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2019年10月23日 (水)

ベテランバンドとしての実力を感じる

Title:トランタン
Musician:真心ブラザーズ

今年、なんとデビュー30周年を迎える真心ブラザーズ。いまや「大御所バンド」という貫録する感じさせる彼らがアニバーサリーイヤーである今年にリリースしたのが、彼らの代表曲をセルフカバーした本作。豪華なゲストミュージシャンが数多く参加しており、彼らの30周年を祝う形になっています。今回の選曲はファン投票による上位10曲を選んだ、ということ。ただちょっと意外だったのは彼らの代表曲ともされている「サマーヌード」も「拝啓、ジョン・レノン」も選ばれていないこと。一般的な代表曲がファン投票では上位に来ないことは、熱心なファンは一般的に知名度が高い曲を「好きな曲」としてあえて選ばない傾向があったりするため、よくありがちな話なのですが、これらの曲もそのためベスト10入りしてこなかったのでしょうか。

逆に「どか~ん」が入って来たのが意外に感じたのですが、ただこちらはボーナストラック扱いだそうで、彼らがあえて選曲したのでしょう。当時大人気だったテレビ朝日系の「ニュースステーション」の中の一コーナー「プロ野球一本勝負」のBGMとして使用された曲。ホームランシーンを中心としてその日のプロ野球をダイジェスト的に紹介したコーナーだったのですが、ホームランのシーンにあわせてつかわれた「どか~ん」という言葉が強いインパクトを与えた曲。真心ブラザーズという名前を世間に知らしめた1曲であるのですが、一方ではその名前もあってコミックバンド的な見方をされていたことを思いだします。この曲も非常にコミカルな1曲なのですが、原曲よりちょっとテンポを落としつつ、原曲よりも分厚いバンドサウンドとより落ち着いたボーカルによって楽曲の円熟味が増し、ミュージシャンとしての大きな成長を感じさせます。

ゲスト参加という側面がより強調されていたのが、2曲目「突風」からの3曲。ウルフルズのサンコンJr.、フラカンのグレートマエカワが参加した「突風」では力強くロッキンなバンドサウンドが前に押し出されており、よりロックなナンバーに。東京スカパラダイスオーケストラが参加した「愛」はスカパラのホーンセッションが入り、YO-KINGのラップを力強くバックからサポートしています。さらに「素晴らしきこの世界」はアコギのみでしんみりと歌を聴かせるナンバーなのですが、奥田民生がボーカルで参加。奥田民生の味のあるボーカルがこの曲の雰囲気にピッタリとマッチしています。

今回のアルバムの中でちょっと異色だったのが「恋する二人の浮き沈み」。デビューシングル「うみ」のカップリング曲で、いままでアルバム未収録だったという曲なのですが、実質2曲の曲が組曲的に収録されており、曲の途中で雰囲気がガラリと変わります。歌詞もコミカルな内容となっており、本作の中でも異色な雰囲気に。ただこの曲や1曲目の「どか~ん」なども含めてコミカルな曲からロックな曲、フォーキーな曲まで真心の音楽的なバリエーションの豊富さ、自由さを強く感じさせる選曲となっており、彼らの音楽的な実力を伺うことが出来ます。

また今回のセルフカバー、バンドの曲にしろアコギ1本での曲にしろ非常にライブ感を前面に押し出したアレンジとなっていたように感じます。ここらへんにはロックバンドとしての彼らのこだわりを感じさせると同時に、また30周年を迎えた今の彼らの音楽的な方向性を感じることが出来ました。本作では2人が演奏している姿を絵にしたジャケットとなっているのですが、まさにこの2人で演奏しているミュージシャンとしての姿こそが、このアルバムの中でのアレンジの方向性のように感じられました。

本作の最後はデビューシングル「うみ」を2人だけでアコギのみで歌っているアレンジとなっているのですが、まさに2人だけの真心で原点に回帰している楽曲に。一方でこの曲に続くのが新曲「はなうた」。並べて聴いても全く違和感ないあたり、真心ブラザーズの個性はデビュー作から今に至るまでいい意味で変化がないことに気が付かされます。デビュー作から続き、本編のラストに新曲を持ってくるあたりに、原点に立ち返った後で、ここからが新たなスタートと踏まえている彼らのスタンスを強く感じることが出来ました。

30周年のアニバーサリーイヤーに出されたセルフカバーアルバムは、まさに30年のキャリアを経た今の彼らの実力を強く感じることが出来る傑作に仕上がっていました。またライブ感が強く本作には今の彼らの音楽的方向性も強く感じることが出来ます。まだまだ真心ブラザーズの活躍はこれからも続いていきそう。これからの彼らも楽しみです。

評価:★★★★★

真心ブラザーズ 過去の作品
DAZZLING SOUND
俺たちは真心だ!
タンデムダンデイ20
GOODDEST

Keep on traveling
Do Sing
PACK TO THE FUTURE
FLOW ON THE CLOUD
INNER VOICE


ほかに聴いたアルバム

Before It's Too Late/THE ORAL CIGARETTES

現在、人気上昇中のロックバンドによる2枚組の初となるベストアルバム。少々歌謡曲テイストを感じる哀愁感漂うメロディーラインが大きなインパクトを持つバンドで、メロディーラインはそれなりにフックが効いており、ベタという印象を受けるもののしっかりと耳に残るメロディーを書いています。ただ、2枚組となる今回のベスト盤ですが、楽曲のパターンはほとんど同じ。Disc2のラストの方にようやく打ち込みを入れてくるようなエレクトロチューンでバリエーションはあるものの、正直、それらの曲を除くとほとんど似たような曲という印象を受けてしまいます。それでも2枚組のベストアルバムを最後までそれなりに聴くことが出来るのはメロディーラインがしっかりしている影響なのでしょうが・・・。鼻にかかったヴィジュアル系のような歌い方もインパクトあるものの賛否分かれそうな印象。

評価:★★★★

THE ORAL CIGARETTES 過去の作品
FIXION
UNOFFICIAL
Kisses and Kills

THE SIDE EFFECT/coldrain

約1年10ヶ月ぶりとなる6枚目のニューアルバム。基本的にはいつもと同じスタイル。英語詞による洋楽テイストが強いサウンドに哀愁感あるメロ。ハードコアの要素を取り入れたダイナミックなサウンドながらも端正なボーカルとメロディーラインのためポップに聴かせる楽曲。特にサウンド面は前作に続き、Incubusなども手掛けるプロデューサーのMichael “Elvis” Basketteを起用しているため、サウンド的にはかなり垢抜けている印象も。ただ、1曲1曲に関してはかなりカッコいいのですが、アルバム全体として似ている曲が続き、バリエーションが極端に乏しい印象が。もうちょっと楽曲的なバリエーションが増えると一気におもしろくなると思うのですが。

評価:★★★★

coldrain 過去の作品
THE REVELATION
Until The End
VENA
FATELESS

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