。

CD販売数3位、ダウンロード数4位、PCによるCD読取数12位を獲得。オリコンでは初動売上1万9千枚で3位初登場。直近作は2014年にリリースされたライブアルバム「我ら、時」以来となり、同作の6千枚(20位)よりアップしています。

続いて4位以下の初登場盤です。まず4位に女性アイドルグループGANG PARADE「LOVE PARADE」がランクイン。CD販売数で2位を獲得したものの、それ以外は圏外となり総合順位では4位に留まりました。オリコンでは初動売上2万枚で2位初登場。前作「LAST GANG PARADE」の1万2千枚(4位)からアップ。

5位には倖田來未「re(CORD)」が初登場。CD販売数4位、ダウンロード数14位、PCによるCD読取数48位を獲得。オリコンでは初動売上1万3千枚で4位初登場。直近作はリミックスアルバム「Koda Kumi Driving Hit's 9 -Special Edition-」で、同作の初動3千枚(24位)からはもちろん大幅にアップ。オリジナルアルバムの前作「DNA」の1万5千枚(3位)からはダウンしています。

6位初登場は、最近、知名度を急速にあげている川崎出身のHIP HOPクルー、BAD HOPのEP「Lift Off」がランクイン。本作はApple Music、iTunes限定でのリリースとなっていますが、それにも関わらずダウンロード数で3位を獲得。注目度の高さをうかがわせる結果となりました。

最後8位には女性アイドルグループ転校少女*「COSMOS」がランクイン。CD販売数6位でその他は圏外。オリコンでは初動売上6千枚で8位初登場。前作「Star Light」(9位)から横バイの結果となっています。

今週のHot Albumsは以上。チャート評はまた来週の水曜日に!

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2019年11月20日 (水)

紅白出場組が躍進

今週のHot100

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

今年の年末の紅白歌合戦の出場者が先日発表されました。

紅白歌合戦 出場歌手41組決まる 初出場は8組

今週のHot100はその紅白出場組が大きく躍進したチャートとなりました。

まず1位初登場となったのが、その紅白への初登場を決めたKis-My-Ft2「Edge of Days」でした。まあ彼らの場合は紅白出場の影響というよりは純粋に新曲だから、ということなのですが…。テレビ東京系ドラマ「ミリオンジョー」主題歌。CD販売数、PCによるCD読取数及びTwitterつぶやき数で1位、ラジオオンエア数で83位を獲得。オリコン週間シングルランキングでも初動売上16万7千枚で1位獲得。前作「HANDS UP」の19万6千枚(1位)からダウンしています。

そして今週、何より躍進したのが紅白初出場を決めたOfficial髭男dism「Pretender」が3位から2位にアップ。ダウンロード数、ストリーミング数、You Tube再生回数、カラオケ歌唱回数で1位獲得という圧倒的な強さを見せつけています。さらに「宿命」が7位から3位に、「イエスタデイ」が8位から4位にアップ。2位から4位までヒゲダンの曲が並びました。もちろんストリーミング数は今週も1位「Pretender」2位「イエスタデイ」3位「宿命」とベスト3を独占。さらに10位以下に目を向けると12位に「ノーダウト」、14位に「115万キロのフィルム」と、ベスト20に5曲もヒゲダンの曲がランクインしています。

さらにこちらも初登場組、King Gnu「白日」も10位から5位に大きくランクアップ。特にYou Tube再生回数が8位から4位にアップ。紅白初出場のニュースを機に、You Tubeで試聴してみた…という方が多かったようです。そして5位という順位は5月27日付チャート以来となる自己最高位タイ。紅白出場を機に、さらに広い層に知名度を広げてきたようです。

さらには紅白初出場組のベスト10返り咲きも。まず今年、未就学児を中心に圧倒的な支持を受けたFoorin「パプリカ」が先週の14位から9位にアップ。10月7日付チャート以来7週ぶりのベスト10返り咲きで、通算8週目のベスト10入りとなっています。特にダウンロード数が17位から4位に大幅アップ。こちらも紅白出場を機に、支持層を広げそうな勢いです。

10位には同じく紅白初出場となったLiSA「紅蓮華」が21位から順位をあげてベスト10返り咲き。7月15日付チャート以来20週ぶりのベスト10返り咲きとなっています。特にダウンロード数で25位から5位に大幅アップ。彼女はここ数年の紅白で設けられている「アニメ枠」といった感じですが、こちらもアニメ支持層以外でも支持層が広がりそうです。

他にもベスト10圏外となりますが紅白初登場を決めた菅田将暉「まちがいさがし」が19位から11位に大きくランクアップしています。紅白といえば、最近では視聴率も一時期ほど奮わず、ネガティブな評判も多いのですが、それでも紅白出場のニュースでここまでチャートに影響を与えるあたり、まだ音楽番組として特別な存在であることを伺させます。一方、紅白初登場組でも日向坂46とGENERATIONSの曲は上位にランクアップしてきておらず、そういう意味でも同じ紅白初登場組でも、本当の意味で支持されてヒットしたミュージシャンは誰だったのか、如実に表れた結果となっています。

さて、他のロングヒット組は、まず米津玄師「馬と鹿」は5位からワンランクダウンの6位。残念ながら今年の紅白出場組に名前がなかったのですが、サプライズでの出場も噂されている彼。もっともこの曲のロングヒットは紅白とは直接は関係なさそう。ダウンロード数では相変わらず2位をキープしており、まだまだ強さを見せつける結果となっています。

またあいみょん「マリーゴールド」も9位から7位にアップし今週もベスト10入り。あいみょんは昨年、紅白に初登場したのですが残念ながら今年の紅白で名前がありませんでした。ただ、ここでも紹介している通り、「マリーゴールド」は今年1年を通じてヒットしていますし、「ハルノヒ」や「空の青さを知る人よ」もヒットを記録。米津玄師のようなテレビ自体にあまり出演したがらないミュージシャンならともかく彼女は昨年、通常の枠で紅白に出演しますし、今年の紅白落選は少々不可解な感もあります。

今週のHot100は以上。明日はHot Albums!

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2019年11月19日 (火)

独特のサウンドに日常的な歌詞がのる

Title:燦々
Musician:カネコアヤノ

最近、注目を集めている女性シンガーソングライター、カネコアヤノ。前作「祝祭」が「CDショップ大賞」に選ばれるなど、高い評価を受けているシンガーなのですが、売上面でも人気をあげており、本作はBillboard Hot Albumsで最高位18位を獲得。CD販売数に至っては初登場10位という結果となっており、まさにブレイク寸前といった感じになっています。個人的には実はいままでほとんどノーチェックだったのですが、本作の高い人気を見て、ちょっと気になって聴いてみました。ただ、この手の「注目の女性シンガーソングライター」は昨今、非常に多いので、正直言ってさほど期待していなかったのですが…。

しかし、アルバム1曲目「花ひらくまで」のサウンドにまずはビックリさせられます。ちょっとリバーブのかかったサウンドはサイケデリックな要素を感じつつ、その向こうに少しだけラテン的な要素を加えた非常に独特なサウンドが耳を惹きます。さらに耳を惹いたのは「りぼんのてほどき」では音数を減らしつつ、音の間の空間を生かした曲作りに、どこかゆらゆら帝国あたりのサウンドからの近似性を感じます。その後も「ぼくら花束みたいに寄り添って」も分厚いサイケ風なギターサウンドが耳を惹きますし、このバンドサウンドが実に魅力的に感じます。

かと思えば「かみつきたい」ではドゥーワップ風のサウンドを聴かせてくれますし、「光の方へ」はちょっと60年代的な雰囲気を感じるギターポップが魅力的。ラストを飾るタイトルチューン「燦々」はシンプルでフォーキーな雰囲気すら感じる音作りとバリエーションも豊富で最後まで飽きさせません。ただアルバム全体としては必要最小限にとどめたサウンドを用いつつ、リバーブなどのエフェクトを積極的に用いて、サウンドの向こう側、さらに音の隙間に壮大な世界観を感じさせる音作りとなっており、上にも書いたのですが、どこかゆらゆら帝国やOGRE YOU ASSHOLEあたりに通じるようなサウンドを感じます。まずこの音に非常に驚かされました。(ちなみに本作に参加しているかはわからなかったのですが、そのゆらゆら帝国やOGRE YOU ASSHOLEでの仕事でも有名なエンジニアの中村宗一郎が前作「祝祭」に参加しており、その影響も大きいのでしょうか?)

ただ一方で非常にユニークだったのは、そんなサウンドをバックに流れるメロディーは比較的シンプルでかつポップですし、歌詞についても日常感あふれる歌詞になっている点。例えば「明け方」などもメロディーだけピックアップすればフォーキーで非常にポップなメロになっていますし、「ごめんね」もしんみり聴かせるメロディーラインは非常にポップ。メロディーラインだけとればシンプルでちょっとフォーキーなポップソングとなっており、個人的にはつじあやのあたりと並べても違和感なさそうな印象を受けました。

歌詞も日常的なラブソングが多いのが印象的。「眠れない夜にそっと 布と皮膚 交互になぞった」と歌う「布と皮膚」のようにちょっと肉感を覚えるような生々しさを覚える部分もあるのも特徴的なのですが、それがひとつのリアリティーとなって楽曲のインパクトとなっています。このようにサウンドは非常に凝ったバンドサウンドを奏でつつ、一方、メロと歌詞は女性シンガーソングライターらしいシンプルで彼女の本音を綴った歌詞という点に彼女の大きな個性を感じます。そしてとても興味深いのが、サウンドと歌詞及びメロが一見ミスマッチながらも、うまくバランスを保って違和感なく聴かせてくれる点。これが彼女の最大の魅力のようにも感じました。

音楽的にも高い評価を得ていますし、売上面でも伸びてきている彼女。楽曲単位での大ブレイクといったシンガーではないかもしれませんが、次のアルバムで一気にブレイクするような予感も。間違いなくこれからの活躍が楽しみな、要注目の女性シンガーソングライターです。

評価:★★★★★

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2019年11月18日 (月)

60歳のオールタイムベスト

コミックシンガーとして1982年にデビュー。その後、数多くのコミックソングをリリースした他、テレビ番組の司会やラジオのパーソナリティーとしても活躍した嘉門達夫。2017年に58歳の誕生日をきっかけに名前をカタカナにした「嘉門タツオ」と改名したようですが、そんな彼も今年でなんと60歳。還暦を記念した2枚組×2組のオールタイムベストをリリースしました。

Title:祝☆還暦 オールタイム・ベスト~還盤~
Musician:嘉門タツオ

Title:祝☆還暦 オールタイム・ベスト~暦盤~
Musician:嘉門タツオ

ちょっとユニークなのがその構成で、それぞれ日本コロンビアとビクターからのリリースとなるのですが、インディーズ時代の作品も収録されている関係か、リリース順として還盤のDisc1⇒暦盤Disc1、Disc2⇒還盤のDisc2という流れとなっており、CDの中でもその流れで聴くようにコメントが付されています。

そんな訳で2枚×2組の計4枚のCDで嘉門タツオの30年以上の活動の歩みを概観できるベスト盤。以前から薄々思っていたことなのですが、彼が歌っているのはコミックソングというよりもギター漫談だよな、ということを感じました。正直言って、コミカルなメロディーやサウンドで笑わせるというスタイルではなく、彼のネタはほぼ100%、語っているその歌詞の内容によるもの。嘉門タツオといえば大ヒットしたのがご存じ本作にも収録されている「替え歌メドレー」ですが、こちらもある意味、曲自身というよりも歌詞の内容で笑わせるスタイル。そういう意味では曲自体で笑わせるコミックソングとはちょっと異なるかもしれません。

