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2019年10月27日 (日)

明るいポップチューンが魅力的なSSW

Title:ソラべスト2
Musician:イズミカワソラ

個人的にデビュー時から注目している女性シンガーソングライター、イズミカワソラ。彼女のことをはじめて知ったのは、1998年にリリースされた2枚目のシングル「ヤッホー!」でした。底抜けに明るいポップチューンにフックの利いたメロディーラインが一度聴くと耳から離れられなくなるようなナンバー。一気に気になるミュージシャンとなり、その後もコンスタントにチェックしていった…のですが、残念ながらブレイクとはならずメジャーシーンからも離れていってしまい、正直、ここ最近の音源についてはなかなかチェックできない状況となってしまっていました。

そんな中、本作にも注目された「絵の具」が今を時めく人気のロックバンドUNISON SQUARE GARDENのライブSEに使用され注目を集め、昨年にはまさかのトリビュートアルバムもリリース。ここに来て彼女の名前を聞く機会がグッと増えてきました。そして今回リリースされたのが2006年にリリースされた「ソラベスト」以来、約13年ぶりとなるベスト盤「ソラベスト2」。ただ、その間にリリースされたアルバム音源は残念ながらほとんどチェックできなかったため、私にとっては久々に聴いたオリジナルアルバム、といった感じで聴くことが出来ました。

そんな訳で久しぶりに聴いた彼女のアルバム。しかしアルバムを聴きはじめて久々の彼女の曲だったのですが、すぐに彼女のご機嫌な楽曲の連続に一気にはまってしまいました。まず1曲目「Plastic City」はブギウギ風なピアノが軽快なポップチューン。心がウキウキするような明るいメロディーラインは相変わらず。非常に魅力的な楽曲が耳に飛び込んできます。続く「メインステージ」も同様に明るいピアノが軽快なポップ。こちらもリズミカルなサウンドの明るいメロディーラインに気持ちはどんどんと楽しくなってきます。

さらに続く「Fly」もピアノが軽快なナンバーなのですが、タイトル通り、空へ飛んでいきそうな伸びやかなメロディーラインが大きな魅力のポップチューン。ストリングスも入ってスケール感も覚えるナンバーに。その後も「リピートブライトデイ」では軽快なピアノにバンドサウンドが加わった分厚いサウンドも心地よい明るいメロのポップチューン。前向きな歌詞もご機嫌で楽しい雰囲気を醸し出しています。さらに後半の「願い」もミディアムチューンのナンバーなのですが、ホーンセッションも入り祝祭色を感じさせる楽曲に仕上がっています。

ただ、彼女は単純にハッピーで明るい曲を書いているだけのシンガーソングライターではありません。例えば「碧」などはピアノがさわやかながらも切なさを感じるメロディーと歌詞も魅力的なナンバー。「黄昏ゆく」もミディアムチューンの聴かせる楽曲ながらも、しっかりとフックの利いたメロディーを聴かせてくれています。ラストを締めくくる話題の「絵の具」もシンプルなサウンドでゆっくりと聴かせる曲ながらもメロがしっかりと耳に残る楽曲。暖かいメロディーラインにやさしい気持ちになりながらアルバムは幕を下ろします。

もちろん彼女の魅力といえば底抜けに明るいポップチューンなのですが、今回のアルバムではこれらのミディアムチューンがキラリと光っていたように感じます。加えて、明るいポップチューンにしてもわかりやすいサビを全面に押し出してそれ以外の部分はやっつけ…というJ-POPにありがちな構成ではなく、楽曲全体の展開で聴かせるような楽曲に仕上げており、シンガーソングライターとしての実力をあらためて感じさせる内容になっています。またアップテンポな楽曲にしてもどこか大人びた雰囲気を漂わせており、ちゃんと年齢なりのキャリアを積み重ねてきた彼女の成長も強く感じることが出来ました。

もうひとつ、今回のアルバムで大きな魅力に感じたのがサウンド的な側面。前述の「Plastic City」や「メインステージ」のピアノでもブギウギのリズムを取り入れたりしていたのですが、「OH! Sunny Day」ではニューオリンズ風のサウンドを取り入れているなど、デビュー当初では感じなかった洋楽的な要素も。全体的にもあか抜けたサウンドが大きな魅力となっており、彼女のポップチューンの後押しをしています。

最初に書いた通り、個人的にはデビュー当初から注目していたシンガーソングライターだったのですが、今回のこのベスト盤を聴いて、「ここまで素晴らしいミュージシャンだったのか!」と再認識させられました。インディーズの活動がメインとなってしまった彼女ですが、これだけ優れたポップチューンを作りながら、このまま埋もれさせておくのはあまりにも惜しいと感じさせてくれる傑作アルバム。全ポップス好きにもろ手をあげておすすめできるアルバム。是非、このベスト盤を機に、イズミカワソラの魅力に触れてみてください!

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

It's my Life/竹原ピストル

約1年半ぶりとなるニューアルバム。アコギがメインのフォーキーなサウンドを主軸としつつ、「狼煙(ver.2)」のようなヘヴィーなサウンドとラップを取り入れたような曲も。全体的には自らを鼓舞するような力強い歌詞の曲がメイン。自らの全身をぶつけてくるような歌い方といい、良くも悪くも暑苦しさを感じさせるスタイルは相変わらず。ブレイクしても全く変わらないそのスタイルには強い信念を感じさせますが。

評価:★★★★

竹原ピストル 過去の作品
PEACE OUT
GOOD LUCK TRACK

Say Hello to My Minions 2/SKY-HI×SALU

avexのダンスグループAAAのメンバーとしても活躍しつつ、ソロでのラッパーとしての活動が高い評価を受けているSKY-HIと、こちらもラッパーとして高い評価を受けているSALUによるコラボレーションアルバム。本作はそのコラボ作としては2年ぶりとなる第2弾となるそうです。今時のトラップの影響を受けたシンプルなサウンドのリズミカルな楽曲がメインとなるのですが、「Goodbye To The System」のような哀愁感ある歌モノも。SKY-HIはもともとアイドル的な活動も行っていただけあって端整な聴きやすいボーカルを持っているのですが、今回のアルバムではそのボーカルが良い意味でアルバム全体としての取っつきやすさの大きな要因となっています。特にラストの「Things To Do」はピアノをバックに聴かせるメロウな歌が秀逸な楽曲に。コラボとしての両者の息もピッタリな傑作アルバムに仕上がっていました。

評価:★★★★★

SKY-HI 過去の作品
FREE TOKYO
JAPRISON

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