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2019年10月20日 (日)

骨太なバンドサウンドを聴かせるガールズバンド

Title:人間なのさ
Musician:Hump Back

ここでも何度か言及しているのですが、ここ最近、女の子オンリーのバンドが急増しています。最大の理由は間違いなくチャットモンチーのブレイク。男性に媚びることなく、かといってフェミニスト的に尖ることもなく、女の子としての等身大としての姿を歌いながらもロックバンドとしての迫力あるプレイを聴かせてくれた彼女たちがブレイクした影響は音楽シーンにおいてかなり大きく、その後、多くのガールズロックバンドがデビューしていきました。

今回紹介するHump Backというバンドは2009年に結成した3ピースバンド。ボーカルでメインのライターでもある林萌々子はチャットモンチーに強く影響を受けたと公言しており、かつ、当初はチャットモンチーのコピーバンドだったそうですので、まさにそんな「ポストチャットモンチー」のバンドの一つと言っていいでしょう。ちなみに昨年、リリースされたチャットモンチーのトリビュートアルバムにも参加しています。

私は今回、はじめて彼女たちのオリジナル作を聴いてみました。ここ最近、人気が急上昇している彼女たち。このアルバムはなんとBillboard Hot Albumsで6位という快挙を達成。大きくブレイクしています。正直言って、チャットモンチーのトリビュートアルバムでの彼女たちは無難にまとめている印象が強く、さほどピンと来ませんでした。それだけに今回のアルバムもさほど大きな期待はしていなかったのですが…ただ、実際の音源を聴いてみると、その印象はいい意味で大きく変わりました。

まずはバンドとしてのサウンドが非常に骨太。アルバムの冒頭「LILLY」から力強いドラミングからスタートしますし、続くシングル曲「拝啓、少年よ」もパンキッシュなバンドサウンドが大きな魅力となっています。その後もギターノイズを全面に押し出したパワフルでパンキッシュなバンドサウンドを聴かせる曲がメイン。バンドとしての足腰の強さが大きな魅力となっています。

メロディーラインに関してはどこかフォーキーな感じも漂う哀愁感あるメロが大きな魅力に。このメロに関しては、どこか和風なテイストがひとつの特徴となっているのですが、バンドサウンドともマッチしており、歌謡曲的な雰囲気はあまりありません。なによりもちょっとしゃがれた雰囲気に味がある林萌々子のボーカルが楽曲の雰囲気にピッタリとマッチしており大きな魅力に感じれました。

歌詞も切ないラブソングが目立つのですが、どこか郷愁感を覚える歌詞が多い印象。作詞を手掛ける林萌々子は若干25歳なのですが、いい意味での大人びた雰囲気も感じさせます。例えば「コジレタ」の歌詞の

「味噌をとくだけじゃ 味気ないかな 味気ないよな
朝起こすことが 愛だって 思ってたのさ」
(「コジレタ」より 作詞 林萌々子)

なんて一節、完全に四畳半フォークの世界すら彷彿とさせられますが、このちょっとくすんだ雰囲気のある世界観がまた楽曲にもピッタリとマッチしています。

チャットモンチーに影響を受けたという林萌々子をはじめ、メンバーが影響を受けたミュージシャンとしてGalileo GalileiやELLEGARDENなどの名前を挙げているようですが、楽曲の雰囲気としてはむしろフラワーカンパニーズや真心ブラザーズに近い感じも覚えてしまいます。彼女たちはブルース、あるいはブルースロックからの影響は直接は受けていないようですが、楽曲の向こうからはフラカンや真心と同様、どこかブルースの匂いすら漂ってくるような、そんなバンドに感じました。

個人的にはかなり個性的でおもしろいバンドに感じましたし、ロックバンドとしての実力も感じられます。また、なによりもいい意味で老成した雰囲気が大きな魅力に感じました。数多くいるチャットモンチーフォロワーの中では間違いなく頭ひとつ抜け出しているように感じる彼女たち。いきなりのブレイクも納得ですし、これからの活躍も楽しみ。うるさ方のロックリスナーにもおすすめできる要注目のバンドです。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

TAPE TAPE/Ryugo Ishida

ゆるふわギャングとしても活動しているラッパー、Ryugo Ishidaが、日本発のアパレルブランド「BlackEyePatch」と組んでリリースしたミックステープ。ゆるふわギャングとは異なりトラップ色は比較的薄めながらもシンプルでリズミカルなエレクトロトラックが耳をひく内容。リリックはソロとしての前作「EverydayIsFriday」と同様、彼の日常を綴ったような歌詞がメイン。前作のような北関東の不良の日常を如実に…というようなアンダーグラウンド感はちょっと薄れた感じも?ただ、けだるげなトラックにテンポよいリズムが微妙な中毒性をかもし出す作品になっていました。

評価:★★★★

Ryugo Ishida 過去の作品
EverydayIsFriday

金色BITTER/ウカスカジー

Mr.Childrenの桜井和寿とEAST ENDのGAKU-MCによるユニット、ウカスカジーの新作。彼らの全国ツアー「ウカスカジー TOUR 2019 WE ARE NOT AFRAID!!」にあわせてリリースされた本作は、配信オンリーでのリリースとなる7曲入りのミニアルバム。名義上は作詞作曲ウカスカジーとなっているものの優しい雰囲気の前向きな日常の応援歌的な歌詞は前作「Tシャツと私たち」同様、おそらくGAKU-MCの意向による部分が強いように感じます。ただ、あまりにも漂白されたような歌詞で鼻白んでしまった最近のGAKU-MCの曲と比べると、桜井が参加したことにより多少は中和した感も。個人的にはもうちょっと毒の要素があったほうがおもしろいとは思うのですが。

評価:★★★★

ウカスカジー 過去の作品
AMIGO
Tシャツと私たち

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