もちろん彼自身、ソングライターとしても一定以上のスキルの持ち主であることは間違いなく、例えばアニメ主題歌となった「タリラリラーンロックンロール」「明るい未来」「少年はいつの日もバカ!」のようなしっかりとインパクトあるメロディーを聴かせる曲もあります。ただ、やはりギター片手にネタを聴かせるスタイルがメイン。特にこの傾向は最近の曲になればなるほど顕著で、暦盤のDisc2から還盤のDisc2にかけて「会話その1」「ショートソング&会話」など、ショートコント的なネタの羅列という曲(?)や、「未発表曲」のような1ネタだけでお終いというコント的な曲(?)が増えてきます。一方で、陽気なクリスマスソングをすべてマイナーコードに変調してメドレーで歌う「ひとりぼっちのクリスマス」などはまさに曲自体で笑わせるコミックソングと言えるスタイルでしょうが、このようなスタイルの曲はほぼこの曲のみといった感じでした。

ネタ的にもパターンは決まっていて、「小市民」のようなあるあるネタ、「あったらコワイセレナーデ」のようなミスマッチネタが目立ちます。特に、お得意のスタイルをギター漫談で語るというスタイルは近年になればなるほど増えてきています。これはネタ切れ…というよりも純粋に彼自身、彼の強みをしっかりと把握して、その強みを生かすようなスタイルに徐々にシフトしてきた、といった感じでしょう。実際、ネタ的には最近の曲でも全く衰えた感はありません。

また、その時代時代に沿ったネタが多く、今聴くと、特に若い世代にとっては元ネタが不明に感じてしまう曲も少なくありません。ただ、この時代に沿ったネタも、リアルタイムを知っている世代としては懐かしさを強く感じてしまいますので、そういうネタもあえて収録しているのでしょう。特に阪神・淡路大震災の後の政府やマスコミの言動を厳しく批判した「怒りのグルーヴ~震災篇~」という時代性を強く反映した曲をあえて収録しているのも、あの頃を忘れないという強い意思を感じます。もっとも謎本ブームを生み出した「磯野家の謎」に便乗した「NIPPONのサザエさん」や、マーフィーの法則のブームに便乗した「マーフィーの法則」はちょっとあまりにも露骨な感じもしますが・・・。

もちろん、あるあるネタやミスマッチネタだけのワンパターンでは決してなく、いろいろな形で手を変え品を変え、ネタを繰り広げているアルバムですので、4枚のCDは最後まで全く飽きることなく最後まで一気に楽しむことが出来ます。もっとも漫談的なネタが多いので、正直言って、2度3度と聴きこむようなアルバムではないことは間違いなく、何度か聴くと飽きてしまうのも否めません。ただ、何度か聴いてちょっと飽きた後、時間を置いて聴くと、おそらく再び大爆笑できること間違いなしのベストアルバムだと思います。誰かを貶めるような不快な笑いはほとんどありませんし、広いリスナー層が素直に楽しめるアルバムだと思います。肩の力を抜いて笑えて楽しめるベスト盤でした。

評価:★★★★


ほかに聴いたアルバム

CHEMISTRY/CHEMISTRY

2000年代前半にミリオンヒットを続発し、一時代を築いた男性R&Bデゥオ、CHEMISTRY。2012年に活動を休止したものの、このたび活動を再開。約7年ぶりとなるニューアルバムをリリースしました。そんな復帰後第1弾となるアルバムはなんとセルフタイトル。そのため、ある意味、実にCHEMISTRYらしさを感じるR&Bナンバーを聴かせてくれている…のですが、正直言って、目新しさはゼロ。楽曲的にも2000年代の作風そのままで、今さらこういう楽曲なのか、とすら感じてしまいます。復帰の挨拶代わりに、彼ららしい曲をあえて収録した、ということも言えるのかもしれませんが…このままだと厳しいよなぁ。

評価:★★★

CHEMISTRY 過去の作品
Face to Face
the CHEMISTRY joint album
regeneration
CHEMISTRY 2001-2011
Trinity
はじめてのCHEMISTRY

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2019年11月17日 (日)

待望の復帰作

Title:Cause and Effect
Musician:Keane

アルバムをここで紹介するたびにこのようなことを書いているような気がするのですが…イギリスでは大人気なのに、なぜか(イギリスのロックが売れることの多い)日本ではいまひとつ人気の伸びないバンド、Keane。日本人受けするようなメランコリックな美メロが魅力的なバンドなだけに、なぜあまり売れないのか不思議なのですが…。

そんな彼らは2013年にリリースされたベスト盤を最後に活動を休止。その後も1日も早い復帰が待ち焦がれていましたが、そんな中、ついに6年ぶりに活動を再開。5月にはミニアルバムがリリースされ、同作はこのサイトでも紹介しましたが、ついに待望の約7年ぶりとなるニューアルバムがリリースされました。

シンプルなサウンドにシンプルなサウンドに聴かせる美メロという構成は以前と変わりありません。ピアノを取り入れてしんみり聴かせたり、シンセを取り入れてきたり、曲によってスペーシーな作風の曲もあるのですが、どの曲もあくまでも「歌」を聴かせるスタイルがメイン。いろいろな音を取り入れていても必要以上に仰々しくなることはありませんし、そういう意味ではシンプルに、徹底的に歌を聴かせることを主眼としたスタイルに、いい意味でのこだわりを感じさせます。

今回のアルバムも少々インパクトの薄さを感じる序盤を過ぎ、これぞKeaneの魅力と感じるのが中盤。ピアノを中心としてシンプルでも切ないバラードを聴かせる「Strange Room」、シンセを取り入れて本作の中では比較的スケール感のあるアレンジがインパクトとなっている「Phases」、テンポよいナンバーながらもサビの切ないメロディーラインの展開が耳に残る「Stupid Things」など、Keaneの本領発揮とも言えるようなメロディアスなポップチューンが並んでいました。

そんな感じで、久しぶりとなるKeaneの美メロを楽しみつつアルバムを聴きすすめて行ったのですが、どうもアルバムを聴き進めていくにつれてどうにも物足りないような気分を感じつつ、本編は幕を下ろしました。何が物足りないんだろう…と思いつつ、今回聴いたアルバムがDeluxe Editionだったのでボーナストラックを聴きすすめていくと…まさにこのボーナストラックのラスト2曲に、自分がKeaneに追い求めていた曲が流れてきました。

このラスト2曲、ピアノメインで静かに聴かせるアレンジに静かに歌い上げるハイトーンのボーカル。これでもかというほど胸がかきむしられるような狂おしく切ないボーカルとメロディーラインが実に美しいナンバー。そう、この胸をかきむしられるような美しいメロディーライン、それが今回のアルバム本編に足りなかった大きな要素でした。

ただ、このボーナス曲2曲は「Stupid Things」と「I'm Not Leaving」とどちらもアルバム本編に収録されている曲のバージョン違い。あらためて本編に収録されているナンバーと比較すると、確かに元曲でも狂おしいようなメロディーを聴くことができるものの、テンポが少々早く、かつ分厚いアレンジに隠れてしまい、ボーナストラックで聴けたような胸をかきむしられるような感覚をあまり感じることが出来ませんでした。

そういう意味では今回のアルバム、決してKeaneのソングライティングのスキルが劣ったわけではなく、どちらかというとアレンジがいまひとつKeaneの良さを生かし切れていなかったのでは?という印象を抱きました。そういう意味では非常に惜しいアルバムとも言える本作。今回、プロデューサーとして、メンバーのトム・チャップリンのソロ作にかかわったというデヴィット・コステンが参加したのですが、彼との相性があまり良くなかったのかなぁ。Keaneらしい魅力は随所に感じるものの、全体的にはいままでの彼らの作品と比べると少々物足りなさが残る作品に。次回作に期待したいところです。

評価:★★★★

KEANE 過去の作品
Perfect Symmetry
NIGHT TRAIN
Strangeland
The Best Of Keane
Retroactive-EP1

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2019年11月16日 (土)

思い入れ深い、初のソロ作

Title:Jaime
Musician:Brittany Howard

ルーツ志向のロックを奏でつつも、単純にルーツ志向と一言でおさまらない音楽性で高い評価を受けたロックバンド、Alabama Shakes。2012年にリリースされたデビューアルバム「BOYS&GIRLS」もグラミー賞にノミネートするなど高い評価を得ましたが、続く2ndアルバム「Sound&Color」もアメリカビルボードチャートで1位を獲得したほか、その年の各種メディアの年間ランキングで上位にランクイン。大きな評価を受けました。

そんなAlabama Shakesの最新作から約4年。なんとAlabama Shakesのボーカリスト、ブリタニー・ハワードのソロアルバムがリリースされました。今回のアルバムでまず特筆すべきなのはその参加したバンドメンバー。Alabama Shakesのザック・コックレルが参加しているほか、キーボードにはなんとロバート・クラスパー(!)。さらには今、ジャズ界でもっとも注目されているドラマーの一人、ネイト・ウッドが参加。これだけでかなり期待が高まってくる豪華メンバーでの編成となっています。

そのため、あくまでもロックバンドであるAlabama Shakesのサウンドと比べると、比較的ジャズ寄りになっている今回のアルバム。例えば1曲目「History Repeats」では非常にパワフルで、かつ絶妙のリズム感のあるネイト・ウッドのドラムからスタートし、グルーヴ感あるサウンドが実に魅力的。「13th Century Metal」もバンドメンバーによるセッションから生まれた曲だそうで、ファンキーでかつグルーヴィーなサウンドがたまらない楽曲に仕上がっています。

そのほかにもメロウなサウンドが心地よい「Tomorrow」やジャジーなエレピの音色が耳に残る「Goat head」など、Alabama Shakesとは異なる作風の曲が並んでいる点に、ソロアルバムとしての大きな魅力を感じます。ただ、とはいえ単純なジャズのアルバムではありません。前述の「History Repeats」「13th Century Metal」もファンキーなリズムを楽しめますし、「Stay High」などは爽やかでポップテイストの強い作風。「Short and Sweet」はアコギ主体のシンプルなサウンドで聴かせてくれますし、ラストを締めくくる「Run to Me」もリバーブをかけまくったサウンドでスペーシーでエレクトロ風な作品に仕上がっています。

そういう意味ではなかなか一言で言うには難しい音楽性で、Alabama Shakesのようなロック的な要素ももちろん垣間見れますし、ルーツ志向的な雰囲気を感じつつも、サウンドに関しては全体的にはモダンな印象。かといって単純に今風のサウンドを取り入れているわけではなく、まさにこのバンドにしか生み出せなかったようなグルーヴをアルバム全体から感じることができる作品になっています。

また何よりこのアルバムの最大の魅力はブリタニー本人のボーカルでしょう。力強いバンドサウンドをバックにしてはパワフルなボーカルを、「Tomorrow」のような曲では伸びやかでメロウなボーカルを、かと思えば「Short and Sweet」のようなシンプルな曲ではとても暖かく慈愛に満ちた歌声を聴かせてくれます。文字通り緩急つけた表現力たっぷりのボーカルが非常に魅力的で、サウンドに関しても、数曲を除いてはグルーヴィーなサウンドを聴かせつつも、基本的にはブリタニーのボーカルを中心に据えた構成に仕上がっています。

ただ、よくよく考えると、様々な音楽性を取り入れて、一言で言えない独特なサウンドを組み立てているという点も、ブリタニーのボーカルの魅力を最大限、前に出しているという点も、Alabama Shakesの大きな特徴。そういう意味では、実はブリタニーのソロアルバムながらもおおまかな楽曲の方向性としては実はAlabama Shakesと似たようなベクトルを差し示しているアルバムと言えるのかもしれません。

ちなみに今回のアルバムのタイトルであるJaimeは病気のため13歳で亡くなったという彼女の姉の名前から取ったとか。彼女にピアノを弾くことや詩の書き方を教えてくれたという姉の名前を付したアルバムに、それだけ彼女の思い入れの深さも感じます。そしてその思い入れがしっかりと曲に結実した傑作アルバムに仕上がっていました。Alabama Shakesとしても毎作、傑作アルバムを聴かせてくれている彼女ですが、今回も間違いなく年間ベストクラスの傑作だったと思います。ブリタニーのシンガーとしての、またソングライターとしてのすごみを感じさせる傑作でした。これだけソロとしてすごいアルバムを出すと、バンドとしての今後にちょっと心配になってしまいますが…次はAlabama Shakesとしての久々の新譜を期待します!

