日本人の琴線にも触れそうなメロディーラインが大きな魅力
Title:Basking In The Glow
Musician:Oso Oso
アメリカはニューヨークを活動拠点とするエモバンド、Oso Osoの最新アルバム。ちょっと不思議なバンド名ですが、これで「オソ・オソ」と読むそうです。まだまだ日本では知名度も低いバンドですが、本作はPitchforkでBest New Musicに選ばれるなど高い評価を得ているほか、日本でも国内盤がリリースされるなど徐々に注目を集めているバンドです。
楽曲的にはシンプルなギターロックといった感じになるのですが、このバンドの最大の魅力はやはりそのメロディーラインでしょう。Death Cab For CutieやJimmy Eat Worldを比較対象として提示されることの多いバンドのようですが、エモバンドらしい狂おしいような感傷的なメロディーラインが大きな特徴的。今回のアルバムでも序盤、「the view」はまさにこのイメージにピッタリの切ない感傷的なメロに分厚いギターロックが魅力的なポップチューンに。続くタイトルチューンの「Basking In The Glow」もノイジーで分厚いギターロックの中、軽快でポップなメロが耳に残るナンバーに仕上がっています。
さらに続く「dig」はまさに胸にキュンとくるようなメロディーラインに、ポップチューンを甘く味付けするかのような分厚く心地よいギターのホワイトノイズが魅力的なナンバーに。アルバムの前半戦はまさにOso Osoの魅力が満載のポップなギターロックが続いていく展開になっています。
アコギのみでデモ音源風の「one sick plan」がある種の箸休め的に挿入されつつ、続く「a morning song」もタイトル通り、朝の爽やかさとちょっと気だるさを上手くメロディーラインで表したギターポップチューンに。楽曲のタイプとしては基本的に後半戦も同じスタイルで、疾走感あるギターロックチューンの「wake up next to god」に、しんみり切なく聴かせるメロディーが印象に残るミディアムチューンの「charile」と続いていきます。アルバムのラストを締めくくる「subside」もノイジーなギターロックチューンの中に流れる切ないメロディーラインが大きな魅力。感傷的に歌い上げられるサビも非常に印象に残るラストチューンとなっており、アルバムが締めくくられます。
正直言うと、楽曲自体のバリエーションはあまりありません。どの曲も分厚くノイジーなギターサウンドに感傷的でポップなメロディーを聴かせるというスタイル。ただ、このメロディーがどの曲もメロディアスで狂おしい切なさを感じられて非常に魅力的。また哀愁感も覚えるメロデイーラインは日本人の琴線にも触れそうな印象を受けます。知名度的にはかなり低いこのバンドで、今時国内盤がリリースされるのは、間違いなく日本人受けしそうなバンドというレコード会社側の判断が働いたのでしょうし、そしてその「読み」は間違いないと思います。
上にあげたバンドはもちろん、例えばWEEZERやASIAN KUNG-FU GENERATIONSあたりのパワーポップバンドが好きな人にも気に入りそうなバンド。おそらく今後、日本でも知名度が上がっていきそうな予感がするだけに、今のうちに要チェックといった感じでしょうか。「エモバンド」という言葉にピクっと来るような方は無条件でお勧めできる傑作アルバム。今後の彼らの動向にも要注目。来年あたり、フジかサマソニあたりが呼びそうだなぁ。
評価:★★★★★
ほかに聴いたアルバム
We Are Not Your Kind/Slipknot
一時期、活動休止状態となり、約5年ぶり、久々となったアメリカのヘヴィーメタルバンドSlipknotの最新作。へヴィーなサウンドやデス声のシャウトの中に、意外とポップなメロディーラインが流れているというスタイルはいままでのアルバムと同様。良くも悪くも大きな変化はないのですが、パッと聴いた感じ気持ちよくても最後はお腹いっぱいになっていたここ数作に比べて、緩急つけたサウンドで最後まで飽きさせることもなく、メロディーラインのインパクトも増して、最後までダレることなく楽しめることが出来ました。個人的にはいままでに聴いた彼らのアルバムの中では最高傑作と言える出来だったような感じがします。一時的な活動休止はメンバーそれぞれのソロ活動を充実されるため、という説明がされたのですが、その活動休止がいい意味でバンドの勢いにつながったような印象を受けました。
評価:★★★★★
slipknot 過去の作品
All Hope Is Gone
ANTENNAS to HELL
TALLULAH/FEEDER
約3年ぶりとなるイギリスのギターロックバンドのニューアルバム。メンバーのTaka Hiroseはご存じ岐阜出身の日本人。今回のアルバムでは「Kyoto」というナンバーも収録されているのは日本人にとってうれしいところ。楽曲的には奇をてらわないストレートで疾走感あるギターロック。目新しさはないものの、いい意味で安心して楽しめるギターロックで、UKロック好きにとっては文句なく気に入りそうな内容になっています。それを反映してか、イギリスのアルバムチャートでも最高位4位という好セールスを記録。その人気の高さをうかがわせました。日本人が参加しており、かつイギリスで高い人気を獲得しているバンドなだけに、もっと日本でも取り上げられてもいいと思うんですけどね・・・。
評価:★★★★★
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