ダイナマイトボディが繰り出すパワフルなボーカル
Title:Cuz I Love You
Musician:Lizzo
そのふくよかな身体を惜しむことなくさらけ出しているジャケット写真が大きなインパクトを受ける本作は、今、注目を集めている女性シンガー/ラッパー、Lizzoのニューアルバム。本作はアメリカのビルボードチャートで4位を獲得し、一気にブレイクしています。また、このジャケット写真が典型的ですが、自分のありのままの体型を受け入れて愛そう、というボディポジティブムーブメントの象徴的なミュージシャンとしても注目を集めているようで、今回のジャケット写真もそんな彼女の考えを象徴したものと言えるのでしょう。
そんな彼女の最大の魅力は、そのダイナマイトボディからも想像できるようなパワフルなボーカル。今回のアルバムでも1曲目の「Cuz I Love You」はまさに本作を代表するようなナンバーで、分厚いサウンドをダイナミックに聴かせつつ、そんなサウンドに負けていない・・・というよりも彼女のボーカルを支えるにはそれだけ力強いアレンジが必要となるんだろうなぁ、ということを感じてしまうようなパワフルでソウルフルなボーカルをこれでもかというほど聴かせてくれます。
その後も伸びのあるボーカルを力強く聴かせる「Soulmate」やシャウトを入れつつファンキーに聴かせる「Better In Color」など、そのパワフルなボーカルにまずは耳を奪われます。一方で力押し一辺倒かと思いきや、「Lingerie」ではしんみりと感情を込めたスモーキーな歌声を聴かせてくれたりして、表現力を伴う緩急をつけたボーカルが実に魅力的。ボーカリストとしての実力を存分に感じることができます。
サウンドは「Tempo」のような、今風のトラップの要素を取り込んだような曲もありましたが、全体的にはオーソドックス、というよりも昔ながらである種の懐かしさを感じるサウンドがメインとなっていました。例えば「Juice」は完全に80年代を彷彿とさせるリズミカルなエレクトロチューンですし、「Cry Baby」も分厚いギターサウンドにかけられたエフェクトは、今となってはあまり聴かれないような懐かしいスタイル。「Heaven Help Us」もゴスペル調のサウンドを盛り上げるピアノを入れたサウンドには一昔前の懐かしさを感じます。
トラップなどの最近の楽曲はどちらかというと音数を絞ってシンプルなサウンドが目立ちますが彼女のサウンドメイキングはむしろ逆。音を入れて埋め尽くすようなサウンドメイキングのスタイルは最近の時代の潮流に逆らっているような感もあります。ただ、彼女のそのふくよかな身体から存分に繰り出されるパワフルなボーカルを支えるには、おそらくこのアルバムのような分厚いサウンドの方がピッタリ来るのでしょう。実際、彼女のソウルフルなボーカルは懐かしさを感じるサウンドにピッタリとマッチしているように感じました。
昔ながらのスタイルゆえにどこかベタさも感じる部分もあるのですが、それを含めて懐かしさを感じるサウンドがとても心地よく、そんな中にちょっと入っているトラップの要素がまたちょうどよいスパイスとなった傑作アルバムに仕上がっていました。いい意味で耳なじみあるサウンドが多様されているだけに幅広い層にアピールできそうな彼女の音楽。今後、日本でももっと注目を集めるかもしれませんね。これだけパワフルなボーカルはライブでも聴いてみたいなぁ。これからが楽しみな女性シンガーです。
評価:★★★★★
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