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

Sinematic/Robbie Robertson

元THE BANDのメンバーによる約8年ぶりのソロアルバム。いい意味で年期を感じるしゃがれたボーカルで非常に渋く聴かせるアルバムで、ミディアムテンポの昔ながらもブルースロックがメイン。ちょっと陳腐な言い方かもしれませんが「大人のロック」という言う方が非常に似あう雰囲気のアルバム。ある意味、新鮮味は全くありませんが、現在76歳という大ベテランながらも現役感もあり、いい歳の取り方をしているように感じる作品に。ちょっと失礼な言い方かもしれませんが、老いてからのロックのひとつのスタイルを示しているような感もある作品でした。

評価:★★★★

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2019年11月15日 (金)

見事1位返り咲き

今週のHot Albums

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

初登場から5週目にして見事な1位返り咲きです。

今週1位を獲得したのはOfficial髭男dism「Traveler」でした。先週6位から大きく順位をあげ4週ぶりの1位返り咲き。ダウンロード数は3位から1位にアップ。PCによるCD読取数も3週連続の1位となり、全体的に大物のリリースがなかったためCDの売上枚数が低迷していた影響もあり、見事1位獲得となりました。Hot100でもヒゲダンの躍進が続いていますが、Hot Albumsでも彼らの躍進が目立つ結果となっています。

2位には来栖 翔(下野鉱)「うたの☆プリンスさまっ♪ソロベストアルバム 来栖 翔『Sweet Kiss』」が初登場。女性用恋愛アドベンチャーゲーム「うたの☆プリンスさまっ♪」のキャラクターによるソロアルバム。CD販売数は1位だったもののPCによるCD読取数は17位に留まり、総合順位は2位に留まりました。オリコン週間アルバムランキングではこちらが初登場で1位獲得。初動売上は3万枚で、同シリーズの前作神宮寺レン(諏訪部順一 )「うたの☆プリンスさまっ♪ソロベストアルバム 神宮寺レン『Rose Rose Romance』」(3位)から横バイとなっています。

3位は先週2位のどついたれ本舗「あゝオオサカdreamin'night」がワンランクダウンながらもベスト3をキープ。CD販売数3位、PCによるCD読取数12位ながら、ダウンロード数が2位と強さを見せています。

続いて4位以下の初登場盤です。まず4位にTHE BOYZ「TATTOO」。韓国の男性アイドルグループのデビューアルバム。CD販売数で2位を獲得したものの、その他のランキングでは圏外となり、総合順位ではこの位置に留まりました。オリコンでは初動売上1万6千枚で2位初登場となっています。

6位にはロックバンドKEYTALK「DON'T STOP THE MUSIC」が初登場。CD販売数5位、ダウンロード数55位、PCによるCD読取数63位。Virgin Music移籍後、初となるアルバムとなります。オリコンでは初動売上1万枚で5位初登場。前作「Rainbow」の1万2千枚(5位)からダウンしています。

9位初登場はNulbarich「2ND GALAXY」。ジャジーなシティポップバンドが人気を高める中、注目度上昇中のロックバンド。CD販売数は12位、PCによるCD読取数は75位に留まりましたが、ダウンロード数では4位を獲得し、総合順位でも見事ベスト10入りです。オリコンでは初動売上4千枚で13位初登場。前作「Blue Envelope」の8千枚(9位)からダウンしています。

最後10位には女性シンガーソングライターmilet「Drown/You&I」がランクイン。出身地や生年月日を明かさない、謎めいた雰囲気を売りとしているシンガー。CD販売数は21位に留まりましたが、ダウンロード数は3位にランクインし、総合順位では見事ベスト10入り。前作「us」も初登場でCD販売数10位に対してダウンロード数5位とダウンロードでの売上順位がCDの売上順位を大きく上回っていましたし、基本的には配信主導型の人気となっています。オリコンでは初動売上3千枚で25位初登場。前作「us」の4千枚(11位)から若干のダウンとなっています。

今週のHot Albumsは以上。チャート評はまた来週の水曜日に!

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2019年11月14日 (木)

嵐が躍進するが…

すいません、事情により1日遅れの更新となります。

今週のHot100

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

先週に続き秋元康系の女性アイドルグループが1位獲得。

今週1位を獲得したのはAKB48の姉妹グループ、NMB48「初恋至上主義」が獲得。CD販売数で1位。PCによるCD読取数11位、Twitterつぶやき数は15位と留まりましたが、総合順位で1位を獲得しました。オリコン週間シングルランキングでは初動売上16万6千枚で1位初登場。前作「母校へ帰れ!」の19万5千枚(1位)からダウンしています。

2位は、発売日の関係で先週は9位に留まっていたの配信限定シングル「Turning Up」がランクアップしてベスト3入り。ダウンロード数1位、ストリーミング数4位、You Tube再生回数1位、Twitterつぶやき数7位、ラジオオンエア数30位で、惜しくも1位は逃しました。ダウンロード数1位はさすがですが、ストリーミング数が4位に留まったあたり、曲自体の支持よりも彼ら自体が人気がある、アイドル的人気にとどまっている感は見て取れます。今後、瞬発的な指標であるダウンロード数ではなく、長く幅広い層に支持される指標であるストリーミング数やYou Tube再生回数でどれだけ上位を維持できるかが、嵐が本質的にどの程度、幅広く人気があるのかわかるポイントと言えるでしょう。

一方、そのストリーミング数1位を25週連続維持しており圧倒的な人気を続けているのがofficial髭男dism「Pretender」。今週は先週の2位よりワンランクダウンの3位となりましたが、しぶとくベスト3をキープしています。一方、先週3位だった「イエスタデイ」は今週8位に、「宿命」は4位から7位にダウン。3曲同時ランクインは続けているものの、大きく順位を落とす結果となりました。もっともストリーミング数は今週も2位「イエスタデイ」、3位「宿命」とベスト3独占をキープ。嵐の前に大きな壁として立ちふさがりました。You Tube再生回数も「宿命」3位、「イエスタデイ」7位と上位を維持しているため、まだロングヒットは続きそうです。

続いて4位以下の初登場曲です。まず4位に女性アイドルグループBiSH「KiND PEOPLE」が入ってきました。CD販売数は2位ながら、ダウンロード数89位、ラジオオンエア数19位、PCによるCD読取数16位、Twitterつぶやき数は30位に留まり、総合順位も4位に留まりました。オリコンでは初動売上6万4千枚で2位初登場。前作「stereo future」の5万7千枚(4位)からアップ。

5位初登場はスターダストプロモーション所属の男性アイドルグループM!LK「ERA」。CD販売数3位だったもののPCによるCD読取数98位、Twitterつぶやき数14位、その他は圏外という結果となり、総合順位ではこの位置に。もろ90年代のJ-POP的な爽快さのあるメロディアスなポップで変な癖がない分、聴きやすい楽曲に仕上がっていました。オリコンでは初動売上4万5千枚で3位初登場。前作「かすかに、君だった。」の5万枚(4位)からダウン。

今週初登場は以上。6位以下はロングヒット曲がズラリと並んでいます。前述のヒゲダン2曲のほか、まず6位には米津玄師「馬と鹿」が5位からワンランクダウン。ダウンロード数2位、PCによるCD読取数は1位を先週からキープ。ただYou Tube再生回数は4位から5位にダウン。こちらは嵐の新曲に押し出された感じですが…。

そして9位にはまだまだがんばっているあいみょん「マリーゴールド」。先週8位からワンランクダウン。ストリーミング数は6位から7位にダウン。You Tube再生回数も2位から4位にダウンしたものの、まだ上位を維持しており、まだロングヒットは続きそう。そして10位にはKing Gnu「白日」が6位から10位にダウン。ストリーミング数は4位から5位にダウン。You Tube再生回数も6位から8位にダウンと下落傾向。ただ、こちらもどちらの順位も上位を維持しており、来週、踏みとどまるか、それともベスト10落ちしてしまうのか、その動向が気にかかります。

今週のHot100は以上。明日はHot Albums!

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2019年11月13日 (水)

歌謡曲路線がより強く

Title:DEEP BLUE
Musician:9mm Parabellum Bullet

9mmとしてはちょっと久しぶりとなる約2年4ヶ月ぶりとなるニューアルバム。その間、2018年にはボーカルの菅原卓郎が歌謡曲をコンセプトとしたソロアルバムをリリースするなど、ソロ活動も行われました。その後リリースされたのが本作。その菅原卓郎のソロ活動が影響を受けたのか…はわかりませんが、今回のアルバムはいままでの作品以上に歌謡曲志向の強いアルバムになっていたように感じました。

例えば「夏が続くから」なども、郷愁感たっぷりのメロディーラインやアコギのフレーズなどはまさに歌謡曲路線。歌詞も夏の風景を物悲しく描いた恋愛歌となっており、ちょっと湿った歌詞の世界観もまさに歌謡曲といった感じ。「Ice Cream」もこれでもかというほど悲しみを帯びたメロディーもいかにも歌謡曲的ですし、どろどろ溶けた恋愛模様を描いた歌詞も実に歌謡曲的といった感じの曲になっています。

もともと9mmの音楽はマイナーコード主体のメロディーラインが主となっており、「歌謡曲的」な雰囲気はいままでの曲にもありました。しかし今回のアルバムについてはそれがより自覚的になっており、かつ、あえていえば非常にベタさを感じさせるような曲調に仕上がっていたように感じます。結果として良くも悪くもいままでのアルバムよりもわかりやすい作風に仕上がっていましたし、ファンの間でも賛否のある作風になっていたようです。

例えば、タイトルチューンである「DEEP BLUE」もヘヴィーで疾走感あるバンドサウンドは9mmらしいダイナミズムを感じつつ、こちらもある意味、わかりやすい歌謡曲風のメロディーラインが印象に残るナンバー。「君は桜」も好きな人を桜に例えるという、非常にベタさを感じさせる歌詞になっていました。

一方ではその結果としていままでの彼らのダイナミックなヘヴィネスさが若干薄れたという側面も否定はできません。「Getting Better」のようにデス声を入れてダイナミックに展開していく楽曲もありましたが、全体的にはポップな作風がより前に押し出された感のあるアルバムになっており、その点も賛否がわかれる部分になっていたようです。

ただ個人的には本作は良い意味でわかりやすさが増して、彼らの魅力をより強く感じられるアルバムになっていたように感じます。特に歌謡曲路線を押し出したことにより、いままでちょっと中途半端さに感じられた、歌謡曲的なメロディーラインとダイナミックな彼らのバンドサウンドのバランスがほどよく取れたようにも感じました。ある意味、ちょっとどっちつかずの感のあったいままでのアルバムから、本作では今後の9mmの方向性がより明確になったようにも感じました。

もっとも、次回作は一転、ヘヴィネスさをより前に押し出した作品になるかもしれませんし、今後の彼らがどのような道を進んでいくかは不明なのですが…ただ、今の9mmの興味のありかが非常によくわかる傑作アルバムに仕上がっていました。いい意味で聴きやすい内容なだけに、彼らについてはじめて触れるアルバムとしてもお勧めできそうな1枚。これからの彼らの活躍も楽しみです。

