« 少しずつスタイルを変えた25年の歩み | トップページ | 今週はジャニ系が1位 »

2019年10月29日 (火)

OGRE流ディスコサウンド??

Title:新しい人
Musician:OGRE YOU ASSHOLE

アルバムを出す毎に傑作をリリース。リスナーに驚きを与え続けてきたOGRE YOU ASSHOLE。2014年にリリースした前々作「ペーパークラフト」はある意味、彼らの目指す音楽がひとつ行き着いた感のある傑作アルバムに仕上がっており、次の一歩がいろいろな意味で注目されました。その結果リリースされた前作「ハンドルを放つ前に」は、「ペーパークラフト」の方向性を保持しつつ、セルフプロデュース作となりOGREの新たな一歩を象徴するような傑作に仕上がっていました。

今回のアルバムも極限までシンプルに落としまくった音の世界をゆっくり聴かせ、独特のサイケデリックな雰囲気を醸し出している点、以前のアルバムから引き続く彼らの音楽的な方向性を感じることが出来ます。まさにアルバム1曲目でタイトルチューンになっている「新しい人」などは典型例。シンプルながらもダウナーなサウンド、その向こうで静かになっているノイジーなギター。音的には最小限だからこそ、どこか不思議なサイケな世界観を構築しています。

中盤の「ありがとう」などもまさにシンプルなサウンドながらも独特なサイケ感を作り出している楽曲。ゆっくり進んでいくテンポの乗る、非常にダウナーで淡々としたメロディーもその世界観に間違いなく一役買っています。「自分ですか?」もダウナーなメロディーと亀の歩みのようにゆっくりと進んでいくリズムが、不思議な浮遊感を醸し出しています。

彼らの書くメロディーラインについても一種独特。シンプルながらもダウナー。決してフックが効いているわけではないですし、わかりやすいメロディーラインがないにも関わらず、ついつい聴いてしまう中毒性があります。今回のアルバムでも、この中毒性あるメロディーで歌われる歌とサウンドが一体となってアルバム全体の世界観を構築していました。

ただ、ここまでの話はいままでのアルバムにも共通するOGREの魅力。今回のアルバムの大きな魅力はOGRE流ディスコサウンドとも言うべきエレクトロのリズムを取り入れた曲でしょう。それが「さわれないのに」。ミディアムテンポのエレクトロビートが淡々と続いていく楽曲。そんなエレクトロサウンドの背後に流れるスペーシーなサウンドも実に魅力的。聴いているうちに軽くトリップ感を覚えるようなグルーヴを感じさせる楽曲になっています。

さらに続く「過去と未来だけ」も淡々と続いていくリズムに知らず知らずに惹かれる楽曲。リズムよりもダウナーなサウンドとメロが前に押し出されるいるものの、気が付くとバックに流れるリズムのグルーヴ感に身体が揺れている曲に仕上がっています。ある意味、OGRE流のダンスポップと言える…かもしれません。また「わかってないことがない」も同じように四つ打ちで淡々と繰り広げられるリズムが、一種独特のグルーヴ感を生み出しています。

今回はこのOGRE流ディスコともいうべき四つ打ちの淡々としたビートを取り入れた曲が目立っているのですが、四つ打ちのリズムが生み出す無機質感がOGREのサウンドともピッタリとマッチ。また聴いていて妙に癖のあるグルーヴ感も生み出しており、このアルバムの最大の魅力となっていました。間違いなく今回のアルバムで彼らが新たに手に入れた、OGRE YOU ASSHOLEの新たな方向性と言えるでしょう。

正直、彼らの最高傑作「ペーパークラフト」を超えたかと言われると微妙なのですが、ただ本作も間違いなく今年のベスト盤候補と言えるだけの傑作アルバムだったと思います。これだけの傑作アルバムをリリースし続けるというの本当に驚くべき話。本当にとんでもないバンドになってきました。これからも彼らの活動からは目が離せません。

評価:★★★★★

OGRE YOU ASSHOLE 過去の作品
しらないあいずしらせる子
フォグランプ
浮かれている人
homely
100年後
confidential
ペーパークラフト
WORKSHOP
ハンドルを放つ前に


ほかに聴いたアルバム

おはこ/柴田淳

柴田淳が、昭和歌謡曲を歌ったカバーアルバム。2012年に同じくカバーアルバム「COVER 70's」をリリースしており、その第2弾的なアルバムになります。かすれた感じで薄幸な雰囲気を醸し出す彼女のボーカルは昭和歌謡曲にピッタリとマッチしており、前作「COVER 70's」は非常に魅力的なカバーアルバムに仕上がっていたのですが、本作に関してはかなり残念な出来に。フォーク、ニューミュージック寄りの選曲だった前作に比べると、演歌、ムード歌謡寄りに寄った選曲をほぼ原曲準拠のアレンジで歌った結果、非常にチープなアレンジをバックにして歌われるカバーは、まるで場末のスナックで歌われるカラオケのよう(苦笑)。肝心の歌に関しても、無難にこなしている感も強く、原曲に何ら解釈も加えておらず、いささか退屈なカバーになってしまっていました。アレンジにしろ歌い方にしろもうちょっと彼女らしさを加えればおもしろくなったとは思うのですが…。前作の出来がよかっただけに残念に感じたカバーアルバムでした。

評価:★★★

柴田淳 過去の作品
親愛なる君へ
ゴーストライター
僕たちの未来
COVER 70's
あなたと見た夢 君のいない朝
Billborda Live 2013
The Early Days Selection
バビルサの牙
All Time Request BEST~しばづくし~
私は幸せ
プライニクル

|

« 少しずつスタイルを変えた25年の歩み | トップページ | 今週はジャニ系が1位 »

アルバムレビュー(邦楽)2019年」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« 少しずつスタイルを変えた25年の歩み | トップページ | 今週はジャニ系が1位 »