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2019年10月21日 (月)

ハイプ気味だったデビュー時の印象を覆す傑作

Title:Norman Fucking Rockwell!
Musician:Lana Del Rey

アメリカのシンガーソングライター、Lana Del Reyのニューアルバム。2012年にリリースされたメジャーデビューアルバム「Born To Die」が大ヒットを記録。一躍、「時の人」となりました。ただ正直なところ、ミュージシャンとしての評価は「賛否両論」という感が強く、個人的にも悪いアルバムではないけど…といった印象を受けていました。そのため2枚目のアルバム「Ultraviolence」まではチェックしていたのですが、その後はちょっと彼女のアルバムからは遠ざかっていました。

しかし、その後リリースされた「Honeymoon」もビルボードチャートで2位、「Lush for Life」も1位を記録するなどシンガーソングライターとして一定以上の地位を確立。今回リリースされたニューアルバムもPitchfork等のメディアでも高い評価を受け、チャートでも3位を獲得。高い人気を維持していると共に、ミュージシャンとしての評価も確立した感もあります。そんなこともあって今回、久しぶりに彼女のアルバムを聴いてみました。

そんな久しぶりに聴いた彼女のアルバムなのですが、いや、予想していたよりもいいじゃん!というのが率直な感想。まずはボーカリストとしての彼女の力量に強い魅力を感じます。もともとデビューアルバムからその美しい歌声が大きな魅力だったのですが、ボーカリストとしての魅力がグッと増したように感じます。特に魅力的だったのが中盤の「Doin' Time」で、いきなり「Summer Time~♪」からスタートする出だしからして、ジャニス・ジョプリンへのリスペクトか?と思いつつ、その憂いを帯びたボーカルが非常に魅力的。「California」もピアノとストリングスで荘厳な雰囲気を醸し出しつつ、優しさと力強さを同居させたようなボーカルでしっかりと聴かせます。

基本的にはピアノでシンプルなサウンドが多く、彼女のボーカルと歌を主軸に据えてしっかりと聴かせるスタイルの曲がメイン。アレンジも比較的ギミックが多く、無駄なエフェクトが多かった印象の受けるデビュー当初の作品と比べるとシンプルにまとまった印象が強く、そういう意味でもボーカルという彼女の強みをしっかりと生かした曲作りにきちんとシフトしているように感じました。

また、アレンジは似たようなものが多く、最後まで聴くと飽きてしまう、というのが以前のアルバムから強く受けた印象でした。今回のアルバム、打ち込みのリズムが入った「How to disappear」などそれなりのバリエーションはあるものの、基本的にはピアノやストリングス、アコギを中心としたアコースティックでシンプルなアレンジがメイン。それだけに決してバラエティー豊富なアルバムではありません。ただ、しっかりとした彼女の「歌」を主軸に据えたからでしょうか、最後まで飽きるという感じを受けることがなく、だれることなく楽しめることができました。そういう意味でも以前のアルバムから大きな成長を感じる作品となっていました。

最後を締めくくる「Hope is a dangerous thing for a woman like me to have – but I have it」もピアノでシンプルなアレンジの中、感情を込めた彼女のボーカルでしっかりと聴かせる、ある意味このアルバムを象徴するような作風の曲で幕を下ろします。最後までしっかりと彼女のボーカルの魅力を前に押し出した傑作アルバムに仕上がっていました。

そんな訳でデビュー当初はハイプ気味だった彼女ですが、気が付くと、しっかりと実力のあるシンガーソングライターとしての成長を遂げていました。またボーカリストとしても実に魅力的で、本作はそんな彼女の魅力をアルバムに詰め込んだ傑作に仕上がっていたと思います。名実ともにアメリカを代表するシンガーとなった彼女。すっかり見直しました。これからの活躍も楽しみです。

評価:★★★★★

Lana Del Rey 過去の作品
Born To Die
Ultraviolence


ほかに聴いたアルバム

Live and Loud/NIRVANA

今や伝説ともいえるアメリカのロックバンド、NIRVANA。本作は1993年に米ワシントン州シアトルのPier 48にて行われたライブの模様を収録した音源で、もともと「In Utero」の20周年記念盤に映像、音源が収録されていましたが、配信及びアナログ盤がこのたびリリースされました。NIRVANAといえば、個人的にはオリジナルアルバム以上に、2009年にリリースされたライブ音源「Live at Reading」に大きな衝撃を受けました。それだけ彼らのライブは圧巻だったのですが、今回のライブ盤、「Live at Reading」ほどの衝撃は受けなかったものの、今回もヘヴィーで力強い彼らの演奏にただただ圧巻されるライブ盤に。その中で歌われるカート・コバーンの力強さと繊細さを同居させたようなボーカルも大きなインパクトに。オリジナル作よりもむしろライブ盤の方がNIRVANAの本質をあらわしているのでは?とすら感じさせる傑作でした。

評価:★★★★★

NIRVANA 過去の作品
LIVE AT READING

Threads/Sheryl Crow

約2年ぶりとなる新作は本人曰く「最後のアルバムになるかもしれない」と語ったそうですが、とにかく超豪華なゲスト勢が目を惹く内容。キース・リチャーズ、エリック・クラプトン、スティング、ニール・ヤング…とこれでもかというほどのビックネームがズラリと並んでおり、彼女の人脈の広さをうかがわせます。楽曲的にも彼女らしいカントリーの曲からロッキンなナンバー、ブルージーな曲までバリエーション豊富。ここ最近の彼女のアルバムと同様、良くも悪くも安心して聴ける安定感ある作風になっているのですが、これだけ豪華なゲストが参加しつつ、Sheryl Crowとしての色をきちんと出してしっかりと彼女のアルバムにしているのはさすがです。

評価:★★★★

Sheryl Crow 過去の作品
HITS&RARITIED
Detours
Be Myself

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