評価:★★★★★

9mm Parabellum Bullet 過去の作品
Termination
VAMPIRE
Revolutionary
Movement
Dawning
Greatest Hits
Waltz on Life Line
BABEL

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2019年11月12日 (火)

王道路線を追求

Title:Why Me?Why Not.
Musician:Liam Gallagher

ご存じ、元oasisのギャラガー兄弟の弟、リアム・ギャラガーのニューアルバム。oasisの解散から早くも10年が経過(!)したものの、いまだに再結成を望む声は絶えず、兄弟の動向にも大きな注目を集め続ける彼ら。お兄ちゃんノエル・ギャラガーはNoel Gallagher's High Flying Birdsとしての活動をコンスタントに続ける一方、リアム・ギャラガーはoasis解散後、バンドBEADY EYEを結成。ただこのバンドはアルバム2枚をリリースした後に解散し、その後はソロ名義で活動を開始。本作が2枚目のオリジナルアルバムとなります。

そんなギャラガー兄弟ですが、解散後の音楽的な2人のスタンスはある意味、大きく異なりました。ノエルの方はoasisのイメージから異なるような新たな音楽性に挑戦。ここ最近でも打ち込みなどを大胆に取り入れたダンスチューンを発表し、音楽的な幅を広げています。一方リアムはoasisの方向性を引き継ぐ…というよりも初期oasisのサウンドを彷彿とさせるような、まさに王道的な楽曲を歌い続けています。

先行シングルとなっている「Shockwave」などもまさに実にoasisっぽいナンバーで、軽快なリズムにグルーヴィーなサウンド、ちょっと憂いを感じるメロディアスなポップといい、ある意味、リスナーとして望んでいるリアム像をそのまま体現化しているようなナンバーですし、彼のボーカルにもピッタリとマッチしています。タイトル曲「Why Me?Why Not.」もバンドサウンドにストリングスを入れた、これでもかというほど分厚いサウンドに心地よさを感じる楽曲に仕上がっていますし、続く「Be Still」もちょっとしゃがれたリアムのボーカルがピッタリとマッチする、実に彼らしいテンポよいロックチューンに仕上げられています。

さらに後半もサイケ風のサウンドでグルーヴィーに聴かせる「The River」に、同じくヘヴィーなギターサウンドをバックにグルーヴィーに歌い上げる「Invisible Sun」と、まさに王道とも言えるナンバーで気持ちよく楽しめる作風に。最後はミディアムチューンでしんみりとメロディーを聴かせる「Misunderstood」に軽快なポップチューン「Glimmer」とメロディーを聴かせるポップ色の強い楽曲で締めくくり。バンドサウンドを強調した路線をポップなメロを強調した路線をしっかりと両立させてリスナーを楽しませる構成となっていました。

今回も前作と同様、グレッグ・カースティン、アンドリュー・ワイアットというソングライティングチームにリアム本人が加わり楽曲を作成していますが、3人のチーム編成がしっかりと決まった形での、まさにリアム・ギャラガーらしさを追及した作風に仕上げられていました。そんな曲調ゆえに歌いやすかったのか、彼のボーカルも冴えまくっている印象が。ソングライターとしても作品の中で力を発揮している彼ですが、それ以上になによりもあのボーカリストとしての独特の歌声に強い魅力を感じさせるアルバムに仕上がっていたと思います。

そんな感じで良く出来ている作品だとは思いますし、実際、アルバムの売れ行きも好調。先行シングルとなった「Shockwave」もソロキャリア史上最大のヒット曲となったそうです。そういう意味で、リスナーとしてはこういう姿を追い求めているんだな、ということが実によくわかる作品になっていたと思います。ただ、個人的にはちょっとあまりにも王道すぎる、oasisとしての影を追い求めすぎている感はどうしてもマイナス要素として感じてしまいます。まあ、確かにリアムのボーカルスタイルとしてはこういう楽曲スタイルが一番ということはわかるといえばわかるのですが…。それにしてもソロとしてもうちょっと挑戦してほしい感じはするのですが…。

もっとも、このスタイルがやはり彼としてはピッタリと似合っており、売上も好調ということを考えると、今後もこのスタイルでのアルバムは続いていきそう。その一方、oasis再結成の噂は消えずに続いており、今後の動向も気になるところ。個人的には次の作品はoasisで…と思うのですが…まあ、そううまくはいかないだろうなぁ、やっぱり。

評価:★★★★

Liam Gallagher 過去の作品
AS YOU WERE

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2019年11月11日 (月)

事実上、初のベスト盤

Title:Perfume The Best "P Cubed"
Musician:Perfume

最近、すっかり女性アイドル勢が「ロックフェス」などに出演することが珍しくなくなってきました。個人的には無条件にそのような状態が受け入れられている状況には疑問を感じる部分が強いのですが、それはともかくとして、ある意味、そのような流れを最初につくってきたユニットは彼女たちPerfumeといえるかもしれません。中田ヤスタカによるクオリティーの高いテクノポップはロックリスナー層にも訴求し、幅広い支持を集めました。

私自身もPerfumeが出てきた時は、昔の日本のアイドルグループとは異なり、ダンスや音楽を主軸としたプロフェッショナルな大人の女性的な部分を全面に押し出した方向性に、新たな流れを感じました。ただ、残念ながらその後、結局AKBグループのような、以前の日本のアイドルと同じような、幼く、素人っぽい女性グループが主流になってしまってしまうのですが…。ただPerfume自身はその後も中田ヤスタカプロデュースの下、テクノポップ路線を貫いているのはご存じの通りです。

さて、今回紹介する本作は彼女たちにとって初となるベスト盤。ブレイク前の作品を集めた企画盤的な「ベスト盤」や海外向けのベスト的なコンピレーションアルバムのリリースはありましたが、ブレイク後の代表作をまとめた正式なベスト盤は今回が初となります。中田ヤスタカがプロデューサーで参加して以降の彼女たちの楽曲がリリース順に収録。また新曲「ナナナナナイロ」も収録されています。

Perfumeについてはシングル単位では一通り聴いてはいるものの、アルバム単位できちんと聴いたのは2008年にリリースされた「GAME」と現時点で最新作となる「Future Pop」のみ。その2枚のアルバムを聴いた印象としては、最新アルバムの方がよりサウンドを前面に押し出したような曲作りをしている、という印象を受けました。確かに実際、今回のベスト盤を聴いても、ほぼインスト曲である「FUSION」など彼女たちの歌声よりもサウンドを前に押し出したようなポップチューンが目立ちます。ただもっとも、初期の作品でも「Dream Fighter」などサウンドが主体となっている楽曲もありますし、逆に比較的最近の曲でも「Hold Your Hand」のようなアイドルポップ的な色合いの強い曲もあったりして、決して彼女たちの作風に著しい変化があった訳ではありません。アルバム全体として、しっかりとした統一感を覚える内容に仕上がっていました。

なにより初期の作品から最近の作品まで共通しているのは彼女たちの歌声が中田ヤスタカのサウンドのひとつの素材として溶け込んでいる点でした。普通のアイドルポップというと、当たり前ですが女の子たちの歌声が前に押し出されているケースが大半。特に日本のアイドルポップは、ロリ声やアニメ声など、正直変に男性に媚びたような声を出すアイドルが多く、個人的には一種の嫌悪感を覚えるケースが多いのですが、彼女たちの場合は歌声もしっかりとサウンドを構成するパーツとしてピッタリとマッチ。そういう意味でも非常に聴きやすく、また、そういうった点がPerfumeが多くのリスナー層に支持された要因のように感じました。

また、特にここ最近に至って、サウンド的にも挑戦的な作風の曲も増えてきており、中田ヤスタカが自由にPerfumeの作品に取り組んでいるように感じます。同じ中田ヤスタカが全面プロデュースをしているミュージシャンとしては、例えばきゃりーぱみゅぱみゅの場合、彼女自身の色が濃いために、その彼女の色に引きずられるような形で楽曲の方向性が決定してしまうところがあるのですが、Perfumeの場合はポップな作品から若干挑戦的な作品まで受け入れられるような土壌があり、結果、中田ヤスタカが自分のやりたいように曲づくりを行えているように感じました。

そういう点もあって、エレクトロ作品主体ながらもアイドルポップ色の強い曲から、挑戦的なサウンド主体の曲まで幅もあり、全3枚組ながらもバリエーションのある作品で一気に楽しむことが出来たベストアルバムに仕上がっていました。またあくまでもサウンドの中の素材として徹している部分も彼女たちのプロとしての矜持を感じることが出来ますし、そういう意味では他のアイドルグループとは一線を画するようにも感じます。まだまだ彼女たちの活躍は続きそうです。

評価:★★★★★

Perfume 過去の作品
GAME
Future Pop


ほかに聴いたアルバム

小さな夜~映画「アイネクライネナハトムジーク」オリジナルサウンドトラック~/斉藤和義

伊坂幸太郎原作の短編小説「アイネクライネナハトムジーク」の映画のサントラ盤。もともと、同作は伊坂幸太郎と斉藤和義の絆から生まれた作品だそうで、かつてから斉藤和義のファンを公言していた伊坂幸太郎に斉藤和義が作詞のオファーをしたところ、小説なら、ということで書き上げたのが同作。一方、斉藤和義はこの小説から「ベリー ベリー ストロング〜アイネクライネ〜」を作成したそうです。

そんな訳で映画化にあたり劇中音楽を斉藤和義が担当することになった訳ですが、もちろん「ベリー ベリー ストロング〜アイネクライネ〜」も収録。他にも映画のために斉藤和義が書き下ろした主題歌「小さな夜」も収録されています。ただ、基本的には劇中で使われるインスト曲がメイン。そのため映画を見ていない人には楽しめない曲が多い…のですが、この手のサントラにありがちなワンアイディアのワンフレーズが流れるだけの曲というよりは、しっかりせっちゃんらしい暖かいメロディーラインの流れる曲がメインとなっており、映画を見ていなくてもそれなりに楽しめるアルバムに仕上がっていました。斉藤和義ファンなら映画を見ていなくてもチェックしておいて損のないアルバムです。

評価:★★★★

斉藤和義 過去の作品
I (LOVE) ME
歌うたい15 SINGLES BEST 1993~2007
Collection "B" 1993~2007
月が昇れば
斉藤“弾き語り”和義 ライブツアー2009≫2010 十二月 in 大阪城ホール ~月が昇れば 弾き語る~
ARE YOU READY?
45 STONES
ONE NIGHT ACOUSTIC RECORDING SESSION at NHK CR-509 Studio
斉藤
和義

Kazuyoshi Saito 20th Anniversary Live 1993-2013 “20<21" ~これからもヨロチクビ~ at 神戸ワールド記念ホール2013.8.25
KAZUYOSHI SAITO LIVE TOUR 2014"RUMBLE HORSES"Live at ZEPP TOKYO 2014.12.12
風の果てまで
KAZUYOSHI SAITO LIVE TOUR 2015-2016“風の果てまで” Live at 日本武道館 2016.5.22
斉藤和義 弾き語りツアー2017 雨に歌えば Live at 中野サンプラザ 2017.06.21
Toys Blood Music
歌うたい25 SINGLES BEST 2008~2017
Kazuyoshi Saito LIVE TOUR 2018 Toys Blood Music Live at 山梨コラニー文化ホール2018.06.02
KAZUYOSHI SAITO 25th Anniversary Live 1993-2018 25<26 〜これからもヨロチクビーチク〜 Live at 日本武道館 2018.09.07

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2019年11月10日 (日)

