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2019年10月 4日 (金)

ここは安全な場所ではない

Title:THIS IS NOT A SAFE PLACE
Musician:RIDE

1980年代終盤から1990年代にかけて活躍したイギリスのロックバンドRIDE。いわゆるシューゲイザーバンドの代表格として日本でも高い人気を誇った彼ら。1996年には残念ながら解散してしまいましたが2014年に再結成。2017年には実に21年ぶりとなるニューアルバム「Weather Diaries」をリリース。イギリスのアルバムチャートでは最高位11位というまずまずの成績を記録し、長い間、待ちわびていたファンが多かったことを証明する結果となりました。

そんな前作「Weather Diaries」は以前のRIDEのイメージに沿った形でのアルバムとなっており、長く待ちわびたファンへの挨拶代わりの1枚となっていました。そして今回のアルバムとの間にリリースされたのが5曲入りのEP「Tomorow's Shore」。こちらは5曲が5曲とも違うタイプの曲が収められており、いわばRIDEの次の一歩を模索するようなアルバムに仕上がっていました。そしてリリースされた再結成後2枚目となる本作は、その「Tomorrow's Shore」のコンセプトを引き継ぐような、新しいRIDEを模索するバリエーションあふれる作品に仕上がっていました。

アルバムのオープニングを飾るのは自らのバンド名を題した「R.I.D.E.」。こちらはある意味、イントロ的なインストナンバーなのですが、メタリックなリズムトラックとノイジーに歪んだギターサウンドが特徴的なナンバーで、まずはいかにもシューゲイザーな雰囲気の楽曲からスタートします。しかし続く「Future Love」はギターノイズが展開されるものの爽やかさを感じられるポップチューンに。さらに続く「Repetition」はノイジーなギターサウンドを取り入れているものの、全体的にはニューウェーブのテイストの強い軽快なポップチューンに仕上げられています。

さらに「Kill Switch」はダークな雰囲気のダイナミックなサウンドが特徴的なパンキッシュなナンバーに。「Clouds of Saint Marie」はメロディアスで爽快感あるギターポップチューン。「Dial Up」はサイケなポップチューンで、かのBeckに影響を受けたとか。アコースティックギターを抱えて美しいメロディーをゆっくりと聴かせるバラードナンバー「Shadows Behind the Sun」もRIDEのイメージからすると意外性を感じられる楽曲と言えるでしょう。

今回のアルバムタイトルは「THIS IS NOT A SAFE PLACE」。既に音楽シーンの中で一定の人気と評価を確立しているベテランバンドの彼らですが、いままでのことを演っているだけでは「安全な場所とは言えない」と、新たな境地を目指しての挑戦を宣言するようなアルバムタイトルのようにも感じました。

ただ、これだけ新たなスタイルに挑戦していても聴き終わった後はしっかりとRIDEのアルバムを聴いた、という満足感を覚えるアルバムに仕上がっていました。というのはやはり、なんだかんだいってもどの曲も、彼ららしいノイジーなギターが入っている点、メロはどれもポップで耳なじみやすく仕上がっている点なども満足感を覚える理由なのでしょうが、それ以上に「Eternal Recurrence」「Jump Set」など、RIDEらしいノイジーなギターと疾走感あるリズム、ポップなメロがしっかりと入ったシューゲイザーなナンバーが要所要所に入っている点も大きいのではないでしょうか。また、ラストを締めくくる「In The Room」も彼ららしいノイジーでかつドリーミーなナンバー。RIDEを聴いたという満足感を覚えつつ、アルバムは幕を閉じます。

当初の活動開始から30年以上が経ったベテランバンドの彼ら。しかし、このアルバムタイトルの通り、この場所に安住する気はないとばかりに新たな挑戦を感じさせるつつ、一方ではしっかりとRIDEらしさを残した、いい意味でのバランス感覚を上手く取れた傑作アルバムに仕上がっていました。というか、ここに来て、これだけの傑作をリリースするとは驚き。また再結成後の作品はいずれも出来が良く、彼らのポテンシャルにも驚かされます。まさに第2の全盛期のような様相すら感じさせてくれる彼ら。大ベテランとなった今でも、まだまだイギリスのギターロックシーンを引っ張って行ってくれそうです。

評価:★★★★★

RIDE 過去の作品
OX4 -the best of RIDE
Weather Diaries
Tomorrow's Shore

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