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2019年10月11日 (金)

奥深き、阿波踊りの世界

ここでも毎作紹介している、久保田真琴プロデュースにより阿波踊りを「音楽」として収録しアルバムとしてリリースしているぞめきシリーズ。先日、その第7弾と第8弾が同時にリリースされました。

Title:ぞめき七 徳島阿波おどり 純情派

まず第7弾はいつも通りの「ぞめき」シリーズ。「躍動するリズムと瑞々しいメロディーで、清らかな響きを感じさせる徳島の6連を収録」という紹介をされています。いままでの「ぞめき」の作品でも躍動するリズムを感じられたので、今回の作品が本当にそこまでこのテーマ性に沿ったものなのかどうかは微妙なのですが、今回収録されている6組についてはいずれも同じ阿波踊りといってもそれぞれの個性を感じられる魅力的な録音が並んでいました。

個人的にこの6組の中でも気に入ったのが「本家大名連」。強いビートを前に押し出した演奏と、そこに重なる鐘を強く打つ音色がインパクトある演奏で、CDの解説文にも「ファンキー」という表現をされていましたが、まさにそんな印象を受ける独特のビート感が癖になりそうな演奏となっています。

ほかにも冒頭の「葉月連」は軽快なリズムが特徴的で、今回の「ぞめき七」のテーマ、「躍動するリズムと瑞々しいメロディー、清らかな響き」というイメージがピッタリくる演奏。「殿様連」は全体的にちょっとしっとりとした雰囲気。「やっこ連」はハイテンポなビートで疾走感あるリズムが印象的。「藝茶連」はエッジの効いたタイトなリズムが印象的で、演奏からも迫力を感じさせます。そしてラストを締めくくる「無作連」はある意味王道的なイメージ。シンプルなサウンドながらも力強さを感じさせる躍動感あふれる演奏が大きな魅力となっています。

今回の録音は、いままで行ってきた公民館や体育館でのレコーディングと異なり、四国大学音楽科のスタジオを利用して録音されたとか。そのため久保田本人も「今までで一番音の分離がよくてクリアだと思う」と語っているようですが、確かに素人の耳で聴いてもいままでの作品に比べると、より音像がはっきりした形で耳に飛び込んできており、演奏のリアリティーが増しているように感じました。個人的に今回の「ぞめき七」、最高傑作に近い出来栄えにも感じられたのですが、それは今回のこの録音状態の良さに起因する点が大きいようにも感じました。

しかしそれにしても今回で第7弾となる「ぞめき」ですが、いまだにこれだけの演奏を収録できるとは、その奥の深さにあらためて感心させられます。特にこういうビートミュージックが日本の民俗芸能として古くから存在しているという事実にまた、うれしくなってしまいます。このシリーズ、毎作チェックしているのですが、今後の展開も楽しみです。

評価:★★★★★

Title:ぞめき八 Re-mixes Stupendous!

で、その「ぞめき」シリーズ第8弾はリミックス作品。デンマーク在住のコンゴ人とポーランド人のハーフのプロデューサーでDJのMooLatteやブラジル北東部のパライバ州出身のChico Correaなど久保田麻琴本人がセレクトしたリミキサーによるリミックス。その人選からもわかるように、ワールドワイドな人選を行っており、ほかにもイスラエル、カメルーン、ウクライナなどのミュージシャンが参加。また日本からも、水曜日のカンパネラとの仕事で話題となったオオルタイチもリミキサーとして参加しています。

それぞれが阿波踊りのビートを独自の解釈で行っているリミックスは非常にユニーク。Chico Correaによる「Zomeki no.61"Paraiba Dub"」やイスラエル出身のサーフロックバンドBoom Pamのリーダー、Uriによる「Zomeki no.65 "Jaffa Strut"」などダブを取り入れたリミックスが目立つのですが、一方ではウクライナ人マルチ楽器奏者のOMFOによる「Zomeki no.63 "Obake Odori"」のように和太鼓や琴の音色を取り入れて、あえて「日本風」を強調したようなリミックスやWho?Me?とカメルーン人ラッパーValのユニット、Ambient Chameleonによる「Zomeki no.64 "Awa Gnawa"」のようにHIP HOP的なサウンドを取り入れたもの。さらには映画音楽やアニメ音楽で活躍する石川智久のユニット、TECHNOBOYS PULCRAFT GREENFUNDによる「Zomeki no.66 "Mayuzuki goes to Bollywood"」のような、阿波踊りの鐘のビートをトランシーに取り入れたリミックスなどユニークなリミックスが並びます。

そんな訳で、個々のリミックスについてはバラエティーに富んでおり、阿波踊りのビート感を上手く取り入れた良作が並んでいます。しかし、例えば「ぞめき七」と比べてしまうと、リミックスで原曲に付加したリミックスのアレンジはどうしても蛇足に感じてしまいます。エッジの効いた躍動感あるリズムという阿波踊りの大きな魅力がリミックスにするとどうも薄れてしまっているような感もあり、リミックス作品単体としては優れているように感じたのですが、阿波踊りの魅力を感じるには、やはり何もアレンジを加えない元の演奏の方がよいのでは?と強く感じてしまいました。

阿波踊りをリミックスするという試みは非常に面白いとは思うのですが、正直言って、それで魅力が増しているか、と言われるとかなり疑問を感じてしまう作品。まあ、こういうのもありかもしれないけどね、という消極的な評価になってしまいます。ミュージシャンとしてこういう試みをしてみたくなることはわかるような気もするのですが・・・。

評価:★★★★


ほかに聴いたアルバム

Never Grow Up/ちゃんみな

「練馬のビヨンセ」という愛称を持つ女性ラッパーの2枚目となるアルバム。トラップなど今風のHIP HOPの要素を取り入れつつ、歌モノの要素も非常に強いアルバム。ただ、全体的にHIP HOPというよりもR&Bの色合いが強かった前作に比べるとHIP HOP寄りにシフトした感の強いアルバムに。全体的にダウナーな雰囲気の作風になっているのですが、

「正直 1人で生きていける
だから可愛げがなさすぎる
この国はそんな子は
モテない呪いがあるんだ」
(「Can U Love Me」より 作詞 ちゃんみな、Marlon"Chordz"Barrow)

といった男性社会を皮肉った歌詞にドキリとさせられるような部分も。女性の本音を赤裸々に切り取った歌詞が特徴的なのですが、こういう男性陣をドキリとさせるような攻撃的な歌詞がもっと増えればインパクトもさらに増しておもしろいと思うのですが。

評価:★★★★

ちゃんみな 過去の作品
CHOCOLATE

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