10年ぶりのピアノアルバム

Title:Spectrum
Musician:上原ひろみ

日本のみならず、今や世界でも高い人気を誇るジャズピアニスト上原ひろみ。精力的な音源制作やライブ活動も続けており、ここ数年もほぼ毎年のようになんらかの形でアルバムのリリースを続けてきました。ただ、ここ最近はTHE TRIO PROJECTとしてのリリースが続いたり、矢野顕子とのコラボや、ハープ奏者のエドマール・カスタネーダとのコラボ作がリリースされたりと、他のミュージシャンと組んだ作品が続いており、ちょっと意外なことにピアノソロアルバムとしては2009年の「Place To Be」以来、約10年ぶりのアルバムとなりました。

さて、ここ最近の上原ひろみの作品というと、比較的ロック寄りの作風によるものが続いてきました。THE TRIO PROJECTはバンドサウンドということもあり、ともすればプログレ的な楽曲すらありましたし、ライブではフジロックにも出演するなど(もっともフジロックに参加しているのは必ずしもロックバンドだけとは限りませんが…)、ロックリスナーを含め広いリスナー層にアピールするような活動も目立っていました。

そう考えると今回のアルバムは彼女の本来の姿、王道的なジャズ路線に戻ってきたアルバム、と言えるのかもしれません。特に「Whiteout」「Blackbird」など、ピアノで美しいメロディーラインを奏でるような曲も目立ち、その美しいピアノの奏でに耳を奪われる瞬間に多く出会うことが出来る作品になっています。アルバムを締めくくる「Specia Effect」も、まさにそんな美しいピアノのフレーズが耳を惹く楽曲。ピアニスト上原ひろみの魅力をアルバム通じて存分に味わえる作品になっています。

ただ、もちろん彼女のアルバムが単にピアノで美しいフレーズを聴かせてお終い…な訳がありません。そもそもアルバムの1曲目を飾る「Kaleidoscope」からしてピアノで奏でられる複雑なフレーズが折り重なる非常にスリリングなナンバー。「Once In A Blue Moon」もヘヴィーなピアノのフレーズでダイナミックに展開していく楽曲になっており、いずれもここ最近のロック寄りになった彼女を気に入ったリスナーも納得できそうな楽曲になっています。また、それ以外にも「Yellow Wurlitzer Blues」はタイトル通りのジャンプブルースの要素を取り入れた陽気でリズミカルなナンバーになっていますし、「Mr.C.C.」もラグタイムを取り入れた軽快な楽曲に。いずれも「古き良きアメリカ」のエンターテイメントを取り入れたような楽曲になっており、聴いていてワクワク楽しくなってくるような楽曲になっています。

そんな彼女の今回のアルバムでの真骨頂とも言えるのが「Rhapsody In Various Shades Of Blue-Medley」でしょう。23分弱にも及ぶこの楽曲は管弦楽の名曲「ラプソディー・イン・ブルー」にジョン・コルトレーンの「ブルー・トレイン」とTHE WHOの「ビハインド・ブルー・アイズ」を「ブルー」つながりで取り入れた楽曲。長尺の中でメロディアスに聴かせたり、ムーディーに展開したり、ダイナミックなフレーズを聴かせたり、と、23分に及ぶひとつの物語を聴かせるような壮大な楽曲に。所々、聞き覚えのあるフレーズが飛び出してくるあたりも非常にユニーク。クラシックとジャズとロックをおなじ楽曲で融合させるあたりも、ジャズをベースにしつつ、様々なジャンルを曲に取り入れてくる上原ひろみらしい作品になっています。

そんな訳で、ロック的な要素を取り入れたここ最近の作品と比べると比較的おとなしいという印象も抱きがちなアルバムですが、そんな中でも様々な音楽性を取り入れ、魅力的なフレーズを聴かせつつ、自在にピアノを操る彼女の魅力を存分に感じられる傑作に仕上がっていました。ピアノアルバムという彼女の基本に立ち返ったからこそ、より上原ひろみの本来の魅力があらわれた作品と言えるかもしれません。次はまた、誰かとのコラボ作になるのでしょうか?彼女の活躍はまだまだ続きそうです。

評価:★★★★★

上原ひろみ 過去の作品
BEYOUND THE STANDARD(HIROMI'S SONICBLOOM)
Duet(Chick&Hiromi)
VOICE(上原ひろみ featuring Anthony Jackson and Simon Phillips)
MOVE(上原ひろみ featuring Anthony Jackson and Simon Phillips)
Get Together~LIVE IN TOKYO~(矢野顕子×上原ひろみ)
ALIVE(上原ひろみ THE TRIO PROJECT)
SPARK (上原ひろみ THE TRIO PROJECT)
ライヴ・イン・モントリオール(上原ひろみ×エドマール・カスタネーダ)
ラーメンな女たち(矢野顕子×上原ひろみ)

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2019年11月 9日 (土)

あえて「ミックステープ」という形で

Title:AFTERMIXTAPE
Musician:KREVA

今年、ソロデビュー15周年を迎えたKREVA。その区切りとなる年を記念すべく9ヶ月連続リリースとしてシングルやDVD、またはベストアルバムをリリースし続けてきましたが、本作がそのトリを飾る10弾目となるアイテム。前作「嘘と煩悩」以来、約2年7か月ぶりとなる待望のニューアルバムとなりました。

今回のアルバムで特徴的なのはやはりそのアルバムタイトル。ここで「ミックステープ」とは、HIP HOPそれもアメリカのものを聴くような方にはおなじみかと思いますが、HIP HOPのミュージシャンがよくリリースするアルバムの形態のこと。もともとサンプリングという形態がよく取られるHIP HOPというジャンルにおいては、元ネタのミュージシャンの許可を取らずサンプリングを使用することがよくあり、そんなイリーガルな形態で作られれたアルバムは通常のリリース形態で販売されず、カセットテープという形で路上販売されており、そんなカセットテープのことを「ミックステープ」と呼んでいました。

最近ではカセットテープという形よりもネット上で無料ダウンロードのような形でリリースされることが多くなってきていますが、いまでも数多くの著名なミュージシャンが「ミックステープ」という形でアルバムを突如リリースするケースが少なくありません。そんな中、特にアメリカのラッパー、Chance The Rapperは無料ダウンロードのみのリリース形態にも関わらず、ビルボードチャートでベスト10入りを記録。さらには音源をリリースしていないミュージシャンとしては史上初、グラミー賞を受賞するなど大きな話題となりました。

もっとも今となっては大物ミュージシャンがミックステープという形でアルバムをリリースしてくることもあり、通常のアルバムとミックステープの境目もあいまいになりつつあります。そんな中、今回、KREVAのニューアルバムはあえて「ミックステープ」というアルバムタイトルでリリース。残念ながら通常のリリース形態となっており無料ダウンロードという形態ではありません。ただ、ジャケット写真はあえて「ミックステープ」をイメージさせるようなチープなジャケットとなっているほか、なにより今回のアルバム、KREVAが自分のやりたいことを自由にやった、非常に自由度の高いアルバムという、まさにミックステープのようなアルバム構成になっているそうです。

やりたいことをやった、という意味でもっとも典型的なのがリリック。例えば「アイソレーター」は世間のマナー違反に対して怒りをつづったリリック。社会派な歌詞といえば社会派なのですが、若干、わざわざ歌わなくちゃいけないほどの題材なのか…と思わないこともなかったり…。「リアルドクターK」なんかも医者をテーマに歌っているのですが、こちらも題材としてはどうなんだろうと思わないこともなかったり…。ただ、それだけKREVAがまずは歌いたいということを歌っているという点で、曲自体も肩の力がいい意味で抜けているような印象を受けます。

さらに「それとこれとは話がべつ!」もユニーク。リリックの内容的にはタイトルそのままなのですが、タイトルのフレーズが非常に耳に残りますし、RHYMESTERの宇多丸と小林賢太郎が参加しているですが、ちょっと理屈っぽく、かつユーモラスなリリックはある意味、RHYMESTERっぽさも強く感じます。聴いていてとても楽しくなるような1曲でした。

サウンド的にもNulbarichのJQが参加し、シティポップ調にまとまった「One」だったり、ドラムンベース風の「S.O.S.が出る前に」だったり、メロウなエレクトロトラックにまとめた「君の愛 Bring Me To Life」だったり、非常に自由度が高いトラックも特徴的。結果としてアルバム全体として若干統一感にかけるきらいがないではないのですが、それ以上に楽曲としての自由度の高さが楽しくなってくるような作品に仕上がっていました。

そんなまさに好き勝手にアルバムを作ったような自由度の高い作品。もっとも、KREVAはソロになってから、比較的(いい意味で)好き勝手に活動を行っている印象も強く、そういう意味では今回のアルバムがいままでの作品と比べて際立って自由度が高い、といった感じではないのかもしれませんが…。ソロ活動15周年の最後を締めるに相応しい、KREVAらしさがきちんと出ていた良作でした。さて、次はそろそろKICK THE CAN CREWの新作も??

評価:★★★★★

KREVA 過去の作品
心臓
OASYS
GO
BEST OF MIXCD NO.2
SPACE
SPACE TOUR
KX
嘘と煩悩
存在感
成長の記録 ~全曲バンドで録り直し~


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2019年11月 8日 (金)

ドリーミーなサウンドが魅力的

Title:Practice of Love
Musician:Jenny Hval

ノルウェーはオスロ出身のシンガーソングライター、Jenny Hvalのニューアルバム。北欧というと数多くのミュージシャンが世界的なヒットを飛ばしていますが、彼女に関しては、まだ「知る人ぞ知る」的な存在のシンガーソングライター。ただ、前作「Blood Bitch」は各種音楽メディアのベストアルバムにランクインされるなど大きな注目を集め、ニューアルバムである本作も高い評価を集めているよう。個人的に完全に初耳のミュージシャンなのですが、はじめてアルバムを聴いてみることにしました。

アルバムは全8曲入り33分という比較的短い内容。いずれもエレクトロのサウンドがメインとなっており、ドリーミーな雰囲気になっているのが大きな魅力となっています。まず序盤の「Lions」「High Alice」「Accident」はいずれもドリーミーなエレクトロサウンドと澄み切った女性ボーカルの歌声がまず耳に残ります。そこにポエトリーリーディングのようなボーカルが重ねられているのはなんとも不思議な感じに…。アルバムの折り返しとなる「The Practice of Love」もポエトリーリーディングのようなボーカルにエレクトロノイズが重なる作風となっており、ドリーミーな雰囲気なのですが、一種独特な不思議な感触の曲調に。しっかりとしたメロディーラインは流れているのですが、前半に関しては、幻想的なエレクトロサウンドの雰囲気を楽しむような曲調になっています。

一方、後半に関しては、同じくドリーミーなエレクトロサウンドを主軸としつつ、メロディーを楽しめる比較的広い層が楽しめるようなポップな作風に仕上がっています。後半戦の冒頭を飾る「Ashes to Ashes」は疾走感あるエレクトロサウンドに軽快なメロディーラインが魅力的なポップチューン。続く「Thumbsucker」もホーンセッションが入りちょっとジャジーな雰囲気を加えたエレクトロポップ。こちらもさわやかなメロディーラインが魅力的。さらに「Six Red Cannas」もスペーシーなサウンドでリズミカルなナンバー。こちらもポップなメロディーよりもドリーミーなサウンドを前に押し出したようなポップチューンなのですが、ダンサナブルな4つ打ちのリズムがメインとなっており、いい意味で「わかりやすい」ダンスチューンに仕上がっています。

そして最後を締めくくる「Ordinary」も荘厳な雰囲気のエレクトロサウンドが楽曲を埋め尽くす中、ポエトリーリーディング的なボーカルの入ったドリーミーな作品で、アルバム全体を締めくくります。どちらかというと前半の雰囲気の曲調に雰囲気が戻り、アルバムは幕を下ろした、といった感じでしょうか。

