少しずつスタイルを変えた25年の歩み
Title:ALL TIME BEST 1994-2019
Musician:HUSKING BEE
今年、デビュー25周年を迎えるロックバンドHUSKING BEE。1994年の結成後、90年代後半にはその当時のメロコアブームに乗ってブレイクを果たします。ただしその後、音楽性を徐々に変えつつ、2005年に解散。しかし、2012年に再結成を果たし、その後はコンスタントに活動を続け、ついに今年、デビューから25年をいう歳月を迎えました。
本作はそんな彼らの25年間を統括するようなオールタイムベスト。HUSKING BEEといえば基本的に分厚いギターサウンドを軸としたロックにメロディアスなメロディーラインという方向性は保ちつつ、楽曲的にはその時期によって徐々に変化を見せているバンドです。90年代後半のブレイク時はメロコア路線だったのに対して、その後徐々にメロコア的な雰囲気を残しつつもパワーポップやさらにポップ色の強い作品を多くリリースするようになりました。
そんな彼らのベストアルバムだから、その経歴を辿るような曲順…かと思えば、今回の作品、リリース順ではありません。それでは全体の曲の流れがわかるように考えて構成されているのか、と曲順をよくよく見ると…なんとABC順(笑)。収録曲はおそらくメンバーたちが選んだのでしょうが、その選曲は恣意的な要素を一切排除した並び順となっています。確かにHUSKING BEEは時代によって曲の雰囲気を徐々に変化させてきたのですが、そのコアな部分は変わらないので、どんな並び順にしようと、曲の魅力は失せるものではない、そんな彼らの主張を感じるようです。
確かに今回のアルバム、いろいろなタイプの彼らの曲が収録されており、その時代時代のHUSKING BEEの曲調を知れるという意味ではとても興味深いものを感じました。ハードなギターロックを軸としつつ、例えば2005年の解散直前にリリースされた「魔訶不思議テーゼ」は日本語詞でかなりポップで軽快なギターロックになっていますし、再結成後にリリースした「Spitfire」は疾走感あるノイジーなギターサウンドが特徴的な、ガレージテイストも感じられる楽曲に仕上がっています。
今回は彼らがメジャーデビューする前の、PIZZA OF DEATH RECORDS時代の曲も収録されているのですが、この時代の曲が今の彼らのイメージよりもパンクの影響が強くてちょっとビックリ。「BEAT IT」や「OWN COURSE」が本作には収録されているのですが、今の歌い方と比べると、しゃがれた声を前に押し出して、よりへヴィーで駈け足的なギターサウンドを前に押し出したような楽曲に。後の彼ららしいポップなメロは健在なのですが、彼らのスタートラインはまずパンクロックだったのか、ということをあらためて認識しました。
ちょっと意外だったのはHUSKING BEEといえば前述の通り、メロコアブームの流れに乗ってブレイクしたのですが、その最中にリリースされた「PUT ON FRESH PAINT」からの曲は「SING TO ME」の1曲だけ。確かに今聴くと、いかにも「メロコア」といった感じの曲になっています。あまりにもブームに乗ったアルバムだっただけに、今となっては少々納得がいなかい部分もあったということでしょうか。
ただそんな時代によってそのスタイルを徐々に変えてきた彼らですが、今回のベストアルバムを通して聴いても、アルバム全体の流れとして違和感のようなものはほとんどありません。少しずつスタイルを変えてきても、「キュート」という形容詞さえ似合いそうなポップな曲調と、ギターを軸として分厚いバンドサウンドを聴かせる楽曲の構成は時代を経ても変化がないからではないでしょうか。そのためABC順というかなり力技のような曲順となっていても、曲の切り替わりにも違和感は全くありません。今回CD評を書くにあたってあらためて曲順を見て、はじめてABC順ということに気が付いたくらいですから…。
デビューから25年、すっかりベテランの域に入った彼ら。再結成からも早くも7年が経過しました。これからもHUSKING BEEらしさはそのままに、そのスタイルは少しずつ変化していきそう。これからの彼らの活躍にも期待です。
評価:★★★★★
HUSKING BEE 過去の作品
Suolo
Stay In Touch
Lacrima
ほかに聴いたアルバム
Grape/Base Ball Bear
Base Ball Bearの新譜は4曲入りのミニアルバム。配信でリリースされる一方、CD媒体はライブ会場などでのリリースオンリーということ。先日紹介したPeople In The Boxのアルバムも同じような形態でのリリースでしたが、この販売形態は今後のひとつの流れとなっていくのでしょうか?内容的には切ないメロを聴かせるギターロックというスタイルは基本的にBase Ball Bearらしいといった感じ。4曲のどれもそのような彼らの王道を行くような路線で目新しさは感じられませんでしたが、バンドとしての安定感も覚える出来栄えに。ジャケットタイトル的には1月にリリースされたミニアルバム「ポラリス」と対になるような形になっており、前作の続編といった感じでしょうか。EPが2作続けてリリースされ、次はちょっと久々となるオリジナルアルバムのリリースか?そちらも楽しみです。
評価:★★★★
Base Ball Bear 過去の作品
十七歳
完全版「バンドBについて」
(WHAT IS THE)LOVE&POP?
1235
CYPRESS GIRLS
DETECTIVE BOYS
新呼吸
初恋
バンドBのベスト
THE CUT
二十九歳
C2
増補改訂完全版「バンドBのベスト」
光源
ポラリス
完全が無い/Ivy to Fraudulent Game
フルアルバムとしては約1年10ヶ月ぶりとなる新作。シューゲイザーからの影響からが顕著だった前作「回転する」に比べると、良くも悪くもJ-POPらしい、ちょっとベタさを感じられる哀愁感も感じられるポップなメロが前に出て、良くありがちなギターロックになってしまった感も。ただ、ノイズで埋め尽くされた「真理の火」やエレクトロサウンドとノイズギターで実験的な作風の「Only Our Oath」など、一味違う彼らの方向性も感じられることが出来ます。以前から同様、ヴィジュアル系っぽいちょっと鼻にかかったような歌い方は相変わらず。個人的にはもうちょっとシューゲイザー系かサイケ寄りに寄った方がおもしろいと思うんですが・・・。
評価:★★★★
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