エレクトロサウンドを取り入れた明るいポップアルバム
Title:Lover
Musician:Taylor Swift
世界的に高い人気を誇るポップミュージシャン、Taylor Swiftの約1年9ヶ月ぶりとなるニューアルバム。アメリカのビルボードチャートでもイギリスのナショナルチャートでも当然のように1位を獲得。日本でもアルバムチャートでベスト3に食い込むなど、世界的に高い人気を今回のアルバムでも見せつけています。
Taylor Swiftといえば、もともとはカントリーミュージシャンとしてその名を広めたミュージシャン。デビュー当初はアコースティックで言うまでもなくカントリー色の強いポップスを奏でてきました。しかし徐々にカントリー色が薄まりポップ色が強くなり、特に前作ではエレクトロサウンドを全面的に取り入れたアルバムとなってきました。
そもそもカントリーといえばアメリカ国内のみで熱烈な支持を受ける地域性が強くかつ保守的というイメージも強い音楽。もともとデビュー当初から彼女の音楽はアメリカ国内の人気に留まらないようなポピュラリティーを持った曲だったのですが、世界で人気を広げた結果、カントリーという枠組みに捕らわれない、世界を視野に入れたポップスを歌い出した、ということなのでしょう。
今回のアルバムでも前作と同様、エレクトロサウンドを取り入れたポップな曲調が特徴的。ただ、比較的暗めの作風の曲が多く、結果としてインパクトが薄かった前作に比べるとピンクを基調としたジャケット写真からもわかるように明るい雰囲気の曲調の多くなった本作では、楽曲のインパクトもグッと増したように感じます。「I Think He Knows」のような明るく軽快なエレクトロポップや「London Boy」のようなキラキラしたアレンジがかわいらしい雰囲気すら感じるポップチューンが並びます。
そんなポップミュージックには正直言うと目新しさはほとんどありません。今時のミュージシャンにありがちな、例えば今風のベースミュージックの要素を入れてくるとか、トラップ風のリズムを入れてくるとか、そういう部分は皆無。エレクトロサウンドといってもちょっと懐かしさすら感じるようなサウンドが特徴的で、良くも悪くも安心して聴けるポップチューンに。また、だからこそ幅広く人気を確保しているのでしょう。
もっとも一方では「Cornelia Street」のようにR&B的な要素を感じさせる伸びやかなポップチューンがあったり、ムーディーに歌う「False God」のような曲もあったりとバラエティー豊富でリスナーを最後まで飽きさせません。またカントリーミュージシャンであるDixie Chicksも参加した「Soon You'll Get Better」は初期の彼女を彷彿とさせるようなカントリーバラードとなっており、決して彼女がカントリーを捨てた訳ではないことを感じられます。この音楽的なバリエーションの豊富さも彼女の人気の秘訣なのでしょう。
日本でも高い人気を誇るミュージシャンなのですが、それも納得の、いい意味で万人が楽しめる良質なポップアルバムに仕上がっていました。ちょっと地味目だった前作と比べるとアルバムのインパクトも増してエレクトロサウンドもいい感じで彼女のスタイルになじんできているように感じます。すっかり世界的なシンガーとなった彼女。その人気はまだまだ続きそうです。
評価:★★★★
TAYLOR SWIFT 過去の作品
FEARLESS
RED
1989
REPUTATION
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