そんな訳でアルバム全体としてはドリーミーでちょっと独特の味わいのあるエレクトロサウンドを楽しむようなアルバムといった印象。後半は比較的、いい意味で万人受けするような作風の曲が並んでいるものの、全体的には若干癖のあるサウンドが特徴的な印象を受けました。ただ、夢見るような美しいサウンドはメロディー云々関係なく、聴いていて純粋に気持ちよくなる魅力的な内容。確かに独特のサウンドゆえに大ヒットを飛ばすようなタイプのミュージシャンではないものの、気になる方にはとりあえずお勧めしたいアルバムだと思います。まだ知る人ぞ知るシンガーですが、今後、さらに注目を集めてくる、かも。

評価:★★★★★

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2019年11月 7日 (木)

今週は新譜ラッシュ

今週のHot Albums

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

今週はベスト10のうち7枚が初登場という新譜ラッシュとなりました。

そんな中、1位初登場となったのはジャニーズ系。Hey!Say!JUMP「PARADE」。CD販売数1位、PCによるCD読取数3位を獲得。オリコン週間アルバムランキングでは初動売上18万9千枚で1位初登場。前作「SENSE or LOVE」の20万9千枚(1位)からダウンしています。

2位初登場はどついたれ本舗「あゝオオサカdreamin'night」。声優によるラッププロジェクト「ヒプノシスマイク -Division Rap Battle-」から登場した、大阪を拠点にしているという設定のラップグループ。Hot100で同アルバムのタイトル曲がランクインしましたが、アルバムもCD販売数2位、ダウンロード数1位、PCによるCD読取数3位で総合順位でも2位にランクイン。オリコンでは初動売上8万8千枚で2位初登場。ヒプノシスマイク関連のアルバムでは前作、ヒプノシスマイク-Division Rap Battle-「ヒプノシスマイク-Division Rap Battle- 1st FULL ALBUM『Enter the Hypnosis Microphone』」の14万2千枚(2位)からダウンしています。

3位はEXILEの弟分のダンスグループ、THE RAMPAGE from EXILE TRIBE「THE RIOT」がランクイン。約1年1か月ぶりのリリースとなる2枚目のアルバム。CD販売数3位、ダウンロード数11位、PCによるCD読取数9位で総合順位は3位に。オリコンでは初動売上7万枚で3位初登場。前作「THE RAMPAGE」の3万6千枚(2位)からアップしています。

続いて4位以下の初登場盤です。まず4位にはずっと真夜中でいいのに。「潜潜話」がランクイン。You Tubeへの動画投稿で話題となったグループ。ボーカルのACAね以外の詳細不明という謎のグループとなっています。いままで2枚のミニアルバムをリリースしていますが、フルアルバムは本作が初。CD販売数5位、ダウンロード数2位、PCによるCD読取数14位。オリコンでは初動売上2万7千枚で5位初登場。前作「今は今で誓いは笑みで」の2万枚(1位)からアップ。

5位にはるぅと「君と僕の秘密基地」が初登場。動画投稿サイトへの歌唱動画で人気を博した男性ボーカリストによる初のオリジナルアルバム。CD販売数4位、ダウンロード数57位、PCによるCD読取数23位。オリコンでは初動売上4万4千枚で4位初登場となっています。

7位はGirls2「恋するカモ」がランクイン。テレビ東京系のテレビドラマ「アイドル×戦士 ミラクルちゅーんず!」、「魔法×戦士 マジマジョピュアーズ!」、「ひみつ×戦士 ファントミラージュ!」の出演メンバーからセレクトされた女性アイドルグループ。いままでシングルはリリースしてきましたが、本作が初となるミニアルバムとなります。CD販売数6位、そのほかは圏外で総合順位は7位に。オリコンでは初動売上2万枚で6位初登場となっています。

最後10位にはfripSide「infinite synthesis 5」がランクイン。女性声優南條愛乃と音楽プロデューサー八木沼悟志によるユニット。CD販売数9位、ダウンロード数17位、PCによるCD読取数29位。オリコンでは初動売上9千枚で10位初登場。前作「infinite synthesis 4」の1万1千枚(8位)からダウンしています。

今週のHot Albumsは以上。チャート評はまた来週の水曜日に!

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2019年11月 6日 (水)

ヒゲダン人気は続く…

今週のHot100

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

秋元康系の女性アイドルグループが1位獲得です。

今週、初登場で1位を獲得したのは=LOVE「ズルいよ ズルいよ」。代々木アニメーション学院バックアップの下で女性声優により結成されたアイドルグループ。プロデュースと作詞は元AKB48の指原莉乃が手掛けた体になっていますが、まあ実質的には秋元康が手掛けているんでしょう。CD販売数1位、ラジオオンエア数53位、PCによるCD読取数23位、Twitterつぶやき数13位。オリコン週間シングルランキングでは初動売上14万2千枚で1位獲得。前作「探せ ダイヤモンドリリー」の9万9千枚(2位)からアップしています。

で、今週も圧倒的な人気っぷりを見せたのがOfficial髭男dism「Pretender」は先週から引き続き2位をキープ。You Tube再生回数は1位、カラオケ歌唱回数2位を今週もキープしています。さらに「イエスタデイ」は先週の4位からワンランクアップの3位にランクインし、ベスト3返り咲き。さらに「宿命」も5位から4位にアップ。結果、2位から4位までをヒゲダンの曲が並ぶチャートとなっています。ちなみにストリーミング数は今週も1位「Pretender」2位「イエスタデイ」3位「宿命」とベスト3を独占しています。

続いて4位以下の初登場曲です。まず7位にどついたれ本舗「あゝオオサカdreamin'night」がランクイン。声優によるラッププロジェクト「ヒプノシスマイク -Division Rap Battle-」から登場した、大阪を拠点にしているという設定のラップグループ。先日リリースされたアルバムの表題曲で、Creepy NutsのR-指定とDJ松永が楽曲提供を行っているそうです。Hot100ではダウンロード数5位、Twitterつぶやき数1位、ストリーミング数12位、You Tube再生回数36位で総合順位でベスト10入りです。

9位にはRYUJI IMAICHIこと三代目J Soul Brothersの今市隆二のソロシングル「RILY」がランクインしてきました。いままでソロでのアルバムリリースや配信シングルのリリースはあったのですが、CDリリースを伴う形でのシングルリリースはこれが初。CD販売数2位を獲得したものの、PCによるCD読取数14位、Twitterつぶやき数40位に留まり、総合順位はこの位置に。オリコンでは初動売上3万6千枚で2位にランクインしています。

10位には嵐「Turning Up」がランクイン。嵐初の配信シングルとなります。ダウンロード数では見事1位を獲得。他、Twitterつぶやき数で7位を獲得したものの、配信オンリーとはいえ総合順位ではギリギリベスト10入りと少々厳しい結果となりました。嵐といえば、先日、全シングルが配信、ストリーミング解禁となり大きな話題に。ジャニーズ系といえば、いままで所属アイドルのネットへの露出を極端に制限してきただけに、嵐の楽曲のストリーミング解禁には驚かされました。これを機に、日本のミュージシャンのストリーミング解禁がさらに進んでいきそう。とはいえ、嵐といえば来年12月末の活動休止が予定されており、語弊を恐れずにいえば事務所的には投下資本の回収も済み、「終わった」ミュージシャン。それだけに他のアイドルグループにまでストリーミング解禁が波及するか、と言われれば厳しいそうですが…。ただ、嵐の楽曲のストリーミング解禁は間違いなく日本のポップスシーンに大きな影響を与える出来事だったと思われます。

続いてロングヒット曲です。まず米津玄師「馬と鹿」。今週は3位から5位にダウン。ダウンロード数は1位から2位、You Tube再生回数は3位から4位と下落傾向ですが、PCによるCD読取数は1位をキープしており、まだまだ強さを感じます。また、ここに来て再び盛り返してきたKing Gnu「白日」は今週も6位をキープ。特にストリーミング数はヒゲダンの3曲に続く4位を維持しており、根強い人気を感じさせます。

さらにあいみょん「マリーゴールド」も先週から変わらず8位をキープ。ストリーミング数は先週から変わらず6位を維持しているのですが、You Tube再生回数がここに来て2位にアップ。まだまだロングヒットは続きそう。ちなみに先週まで同時ランクインしていた「空の青さを知る人よ」は10位から13位にダウン。残念ながら2曲同時ランクインは連続4週で幕を下ろしました。

今週のHot100は以上。明日はHot Albums!

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2019年11月 5日 (火)

二重構造の構成がユニーク

Title:House of Sugar
Musician:(Sandy)Alex G

アメリカ・ペンシルヴェニア出身の男性シンガーソングライター、(Sandy)Alex GことAlexander Giannascoli(アレックス・ジアンナスコーリ)。もともとデビュー前からアメリカのダウンロードサイトBandcamp上でアルバムを発表してきたのですが、そこで大絶賛を受けると、なんとかのフランク・オーシャンに才能を認められ、彼のアルバム「Blonde」「Endless」に参加し、大きな話題となりました。そんな彼は2015年、イギリスのインディーレーベル、ドミノ・レコーズからデビュー。さらなる注目を集めて、本作が3枚目となるアルバムとなります。

今回はじめて彼のアルバムを聴いたのですが、フォーキーで美しいメロディーを主軸としつつ、サイケやエレクトロなどの要素も取り入れた、非常にユニークなアルバムとなっていました。本作はいきなりサイケデリックなナンバー「Walk Away」からスタート。若干不穏な雰囲気から本作がスタートします。しかし続く「Hope」はアコギベースで軽快に聴かせるポップチューン。さらに「Southern Sky」もアコギとピアノのフォーキーなサウンドをベースにちょっと切ないメロディーが耳を惹く爽やかなポップチューン。このフォーキーでシンプルなサウンドに美しいメロディーラインという構成がアルバムの中の主軸となって作品は展開していきます。

特にメロディーラインで美しいのが後半の「Cow」。こちらもアコギでしんみり聴かせるサウンドを軸にファルセットボイスで美しく聴かせるボーカルが強く印象に残ります。実質上、アルバムのラストを締めくくる「Crime」も、ちょっと懐かしさを感じるメロディーラインに強く心惹かれる楽曲に仕上がっており、最後までメロディーラインの美しさが印象に残る作品に仕上がっています。

ただ、本作がユニークなのは単純にフォーキーでポップなアルバムで終わっていない点でしょう。それは中盤。サイケでドリーミーな「Near」からはじまり、続く「Project2」もドリーミーでポストロック的なエレクトロのインストチューン。打ち込みのリズムを取り入れたポップチューン「Bad Man」と続き、「Sugar」はピアノにエレクトロサウンドを加えた分厚いサウンドで不穏な雰囲気で展開していくダイナミックなインストナンバー。前半と後半のフォーキーな雰囲気とは一転、実験的な雰囲気の楽曲が並ぶ展開となっています。

この、フォーキーなポップと実験的なエレクトロチューンという二重構造がこのアルバムの最大の魅力。フォーキーなポップチューンも、これだけでしっかりと美しいメロディーを聴かせる名曲が並んでいるのですが、ここに中盤のエレクトロチューンが並ぶことにより、音楽性に厚みが加わります。また、二重構造といっても、例えば「Hope」では打ち込みのサウンドを入れてきていますし、逆に「Bad Man」ではポップなメロディーが流れているなど、決して両者が完全に分離している訳ではなく、そのため、アルバム全体としてもしっかりと楽曲の流れが出来上がっており、中盤の展開にも違和感はありません。そういう意味でも実によく出来たアルバムに仕上がっていました。

まだ本国でも耳の早い音楽ファンに知られているようなタイプのミュージシャンのようですが、今後、徐々に注目を集めさらにブレイクが期待えきそう。これからの活躍も楽しみなシンガーソングライター。今のうちに要チェックです。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

