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2019年10月22日 (火)

改名して心機一転

Title:OAU
Musician:OAU

BRAHMANの別動隊的バンドとしてスタートしたOVERGROUND ACOUSTIC UNDERGROUND。BRAHMANとしての活動の傍らで、同バンドも継続的な活動を続け、すでに結成から14年目という中堅の域に達するような活動歴を見せてくれています。そんな彼らは非常に長い名前を名乗っていましたが、このたび、バンド名を以前のバンド名の略称である「OAU」に変更。本作はそのバンド名変更後、初となるアルバムとなりました。

バンド名変更後、初となるアルバムはセルフタイトルとなる作品。本人たちも「1枚目のつもりで作った」という強い意気込みを感じられる作品で、いままでの作品はライブを意識して作っていたそうですが、今回のアルバムはあくまでも「作品としていいものを作る」という気持ちで作ったそうです。そのため、いままでのアルバムに比べても一段と楽曲のバリエーションも増え、かつ純粋に楽曲としてよく出来ている作品の並ぶ傑作に仕上がっていたように感じました。

もともと彼らの音楽はアコースティックなサウンドをベースとしてフォーク、カントリー、ブルース、ケルティッシュなど様々な音楽的要素を感じられる作風が大きな魅力でしたが、今回のアルバムもアコースティックベースのシンプルなサウンドながらも多種多様な音楽性を楽しめる内容に仕上がっています。勇壮なスケール感を覚える「A Better Life」からスタート。リズムからトライバルな要素を感じる「こころの花」に、彼ららしいケルティッシュな要素を取り入れた「Midnight Sun」。さらに和風なメロディーラインに歌詞を含めて郷愁感を強く覚える「帰り道」へ。シンプルなサウンドながらも序盤から全く異なった作風の曲が次々と展開していきます。

その後もラテンなリズムの陽気なインストチューン「Banana Split」に、カントリー風の「Again」、ドラムやストリングスでダイナミックに展開するエキゾチックな雰囲気も耳を引く「Where have you gone」、タイトル通りにアメリカの荒野を想像させるような乾いた雰囲気とカントリー調のアレンジが印象的な「Americana」など、最後の最後まで次々とバラエティーあふれる曲が続いていきます。そしてラストを締めくくるのは「I Love You」というシンプルなタイトルのフォーキーな優しいポップチューン。ほっこりと温かい気持ちとなり、アルバムは幕を下ろします。

彼らのアルバムに対する意気込み通り、しっかりと聴かせる名曲がそろった今回のアルバム。なによりもアコースティック主体のシンプルなアレンジながらも非常に幅広い音楽性に、彼らの音楽的な素養の深さを感じさせますし、驚きすら感じられました。ただ、これだけ幅広い作風ながらもアルバム全体としての統一感をしっかり感じられるのは、彼ららしい暖かさを感じるメロディーラインが流れているからでしょうか。最後まで全く飽きさせず、耳の離せない傑作アルバムに仕上がっていました。

OAUと改名してまだまだこれからの活躍に期待できそうな彼ら。その第1弾アルバムは、彼らの魅力を存分に詰め込んだ作品に仕上がっていました。これからの彼らの活躍にも期待です。

評価:★★★★★

OAU(OVERGROUND ACOUSTIC UNDERGROUND) 過去の作品
New Acoustic Tale
夢の跡
FOLLOW THE DREAM


ほかに聴いたアルバム

#6/AA=

ご存じTHE MAD CAPSULE MARKETSの上田剛士によるソロプロジェクトAA=の最新作。ダイナミックでへヴィーなエレクトロサウンドに今回のアルバムに関しては抜けのあるサウンドの比較的ポップな楽曲も多かった印象も。それだけにバラエティーも多く感じられた作品になっており、MADで感じられた高揚感を覚えたような曲もチラホラ。ただそれでもアルバムを通して聴くと大味な部分も否めず。いろいろな意味で惜しい感じのするアルバムなのですが・・・。

評価:★★★★

AA= 過去の作品
#1
#2
#
4

#5
(re:Rec)
THE OIO DAY

GEKIBAN 2-大友良英サウンドトラックアーカイブス-/大友良英

数多くのテレビドラマの劇伴曲や映画音楽を手掛ける大友良英の劇伴曲を集めたベスト盤。2013年のNHK朝の連続テレビ小説「あまちゃん」の音楽を担当し大きな話題を集め、今年もいろいろな意味で話題となっている大河ドラマ「いだてん」の音楽も手掛けています。「いだてん」の曲は収録されていないのですが、「あまちゃん」からは「希求2」を収録。そのほかにもNHKドラマ「クライマーズ・ハイ」や映画「色即ぜねれいしょん」の音楽、「揖保乃糸」のCMソングなども収録しています。

楽曲は全体的にしんみりと哀愁感漂うようなメロディーが大きな印象を残し、いい意味で劇伴曲らしい「聴きやすさ」を感じる曲が並んでいます。ただ一方、彼はもともとフリージャズや前衛音楽の世界でも活躍していたミュージシャン。そのため「兵器のある風景」「対立」など、曲によってはフリージャズ的な要素を感じさせる部分もあり、こういうフリーキーなサウンドが急に飛び出してくるのがユニークなところ。ここらへんの単に耳障りのいい音楽だけではない狂気性を合わせ持つところが、彼が多くの劇伴曲にかりだされる大きな要因でしょうか。

評価:★★★★

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