Hollywood's Bleeding/Post Malone

前作「Beerbongs & Bentleys」が大ヒットを記録。特にアメリカのBIllboard Hot 100のベスト20に9曲を同時ランクインさせ、The Beatlesの記録を54年ぶりに更新したということでも大きな話題になりました。本作はそれに続く、約1年5ヶ月ぶりとなる新作。今時のトラップミュージックの要素を取り込んだエレクトロサウンドがメイン。メロディーはどこか物悲しく哀愁感も覚えるものの、必要以上に暗い雰囲気にはならず、いい意味で聴きやすいポップソングとしてまとめています。本作もアメリカやイギリスをはじめ、世界各国のチャートで1位を獲得するなど大ヒットを記録していますが、ほどよく今の音を取り込んだインパクトあるメロディーのポップソングは確かに多くのリスナー層にアピールできそう。大ヒットも納得です。

評価:★★★★

Post Malone 過去の作品
Beerbongs & Bentleys

The Nothing/KORN

アメリカのへヴィーロックバンドによる約3年ぶりとなるニューアルバム。前作に引き続き、よい意味でKORNらしい作品となった本作。デス声がほどよいインパクトとなっているダイナミックなサウンドに、意外とメロディアスでポップという形容すら似合いそうなメロディーラインも魅力的。ここ最近のアルバムの中では非常に聴きやすい出来に仕上がりつつ、一方でKORNらしいヘヴィネスさもきちんと残したアルバムに仕上がっていました。私が聴いたKORNのアルバムの中ではベストの出来かも。

評価:★★★★★

KORN 過去の作品
Untitled
KORNIII:REMEMBER WHO YOU ARE
THE PASS OF TOTALITY
The Serenity of Suffering

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2019年11月 4日 (月)

結成15周年プロジェクト

おそらく、今、最も若者の間で人気のあるロックバンドのひとつであるUNISON SQUARE GARDEN。ただ既に決して「若手バンド」ではなく、メジャーデビューが2008年というから、今年で11年目、結成からは今年でちょうど15年という中堅バンドだったりします。最近はすっかりバンドの寿命も延びた感があるので、メジャーデビューから11年、結成から15年と言われても驚きませんが、90年代から2000年代あたりまではバンドの寿命というと10年と言われていた時期もあっただけに、まだどこか「若手」的な感触すら漂う彼らが、既にこれだけのキャリアを積んでいるというのは意外な感じがします。

さてそんな彼らは今年、結成15周年のアニバーサリー・イヤーということで様々なイベントを行ったりアイテムをリリースしたりしていますが、今回紹介するのはそんな結成15周年を記念してリリースされたアルバムです。

Title:Thank you,ROCK BANDS!~UNISON SQUARE GARDEN 15th Anniversary Tribute Album~

まずは彼らの曲を様々なミュージシャンがカバーしたトリビュートアルバム。the pillowsや9mm Parabellium Bulletというロックバンドから、ボーカル斎藤宏介がゲストとして参加したこともある東京スカパラダイスオーケストラ、SKY-HIやLiSAといったミュージシャンから、彼らの楽曲に参加したことがあるイズミカワソラ、さらには堂島孝平というポップス勢まで豪華なメンバーがズラリと揃っています。

で、今回彼らがユニゾンの曲をカバーしていたのですが、どの曲も、まるでそれぞれのミュージシャンのオリジナル曲のようにピッタリとはまり込んでいました。the pillowsは「シューゲイザースピーカー」をカバーしているのですが、山中さわおのシャフトがしっかりとはまっており、the pillowsのバンドサウンドにも曲がピッタリとマッチ。9mmのカバーした「徹頭徹尾夜な夜なドライブ」もまるで9mmの曲のような歌謡テイストの強いダイナミックなロックチューンになっています。

イズミカワソラがカバーした「ガリレオのショーケース」も彼女の軽快なピアノとボーカルにピッタリとはまり、彼女のオリジナル曲のようですし、スカパラがカバーした「桜のあと(all quarters lead to the?)」もラテン風のインストチューンになっており、完全にスカパラの曲になっています。さらに一番意外だったのがクリープハイプのカバーした「さよなら第九惑星」。メロもピッタリとマッチしていたのですが、それ以上に歌詞が、尾崎世界観の歌詞といわれても違和感ない感じで、これがクリープハイプのオリジナルと言われても不思議ではないほどマッチしていました。

それぞれの曲がそれだけ各ミュージシャンにマッチしていたのは、もちろん参加したミュージシャンの実力に寄る部分も大きいでしょうし、彼らがそれだけ自分たちのイメージにあったユニゾンの曲を選んだ、という部分もあるのでしょう。ただそれ以上に今回のトリビュートを聴いて、思った以上にUNISON SQUARE GARDENはバラエティーに富んだ作品を書いていたバンドだったんだな、ということに気が付かされました。またどんなバンドのカバーにも耐えられる、しっかりとした土台を持った聴かせるメロディーラインをユニゾンが、というよりもメインライターである田淵智也が書いてきているんだな、ということも再認識しました。

ただ、もっともユニゾンのマイナス部分についても感じてしまった点があり、それはこういった彼らの魅力を肝心の彼ら自身がしっかりと出し切れていないのではないか、ということを今回のトリビュートアルバムでは強く感じました。今回のトリビュートアルバムにはDisc2として本人たちによる原曲が収録されているのですが、正直なところカバーの方がよくない?という曲も少なくなく。まずバンドとして演奏が少々平坦。ちょっと厳しい言い方をすればただギターサウンドが鳴っているだけ、という感じも否めず、そのためどの曲も似たりよったりで聴こえてしまっています。また斎藤宏介のボーカルも、ハイトーンの耳に残るボーカルは好き嫌いがありそうながらも、ひとつの個性だとは思うのですが、こちらも歌い方が少々平坦。こちらも曲が似たり寄ったりに感じてしまう大きな要因に思います。

また、ユニゾンのメロディーラインは、「どうしてもにじみ出てしまうユニゾンらしさ」という部分が薄く、それだけ他のミュージシャンがコピーすると、すぐそのミュージシャンの色に染まってしまう、という点も大きな特徴に感じました。もっとも、この「灰汁の薄さ」故に、多くのリスナー層にアピールできるという部分もあるので、必ずしも彼らにとってマイナスではないのでしょうが…。

そんな訳で、このトリビュートアルバム、UNISON SQUARE GARDENの魅力を他のミュージシャンを通して感じることが出来た、というちょっと倒錯的ではあるものの、実に聴かせる傑作アルバムに仕上がっていました。ユニゾンのファンはもちろん、参加ミュージシャンが好きなら聴く価値のある作品です。

評価:★★★★★

で、結成15周年記念でリリースされたもう1作がシングルのカップリング曲を中心にあつめた、いわゆるB面ベストとなります。

Title:Bee-Side Sea-Side 〜B-side Collection Album〜
Musician:UNISON SQUARE GARDEN

この手のカップリング曲集というと、シングル曲にはできず、かつアルバム収録曲としても浮いてしまうような、ちょっと実験的な曲が収録されているのが相場…なのですが、正直言うと、いつものUNISON SQUARE GARDEN路線。斎藤宏介のハイトーンボイスがピッタリ来そうなキュートでポップなメロディーラインに、そこそこへヴィーなギターロックというスタイル。シングル曲と大差ありませんし、正直、このB面ベストを通じても、バラエティーに富んだ印象はありません。

ただ、前述のトリビュートアルバムでUNISON SQUARE GARDENの曲は意外とバリエーションあるんだ、ということに気が付いてあらためて聴いてみると、確かに曲によってそれなりにバリエーションを感じます。リズミカルな「空の飛び方」や、ダイナミックなバンドサウンドを聴かせる「さよならサマータイムマシン」。ある意味ベタなJ-POP路線の「さわれない歌」や、ガレージ色の強い「ピストルギャラクシー」に、アコギでしんみりと切なく聴かせる「きみはいい子」など、それなりのバリエーションが揃っています。

しかし、トリビュートアルバムでも書いた通り、全体的にボーカルにしてもバンドにしても平坦な感は否めず、その結果としてパッと聴いた感じだと「どれも似た感じ...」という印象を受けてしまいました。もっとも一方でUNISON SQUARE GARDENの強みはしっかりと感じられます。それはメロディーラインのポピュラリティー。楽曲をしっかりと下支えしているポップなメロがあるからこそ、全2枚組のアルバムの最後までダレることなく、一気に聴き切ることのできるアルバムになっていました。

そんな訳でカップリング曲集なので比較的ファンズアイテム的な要素も強いのですが、ある意味、シングルまでチェックしていない方にとっても「ユニゾンの新しいアルバム」的に楽しめる作品になっていたと思います。なんだかんだいってもポップなメロが魅力的で最後まで楽しめる作品になっていました。

評価:★★★★

UNISON SQUARE GARDEN 過去の作品
CIDER ROAD
Catcher In The Sky
DUGOUT ACCIDENT
Dr.Izzy
MODE MOOD MODE

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2019年11月 3日 (日)

偉大なR&Bボーカルグループのラストアルバム

Title:The Last Word
Musician:The O'Jays

「裏切り者のテーマ」というインパクト満点な邦題がつけられた1972年のアルバム「Back Stabbers」が大ヒットを記録。日本でも高い人気を誇る男性3人組R&Bグループ、The O'Jays。その後もコンスタントにヒットをリリースし、いわゆるフィラデルフィア・ソウルの代表格的なグループと目されるようになっています。リーダーのエディ・レヴァートが、自身の歌手として人気を博していた彼の息子のジェラルド・レヴァートが2006年にわずか40歳に先立たれるなど失意を味わい、グループとしても混迷の時代を迎えたこともあったそうですが、グループとしての活動は続いていきました。

そんな彼らもメンバー全員が既に70歳後半。さすがに寄る年波には勝てなくなってきたみたいで、2020年に最後のツアーを決行して引退する旨を表明。また活動の最後となるアルバムも制作。本作がタイトル通り、彼らのラストアルバムとなります。非常に残念な話なのですが...中途半端にフェイドアウトするのではなく、こういう形で最後のアルバムをリリースしてくれる、というのはやはりうれしい話です。

ただメンバー全員80歳手前という年齢にも関わらず、本作は決して思い出補正に頼ろうとするような感じは一切ありません。まず強いインパクトを残すのが1曲目の「I Got You」。往年の彼らを彷彿とさせるようなフィリー・ソウルの王道とも言えるようなナンバー。雰囲気的にはあえて一昔前な感に仕上がっているのは否めませんが、その伸びやかなボーカルは昔と比べてもほとんど衰えがなく、その歌声に思わず聴きほれてしまいます。

その後も「Enjoy Yourself」「'68 Summer Nights」などでストリングスを取り入れたフィリーなサウンドとメロウなメロディーラインで伸びやかな歌声を聴かせてくれるなど、聴いていてうっとりとしてしまうような歌声は今も健在。もっともアルバム全体としてはフィリーソウルの色合いはあまり強くなく、例えば「Stand Up(Show Love)」はピアノとギターがメインのサウンドをバックにパワフルなボーカルを聴かせてくれますし、「Above The Law」もパワフルなボーカルを聴かせるソウルチューンに仕上がっています。これらの曲のパワフルなボーカルも、年齢を感じさせないボーカリストとしての力量を感じさせます。

アルバムの最後には1967年にリリースされ、彼らがはじめてビルボードのR&Bチャートでベスト10入りさせたシングル「I'll Be Sweeter Tomorrow(Than I Was Today)」のセルフカバーが収録。彼らにとってのスタート地点となった曲で最後を締めくくるという選曲も素晴らしいのですが、ピアノのみのシンプルなサウンドをバックに力強く歌い上げるその歌声は感涙モノ。その歌声にもゾクゾクとさせられます。

正直なところ、楽曲的には昔ながらといった感じで、今の音を取り込んでいる訳でもありませんし、目新しさもありません。ただ、これだけしっかりと現役感のある力強いボーカルを聴かせながらも引退するというのが不思議になってくるほど、ボーカルに衰えは感じさせませんし、これからも傑作をリリースし続けても不思議ではない内容になっています。もっとも、ここまで力が残っているうちに引退したい、という意向があるのかもしれません。これが最後というのは実に残念なのですが…仕方ありません。最後の最後まで一流のR&Bボーカルグループとして幕を下ろすことができたアルバムでした。

評価:★★★★

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2019年11月 2日 (土)

1985年録音の幻のアルバム

Title:Rubberband
Musician:Miles Davis

「ジャズの帝王」とも呼ばれ、日本でも絶大な支持を受けているトランペット奏者のマイルス・デイヴィス。彼はジャズというスタイルに拘らず、幅広いジャンルを自らの音楽に取り入れたことでも知られます。当初はハード・バップのミュージシャンとしてその地位を固めながら、1959年にリリースされた「KIND OF BLUE」ではモード・ジャズを確立。さらにはロックやファンクなどを要素も取り入れたほか、エレクトロミュージックもジャズに取り入れた1970年のアルバム「BITCHES BREW」はジャズのジャンルを越えて、ロックリスナーからも高い評価を得た名盤として知られています。さらにその後はHIP HOPの要素まで取り込むなど、その音楽的な貪欲さは衰えることなく1991年に65歳という若さでこの世を去るまで、その音楽性は進化し続けました。

本作は、そんな彼が1985年に録音したものの、リリースされることなく「幻のアルバム」としてファンの間で語り継がれていた秘蔵の作品。この年、彼は長年所属していたコロンビア・レコードを離れ、ワーナー・レコードと契約。その移籍第1弾アルバムとしてロサンゼルスのAmeraycan Studiosでレコーディングを行っていましたが、日の目を見ることなく、移籍第1弾アルバムは翌年にリリースされる「TUTU」まで待たされることになります。しかし、それから約34年。昨年のレコードストアデイで4曲入りのEP「RUBBERBAND EP」がリリースし大きな話題となり、そしてついに今年、幻のアルバムがリリースされるに至りました。

そんな前振りの中で聴いた今回のアルバム。期待も否応なく高められることになります。実際、アルバムはまず高らかなトランペットの響きからスタートしその期待は一層高まります。そして1曲目「Rubberband of Life」はメロウな女性ボーカルにファンキーなリズム、その中を自由に動き回るソウルを感じるマイルスのトランペットの音色が非常にカッコいいナンバーにゾクゾクとさせられます。

しかし、結果として言えば、要所要所にゾクゾクするようなカッコよさを感じつつも、アルバム全体としては期待したほどではなかったかな、というのが率直な感想となってしまいます。まず今回のアルバム、彼らしく時代の先端を行くようなサウンドを多く取り込んでいます。特に時代は80年代の真っただ中。実に80年代らしいエレクトロサウンドを取り入れたファンキーなサウンドが大きな要素となっています。例えば2曲目の「This is It」などはその典型ですし、「Maze」などもまさに80年代的なサウンドが前面に押し出されています。確かにこれらのサウンドはリアルタイムで聴けばカッコよかったのでしょうが、残念ながら今の時代に聴くと、少々時代遅れなものを感じてしまいます。

また、この80年代的なサウンドに関しても、取り入れ方が若干ベタというか、時代の流行をそのまま取り入れました感が否めず、マイルスの中で上手く消化されていなかったのではないか、ということも感じてしまいました。例えば「Carnival Time」など、シンセのサウンドがかなりベタなフュージョンといった感じ。いかにも流行りのサウンドをそのまま取り入れた感じが否めず、おまけ程度になっているマイルスのペットがカッコいいだけに逆に残念さが増してしまう感すらあります。「I Love What We Make Together」なども当時はやったブラコンそのまま。いまひとつ、マイルスのカッコよさを感じることが出来ません。

決して悪い部分だけではなく、前述したとおり、要所要所にゾクゾクするようなカッコよさを感じる部分もあるのは事実で、例えば「See I See」などファンキーなリズムの中で鳴るトランペットには実にカッコよさを感じます。そういう意味ではマイルスの良さもしっかりとあらわれている作品だったと思いますし、間違いなく聴いて損のないアルバムではあると思います。ただ、「幻の作品」が「幻」であるのはやはりそれなりの理由があるのだな、と思わないこともなく…正直、彼の最初の1枚としては勧められないかもしれません。ただ、時代の流れを旺盛の自身の作品に取り込んでいこうとするそのスタンスにはやはり感心するものがあります。そういう意味ではマイルスらしいアルバムといえる作品でした。

評価:★★★★

Miles Davis 過去の作品
The Final Tour: The Bootleg Series, Vol. 6(Miles Davis&John Coltrane)


ほかに聴いたアルバム

It's The Blues Funk!/Crystal Thomas

ルイジアナやテキサスの黒人音楽シーンで活躍する女性ボーカリストCrystal Thomas。当サイトでも紹介したことのある日本のジャンプブルースバンドBloodest Saxophoneのアルバムに参加したことから注目を集めたそうで、彼女のニューアルバムが日本でもリリースされました。ちなみに本作はそのアルバム「Don’t Worry About The Blues」からレコード向きの楽曲を集めたLP盤で、なぜかサブスクリプションでは同作のみ配信。確かに話題となるそのボーカルは非常にパワフルで耳を奪われます。一方、楽曲はブルースの影響を受けつつ、コンテンポラリー色が強く、ファンキーなリズムがご機嫌なのですが、良くも悪くも軽い印象。個人的には彼女のボーカルならもうちょっと腰を落ち着かせた昔ながらもブルースサウンドが似合うような気もするのですが・・・。

評価:★★★★

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2019年11月 1日 (金)

アコースティックなサウンドで統一感

Title:Days of The Bagnold Summer
Musician:Belle and Sebastian

日本でも「ベルセバ」の略称で親しまれているスコットランドはグラスゴー出身のギターポップバンド、Belle and Sebastian。前作「How To Solve Our Human Problems」はもともと3枚のEPにわけてリリースし、それを後日まとめて1枚のアルバムとしてリリースするという特別な形態でのリリースとなりました。それに続く最新作は…あれ?このジャケット写真は誰??という話からスタートしそうな新作。実は本作、純然たる新作ではなく、同タイトルの映画のサントラ盤。もともとは漫画を原作とする作品だそうで、原作と脚本を読んでインスパイアした新曲に加えて、彼らが映画に合っているのではないかと思う既発表曲、未発表曲などを監督に提示し、今回のサントラに収録されているそうです。

そういうこともあって純然たるニューアルバムとは異なる本作。実際、アルバムの最初もサントラらしい、短いインストチューンからスタートしますし、ラストを締めくくる「We Were Never Glorious」も、おそらく出演者のものではないかと思われるセリフが入ってきています。また他にもインスト曲が何曲か収録されており、13曲入りながらも全42分という若干短めの曲が多い構成となっています。

ただ、一方ではアルバムの多くを締めるのが彼らの純然たる新曲。それもアコースティックなサウンドを主軸として、ウィスパー気味のボーカルで美しいメロディーラインを聴かせる楽曲ばかりで、まさに「これぞベルセバ!」といった感じの魅力的なポップチューンがつまっています。例えば今回の新曲では「I Know Where The Summer Goes」などは胸を詰まらせるような悲しげなメロが特徴的なフォーキーなナンバーなのですが、その中で時折顔を覗かせる明るいフレーズやサウンドにキュンと胸を締め付けられるような実に美しいポップチューンに仕上がっています。また「I'll Keep It Inside」「Wait And See What The Day Holds」などもアコギのアルペジオをバックに静かに歌われる歌声が胸を締め付けられるような美しいナンバーに心奪われます。そんな切ないポップスから一転「Sister Buddha」は後ろに流れるホーンの音色も明るい軽快なギターポップチューンに。こちらもとても明るく、ウキウキしてくる、それでいてしっかりと美しいメロディーラインを聴かせてくるポップチューンに仕上がっています。

今回のアルバムでは既発表曲も収録されています。特に1998年のEP「This Is Just A Modern Rock Song」収録曲でもあり、事実上アルバムの1曲目を飾る「I Know Where The Summer Goes」はアコースティックベースのとても優しいフォーキーな楽曲になっており、本作の方向性を決定づけるような曲になっています。さらに今回収録された「Safety Valve」はバンドの最初期のレアナンバーだそうで、こういう形で聴けるのはファンとしてもうれしいかも。こちらもベルセバらしい美しいメロディーラインが光る暖かい楽曲となっており、彼らがバンド結成当初から、既に優れた才能を持っていたことがわかります。ちなみに既発表曲はあと「Get Me Away From Here I'm Dying」の3曲だけのようで、それ以外は新曲。そういう意味では純然たるニューアルバム的な感覚で聴けるアルバムとなっています。

また、楽曲の間に入ってくるインストチューンなのですが、こちらも歌入りの曲と同様、優しい雰囲気の楽曲なのですが、こちらはアコーディオンやストリングス、またバンドサウンドを入れてくるインストもあり、全体的にアコースティックテイストの歌入り曲と並べて聴くと、ほどよくバランスが取れている感じがします。このインスト曲もサントラでありがちな、アイディアの断片的な曲ではなくきちんとインストとして完成しており、そういう意味でも「ベルセバの曲」としてしっかりと聴くことが出来ました。

全体的にアコースティックなサウンドで統一されており、実にベルセバの魅力がよく出ていたアルバムに仕上がっていたと思います。ここ最近、彼らはエレクトロサウンドを取り入れたり、前作でもガレージロックを取り入れたりと、いろいろな挑戦をしていますし、それはそれで悪くはないのですが、なんだかんだ言っても、フォーキーでアコースティックなサウンドが彼らにはよくあっているな…ということを再認識しました。純然たるオリジナルではないのですが、個人的にはここ数作で一番の出来だったようにも思います。ちなみに映画は残念ながら日本での公開は未定とのこと。その点はちょっと残念です…。

評価:★★★★★

Belle and Sebastian 過去の作品
Write About Love(ライト・アバウト・ラヴ~愛の手紙~)
Girls in Peacetime Want To Dance
How To Solve Our Human Problems


ほかに聴いたアルバム

Fear Inoculum/TOOL

へヴィーなサウンドを主軸にしつつ、インダストリアルや民族音楽、ポストロックなどの要素も取り入れ高い評価を受けたアメリカのロックバンドTOOL。2006年のアルバム「10,000Days」以来、アルバムのリリースが途絶えていたのですが、実に13年ぶりとなるニューアルバムがリリースされました。今回のアルバムもヘヴィーでダイナミックに聴かせるバンドサウンドを軸に、ノイジーなサウンドやエレクトロなどの要素も取り入れ、複雑に展開していく楽曲構成が大きな魅力となっています。素直にその圧巻な音楽に酔いしれるアルバムではあるのですが、10曲1時間26分という長さはちょっと長い…。最初は非常にカッコよかったのですが、最後の方はちょっとダレてしまいました。

評価:★★★★

Free/IGGY POP

途中、UNDERWORLDとのコラボアルバムもあったものの、本人ソロ名義のアルバムとしては「POST POP DEPRESSION」以来3年ぶりとなるニューアルバム。前半はミディアムチューンのアンビエント風の楽曲に、渋く枯れた雰囲気すらあるボーカルでゆっくり聴かせるナンバー。後半はポエトリーリーディングという構成となっており、ロックミュージシャンとしてのイギーの姿はほとんど感じられないアルバムに。賛否両論あるアルバムのようですが、これはこれで彼のボーカリストとしての深い味わいを感じることが出来るアルバムになっていました。

評価:★★★★

IGGY POP 過去の作品
POST POP DEPRESSION
Teatime Dub Encounters(Underworld&Iggy Pop)

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